2002年前期版電子辞書へのアプローチ
(2002年4月17日改訂)※改訂途中です。新機種を追加予定。
関山 健治(沖縄大学)
sekiyama.kenji@nifty.ne.jp
http://sekky.tripod.com
※ このガイドは,学生の皆さんで電子辞書を購入したいと思っている人を主な対象に,持ち運びのできる電子辞書(パソコン上で使うCD-ROMタイプの辞書ソフトは除きます)の特徴や選び方を簡単に解説したものです。
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Quick Index
−どの機種を買ったらいいか,手っ取り早く知りたい人のために−
★「広辞苑が必要かどうか」「英和・和英辞典はどの辞書がいいか」の2点をもとに,現行電子辞書を分類しました。各機種名をクリックするとレビュー記事にジャンプします。
◎広辞苑が入っている機種
ジーニアス英和・和英モデル
大画面液晶搭載モデル
XD-R8100(カシオ) ※LAAD収録
PW-9000/9100(シャープ) ※家庭の医学,ことわざ,四字熟語辞典等収録,日本語ジャンプ,単語帳機能
XD-R6100(カシオ) ※各種辞書12冊収録
SR-9600(セイコーインスツルメンツ) ※フルキーボード
IDF-4000(キヤノン) ※広辞苑図版収録,単語帳機能
IDF-4500(キヤノン) ※広辞苑図版,実用英語ハンドブック,OALD収録,単語帳機能
小型軽量モデル
PW-M700/710(シャープ)
XD-S950(カシオ)
SR-850(セイコーインスツルメンツ)
新英和・和英中辞典モデル
小型軽量モデル
DD-IC2050(ソニー) ※百科事典収録
DD-IC2000(ソニー)
DD-IC7000(ソニー) ※21冊の辞書収録
SR-950(セイコーインスツルメンツ) ※日本語ジャンプ機能
リーダーズ英和・新和英中辞典モデル
大画面液晶搭載モデル
SR-9200(セイコーインスツルメンツ) ※COD収録,フルキーボード
◎広辞苑が入っていない機種
ジーニアス英和・和英モデル
大画面液晶搭載モデル
XD-R1300(カシオ) ※新明解国語辞典,古語辞典収録
小型軽量モデル
IDF-2000E(キヤノン) ※OALD収録,ジョグシャトル搭載
PW-M670(シャープ) ※最新第3版ジーニアス,OALD収録。世界時計機能
新英和・和英中辞典モデル
大画面液晶搭載モデル
SR-8100(セイコーインスツルメンツ) ※LDCE収録,2画面表示,フルキーボード
プログレッシブ英和・和英中辞典モデル
小型軽量モデル
DD-IC1000(ソニー) ※岩波国語辞典収録,単語帳機能
DD-IC550(ソニー) ※岩波国語辞典,百科事典収録,ジョグダイヤル搭載,単語帳機能
DD-IC300(ソニー) ※ジョグダイヤル搭載,単語帳機能
その他の英和・和英モデル
大画面液晶搭載モデル
IDF-3000(キヤノン) ※スーパーアンカー英和・ニューアンカー和英,学研国語辞典,漢字源搭載,日本語ジャンプ,単語帳機能
PW-6800(シャープ) ※グランドコンサイス英和・ジーニアス和英・OALD等収録。2画面表示ジャンプ,単語帳機能
小型軽量モデル
DD-IC50(ソニー) ※ニューアンカー英和・和英,パーソナル国語辞典搭載,ジョグダイヤル
DD-IC5000(ソニー) ※リーダーズ英和・新和英中辞典・岩波国語辞典等収録。
2002年前期版 電子辞書へのアプローチ 目次
大半の人は,紙の辞書(冊子体辞書)より軽くて小さいのが電子辞書のメリットだと言います。しかし,それだけのために冊子体辞書の何倍もする電子辞書を買うというのは,ためらってしまうでしょう。単に,重くて大きい辞書を持ち歩くのがいやだと言うなら,同じ紙の辞書を2冊買って,1冊は自宅に,もう1冊は大学のロッカーや研究室に置いておくほうがずっと安上がりです。あえて大枚をはたいてまで電子辞書を買う以上は,冊子体の辞書では絶対に真似のできない使い方をしたいものです。まず,電子辞書と冊子体の辞書を比較することにより,電子辞書のメリット,デメリットを見てみます。
小さい:機種にもよりますが,たいていはちょっと厚めの文庫本ぐらいの大きさなので,カバンはもちろん,ポーチなどにも楽々入ります。小さい機種(ソニー DD-IC100)の場合,ポケットにさえ入るぐらいです。小さいので,満員電車の中などでも使えます。家で予習をする時間がなく,通学時に辞書をひかないといけないとき,電子辞書のありがたみが分かります。
軽い:たとえば,冊子体の新英和中辞典と新和英中辞典(研究社)は2冊で2キロ弱の重さがあります。しかし,電子辞書の場合,もっとも重い機種の一つである電子ブックプレーヤーでも,400グラムぐらいしかありません。中には,126グラム(ソニーDD-IC100)という機種もあります。軽いので,通学時はもちろん,辞書とあまり縁のなさそうな場面(休日に買い物へ行くなど)でも気楽に持ち運べます。そのため,いつでも,どこでも辞書をひくことができ,それが英語力向上にもつながるのです。せっかく大きな辞書を買っても,重いので授業以外はロッカーへ入れっぱなしというのでは,あまりにももったいない話です。
字が大きい:冊子体の辞書の4倍ぐらいの大きさはあります。
速くひけ,疲れない:ワープロ,パソコンと同じJIS配列のキーボードなので,キーボードに慣れていれば,冊子体の辞書をひくより速くひけます。また,重い辞書を手に持ってページを繰る必要がないので,長時間辞書をひいても疲れません。
紙の辞書にはない使い方ができる:後述の,ジャンプ機能,パス機能などは,紙の辞書で不便な点を解消してくれる,電子辞書ならではの機能です。これらの機能を使いこなせば,電子辞書の値段もそれほど高いとは思えないはずです。
高い:すべてはこれにつきます。最近の機種は安くなりましたが,それでも冊子体辞書と同等の内容を持つ機種(フルコンテンツタイプ)は2,3万円はします。3万円出して,10種類の冊子体辞書を買うか,電子辞書を1台買うか,どちらが英語力の向上につながるかと言われれば,前者に軍配が上がるのは事実です。
壊れやすい:最近の電子辞書は,軽く,薄くなっているので,そのぶん耐久性が少なからず犠牲になっています。液晶画面,とくに大型のものは非常にもろく,ちょっと押さえたり,ひねったりしただけで割れます。液晶画面は,裏側からのショックに弱いので,画面の蓋を閉じていても安心できません。落としたりするのは論外ですが,カバンの中でハードカバーの本などといっしょに入れて持ち運んだだけで割れることがあります。冊子体辞書なら,床にたたきつけたり,水に濡らしたりしても全く使えなくなることはありませんが,電子辞書は液晶が割れただけでお手上げです。修理代も本体の半額ぐらいはとられるでしょうから,パソコンショップなどで売っている,緩衝剤の入った電子手帳用のケースで保護するのは必須です。
なくしたり,盗まれたりしやすい:電子辞書はサイズが小さく,日常的にしょっちゅう使うので,置き忘れたり落としたりする可能性も大きいです。しかし,冊子体の辞書は処分に困るほど落とし物として届けられますが,電子辞書は,置き忘れたら戻ってこないと考えていいでしょう。
書きこみができない:冊子体辞書で,覚えた単語にマーカーで印をつけたり,付箋をつけたり,余白に書きこんだりしないと気がすまない人には,電子辞書は向きません。
一覧性に乏しい:最近の電子辞書は画面も大きくなっていますが,それでも冊子体辞書の1ページの何十分の一でしかありません。
文庫本程度のサイズで,通常,液晶画面とキーボードがついています。電子辞書の中ではもっとも歴史が古く,もっとも普及しているタイプのものです。近年は,冊子体辞書(紙の辞書)の文字情報を,例文や文法解説などを含め,まるごと収録した「フルコンテンツタイプ」が主流になっていますが,例文や解説などをカットし,収録語数や訳語の数も厳選した「単語翻訳機タイプ」も,安価なこともあり根強い人気があります。しかし,英語を専門とする皆さんにとっては,単語の意味を並べただけの電子辞書を買うぐらいなら,冊子体の辞書を使った方がましということを知っておいてください。そのため,このガイドでは,電子辞書=フルコンテンツタイプの機種(冊子体の辞書と同じ内容を収録した辞書)を指すこととします。
小型軽量
操作が簡単:機械類が苦手な人でも心配ありません。
使いたいときにすぐひける:電源を入れたときに待たされません。
電池寿命が長い:毎日頻繁に使っても1ヶ月ぐらいは持ちます。
訳語優先:冊子体辞書や他のタイプの電子辞書と異なり,まず訳語(意味)のみが表示され,例文や解説は専用キーで呼びだす機種がほとんどです。そのため,必要な情報が素早く手に入ります。
和英→英和,類語→英和など,異なった辞書の間を簡単に行き来できる(ジャンプ機能・後述)。
高い:電子ブックプレーヤーと違い,ソフトを入れかえることができないので,よけいに割高感があります。
メーカーや機種によって,キーの配置や操作方法が異なる
画像(挿し絵)や音声(単語の発音)などが再生できない:IC辞書の場合,辞書の図版はカットされているのが普通です。単語や例文の発音機能は,最近の機種では備わっているものもありますが,音質や自然さなどは電子ブックプレーヤーにかないません。
電子ブックという,フロッピーディスクと同じぐらいの大きさのCD-ROM(シングルCDと同じサイズで,専用ケース(キャディー)に入っている)を再生する装置です。IC辞書と同様に,液晶画面とキーボードがついていますが,若干大きく,重いです。しかし,IC辞書と異なり,ソフト(電子ブック)を入れかえれば,1台のプレーヤーで何冊もの辞書を引くことができます。そのため,一般の学生よりは,通訳,翻訳者など,英語のプロの人たちの間でよく使われています。
従来は,IC電子辞書は容量の関係でフルコンテンツ辞書とはいえ,学習辞書程度のものしか収録できませんでした。そのため,特に翻訳者や通訳といった英語のプロ達は,重くて立ち上がりが遅い,電池を食うといったメリットには目をつぶって,大容量コンテンツの使える電子ブックプレーヤーを使ってきたわけです。しかし,最近になって,SR-9200のように,電子ブックプレーヤーと大差ない内容のコンテンツを備えたIC辞書が出てきたこともあり,「IC辞書と違い,プロ仕様の辞書が使える」という電子ブックプレーヤーならではの大きなメリットが脅かされてきています。使い勝手や本体寸法,重さ等ではIC辞書にとてもかなわない電子ブックプレーヤーが今後どうなっていくのか予断を許しません(ソニーも最近はIC辞書に力を入れているようですし)。
汎用性:本体が1台あれば,電子ブックソフトを買い足すだけで何倍にも使えます。ソフトは,高いもの(大辞典クラス)でも1万円強,普通は3000円〜8000円ぐらいなので,冊子体辞書とそれほどコストは違いません。改訂の際も,IC辞書なら本体をまるごと買い換える必要がありますが,電子ブックプレーヤーならソフトを買い足すだけで最新版に入れ替えることができます。
IC辞書と異なり,どの機種でも,基本操作は同じ。
IC辞書で収録できないような大きな辞書にも対応している
CDシングル(音楽用)も再生できる:息抜きに便利です。
検索機能が豊富:例文の中で使われている単語をひくなど。
画像や音声も再生できる:白黒ですが,辞書の図版もきれいに表示することができます。単語の発音も,IC辞書と異なり,ネイティブの発音をそのまま録音しているので,信頼性が高くなっています。
IC辞書にくらべて重く,大きい
電源を入れてから数秒待たされる
電池寿命が短い:連続使用で10時間強しか持ちません。
検索するたびに動作音がする:小さな音ですが,小教室でのゼミなどの際に使うとかなり目立ちます。
画面が見にくい:IC辞書と違い,訳語と例文も一緒に表示されるものが多いので,全体を見渡すことができません。
冊子体辞書以上の使い方ができない:ジャンプ機能,履歴機能など,IC辞書に備わっている基本機能がついていません。
※ これらのほかに,パソコン上で使うもの(CD-ROM辞書)もあります。
分からない部分を「?」(1文字)や「〜」(n文字 ※n>0)で置きかえることにより,単語の一部分が分からなくても辞書がひけます。※「〜」が使えない機種もあります。「?」は,単語の頭には使えない機種もあります。
(例)
de?ight:delightが検索できます。
d??l:dで始まり,lで終わる4文字の単語(deal, dial, doll, dual, dull...)が検索できます。
d〜l:dで始まり,lで終わる単語(文字数は問わない)が検索できます。
〜tion:tionで終わる語が検索できます。
クロスワードパズルを解く際:分からないマスを「?」で置きかえる。
特定の事物の「仲間」を一覧する際:たとえば,「〜dog」のようにすると犬の種類が調べられます。
英語を聴いていて,どこかできいたことはあるが,正しく綴る自信のない単語に出くわした際:確信の持てない部分を「?」で置きかえる。
★ワイルドカード検索と一口に言っても,細かな仕様はメーカーごとに違います。上記のような場面でワイルドカード検索を活用しようと思っている人は,以下の点に注意してください。クロスワードを解くためにワイルドカード検索を使う場合,不明文字1文字のワイルドカード(「?」)に対応していることは必須です。そのほか,(4), (6), (8)もクロスワードを解く上では重要な仕様です。日本語のクロスワードを解くためには(5)もクリアする必要があります。「〜dog」のようにして犬の種類を調べたいときは,複数文字対応のワイルドカード(「〜(*)」)が備わっていることはもちろん,(4)と(6)も必要です。このような細かな仕様はカタログ等では分かりませんし,店頭で試すのも骨が折れますので,以下に表にしてまとめました。
(1) 不明文字1文字に対応するワイルドカード (「?」)と複数文字に対応するもの(「* (〜)」)の両方が備わっているか? (2) 「?」と「*(〜)」を混在できるか?→「i??ita*on」で検索できるか? (3) ワイルドカード検索の際も,通常検索同様にインクリメンタルサーチができるか? (4) どちらのワイルドカードも,語頭で使うことができるか?→「?og」,「*(〜)tream」で検索できるか? (5) 英和(英英)だけでなく,和英や国語辞書(広辞苑,大辞林など)でもワイルドカードが使えるか? (6) 英和や英英辞典における,追い込み見出しの派生語や複合語,広辞苑の慣用句もワイルドカードで検索できるか?→英和で「cream*(〜)e」(または「cream??????」)で検索すると,"cream cheese"が検索されるか? 広辞苑で,「かぜがふけば*(〜)る」(または「かぜがふけば????????」)で検索すると,「風が吹けば桶屋が儲かる」が検索されるか? (7) 複数の「*(〜)」が使えるか?→「*tream*」で検索できるか? (8) 英語のワイルドカード検索で,原形だけでなく,規則変化形やing形にも対応しているか?→「play?」でplays,「play??」でplayed,「play???」でplayingがそれぞれ検索できるか? |
Wordtank G55 | PW-V8900 | XD-LP9300 | SR-E10000 | EBR-S7MS | ER8000 | SCD-770 | ||
キヤノン | シャープ | カシオ | SII | ソニー | SII(海外向け) | Franklin | ||
(1) | 「?」 | ○ | ○ | ○ | ○ | × | ○ | ○ |
「〜(*)」 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
(2) | ○ | × | × | ○ | N/A | ○ | ○ | |
(3) | ○ | × | × | ○ | ○ | ○ | N/A | |
(4) | 「?」 | ○ | × | × | ○ | N/A | ○ | ○ |
「〜(*)」 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
(5) | 和英 | ○ | ○ | × | ○ | ○ | N/A | N/A |
国語系 | ○ | ○ | × | ○ | ○ | N/A | N/A | |
(6) | 英和 (英英) |
○ | ○ | × | ○ | ○ | ○ | ○ |
広辞苑慣用句 | ○ | ○ | N/A | ○ | ○ | N/A | N/A | |
(7) | × | × | × | × | × | ○ | ○ | |
(8) | × | × | × | × | × | ○ *クロスワードモードで対応 |
○ |
スペルがあやふやな場合でも辞書がひけます。スペルチェックモードに切り替えて単語を入力すれば,スペリングが誤っていても正しいと思われるスペルを推測し,候補を表示してくれます。実際のスペリングとかけ離れた,ローマ字綴りでもひけます。※「賢さ」は機種によって千差万別です。
(例)
スペルチェックモードでsaikolojiとタイプする:sociology, sacrilege, psychology...のように,似たスペリングの単語を列挙してくれます。この中からpsychologyを選択すると,英和辞典の画面に変わり,訳語等が表示されます。
英語を聴いていて,全くきいたこともない単語に出くわした際:スペルチェックモードで,きこえた単語をローマ字読みしてタイプします。
ある単語と似たような発音の単語を知りたいとき:たいていの機種は,正しいスペルを入力した場合でも,似たようなスペルの単語候補を列挙してくれます。
日本語→英語のボキャビルの際:単語リストなど,日本語訳を見ながら,英単語を推測し,スペルチェックモードにして入力します。正しければ即座に意味が表示されるので,再確認できます。誤っていた場合でも,候補の中から正しいものを選択すると意味が表示されます。
成句(いわゆるイディオム)を簡単に検索する機能です。たとえば,kick the bucketというイディオムを調べたい場合,冊子体の辞書では,kickをひくべきか,bucketをひくべきか,迷ってしまうことが多かったですが,電子辞書の成句検索機能を使えば,kick & bucketと入れるだけで,簡単に検索できます。
最近引いた単語を自動的に記憶する機能です。引きなおしをする際,一覧画面から選択するだけでいいので,単語を再タイプする手間が省けます。
★こんなときに使える!
授業の予習など,英文を急いで下調べする必要がある場合:あわてて英文を読む場合,未知語は何回辞書をひいても頭に入りませんので,パス機能を使い,少しでも手間と時間を省くといいでしょう。
(余興)友人に電子辞書を貸して,返してもらった直後にパスの一覧を見てみる:パス機能は,本人が望む望まないに関わらず,また,本人が知らないうちに自動的にひいた単語を記憶するので,友人が辞書で何を調べたかが分かります。分かってどうなると言われればそれまでですが。
辞書間をワンタッチで移動する機能です。和英で調べた訳語を英和で引きなおすということが,実に簡単に行えます。
(例)
(和英→英和):和英辞典で「うし」を検索します。訳語で出てきたcalfの発音を知りたい場合,ジャンプキーを押し,矢印キーでcalfにカーソルを合わせ,「訳」キーを押すだけで,自動的に英和のcalfの画面に切り替わります。「英和」キーを押して,単語を入力しなおす必要はありません。ジャンプ先の画面で,さらに別の単語にジャンプすることもできますし,「戻る」キー(機種によっては「復帰」)を押せば,もとの和英の画面に戻ることも簡単です。
(類語→英和):類語辞典でstayを検索します。類語として出てきたremain, wait, lingerの単語の微妙な意味の違いを知りたい場合,ジャンプキーを押し,矢印キーでremainにカーソルを合わせ,「訳」キーを押すだけで,自動的に英和のremainの画面に切り替わります。「英和」キーを押して,単語を入力しなおす必要はありません。「戻る」キー(機種によっては「復帰」)を押せば,もとの類語辞典の画面に戻るので,waitにカーソルをあわせなおして「訳」キーを押せば,今度はwaitの英和画面に移ります。これを繰り返せば,類語辞典に並んでいる単語のニュアンスの違いを,楽に調べることができます。
(英和→英和):英和辞典でbringを検索します。類義語の説明で出てきたfetchの意味を知りたい場合,ジャンプキーを押し,矢印キーでfetchにカーソルを合わせ,「訳」キーを押すだけで,自動的に英和のfetchの画面に切り替わります。単語を入力しなおす必要はありません。「戻る」キー(機種によっては「復帰」)を押せば,もとのbringの画面に戻ります。
ジャンプ機能は,電子辞書の機能の中でも十分に熟知し,使いこなしたいものの一つです。英作文をする際など,和英辞典でひいた単語を英和で引きなおすことが必要であると知っていても,冊子体の辞書ではつい面倒になってしまいがちでした。電子辞書ならキー操作で簡単に行えるので,英語力向上にも大きく役立ちます。また,ジャンプ先から,もとの単語に戻らないで,さらに別の単語にジャンプできるので,辞書の中身を探検するような使い方もできます。そのため,通学時などの暇つぶしにも使えます。こういう時に目にした単語は,意外と忘れないものです。
検索語を入れると,英和辞典や英英辞典の全例文の中から,その語が使われている例文を検索し,リストアップしてくれる機能です。たとえば,had betterが使われている例文を見たいとき,冊子体の辞書や通常の電子辞書の検索では,had betterの定義についている例文しか見られませんが,例文検索機能を使えば,他の見出し語の例文であっても,had betterが使われているものを探し出すことができます。受験生はもちろん,英語教師にとっては教材作成の際にで例文を探す際に重宝しますし,研究者にとってはちょっとしたコーパスがわりになります。
余談ですが,SR-8100で何気なくwomenをキーワードに入れて例文検索してみたら,「男は度胸,女は愛嬌」「女3人寄ればかしましい」「女は移り気なもの」…といった男女差別も甚だしい例文が山のようにでてきて腹立たしく思いました。面白いのは,このような例文はほぼすべてが新英和中辞典から検索されたもので,英英(LDCE)からのものはなかったことです。英和辞典の編集者も,このようにグローバルな形で例文が検索できるようになると,冊子体辞書では見えない問題点(差別や偏向など)が浮き彫りになるので,うかうかしてはいられません。
部品検索は,漢字そのものが読めなくても,その漢字を構成する要素(部品)をもとに検索できる機能です。たとえば,「鰤」という漢字が読めないときは,部品検索で「さかな」「し」と入力するだけで引けます。従来の部首検索だと,部首はもちろん,総画数も分からないと引けない場合が多かったですが,部品検索では部首や画数が分からなくてもひけるので,外国人で日本語を学んでいる人はもちろん,日本人でも重宝する機能です。
漢字ジャンプ機能は,ある漢字が使われている見出し語すべて(語頭以外でも)を検索する機能です。この機能を上述の部品検索と組み合わせることで,全く読み方の分からない熟語でも意味を調べることができます。
★こんな時に使える!
読み方の分からない語の意味を調べるとき:たとえば,本を読んでいて「稚鰤」という語の意味,読みが分からなかったとします。従来の辞書(冊子体の辞書はもちろん,漢字ジャンプ機能のない電子辞書でも!)では,読み方の分からない語句を調べることはできませんでした。「稚鰤」は「ちぶり」と読むのだろうと推測しても,読み方が違っているので引けません。しかし,漢字ジャンプ機能を使えば,「ぶり」と入力するだけで(「鰤」の読み方が分からなければ,上述の部品検索を先にします)「鰤」という字が使われている語句すべてが一覧できます。その中には,当然「稚鰤」も入っていますので,「わらさ」と読むんだということが分かります。
逆引き検索を効率的に行いたいとき:「○○症」という病気を調べるとき,逆引き広辞苑で「しょう」を検索すると,は「相性」「青大将」…のような病気に関係ない語もたくさん出てしまいますが,「症」で漢字ジャンプ機能を使うと,絞り込むことができます(ただし,「慢性疲労症候群」のように,語末以外に「症」が含まれる語も出てしまいますが)。
国語,日本語教師の教材作成用として:冊子体の辞書はもちろん,従来の電子辞書でも,ある漢字が語頭以外で使われている語を調べることは不可能でした。漢字ジャンプ機能を使えばそれが簡単にできますので,小中学校の国語の先生や外国人に日本語を教える先生が,漢字練習の教材を作る際にとても重宝します。
部品検索機能は,シャープの電子辞書が先手をとって搭載しましたが,最近ではほとんどの機種に搭載されています。しかし,漢字ジャンプ機能はセイコーの製品にしかついていません。
あまり知られていませんが,ほとんどの電子辞書(IC辞書)には電卓機能もついています。飲み会の会費計算,交通費の計算,海外での通貨の換算など,日常生活で電卓の必要な場面は多くありますが,電子辞書さえ持っていれば,別に電卓を持ち歩く必要はありません。
http://www.sony.co.jp/sd/products/Models/Library/DD-IC50.html
携帯電話やClie等でおなじみのジョグダイヤルを電子辞書では初めて採用しています。机上で使うというより,手に持って使うことを想定しているようで,カタログでは,左手にDD-IC50を持ち,右手にペンを持っている写真が掲載され,「片手で使える電子辞書」をアピールしたいようなことがうかがえます。ただ,ジョグダイヤルは,スクロール等には使えますが,単語の入力には対応していないため,結局は(ペンを置いて)右手を使ってキーを押さなければなりません。これでは,何のために手のひらに収まるデザインにし,しかも片手で使うためのジョグダイヤルまでつけているのか疑問です。たしかに,満員電車で立ったまま電子辞書を引くときなどは,DD-IC50は他機種よりも明らかに使いやすいですが,普通の電子辞書ユーザは電車の中で,それも立って辞書を引くということが年に何回あるのでしょうか。また,DD-IC50は,ジョグダイヤルが側面についているため,手に持たないで(机上などに置いて)使うことはまず不可能です。紙の辞書が大きくて持ち歩きにくいのは,紙という性質上仕方ありませんし,それを解消するために電子辞書があるのですが,逆に,電子辞書が机の上に置いて使えないというのは本末転倒です。奇をてらった機能を付けることにばかり目がいき,辞書本来の目的を忘れてしまった典型的な例ですが,きわめつけは,机の上では使えない(から持ち歩いて使うしかない)DD-IC50に,画面やキーボードを保護するカバーなり,ケースなりがついていないことです。「目が点」というのはまさにこのことで,一体どういう用途を想定してDD-IC50を開発したのか,理解に苦しみます。画面も他のDD-ICシリーズより狭いですし,キーボードも変則的な配列で,しかも高校生用の辞書しか入っていないとなると,どこか良い点を探そうにも探しようがありません。
満員電車の中で,吊革につかまりながら片手で携帯電話からメールを打つことはよくあるでしょうから,ジョグダイヤルを搭載したソニーの携帯電話は非常に便利なのでしょうが,だからといって,電子辞書という,全く異なる種類の製品に同じジョグダイヤルをつけても全く意味をなしません。ソニーさん,若者受けをねらったのかもしれませんが,いくら「いまどきの若者」といっても,ジョグダイヤルという目先の奇抜さだけで数万円もの買い物はしませんよ。
http://www.sony.co.jp/sd/products/Models/Library/DD-IC300.html
プログレッシブ英和・和英とことわざ辞典,四字熟語辞典を搭載しています。DD-IC200の後継機のような感じですが,画面解像度はDD-IC200の3分の2ぐらいしかありませんし,国語辞典も入っていません。後でもふれますが,本当にソニーの製品なのかと思うぐらいお粗末なものです。DD-IC200, 2050のような名機の後に出た製品だからこそ,よけいにそう感じるのかもしれません。
DD-IC50と同様にジョグダイヤルは相変わらずついていますが,ジョグダイヤルを使わなくてもキーボードだけで操作できるようになったのは大きな改善点です(というより,やっとまともに使えるようになった,といったほうがいいのでしょうが)。キーボードはJIS配列になり,画面やキーボードを保護するための蓋(着脱式)もついたので,上記のDD-IC50で言いたい放題言った問題点は(私が言ったからというわけではないでしょうが)それなりに改善されているようです。
それでも細かな点で言いたいことは多々あります。たとえば画面保護用の蓋というのが,いかにも「とってひっつけたようなもの」と言えるような,ソニーの製品とは思えないほどひどいものです。フタ自体がプラスチックそのもので,ちょっと力をかけたら割れてしまいそうです。フタを閉じてもキーボードとの間にかなり隙間があり,「閉じた」という感触がありません。しかも,使うときは開けた蓋が陰になってしまい,画面が見にくいのです。着脱式でなくてもいいから,なぜ自社製品のClieのように,フタを本体の後ろ側に回すことができるようなものにしなかったのでしょうか?
★それにしても,DD-IC50, 300を開発したソニーの担当者は,
電子辞書を(自社,他社製品を問わず)日常的に使っているのでしょうか?★
私の疑問はこれにつきます。開発サイドの社員が,ふだんから肌身離さず電子辞書を携帯し,研究していれば,こんな製品はとても作れないはずです。ジョグダイヤルにしてもそうですが,携帯電話やMDウォークマンならともかく,電子辞書についていないからといって,致命的に不便であるとは思えません。確かに,あれば便利でしょうが,「ないと困るもの」をおざなりにして,「あれば便利なもの」にこだわるという神経が理解できません。ただでさえ,ソニーの電子辞書は語義と例文を分離して表示できないのですから,高解像度の液晶画面は「ないと困るもの」の筆頭でしょう。DD-IC200, 2050の180文字の液晶がぎりぎりラインでしょうから,これ以上解像度を小さくしてまでなぜジョグダイヤルにこだわるんでしょうか? 国語辞典も,最近ではほとんどの機種に搭載されているので,「ないと困るもの」の一つに入れてもいいでしょう。DD-IC200がDD-IC300になった,つまり型番が上がっているのに,200で備わっている機能(国語辞典にせよ,画面解像度にせよ,バックライトにせよ…)が踏襲されていないというのもおかしな現象です。
DD-IC50は,高校生向けの辞書を搭載していたこともあり「使い勝手よりも見てくれを優先させて,若者層の購買意欲に訴えたかったんだろう」と好意的に解釈できましたが,DD-IC300で搭載されているプログレッシブの英和・和英は,中学生,高校生向けの辞書ではなく,英語を専門とする大学生や一般社会人,英語教師のようなプロの人もたくさん使っているものです。このような上級学習英和を搭載した,いわばプロ向けの電子辞書が,なぜ基本的な操作性,携帯性を犠牲にしてまでジョグダイヤルという目先の斬新さにこだわるのでしょうか? ユーザをバカにしていると言われても仕方ないでしょう。
DD-IC100が2年前にソニーから出たとき,その驚異的なサイズと必要最低限の画面解像度を両立していることに驚きました。ウォークマンやハンディカムで培った,小型で高性能な製品を得意とするソニーらしい電子辞書であり,これぞソニー製品,と感心したのですが,IC50やIC300のスペックは,他社製品との小手先の差別化に血眼になったがための結果としか思えません。ソニーというブランドにあぐらをかくのではなく,もっとユーザに目を向け,ユーザの期待を裏切らない製品を期待したいです。
プログレッシブ英和・和英の入った電子辞書がほしい人は,旧機種のDD-IC200がほぼ同価格で発売されていますので,そちらをおすすめします。繰り返しますが,DD-IC200は,旧機種とはいえ,ジョグダイヤルがないこと以外はIC-300を上回るスペックを持っています。
http://www.sony.co.jp/sd/products/Models/Library/DD-IC2050.html
【詳細なレビュー(従来機)はここをクリック】とにかく小さい電子辞書です。上の写真では大きくみえますが,実際には手のひらですっぽり隠れてしまうぐらいのサイズです。大きさは小さいのですが,広辞苑第5版,百科事典マイペディア,研究社新英和・和英中辞典(和英をのぞき,いずれも語末引き可)のフルテキストを収録しています。広辞苑収録の電子辞書としては業界最小ですし,(小規模なものですが)百科事典を収録した唯一のIC辞書です。そのかわり,英和・和英は従来機に搭載されていたプログレッシブではなく,やや語数の少ない研究社の中辞典になってしまったのは残念です。
画面は,本体が小さい割に大きく,かなりの情報量を表示できますが,例文や解説なども訳語と一緒に出てきます。そのため,見にくいと感じる人もいるでしょう。また,他機種と異なり,類語辞典は収録されていません。それでも,このサイズのボディーで広辞苑をはじめ,4種類の辞書をフルコンテンツで収録しているということは驚嘆に値します。キーボードが小さい,文字が小さいなど,欲を言えばきりがありませんが,出先で辞書を引きたいので,とにかく小さい電子辞書が欲しいという人には文句なくおすすめします。
DD-IC2050からマイペディアをカットし,ことわざ辞典を追加した廉価版(DD-IC2000)もあります。
http://www.canon-sales.co.jp/wordtank/fullcontents/idf-2000e/index-j.html
★詳細レビューは現在準備中です。しばらくお待ち下さい。
OALD (Oxford Advanced Learner's Dictionary),ジーニアス英和・和英,英語類語辞典(大修館オリジナル),ジーニアス英単語(受験用英単語集)を搭載した英語専用機です。OALDを搭載したモデルとしては業界初です。英英モデルの中では飛び抜けて安いので,SR-8100やXD-S8000のような今までの英英モデルは高すぎて手が届かないという人には文句なくおすすめできます。
値段が安いこともあり,他社の英英モデルと比較すると機能面で若干見劣りします。とくに,せっかくOALD+ジーニアスという,例文の多い辞書をカップリングしているのに,例文検索機能がないというのは,上級ユーザにとってはもの足らないかもしれません。液晶解像度が他社の英英モデルにくらべて低いことも,情報量の多いOALDを検索する際にはネックになります。もっとも,英文字はプロポーショナルフォントにしたり,ジョグシャトルキーをつけるなど,解像度の低さをカバーする配慮がされていることは大変評価できます。
液晶解像度や付加機能以外の基本スペックに関しては,上位機種のIDF-4000ゆずりで,とても廉価モデルとは思えない水準です。成句検索やワイルドカード検索でもインクリメントサーチが働いたり,「スペル」キーを押すだけで自動的にスペルチェックモードに切り替わること,日本語へのジャンプもできる(国語系コンテンツがないのでそれほど使う機会はありませんが,英和の訳語を和英で引き直す際などは便利です)ことなど,同ランクのライバル機種(XD-S900, PW-M710, SR-950など)はもちろん,大画面液晶搭載のハイエンド機と比較しても全く遜色はありません(というより,ハイエンド機でさえ,2000Eの水準に達していない機種も多くあります)。キーボードや筐体デザインも,廉価モデルとは思えないほどしっかりしています。もちろん,フルキーボードモデルには及ばないですが,クリック感のあるプラスチックキーを採用していたり,液晶裏側部分だけは金属を使い,強度を高めている点など,とても20000円台前半で買える機種とは思えないです。
新機軸としては,ジョグシャトル(左手親指だけで上下スクロールや見出し語移動ができる)や受験用英単語集を収録したということが上げられます。ジョグシャトルは,立って電子辞書を引くときは,電子辞書を左手で持ち,スクロールも同じ手でできるので,右手はキー入力用に空けておけ,非常に便利です(左利きの人は使いにくいでしょうが)。もちろん,従来機同様に矢印キーによるスクロールも可能ですので,机上で使う際も不便はありません。
英単語集は,大学受験生をターゲットにしたもので,択一式のテストモードも備えるなど,発想としてはおもしろいと思います。一方で,初めての試みということもあり,細かな点で不満はあります。とくに,択一問題のディストラクター(誤答の選択肢)が単語集全体の中からアットランダムに選ばれるので,消去法で明らかに誤りだと分かる問題が多い(「大目に見る」という単語の選択肢にnewspaperが出てくるとか)というのは何とかしてほしいものです。せめて,出題される単語と同じ品詞のものをディストラクターに出すとか,アットランダムではなく,意味やスペルが紛らわしい単語を出すとかしないと,受験練習用としては役に立たないでしょう。
厳しい指摘で恐縮ですが,私としては,OALDに受験用の2500語の単語集をカップリングすること自体疑問を感じます。OALDは学習英英の中でも若干難しめの内容です。定義語彙が3000語(基本3000語のみで定義している。LDCEは2000語)なので,2500語レベルの単語集を完璧にこなしても,OALDの記述には未知語がかなりあるわけです。もちろん,英英の記述で使われている単語の意味が分かることと,英英の記述全体が理解できることは別問題ですから,2000Eに搭載の受験単語集をこなすのがやっとの人は,OALDはとても使えないといっても過言ではありません。逆にOALDの記述が曲がりなりにも理解できるぐらいの英語力を持った人なら,今さら大学受験の英単語を勉強する必要もないでしょう。OALDを載せるなら,単語集はTOEICやTOEFL向けのハイレベルなものを載せたほうがコンテンツバランスとしてはいいでしょうし,逆に受験用単語集を載せるのであれば,もう少し易しめの英英辞典(OxfordならWord Powerとか)のほうがぴったりくると思います。
このように,IDF-2000Eはそのコストパフォーマンスは申し分ありませんが,コンテンツバランスに若干難があります。そのため,(メーカーさんが想定しているユーザの)高校生よりは,むしろ英語教師や英会話を学んでいる社会人などで,SR-9200やPW-9100のようなハイエンドモデルを持っている人のセカンドマシンにぴったりと言えるかもしれません。大画面液晶のハイエンドモデルは,机上で使うには便利ですが,通勤通学の車内で英会話講座を聴きながら単語を調べたり,英字紙片手に辞書を引くというのは,大きさの点でちょっと難があります。2000Eなら,ワイシャツの胸ポケットにもゆうゆうで入りますから,引きたいときにぱっと引ける電子辞書として最適です。IDF-2000EとSR-9200やSR-8100を併用すれば,英語を学ぶ人にとっては究極の辞書環境が得られるのではないでしょうか。
http://www.canon-sales.co.jp/WORDTANK/idf-3000.html
外国人向けの電子辞書では定評のあるキャノンが,ついにフルコンテンツタイプの機種を発売しました。主に高校生を対象とした,スーパーアンカー英和,ニューアンカー和英に加え,用法の区別など,日本語を使う際に役立つ情報が充実した,学研の新国語辞典と漢字源(漢和辞典)をフル収録しています。他のメーカーの機種は,収録語数の多さを誇るということもあってか,主に大学生以上を対象とした辞書を収録しているのに対し,IDF-3000は(とくに英和,和英は)高校生向けの辞書が入っているという点や,単なる「字引き」でなく,漢字の由来や解字なども解説されている漢和辞典がフル収録されている点など,他機種とは一線を画すほどの強烈な個性があります。収録語数が少ないので,専門家には向きませんが,英語教師にとっては,試験問題を作ったり教材を書く際には思ったより役に立ちます。キーを押すごとに候補が絞り込まれる,いわゆる絞り込み検索や,各辞書100語ずつ記憶できる単語帳機能,縦書き表示が可能な国語辞典,日本語の単語にもジャンプできるスーパージャンピングサーチ機能など,様々な新機軸がみられるのも後発機種の強みでしょう。押しやすいキーボードや大きな液晶画面(画面だけでなく文字も大きいので,表示文字数は画面サイズの割に少ないのが難点です)など,高級感がある割に値段は安く,20000円をきるぐらいで買えます。収録辞書の語数が少ないこと以外はこれといった問題点もなく,他機種に影響を与えるような機能も多いのでもっと華々しく宣伝をしてもいいと思うのですが,店員はどうしても収録語数が多い機種をすすめてしまうようです。私個人としては,高校生や,大学生で英語を必要としない学科の人には,他のメーカーのどの機種よりもIDF-3000のほうが使いやすいことは保証します。
http://www.canon-sales.co.jp/WORDTANK/idf-4000.html
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キャノンのフルコンテンツタイプ電子辞書の第2弾です。収録辞書は,広辞苑(逆引き可。モノクロ2階調での図版表示も可),ジーニアス英和・和英,漢字源,(英語)類語辞典の5種類です。ちょうどカシオのXD-S5000からカタカナ語辞典を削ったような感じで,最近の電子辞書ではごく普通の内容ですが,IDF-3000と同様に,機能や操作性にキャノンらしい個性が見られます。たとえば,ワイルドカード検索はほとんどの機種に備わっていますが,広辞苑で語頭に1文字の不明文字がきた場合にも対応しているのは,数ある電子辞書の中でも,IDF-4000とSR-9100ぐらいしかありません。これが備わっていることで,IDF-4000(SR-9100もですが)は,単に言葉の意味を知るためだけでなく,クロスワードパズルの解答マシーンとしても使えるのです。最近は懸賞付きのパズル雑誌が増えていますので,この隠れた機能をもっとPRすればいいのに,と思います。「広辞苑が入っている電子辞書」は最近では珍しくも何ともありませんが,「クロスワードが解ける電子辞書」は希少価値です。
そのほかにも,とくに,本文中に出てくる(日本語を含め)どんな語にでも自由にジャンプできる機能(スーパージャンピングサーチ)は,日本語を学んでいる外国人には必須と言ってもよい機能ですが,これが備わっているのは数ある電子辞書の中でもキャノンのIDF-3000, 4000しかありません。キャノンの電子辞書は外国人受けするとよく言われますが,IDF-4000も日本で学ぶ留学生にとっては期待を裏切らないものになるでしょう。厚さは他機種に比べてかなり薄くなり,シルバーとブルーのメタリック仕上げの外観とあわせ,機能だけでなく,デザインも現行のフルコンテンツ電子辞書の中ではトップクラスです。
★各種電子辞書をレビューし,ある意味で「あら探し」とも言えるコメントをしょっちゅうしている私にとっても,IDF-4000に関しては,画面解像度が他機種に比べて低い(それでもIDF-3000とは格段の違いがありますが)ことや,広辞苑,漢字源は縦書き表示しかできないこと,PW-8000/8100のような早見表示ができないことぐらいしか問題点が見あたりません。日本語の辞書を主に使う人は,ことわざ辞典やカタカナ語辞典まで収録されている,シャープのPW-8000/8100のほうがいいかもしれませんが,英和,和英がメインで,日本語の辞書は広辞苑さえあればいい,という人は,値段も他機種より安いですし,文句なしでおすすめします。他社の電子辞書を使っている人で,どうも使い勝手が悪い,と感じている人(そして,他社の電子辞書を開発しているスタッフの方も!)は,ぜひ店頭でIDF-4000をさわってみてください。そして,電子辞書は単に収録辞書やデザイン(サイズ)だけでなく,一見地味に見える基本機能を充実させることで,まだまだ改良の余地があるということを知っていただければ,と思います>メーカーさん
http://www.sharp.co.jp/products/pw9100/index.html
★詳細レビューはこちらをごらんください。
ジーニアス英和・和英辞典,広辞苑(第5版),漢字辞典に加え,カタカナ語辞典,故事ことわざ辞典,家庭の医学など,合計9種類の辞書を収録しています。漢字辞書は,単なる「字引」ではなく,音訓や画数,部首といった漢和辞典でよくみられる引き方はもちろん,読めない漢字でも,漢字を構成する要素の読み方が分かればひける部品検索などを備えているので,日本人だけでなく,日本語を学んでいる外国人にも重宝します。また,キーを押す都度候補が絞り込まれるので,フルスペルを入力しなくても検索でき,使い勝手が大幅に向上しました。
そのほか,辞書キーを押せばワンタッチで電源が入り,その辞書の検索画面が表示される,派生語にも対応した語末引き機能が搭載されている,行スクロールキーと画面スクロールキーが隣接していたり,検索キーと戻るキーが隣り合っていたりという,使いやすいレイアウトになっているなど,従来機(PW-8000/8100)での,カタログ等に現れない,地味な点での使い勝手の良さは,他社製品にも大きな影響を及ぼしました。PW-9000/9100もこれらの特徴をそのまま引き継いでいますので,英英辞典はいらないが,英語,国語問わず気楽に使える電子辞書がほしいという人には自信を持っておすすめできる機種です。ただ,セイコーインスツルメンツがフルキーボードの機種を出したこともあり,いまだにラバータイプのキーボードを採用しているPW-9000/9100はパワーユーザにとっては見劣りするかもしれません。
http://www.sharp.co.jp/products/pw6800/index.html
シャープ初の英英搭載モデルです。国語系のコンテンツは入っていませんが,英和は収録語数が国内の辞書の中で最も最多のグランドコンサイス英和辞典(GC)を搭載しています。GCの収録語数自体はリーダーズ英和辞典よりも多いのですが,そのぶん1語あたりの記述量が少ないとか,収録語の選択にムラがあるなど,デメリットもあります。英和辞典の語数だけで考えると,SR-9200やDD-IC5000のようなリーダーズ収録モデルと競合するようにも思えますが,国語系コンテンツが一切入っていないので,翻訳者等はSR-9200やDD-IC5000のほうがいいかもしれません。一方で,英文ビジネスレターの用例辞典がありますので,英語を実務で使っている人にはぴったりです。
操作性や機能は,PW-9100をそっくりそのまま受け継いでいますので,業界でもトップクラスです。PW-9100で好評の2画面表示のジャンプ機能や単語帳機能も健在です。それに加え,例文検索もついていますので,英語専用機としては申し分ないと言えます。
PW-6800は,SR-9200と競合するプロ仕様の機種というよりは,SR-9200とXD-R8100, SR-8100等の隙間を埋めるものと言えます。言いかえれば,学習英英は十分使いこなせるが,SR-9200のCODは敷居が高いという人で,語数が多い英和が欲しい人(学習辞書は英英のみで十分で,読解の際には語数の多い辞書が必要な人)にぴったりの機種と言えます。英語専攻の学生や外資系企業など,英語を読むことも,書くことも多い人向けです。
http://www.sharp.co.jp/products/pwm700/index.html
前述のPW-8000/8100からことわざ辞典と四字熟語辞典,手紙文作成機能をカットしたかわりに,広辞苑に収録されている地名や人名,季語等がジャンル別にひける分野別小辞典を収録した機種です。本体サイズ,重さが大幅に小さく(軽く)なりました。画面解像度もPW-8000/8100にくらべれば低いのですが,広辞苑は12ドットで表示ができる(8000/8100は16ドット)ので,ほぼ同等の表示量です(英和,和英は8000/8100にくらべて表示量がかなり少ないです)。
画面解像度が低くなったことと,頻繁に使う「しおり」キーがなくなり,入力画面からの選択になった(ワンタッチで引き直しができないので大変不便です)ことを除けば,申し分ない性能を備えているといえます。漢字辞典で意味が出てこない(広辞苑へジャンプすることはできます)とか,英語の類語辞典がついていないという点ではカシオの電子辞書に及びませんが,小さくて操作性のいい電子辞書がほしい人には文句なくおすすめできます。
※カシオのXD-S950(以下カシオ)との比較:
・本体寸法:ほぼ同サイズ。重さはカシオが140グラム,シャープが118グラムでシャープのほうがはるかに軽い。
・収録辞書(国語系):カシオは漢和辞典(漢字源)を収録。シャープは漢字辞典(意味等が掲載されていない)のみ。ただ,部品検索(部分的な読みから漢字をひく)がカシオには搭載されていない。カタカナ語辞典は両方とも収録されているが,シャープのほうが収録語数は倍以上ある(これは意外と知られていない!)
・収録辞書(英語系):カシオには類語辞典を収録。シャープは広辞苑だけでなく,英和,和英(カタカナ語辞書等も!)でも逆引きができる(これも意外と知られていない!)
・その他の機能:シャープは通常の電卓に加え,換算機能なども搭載。カシオには電卓がない。
http://www.sii.co.jp/cp/sr8100.html
★詳細レビュー(SR-8000)はこちらをごらんください。
収録辞書
研究社新英和・和英中辞典,ロングマン現代英英辞典(LDCE3),ロングマン・ロジェ類語辞典
位置づけ
1999年12月に発売された名機? SR-8000の後継機です。匡体が他の新機種と同じものになり,フルキーボードやモードキーONなどが新たに備わりましたが,カタログスペックを見る限り,内部的にはSR-8000の仕様をかなりのところまで引き継いでいるようです。電池寿命が,他のフルキーボードモデルが110時間であるのになぜか100時間しかないということからしても分かります。そのため,今回発表された他機種とは仕様の面でかなりの差があります。たとえば…
・プレビューはある(SR-8000ですでに実装されていたからあたりまえですが)のにリアルタイム検索がない(=インクリメントサーチはできない)
・スペルチェックが(従来機種のような)独立したモードになっている(=スペルチェックモードにしておかないとスペルチェックがきかない)
・機能の名前がSR-8000を引きずっている→「パス」機能は,今回のラインナップから「履歴」に名称変更されたが,8100は「パス」のまま。SR-8000で搭載された「グローバルサーチ」はSR-9500の「例文検索」と同じものだが,8100では8000と同じく「グローバルサーチ」と言っている。仕様上仕方ない点はともかく,機能の呼び名を統一することはそれほど困難であるとも思えないのですが…。
・表示文字サイズをワンタッチで切り替えできない→SR-8000のように,設定画面で辞書ごとに切り替える
一方で,SR-8000で搭載されながらも今回の新機種で採用されなかった各種機能(2画面表示,参照機能,例文コレクション,ブックマークetc.)は,8100ではそのまま残っています。
ライバル機種
直接のライバルは,ジーニアスの英和とアメリカ英語版LDCEと言ってもいいLongman Advanced American Dictionary (LAAD)に加え,広辞苑,漢字源という国語系のコンテンツも搭載したXD-S8000でしょう。使い勝手や各種機能ではSR-8100のほうが明らかに勝っていますが,英和・和英がジーニアスであること(一般に,ジーニアスのほうが研究社中辞典よりはるかに評価が高い)や英英辞典が(現在の英語の主流である)アメリカ英語版であること,そして,何といっても広辞苑まで入っていることなど,電子辞書の性能とは関係ないコンテンツの面では,XD-S8000に軍配が上がります。
もしかして,SR-8100の隠れたライバルは,同じ新機種ラインナップの中のSR-9200なのかもしれません。従来機(SR-8000)は,英和・和英のコンテンツというよりは,英英や本格的なシソーラスが入っているという点で,英語のプロたちの絶大な支持を受けていましたが,CODというネイティブ向け本格英英辞典に加え,英和もリーダーズで武装した9200を前にすれば,8100ではちょっと力不足かも…。
Sekkyの視点(^^) 個人的にSR-8000を2年間愛用し,その性能を高く評価していることもあり,今回のモデルチェンジでは8000独自の新機軸はどうなるんだろうと思っていましたが,SR-9200に吸収してしまうのではなく,機能はそのままとはいえ,フルキーボードで身を固めたSR-8100という形で延命できたのはよかったと思います。もっとも,せっかく8000で採用した種々の新機軸は,今でも決して色あせるものではないので,8100以外の新機種にも盛り込んでほしかったです。たとえば,二画面検索は,広辞苑とリーダーズを一緒に開いて仕事をするような翻訳者には欠かせないでしょう。むしろ8100ではカットしてもよかったから9200に実装してほしかったというのが本音です。SR-8000は,発売後2年近くにわたって,主に英語のプロを対象とした,セイコーの電子辞書のフラッグシップモデルとして君臨してきましたが,今回のモデルチェンジでその座をSR-9200に譲ったといっても良いでしょう。その割に,上述のように8100についていて9200にない機能というのがあまりに多いのは不可解です。8100の類語辞典は普通の学習者にはとても使いこなせませんから,9200に載せるなどして,ついでに二画面表示等のパワーユーザ向け機能も9200に実装し,8100ではカットするのはいかがでしょうか。そのかわりに国語辞典(広辞苑がサイズ的に無理なら新明解あたりでもかまいませんが)を載せて,値段をもう少し下げれば,大学生で英語を専攻する人がとびつきやすいものになると思います。 |
http://www.sii.co.jp/cp/sr950.html
★詳細レビューはこちらをごらんください。
収録辞書
広辞苑,新英和・和英中辞典,漢字源,パーソナルカタカナ語辞典
位置づけ
長い間ベストセラーであったSR-900の後継機になるのでしょう。900よりもかなり小さく,省電力化されているのに,画面解像度は大きくなりました。フルキーボードの快適さよりも可搬性を優先する人,すなわち,しょっちゅう電子辞書を引くわけではないが,持ち歩く機会が多い学生や出張の多いビジネスマンなどが飛びつきそうです。
見かけは小さいですが,フルキーボードタイプの新機種が搭載している機能(モードキーで電源がONになるリアルタイム入力,早打ち対応など)はほとんどが搭載されています。キーボードは従来機と同じようなタイプですが,早打ちに対応しているので,文字が飛んだりすることもなく,快適です。画面解像度の制約上,プレビューができなかったり,本体サイズの関係上,「戻る」キーが「訳」キーと離れていたりというのは仕方ないでしょう。今回の新機種の中で日本語ジャンプが唯一できるというのもウリです。
ライバル機種
フルコンテンツ辞書の小型化が進む中,他社も同サイズの製品を続々と出しています。直接のライバルはPW-X710(シャープ)やXD-S950(カシオ)でしょう。コンテンツに関しては,英和・和英にジーニアスを搭載したシャープ,カシオのほうがどうしても有利になってしまうでしょうが,一方で,重さや消費電力,画面解像度,操作性などではSR-950に軍配が上がります。
http://www.sii.co.jp/cp/sr9200.html
★詳細レビューはこちらをごらんください。
収録辞書
広辞苑,リーダーズ英和,新和英中辞典,漢字源,The Concise Oxford Dictionary, The Concise Oxford Thesaurus
Sekkyの視点(^^) 先行機種がないので,フロンティア的に一から企画しないといけなかったことは推察できますが,そのぶん,コンテンツの内容,組み合わせなどに関して引っかかることがあります。たとえば漢字源…。9200のユーザのほとんどは英語ベースの人であると思われますが,その場合にフルコンテンツの漢和辞典は必ずしも必要なのでしょうか? もちろん,部品検索をはじめ,従来機のような「漢字検索」機能は必要でしょう。しかし,漢字検索さえ備えていれば,あとは検索結果画面で(従来機のように)部首と画数,JIS, SJIS,句点の各コードぐらいを表示し,意味等は広辞苑にジャンプさせれば十分であると思えます。むしろ,空いたスペースに別のコンテンツ(候補として,研究社の英和活用大辞典,Oxfordの学習英英であるOALD,SR-8100に搭載のロジェ類語辞典,小学館や角川の日本語シソーラス,OxfordのPractical English Usageなどが考えられます)を1つか2つ入れてほしかった,というのが本音です。英英辞典としてCODを採用しているのは,ER-6000の影響というのも大きいと思いますが,日本の「英語のプロ」(英文学等の研究者は別ですが)はむしろアメリカのカレッジ版英英をよく使うようにも思えます。Roget IIのライセンス実績があるわけですから,同じHoughton Mifflin系のAmerican Heritageのカレッジ版などを載せることも,可能性として提案したいと思います。 |
位置づけ
型番からしても,現行のSR-9100の後継機という位置づけでしょうが,後継機というより,ほとんど一から作った新機種のようなスペックを持っています。あるいは,従来の最上位機種であったSR-8000のさらに上位に位置づけられるモデルと言えるのかもしれません。学習英和,英英を思い切ってカットし,そのかわりにリーダーズ英和とCODという,プロ仕様の英和,ネイティブ向けの英英を搭載した,今までにないコンセプトの機種です。値段もフルキーボード搭載の他機種よりさらに高く,ニュースリリースにも「フラッグシップモデル」とうたっているだけあり,SR-9500などとは異なり,かなり限られた層のユーザをターゲットにしていることがうかがえます。
ライバル機種
現段階ではSR-9200と直接競合する機種はないでしょう。そして,ターゲットユーザが限られることもあり,今後も半年や1年ぐらいでは他社が競合機種を作るとも思いにくいです。強いてあげれば,電子ブックプレーヤーのDD-S35(広辞苑とリーダーズのモデル)ぐらいでしょうか? それでも,英英辞典を搭載しているなど,9200のほうが明らかに有利です。今までリーダーズを目当てに電子ブックプレーヤーを使っていた(使わざるをえなかった?)プロユースの人たちの乗り換えも期待できるかも。
Sekkyの視点(^^) スペック(や値段(^^))からして最上位機種であるはずなのに,前にも述べたように,細かな機能で他機種に備わっているのに9200には実装されていないものがかなりあることが気になります。SR-9500や8100で備わっている例文検索(グローバルサーチ)は,もともと例文の少ないリーダーズやCODで使えてもあまり意味がないので,9200でカットされているのは自然なことでしょう。しかし,なぜ,あれば便利な二画面検索やブックマーク,日本語ジャンプなどまでカットしてしまうのでしょうか? 前にも述べたように,二画面検索は複数辞書を並行してひくユーザ(ふつうは翻訳者など,プロの人が多い)だからこそ,そのありがたみが分かります。辞書の中身を縦横無尽に飛んだりはねたりできる日本語ジャンプも,英語にせよ,日本語にせよ,ことばのプロだからこそ,利用頻度は多いはずです。エントリーモデルにこのような機能を付ける必要がないという意味ではありません。下位モデルにつけた機能は,特別な意図がない限り上位モデルにも備えるのが普通なのでは? ということです。これは,電子辞書に限らず,車でもパソコンでも何でもそうだと思います。 |
http://www.sii.co.jp/cp/sr9600.html
※SR-9600は旧機種(SR-9500)に搭載のジーニアス英和を新版(第3版)に入れ替えたものです。それ以外の機能はSR-9500に準じています。
★詳細なレビューはこちらをごらんください。
広辞苑,ジーニアス英和・和英,漢字源,パーソナルカタカナ語辞典,Roget II The New Thesaurus
位置づけ
この機種のように,英語系辞書と国語系辞書をバランスよく搭載し,大画面液晶を実装したモデルは,最も万人受けするせいか,各メーカーがしのぎを削る激戦区となっています。しかし,不思議なことに,セイコーの製品はSR-9500以前にはこのランクのモデルはありませんでした。言いかえれば,シャープやカシオが収録辞書数を誇ってニューモデルを次々と出していた頃,セイコーは沈黙していたわけです。その沈黙を破って今回世に出したSR-9500は,スペック的にも他社製品を寄せ付けないものをもっています。不謹慎なたとえで大変恐縮ですが,9500の発表は,他社にとっては不意打ちの同時テロと共通するインパクトがあるのではないでしょうか。これは,使い勝手に関心を払わず,単に収録辞書の冊数を誇ったり,珍奇な仕掛けでアピールしたりということだけで電子辞書は売れる(とメーカーさんが思っていた)時代への警鐘とも言えるのかもしれません。
ライバル機種
激戦区だけに,「敵」もそれなりに多いようです。最大のライバルは,コンテンツがほとんどバッティングするPW-9100(シャープ)とIDF-4000(キャノン)でしょう。コンテンツだけでなく,使い勝手でも甲乙つけがたい(というより,これら2機種の操作性を手本にできたからこそ,セイコーの新機種もこれだけ使いやすくなったのでしょう)ので,苦戦を強いられそうです。IDF-4000のウリである広辞苑の図版がないとか,PW-9100のウリである早見機能や2画面表示対応のジャンプ機能がないということを,フルキーボードや例文検索等のSR-9500独自の特徴でカバーできるかどうかがカギになりそうです。
SR-8100がそうだったように,9500にも隠れたライバルがいます。自社製品のSR-950です。フルキーボードはないものの,飛び抜けた携帯性(大きさはもちろん,重さもわずか117グラム!)とそこそこの画面解像度を備え,しかも定価が6000円も安いとなると,この製品のターゲットである学生や一般ビジネスマン(四六時中辞書を引くわけではないのでキーボードの使い勝手には多少目をつぶれるが,持ち歩く機会が多いので小さい機種がいい,という人)の中には950を選ぶ人も多いでしょう。
Sekkyの視点(^^) SR-950が最大のライバルだとはいえ,結局は今回の新機種の中でも9500が(おそらくは950もそれに匹敵するぐらい?)最も売れるモデルなのではないかと思われます。でも,意地悪な見方で恐縮ですが,かりにSR-9500に(SR-950のように)研究社の新英和・和英を搭載し,逆に950にジーニアス英和・和英を載せていたら……きっと,多くの人は950へ流れてしまい,9500は人気がなくなってしまうのではないでしょうか? 定価ベースで6000円という差額を払い,しかも多少かさばることを我慢してでも,「950をやめて9500にしよう」という人はきっと多いと思います。それは,スペック云々というよりはコンテンツの辞書の質が(ジーニアスと研中では)決定的に違うからなのですが,このへんのところの戦略? がうまいなぁ,と素人ながら感じました。 |
Sekkyの視点(^^) SR-9500の例文検索はジーニアス英和・和英の両方から例文を探してくれます。それはいいのですが,ジーニアス和英は,基本的にジーニアス英和をひっくり返して作った和英辞典なので,和英に載っている例文も英和のものがそのまま掲載されていることもかなりあります。その場合は,同じ例文が英和からと和英からの2つ出てきそう(カタログの画面にもそういう例があります)で,思ったほど2冊の辞書から例文をすべて検索するという恩恵はないのかもしれません(もちろん,和英独自の例文も増強してはありますが)。 |
http://www.casio.co.jp/d-stationery/exword/product/xd_r6100/
ジーニアス英和(第3版)・和英,広辞苑(第5版)(逆引きも可),漢字源,カタカナ語辞典,英語類語辞典,ことわざ辞典や四字熟語辞典をはじめとした12種類の辞書を収録しています。電子辞書の欠点として,画面が小さく,多くの情報が一覧できないという点がありますが,XDシリーズはとにかく画面解像度が大きいことが特徴です。今回のモデルチェンジで従来機のスライドキーボードは廃止され,他社製品と同じようなシンプルな筐体になりました。そのかわり,厚さが大幅に薄くなり,しかも筐体外側はアルミ合金を採用しているので,耐久性も向上しているようです。また,キーを押すごとに候補語が絞り込まれて表示されるインクリメンタルサーチや漢字源の部品検索機能など,他社製品にくらべて遅れをとっていた機能も新たに搭載されました。しかし,行スクロールキーとページスクロールキーがとんでもなく離れている,広辞苑では逆引きができるのに,英和,和英等の他の辞書ではできないなど,ライバル機種(PW-9000/9100, IDF-4000など)にくらべて,基本的な使い勝手ではかなり見劣りがします。大画面液晶や薄さといった,「ぱっと見」の向上に躍起になるだけでなく使い勝手や機能に関しての抜本的な改革が望まれます。
http://www.casio.co.jp/d-stationery/exword/product/xd_r8100/
広辞苑,ジーニアスの英和・和英,ロングマンのアメリカ英語版学習英英辞典,英語類語辞典を収録しています。例文検索やジャンプ先の辞書を指定できる機能など,英語に特化したライバル機(セイコーSR-8100やシャープPW-M670など)を意識しているようです。インクリメントサーチや漢字源の部品検索など,他社製品に遅れをとっていた機能はXD-Rシリーズになってやっと搭載されましたが,例文検索は英英辞典の例文のみで,ジーニアスの例文は検索できないとか,せっかくSR-8100なみの高解像度液晶を搭載しているのに,二画面分割のような大画面を生かした機能が備わっていないなど,SR-8100の高機能を期待する人にとってはまだまだ物足りないと思います。もっとも,使い勝手や機能を抜きにして,搭載辞書の内容でみれば,英和,英英に加え,広辞苑や漢字源といった日本語のコンテンツがついていることなど,SR-8100を凌駕する要素はあると思います。XD-R8100に搭載の類語辞典は,独自編集(ジーニアスの和英をひっくり返して作ったような内容ですが,意外と重宝します。SR-8100のネイティブ向けシソーラスが使いにくいと思う人は,XD-R8100を購入したほうがいいかもしれません。
上述のように,「英英に加え,広辞苑や漢字源も入っている」というのが,XD-S8000以来のカシオの英英モデルの最大のウリだったのですが,最近になって,キヤノンがIDF-4000に学習英英(OALD)とカタカナ語辞典,実用英語ハンドブックを追加したIDF-4500を出してきました。全体としての操作性には定評あるキヤノンの機種と,大画面液晶や例文検索,新版ジーニアスといったキヤノン製品に及ばない面を強化したR8100はどちらも一長一短があり,悩むところです。
http://www.casio.co.jp/d-stationery/exword/product/xd_s950/
前述のXD-S6000の収録辞書数を減らし,小型軽量化したものです。画面解像度が低くなったこと以外は,XD-S6000の1つ前の機種であるXD-S5000とほぼ同等のスペックを持っています。位置づけとしてはシャープのPW-M700と同等のようですが,画面解像度や使い勝手ではシャープのほうに軍配が上がります。一方,漢和辞典をフル収録していることや英語の類語辞典がついていることではXD-S950が有利でしょう。前にも書きましたが,電子辞書という(ワープロやパソコンと異なり)単に語をタイプするためだけのキーボードに,スライドキーボードのような仕掛けは必要なのでしょうか? まして,XD-S950のようなポケットサイズの機種でスライドキーボードを採用するメリットがどこにあるのでしょうか? わずか4個のキーのためにスライドキーボードを採用するぐらいなら,キーアサインを見直すことで,通常のキーボードレイアウトで用は足りると思います。
それにしても,カシオの電子辞書は,モデルチェンジがめまぐるしく,半年たつかたたないかのうちに後継機種とリプレースされてしまいます。XD-S5000が発売されてわずか半年で,全く同機能ではるかに小型軽量化され,安価になったXD-S950が発売されるとなれば,S5000を購入したユーザはたまったものではないでしょう。その一方で,基本的な操作性は,2年半近く前に発売されたカシオのフルコンテンツ1号機(XD-1000)と全く変わっていません。とにかく何でもいいから詰め込んで収録辞書の数を誇ったり,スライドキーボード等,別になくても困らないような仕掛けでアピールしたり,色変わりの製品を出したりする前に,電子辞書本来の目的に立ち返る必要があるのではないでしょうか。
※シャープのPW-M700との比較はこちらを参照。
http://www.casio.co.jp/d-stationery/exword/product/xd_r1300/
ジーニアスの英和・和英,独自編集の英語類語辞典に加え,新明解国語辞典,旺文社の古語辞典を収録しています。国語辞典が新明解であることや,IC電子辞書としては初めて古語辞典を搭載したことなど,カシオの電子辞書にしては珍しく(というと失礼ですが(^^;;)他社にない個性を持った機種です。単なる旧機種の焼き直しや,他社のライバル機種を意識して収録辞書数等の数値で競うのではなく,このようなオリジナリティーで勝負してほしいと思います。
XD-R1300はスペック的に,高校生や中高の国語教師をターゲットにしているようですが,新明解国語辞典は,広辞苑よりも語数が少ないかわりに語釈がわかりやすく,共通語のアクセント位置が各語義ごとに記載されているなど,外国人の日本語学習者にとっても重宝します。古語辞典も搭載されているので,日本文学を専攻する留学生や,日本事情等を教える日本語教師,(アクセントパターンが確認できるので)地方出身の日本語教師などにもおすすめします。
※XD-R1300は他機種同様に薄型のアルミ筐体を採用していますが,インクリメンタルサーチや漢字の部品検索などはついていません。言いかえれば,旧機種のXD-S1200のジーニアスを新版にし,筐体を変えただけのモデルであるということです。
http://www.sony.co.jp/sd/products/Models/Library/DD-S25.html
リーダーズ(第2版)・リーダーズプラスの各英和と新和英中辞典(第4版)の本文全てを収録しています。英和の収録語数46万語は国内最大で,OEDに匹敵します。とくに固有名詞や新語に強いので,実用的に英語を使う者にとってはOEDよりも役立ちます。なお,電子ブックプレーヤーは,この機種以外にもいくつか出ていますが,大きさや重さ,付属ソフトの種類などが違うだけで,どの機種でも市販の電子ブックソフトはすべて使うことができます。
最近では,IC電子辞書も大容量化が進み,電子ブックプレーヤーなみのコンテンツを収録することができるようになりました。言いかえれば,複数タイトルの辞書を交換して使えるということぐらいしか電子ブックプレーヤーのメリットはなくなってきたといえるわけです。ソニーもIC電子辞書に参入してきたので,価格や寸法の点で中途半端な存在である電子ブックプレーヤーが今後どうなるのか,気になるところです。
本格的なthesaurusを収録しているのに,小さくて安い(日本では2000円ぐらい)という,まさに電子辞書の掘り出し物とでもいうべき機種です。日本の電子辞書の最大手であるセイコーインスツルメンツの製品ですが,イギリス支社? の扱いなので,日本で手に入れるのは難しいです(秋葉原のLaox本店で扱っています)。ER-2000は,写真からも分かるように,画面もキーボードも小さいので,中身も大したことがない,と錯覚してしまいがちですが,外見に似あわず,冊子体のOxford Concise Thesaurusをフル収録しています(Thesaurusのみで,辞書は入っていません)。Conciseといっても,洋書店で売っているペーパーバックサイズのthesaurusよりははるかに語数が多いので,英語のプロの人の要求にもこたえられると思います。日本で売られているSIIの電子辞書についてくるRogetのthesaurusが使いものにならない,と感じていた人はthesaurus専用のセカンドマシンとして重宝すると思います。冊子体のthesaurusのように,見出し語をタイプして,その語の類語を調べることはもちろん,見出し語にない語でも,その語が別の見出し語の類語部分に入っていれば,探し出してくれます。そのため,実質的な収録語数は冊子体のthesaurusよりもかなり多くなっています。日本では私のようなレファレンスオタク? でも知っている人はそうそういないと思いますが,英語を書く機会が多い人で,冊子体のthesaurusを手放せない方には,自信を持っておすすめします。
前述のER-2000の上位機種で,ER-2000の内容に加え,Concise Oxford Dictionary (COD)の内容をフル収録しています。本体寸法がかなり大きいのが難点ですが,数少ないフルコンテンツ版英英辞書として,私も大変重宝しています。最近になって,ヨドバシカメラ(新宿西口)などでも販売されるようになりました。
従来の電子辞書と異なり,キーボードはなく,ペン型のスキャナ型になっています。原理としては,コンビニや図書館などにあるバーコードリーダーと同じで,文字認識で意味を表示するものです。キーボードがないので本体は小さく,ペンケースと同じぐらいのサイズです。ただ,若干太いので,日本人の手には持ちにくいです。
英字新聞や雑誌などを読んでいて分からない単語があった場合,従来の電子辞書ではキーボードでスペルを入れる必要がありました。しかし,Quicktionaryでは,分からない単語をなぞるだけで意味を表示してくれます(翻訳機ではないので,英文をなぞって意味が出るというわけではありません)。左手に本を持ち,右手にQuicktionaryを持っていれば,非常にスムーズに辞書が引けます。とくに電車の中などで英字紙を読む人は重宝するでしょう。認識精度もかなりのもので,少し練習してなぞるコツさえ飲みこめば,ほぼ100%認識できます(なぞり方を説明したビデオまでついてきます)。どうしても認識できない単語は,Opticardという付属のバーコードシートを使って,一文字ずつ入力することもできますが,キーボードを使うわけではないので,面倒です。
Quicktionaryは,「英文を読んでいる途中に出てきた単語を引く」という目的に特化しています。言いかえれば,頭に浮かんだ単語など,文字になっていない単語を引くのは,前述のOpticardを使う必要があり,かなり面倒です。ですから,日常的に高度な英文をしょっちゅう読む人にとっては,キーボード型の電子辞書より重宝しますが,そうでない人にはあまり利用価値はありません。
Quicktionaryは様々な言語のバージョンがありますが,英英版は,American Heritage College Dictionary (AHD) 3rd ed.,または,New Oxford Dictionary of English Language (NODE)をフル収録(ただし,語源と発音記号はカットされています)したものの2種類があります。NODEのほうが若干語数が多く,刊行年も新しい(1998)のでおすすめです。いずれも,英和辞典で言うと,小学館のプログレッシブと研究社のリーダーズの中間あたりの語数です。ネイティブ用の辞書なので,例文や文型といった学習辞典的要素は割愛されています。英和版のQuicktionaryは日本でも売っていますが,収録語数が30000語弱で,しかも独自編集の内容です。例文や文法記述がなく,単語集に毛の生えた程度なのに2万数千円もするので,非常にお粗末です。英英版は178ドル(送料サービス)で個人輸入できます。
Franklin社は,アメリカの電子辞書業界では老舗で,たぶん最大手のメーカーだと思います。SCD-770はFranklinのモデルの中では唯一フルコンテンツのモデルで,Merriam Webster's Collegiate Dictionary (MWCD 10th edition)の文字情報すべて(発音表記を除く)を収録しています。MWCDは,アメリカの大学生や一般社会人が常用しているカレッジ版辞書の中でもトップシェアを誇るものです。我々NNSには語義がかなり難しいのですが,TOEFLでover 550あたりの人で,日常的に英字新聞や雑誌を読む人にとっては,いわゆる学習英英辞典(OALD, LDCE, COBUILDなど)では語数が少なすぎますので,MWCDをはじめとしたカレッジ版英英辞典はmustといってもいいと思います。
といっても,冊子体のカレッジ版英英辞典は,机の上で使うことが前提になっているので,ハードカバーで分厚く,日常持ち歩くことは不可能です。SCD-770は200グラムぐらいで,背広の内ポケットにゆうゆうで入ります。250000語程度収録していますので,かなり特殊な固有名詞や専門用語もカバーされています。
SCD-770は,Bookmanという,いわゆる電子ブックのように,カートリッジを追加することで別の書籍も検索できる規格になっています。たとえば,別売りのColumbia Concise Encyclopediaのカートリッジを購入してSCD-770にとりつければ,MWCDという「ことば典」と,百科事典という「こと典」を1つの電子辞書で検索できます。これは実に便利です。
ジーニアスや新英和中辞典などをフル収録した日本製の電子辞書は,語数が少ないかわりに例文や文法記述が充実していますので,production用(ライティングなど)に使い,SCD-770はリーディング用に使うと重宝します。
American Heritageの簡略版の英英辞書(それほど語数はありません)とRoget, Word Finderという2種類のThesaurus 2種類に加え,ボキャビル機能がついています。TOEFLやSATなどでおなじみの,ある単語の類義語を4択で選ぶテストができます。
ボキャビル機能では,ユーザの正答率をコンピュータが自動的にモニターし,テストで出題される単語の難易度がダイナミックに変動します。間違いが多いようなら,自動的に出題される単語のレベルが1ランク下がり,正答が多ければ,1ランク上がります。ほとんど満点ばかりであれば,飛び級式に途中をいくつか飛び越えてランクアップすることもあります。また,以前に出題された問題が選択肢を変えて再出題されることもあり,その際に間違えたりすると,自動的に(新しい問題ではなく)以前の問題が出される比率が高くなります。このように,ユーザのレベルや定着度に応じてコンピュータが自動的にレベルを調整したり,復習を多くしたりするので,定期的にボキャビル機能を使うことで,無理なく語彙力がアップするようになっています。
ED-7780は,英語母語話者の小学生から大学生まで幅広いレベルに対応しています。日本人の場合,かなり英語に自信がある人でも,大学生レベルでは難しいと思います。どこのランクから開始するかは自分で決めることもできますし,小テストを行い,その結果からコンピュータがユーザのレベルを判断するようにもできます。ボキャビル機能で間違えた単語はユーザ登録して後日重点的に復習をすることもできますし,thesaurusや辞書機能に切り替えて調べることもできます。
Ectacoは,英語−外国語の電子辞書を多数(かなりマイナーな言語もあります)発売していますが,EE586HTは,最近発売された電子英英辞典です。586シリーズはEctacoの電子辞書の中でも最も高機能なもので,発音機能付き英英辞典,英−仏独西伊葡各言語(逆も)の単語集,英文法ガイド,電話帳,スケジュール,備忘録,時計,関数電卓など3種類の電卓,各国データガイド,金銭出納帳,通貨換算,3種類のゲーム,ボイスメモ,ファックス,Email送信,…など,ここに書ききれないぐらいの機能を搭載しています。値段は400ドル前後(日本では秋葉原のLaOX本店の免税コーナーで50000円ぐらいで売っています)とちょっと高めですが,この機能からすれば仕方ないでしょう。
ただ,肝心の辞書機能はあまりにもお粗末です。ウェブページ等の宣伝文句には「American Heritage of English Language 3rd Editionを収録」と書かれていますし,400ドルもするのだから,てっきり冊子体のAHD Unabridgedのフルテキスト収録かと思っていたら,実際は専門語などがかなり省略されています。また,語義もかなり簡略化され,情報量,収録語数はペーパーバック版AHDといい勝負です(これは正直言ってだまされた,と思いました)。辞書の中身だけで言えば,上記のED-7780の簡略版AHDと大して変わらず,400ドルの電子辞書にしてはひどいものです。類語辞典はありませんし,機能が多い分使い勝手は今ひとつです。
1つ1つの機能の完成度は今ひとつでも,こういう多機能なgadgetというのはアメリカ人受けするのかもしれませんが,私にしてみれば,漢字が使えないスケジューラや中途半端なゲーム,別売りオプションを買わないと使えない電子メール送受信などはカットしてでも,辞書機能そのものを重視してほしかったと思います。
皆さんの中で,Ectacoのウェブサイト等を見て,400ドルもするのだからEE586HTは電子辞書としての最高スペックを持っているだろう,と判断する人がいるかもしれませんが,それは大きな間違いです。もし辞書自体の内容が充実した電子英英辞書が必要であれば,上で紹介したFranklinのSCD-770やQuicktionary D-Fineなど,別機種を検討してみてください。
★このガイドで紹介した電子辞書の機能・仕様一覧(詳細は各メーカーのカタログを参照)
IDF-4000 | PW-9100 | PW-M710 | XD-S6000 | XD-S8000 | XD-S950 | XD-S1200 | |
メーカー | キャノン | シャープ | シャープ | カシオ | カシオ | カシオ | カシオ |
定価(円) | \38,000 | \42,000 | \34,000 | \40,000 | \38,000 | \32,000 | \30,000 |
実売価格(およそ) | \24,000 | \29,800 | \24,800 | \29,800 | \32,800 | \24,800 | |
重さ(グラム) | 198.5 | 182 | 118 | 240 | 240 | 140 | 240 |
電池寿命(時間) | 100 | 150 | 70 | 130 | 130 | 140 | 130 |
最大表示文字数* | 180 | 286 | 442 | 442 | 442 | ||
英和・和英 | ジーニアス | ジーニアス | ジーニアス | ジーニアス | ジーニアス | ジーニアス | ジーニアス |
類語 | 大修館 | − | − | 大修館 | 大修館 | 大修館 | 大修館 |
英英 | − | − | − | − | LAAD | − | − |
国語 | 広辞苑 | 広辞苑 | 広辞苑 | 広辞苑 | 広辞苑 | 広辞苑 | 新明解 |
漢和(漢字源) | ○ | − | − | ○ | ○ | ○ | − |
漢字 | − | ○ | ○ | − | − | − | ○ |
カタカナ語辞典 | − | 学研 | 学研 | 旺文社 | − | 旺文社 | − |
ことわざ辞典 | − | ○ | − | ○ | − | − | − |
四字熟語辞典 | − | ○ | − | ○ | − | − | − |
その他 | 広辞苑図版 | 手紙文作成 家庭の医学 分野別小辞典 |
分野別小辞典 | 季語便覧,人名地名,英会話 | − | − | 古語辞典 |
電卓 | − | ○ | ○ | − | − | − | − |
漢字部品検索 | ○ | ○ | ○ | − | − | − | − |
インクリメンタルサーチ | ○ | ○ | ○ | − | − | − | − |
ワイルドカード検索 (1文字) |
○ | △ | △ | △ | △ | △ | △ |
ワイルドカード検索 (複数文字) |
○ | ○ | ○ | △ | △ | △ | △ |
スペルチェック | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
履歴(記憶語数) | 30 | 100 | 30 | 20 | 20 | 20 | 20 |
ジャンプ | ◎ | ◎ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
単語帳(記憶語数) | 100 | 100 | − | − | − | − | − |
DD-IC2050 | SR-8100 | SR-9200 | SR-9500 | SR-950 | DD-IC50 | IDF-3000 | DD-S25 | |
メーカー | ソニー | セイコー | セイコー | セイコー | セイコー | ソニー | キャノン | ソニー |
定価(円) | オープン | 38,000 | 43,500 | 38,000 | 32,000 | オープン | 32,000 | オープン |
実売価格(およそ) | 29,800 | 29,800 | 34,800 | 27,800 | 24,800 | 7,000 | 16,800 | 36,800 |
重さ(グラム) | 126 | 250 | 250 | 250 | 117 | 126 | 230 | 420 |
電池寿命(時間) | 120 | 100 | 110 | 110 | 70 | 120 | 180 | 10 |
最大表示文字数* | 180 | 442 | 442 | 442 | 180 | 117 | 120 | 209 |
英和・和英 | 研究社中 | 研究社中 | リーダーズ | ジーニアス | 研究社中 | アンカー | アンカー | リーダーズ |
類語 | − | Longman | Oxford | Roget's II | − | − | − | − |
英英 | − | LDCE | COD | − | − | − | − | − |
国語 | 広辞苑 | − | 広辞苑 | 広辞苑 | 広辞苑 | 学研 | 学研 | − |
漢和(漢字源) | − | − | ○ | ○ | ○ | − | ○ | − |
漢字 | ○ | − | − | − | − | ○ | − | − |
カタカナ語辞典 | − | − | − | 学研 | 学研 | − | − | − |
ことわざ辞典 | − | − | − | − | − | − | − | − |
四字熟語辞典 | − | − | − | − | − | − | − | − |
その他 | マイペディア | − | − | − | − | − | − | − |
電卓 | − | ○ | ○ | ○ | ○ | − | − | − |
漢字部品検索 | ○ | − | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | − |
インクリメンタルサーチ | ○ | − | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
ワイルドカード検索 (1文字) |
− | ○ | ○ | ○ | ○ | − | ○ | − |
ワイルドカード検索 (複数文字) |
○ | − | ○ | ○ | − | ○ | ○ | − |
スペルチェック | − | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | − |
履歴(記憶語数) | 50 | 50 | 50 | 50 | 26 | − | 30 | − |
ジャンプ | ○ | ○ | ○ | ○ | ◎ | ○ | ◎ | − |
単語帳(記憶語数) | 100 | − | − | − | − | − | 100 | − |
*全角文字での表示文字数(最も小さいフォントを選択した場合)