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2001年度前期版電子辞書へのアプローチ(2001年4月改訂)
関山 健治(沖縄大学)
sekiyama.kenji@nifty.com
http://sekky.tripod.com
(緊急提言>電子辞書メーカーさん各位) 事の発端は,私が発売日当日に購入した某メーカーさんのある機種が,3月4日現在,秋葉原や新宿など,ほとんどすべての大手の電気店の店頭ではほとんど見かけなかったことです。初期不良という噂は聞いていましたが,私の手元のモデルはとくに問題がないようです。しかし,発売後1ヶ月もしないうちに電気店の棚から姿を消すという事態に不安を感じ,メーカーさんのお客様相談室に初期不良の内容を質問しました。しかし,1時間近く待たされたのに具体的な回答は得られなかったばかりか,挙げ句の果てに「この件に関してはお話しできることはないので電話を切らせていただきます」と言い,一方的に電話を切られてしまいました。そのため,大手の電気店に私が問い合わせたところ,即座に,不具合の内容の詳細をご教示いただきました(具体的内容は伏せますが,それなりの内容です)。 |
※ このガイドは,学生の皆さんで電子辞書を購入したいと思っている人を主な対象に,持ち運びのできる電子辞書(パソコン上で使うCD-ROMタイプの辞書ソフトは除きます)の特徴や選び方を簡単に解説したものです。CD-ROM辞書の解説や,電子辞書の歴史など,より高度な情報が必要な方は,「2000年度版英語の辞書へのアプローチ−マルチメディア辞書編―」をごらんください。
(ご注意)このガイドを含め,本ウェブサイト内のすべての内容に関する著作権は,メーカーさんから転載を許諾していただいた写真等,特記あるものを除き,関山 健治が保持しています。著作権の侵害となる一切の行為を固くお断りします。個人的な利用の範囲内でのコピー,再配布はご自由に行ってくださってかまいません。ただし,不特定多数に配布する場合(ゼミや授業の教材,学会発表等の配付資料にするなど)や,営利目的で本ガイドを使われる場合(メーカーさんが開発資料にする場合等)は,必ず事前にメールでご連絡ください。
1. なぜ電子辞書?
大半の人は,紙の辞書(冊子体辞書)より軽くて小さいのが電子辞書のメリットだと言います。しかし,それだけのために冊子体辞書の何倍もする電子辞書を買うというのは,ためらってしまうでしょう。単に,重くて大きい辞書を持ち歩くのがいやだと言うなら,同じ紙の辞書を2冊買って,1冊は自宅に,もう1冊は大学のロッカーや研究室に置いておくほうがずっと安上がりです。あえて大枚をはたいてまで電子辞書を買う以上は,冊子体の辞書では絶対に真似のできない使い方をしたいものです。まず,電子辞書と冊子体の辞書を比較することにより,電子辞書のメリット,デメリットを見てみます。
2. 電子辞書のメリットとデメリット
2.1. 電子辞書のメリット
小さい:機種にもよりますが,たいていはちょっと厚めの文庫本ぐらいの大きさなので,カバンはもちろん,ポーチなどにも楽々入ります。小さい機種(ソニー
DD-IC100)の場合,ポケットにさえ入るぐらいです。小さいので,満員電車の中などでも使えます。家で予習をする時間がなく,通学時に辞書をひかないといけないとき,電子辞書のありがたみが分かります。
軽い:たとえば,冊子体の新英和中辞典と新和英中辞典(研究社)は2冊で2キロ弱の重さがあります。しかし,電子辞書の場合,もっとも重い機種の一つである電子ブックプレーヤーでも,400グラムぐらいしかありません。中には,126グラム(ソニーDD-IC100)という機種もあります。軽いので,通学時はもちろん,辞書とあまり縁のなさそうな場面(休日に買い物へ行くなど)でも気楽に持ち運べます。そのため,いつでも,どこでも辞書をひくことができ,それが英語力向上にもつながるのです。せっかく大きな辞書を買っても,重いので授業以外はロッカーへ入れっぱなしというのでは,あまりにももったいない話です。
字が大きい:冊子体の辞書の4倍ぐらいの大きさはあります。
速くひけ,疲れない:ワープロ,パソコンと同じJIS配列のキーボードなので,キーボードに慣れていれば,冊子体の辞書をひくより速くひけます。また,重い辞書を手に持ってページを繰る必要がないので,長時間辞書をひいても疲れません。
紙の辞書にはない使い方ができる:後述の,ジャンプ機能,パス機能などは,紙の辞書で不便な点を解消してくれる,電子辞書ならではの機能です。これらの機能を使いこなせば,電子辞書の値段もそれほど高いとは思えないはずです。
2.2. 電子辞書のデメリット
高い:すべてはこれにつきます。最近の機種は安くなりましたが,それでも冊子体辞書と同等の内容を持つ機種(フルコンテンツタイプ)は2,3万円はします。3万円出して,10種類の冊子体辞書を買うか,電子辞書を1台買うか,どちらが英語力の向上につながるかと言われれば,前者に軍配が上がるのは事実です。
壊れやすい:最近の電子辞書は,軽く,薄くなっているので,そのぶん耐久性が少なからず犠牲になっています。液晶画面,とくに大型のものは非常にもろく,ちょっと押さえたり,ひねったりしただけで割れます。液晶画面は,裏側からのショックに弱いので,画面の蓋を閉じていても安心できません。落としたりするのは論外ですが,カバンの中でハードカバーの本などといっしょに入れて持ち運んだだけで割れることがあります。冊子体辞書なら,床にたたきつけたり,水に濡らしたりしても全く使えなくなることはありませんが,電子辞書は液晶が割れただけでお手上げです。修理代も本体の半額ぐらいはとられるでしょうから,パソコンショップなどで売っている,緩衝剤の入った電子手帳用のケースで保護するのは必須です。
なくしたり,盗まれたりしやすい:電子辞書はサイズが小さく,日常的にしょっちゅう使うので,置き忘れたり落としたりする可能性も大きいです。しかし,冊子体の辞書は処分に困るほど落とし物として届けられますが,電子辞書は,置き忘れたら戻ってこないと考えていいでしょう。
書きこみができない:冊子体辞書で,覚えた単語にマーカーで印をつけたり,付箋をつけたり,余白に書きこんだりしないと気がすまない人には,電子辞書は向きません。
一覧性に乏しい:最近の電子辞書は画面も大きくなっていますが,それでも冊子体辞書の1ページの何十分の一でしかありません。
3. 電子辞書の種類
3.1. IC辞書
文庫本程度のサイズで,通常,液晶画面とキーボードがついています。電子辞書の中ではもっとも歴史が古く,もっとも普及しているタイプのものです。近年は,冊子体辞書(紙の辞書)の文字情報を,例文や文法解説などを含め,まるごと収録した「フルコンテンツタイプ」が主流になっていますが,例文や解説などをカットし,収録語数や訳語の数も厳選した「単語翻訳機タイプ」も,安価なこともあり根強い人気があります。しかし,英語を専門とする皆さんにとっては,単語の意味を並べただけの電子辞書を買うぐらいなら,冊子体の辞書を使った方がましということを知っておいてください。そのため,このガイドでは,電子辞書=フルコンテンツタイプの機種(冊子体の辞書と同じ内容を収録した辞書)を指すこととします。
IC辞書のメリット
小型軽量
操作が簡単:機械類が苦手な人でも心配ありません。
使いたいときにすぐひける:電源を入れたときに待たされません。
電池寿命が長い:毎日頻繁に使っても1ヶ月ぐらいは持ちます。
訳語優先:冊子体辞書や他のタイプの電子辞書と異なり,まず訳語(意味)のみが表示され,例文や解説は専用キーで呼びだす機種がほとんどです。そのため,必要な情報が素早く手に入ります。
和英→英和,類語→英和など,異なった辞書の間を簡単に行き来できる(ジャンプ機能・後述)。
IC辞書のデメリット
高い:電子ブックプレーヤーと違い,ソフトを入れかえることができないので,よけいに割高感があります。
メーカーや機種によって,キーの配置や操作方法が異なる
画像(挿し絵)や音声(単語の発音)などが再生できない:IC辞書の場合,辞書の図版はカットされているのが普通です。単語や例文の発音機能は,最近の機種では備わっているものもありますが,音質や自然さなどは電子ブックプレーヤーにかないません。
3.2. 電子ブックプレーヤー
電子ブックという,フロッピーディスクと同じぐらいの大きさのCD-ROM(シングルCDと同じサイズで,専用ケース(キャディー)に入っている)を再生する装置です。IC辞書と同様に,液晶画面とキーボードがついていますが,若干大きく,重いです。しかし,IC辞書と異なり,ソフト(電子ブック)を入れかえれば,1台のプレーヤーで何冊もの辞書を引くことができます。そのため,一般の学生よりは,通訳,翻訳者など,英語のプロの人たちの間でよく使われています。
電子ブックプレーヤーのメリット
汎用性:本体が1台あれば,電子ブックソフトを買い足すだけで何倍にも使えます。ソフトは,高いもの(大辞典クラス)でも1万円強,普通は3000円〜8000円ぐらいなので,冊子体辞書とそれほどコストは違いません。
IC辞書と異なり,どの機種でも,基本操作は同じ。
IC辞書で収録できないような大きな辞書にも対応している
CDシングル(音楽用)も再生できる:息抜きに便利です。
検索機能が豊富:例文の中で使われている単語をひくなど。
画像や音声も再生できる:白黒ですが,辞書の図版もきれいに表示することができます。単語の発音も,IC辞書と異なり,ネイティブの発音をそのまま録音しているので,信頼性が高くなっています。
電子ブックプレーヤーのデメリット
IC辞書にくらべて重く,大きい
電源を入れてから数秒待たされる
電池寿命が短い:連続使用で10時間強しか持ちません。
検索するたびに動作音がする:小さな音ですが,小教室でのゼミなどの際に使うとかなり目立ちます。
画面が見にくい:IC辞書と違い,訳語と例文も一緒に表示されるものが多いので,全体を見渡すことができません。
冊子体辞書以上の使い方ができない:ジャンプ機能,履歴機能など,IC辞書に備わっている基本機能がついていません。
※ これらのほかに,パソコン上で使うもの(CD-ROM辞書)もあります。
4. 電子辞書の様々な(知られざる)機能
4.1. ワイルドカード検索機能
分からない部分を「?」(1文字)や「〜」(n文字 ※n>0)で置きかえることにより,単語の一部分が分からなくても辞書がひけます。※「〜」が使えない機種もあります。「?」は,単語の頭には使えない機種もあります。
(例)
de?ight:delightが検索できます。
d??l:dで始まり,lで終わる4文字の単語(deal, dial, doll, dual, dull...)が検索できます。
d〜l:dで始まり,lで終わる単語(文字数は問わない)が検索できます。
〜tion:tionで終わる語が検索できます。
★こんなときにも使える!
クロスワードパズルを解く際:分からないマスを「?」で置きかえる。
特定の接尾辞を持つ単語を調べる際:「〜tion」のように。
英語を聴いていて,どこかできいたことはあるが,正しく綴る自信のない単語に出くわした際:確信の持てない部分を「?」で置きかえる。
4.2. スペルチェック機能
スペルがあやふやな場合でも辞書がひけます。スペルチェックモードに切り替えて単語を入力すれば,スペリングが誤っていても正しいと思われるスペルを推測し,候補を表示してくれます。実際のスペリングとかけ離れた,ローマ字綴りでもひけます。※「賢さ」は機種によって千差万別です。
(例)
saikoloji:sociology, sacrilege, psychology...のように,似たスペリングの単語を列挙してくれます。この中からpsychologyを選択すると,英和辞典の画面に変わり,訳語等が表示されます。
★こんなときにも使える!
英語を聴いていて,全くきいたこともない単語に出くわした際:スペルチェックモードで,きこえた単語をローマ字読みしてタイプします。
ある単語と似たような発音の単語を知りたいとき:たいていの機種は,正しいスペルを入力した場合でも,似たようなスペルの単語候補を列挙してくれます。
日本語→英語のボキャビルの際:単語リストなど,日本語訳を見ながら,英単語を推測し,スペルチェックモードにして入力します。正しければ即座に意味が表示されるので,再確認できます。誤っていた場合でも,候補の中から正しいものを選択すると意味が表示されます。
4.3. 成句検索機能
成句(いわゆるイディオム)を簡単に検索する機能です。たとえば,kick the
bucketというイディオムを調べたい場合,冊子体の辞書では,kickをひくべきか,bucketをひくべきか,迷ってしまうことが多かったですが,電子辞書の成句検索機能を使えば,kick
& bucketと入れるだけで,簡単に検索できます。
4.4. パス(path)(履歴,ヒストリー,しおり)機能
最近引いた単語を自動的に記憶する機能です。引きなおしをする際,一覧画面から選択するだけでいいので,単語を再タイプする手間が省けます。
★こんなときにも使える!
授業の予習など,英文を急いで下調べする必要がある場合:あわてて英文を読む場合,未知語は何回辞書をひいても頭に入りませんので,パス機能を使い,少しでも手間と時間を省くといいでしょう。
(余興)友人に電子辞書を貸して,返してもらった直後にパスの一覧を見てみる:パス機能は,本人が望む望まないに関わらず,また,本人が知らないうちに自動的にひいた単語を記憶するので,友人が辞書で何を調べたかが分かります。分かってどうなると言われればそれまでですが。
4.5. ジャンプ機能
辞書間をワンタッチで移動する機能です。和英で調べた訳語を英和で引きなおすということが,実に簡単に行えます。
(例)
(和英→英和):和英辞典で「うし」を検索します。訳語で出てきたcalfの発音を知りたい場合,ジャンプキーを押し,矢印キーでcalfにカーソルを合わせ,「訳」キーを押すだけで,自動的に英和のcalfの画面に切り替わります。「英和」キーを押して,単語を入力しなおす必要はありません。ジャンプ先の画面で,さらに別の単語にジャンプすることもできますし,「戻る」キー(機種によっては「復帰」)を押せば,もとの和英の画面に戻ることも簡単です。
(類語→英和):類語辞典でstayを検索します。類語として出てきたremain, wait, lingerの単語の微妙な意味の違いを知りたい場合,ジャンプキーを押し,矢印キーでremainにカーソルを合わせ,「訳」キーを押すだけで,自動的に英和のremainの画面に切り替わります。「英和」キーを押して,単語を入力しなおす必要はありません。「戻る」キー(機種によっては「復帰」)を押せば,もとの類語辞典の画面に戻るので,waitにカーソルをあわせなおして「訳」キーを押せば,今度はwaitの英和画面に移ります。これを繰り返せば,類語辞典に並んでいる単語のニュアンスの違いを,楽に調べることができます。
(英和→英和):英和辞典でbringを検索します。類義語の説明で出てきたfetchの意味を知りたい場合,ジャンプキーを押し,矢印キーでfetchにカーソルを合わせ,「訳」キーを押すだけで,自動的に英和のfetchの画面に切り替わります。単語を入力しなおす必要はありません。「戻る」キー(機種によっては「復帰」)を押せば,もとのbringの画面に戻ります。
★こんなときにも使える!
ジャンプ機能は,電子辞書の機能の中でも十分に熟知し,使いこなしたいものの一つです。英作文をする際など,和英辞典でひいた単語を英和で引きなおすことが必要であると知っていても,冊子体の辞書ではつい面倒になってしまいがちでした。電子辞書ならキー操作で簡単に行えるので,英語力向上にも大きく役立ちます。また,ジャンプ先から,もとの単語に戻らないで,さらに別の単語にジャンプできるので,辞書の中身を探検するような使い方もできます。そのため,通学時などの暇つぶしにも使えます。こういう時に目にした単語は,意外と忘れないものです。
4.6. 電卓機能
あまり知られていませんが,ほとんどの電子辞書(IC辞書)には電卓機能もついています。飲み会の会費計算,交通費の計算,海外での通貨の換算など,日常生活で電卓の必要な場面は多くありますが,電子辞書さえ持っていれば,別に電卓を持ち歩く必要はありません。
5. 代表的な電子辞書(国内メーカー)
5.1. IC辞書
DD-IC50 (ソニー) http://www.sony.co.jp/sd/
携帯電話やClie等でおなじみのジョグダイヤルを電子辞書では初めて採用しています。机上で使うというより,手に持って使うことを想定しているようで,カタログでは,左手にDD-IC50を持ち,右手にペンを持っている写真が掲載され,「片手で使える電子辞書」をアピールしたいようなことがうかがえます。ただ,ジョグダイヤルは,スクロール等には使えますが,単語の入力には対応していないため,結局は(ペンを置いて)右手を使ってキーを押さなければなりません。これでは,何のために手のひらに収まるデザインにし,しかも片手で使うためのジョグダイヤルまでつけているのか疑問です。たしかに,満員電車で立ったまま電子辞書を引くときなどは,DD-IC50は他機種よりも明らかに使いやすいですが,普通の電子辞書ユーザは電車の中で,それも立って辞書を引くということが年に何回あるのでしょうか。また,DD-IC50は,ジョグダイヤルが側面についているため,手に持たないで(机上などに置いて)使うことはまず不可能です。紙の辞書が大きくて持ち歩きにくいのは,紙という性質上仕方ありませんし,それを解消するために電子辞書があるのですが,逆に,電子辞書が机の上に置いて使えないというのは本末転倒です。奇をてらった機能を付けることにばかり目がいき,辞書本来の目的を忘れてしまった典型的な例ですが,きわめつけは,机の上では使えない(から持ち歩いて使うしかない)DD-IC50に,画面やキーボードを保護するカバーなり,ケースなりがついていないことです。「目が点」というのはまさにこのことで,一体どういう用途を想定してDD-IC50を開発したのか,理解に苦しみます。画面も他のDD-ICシリーズより狭いですし,キーボードも変則的な配列で,しかも高校生用の辞書しか入っていないとなると,どこか良い点を探そうにも探しようがありません。
満員電車の中で,吊革につかまりながら片手で携帯電話からメールを打つことはよくあるでしょうから,ジョグダイヤルを搭載したソニーの携帯電話は非常に便利なのでしょうが,だからといって,電子辞書という,全く異なる種類の製品に同じジョグダイヤルをつけても全く意味をなしません。ソニーさん,若者受けをねらったのかもしれませんが,いくら「いまどきの若者」といっても,ジョグダイヤルという目先の奇抜さだけで数万円もの買い物はしませんよ。
DD-IC2050 (ソニー) http://www.sony.co.jp/sd/
【詳細なレビュー(従来機)はここをクリック】とにかく小さい電子辞書です。上の写真では大きくみえますが,実際には手のひらですっぽり隠れてしまうぐらいのサイズです。大きさは小さいのですが,広辞苑第5版,百科事典マイペディア,研究社新英和・和英中辞典(和英をのぞき,いずれも語末引き可)のフルテキストを収録しています。広辞苑収録の電子辞書としては業界最小ですし,(小規模なものですが)百科事典を収録した唯一のIC辞書です。そのかわり,英和・和英は従来機に搭載されていたプログレッシブではなく,やや語数の少ない研究社の中辞典になってしまったのは残念です。
画面は,本体が小さい割に大きく,かなりの情報量を表示できますが,例文や解説なども訳語と一緒に出てきます。そのため,見にくいと感じる人もいるでしょう。また,他機種と異なり,類語辞典は収録されていません。それでも,このサイズのボディーで広辞苑をはじめ,4種類の辞書をフルコンテンツで収録しているということは驚嘆に値します。キーボードが小さい,文字が小さいなど,欲を言えばきりがありませんが,出先で辞書を引きたいので,とにかく小さい電子辞書が欲しいという人には文句なくおすすめします。
IDF-3000 (キャノン) http://www.canon-sales.co.jp/WORDTANK/idf-3000.html/
外国人向けの電子辞書では定評のあるキャノンが,ついにフルコンテンツタイプの機種を発売しました。主に高校生を対象とした,スーパーアンカー英和,ニューアンカー和英に加え,用法の区別など,日本語を使う際に役立つ情報が充実した,学研の新国語辞典と漢字源(漢和辞典)をフル収録しています。他のメーカーの機種は,収録語数の多さを誇るということもあってか,主に大学生以上を対象とした辞書を収録しているのに対し,IDF-3000は(とくに英和,和英は)高校生向けの辞書が入っているという点や,単なる「字引き」でなく,漢字の由来や解字なども解説されている漢和辞典がフル収録されている点など,他機種とは一線を画すほどの強烈な個性があります。収録語数が少ないので,専門家には向きませんが,英語教師にとっては,試験問題を作ったり教材を書く際には思ったより役に立ちます。キーを押すごとに候補が絞り込まれる,いわゆる絞り込み検索や,各辞書100語ずつ記憶できる単語帳機能,縦書き表示が可能な国語辞典,日本語の単語にもジャンプできるスーパージャンピングサーチ機能など,様々な新機軸がみられるのも後発機種の強みでしょう。押しやすいキーボードや大きな液晶画面(画面だけでなく文字も大きいので,表示文字数は画面サイズの割に少ないのが難点です)など,高級感がある割に値段は安く,20000円をきるぐらいで買えます。収録辞書の語数が少ないこと以外はこれといった問題点もなく,他機種に影響を与えるような機能も多いのでもっと華々しく宣伝をしてもいいと思うのですが,店員はどうしても収録語数が多い機種をすすめてしまうようです。私個人としては,高校生や,大学生で英語を必要としない学科の人には,他のメーカーのどの機種よりもIDF-3000のほうが使いやすいことは保証します。
IDF-4000(キャノン) http://www.canon-sales.co.jp/WORDTANK/idf-4000.html
【詳細なレビューはここをクリック】キャノンのフルコンテンツタイプ電子辞書の第2弾です。収録辞書は,広辞苑(逆引き可。モノクロ2階調での図版表示も可),ジーニアス英和・和英,漢字源,(英語)類語辞典の5種類です。ちょうどカシオのXD-S5000からカタカナ語辞典を削ったような感じで,最近の電子辞書ではごく普通の内容ですが,IDF-3000と同様に,機能や操作性にキャノンらしい個性が見られます。たとえば,ワイルドカード検索はほとんどの機種に備わっていますが,広辞苑で語頭に1文字の不明文字がきた場合にも対応しているのは,数ある電子辞書の中でも,IDF-4000とSR-9100ぐらいしかありません。これが備わっていることで,IDF-4000(SR-9100もですが)は,単に言葉の意味を知るためだけでなく,クロスワードパズルの解答マシーンとしても使えるのです。最近は懸賞付きのパズル雑誌が増えていますので,この隠れた機能をもっとPRすればいいのに,と思います。「広辞苑が入っている電子辞書」は最近では珍しくも何ともありませんが,「クロスワードが解ける電子辞書」は希少価値です。
そのほかにも,とくに,本文中に出てくる(日本語を含め)どんな語にでも自由にジャンプできる機能(スーパージャンピングサーチ)は,日本語を学んでいる外国人には必須と言ってもよい機能ですが,これが備わっているのは数ある電子辞書の中でもキャノンのIDF-3000,
4000しかありません。キャノンの電子辞書は外国人受けするとよく言われますが,IDF-4000も日本で学ぶ留学生にとっては期待を裏切らないものになるでしょう。厚さは他機種に比べてかなり薄くなり,シルバーとブルーのメタリック仕上げの外観とあわせ,機能だけでなく,デザインも現行のフルコンテンツ電子辞書の中ではトップクラスです。
★各種電子辞書をレビューし,ある意味で「あら探し」とも言えるコメントをしょっちゅうしている私にとっても,IDF-4000に関しては,画面解像度が他機種に比べて低い(それでもIDF-3000とは格段の違いがありますが)ことや,広辞苑,漢字源は縦書き表示しかできないこと,PW-8000/8100のような早見表示ができないことぐらいしか問題点が見あたりません。日本語の辞書を主に使う人は,ことわざ辞典やカタカナ語辞典まで収録されている,シャープのPW-8000/8100のほうがいいかもしれませんが,英和,和英がメインで,日本語の辞書は広辞苑さえあればいい,という人は,値段も他機種より安いですし,文句なしでおすすめします。他社の電子辞書を使っている人で,どうも使い勝手が悪い,と感じている人(そして,他社の電子辞書を開発しているスタッフの方も!)は,ぜひ店頭でIDF-4000をさわってみてください。そして,電子辞書は単に収録辞書やデザイン(サイズ)だけでなく,一見地味に見える基本機能を充実させることで,まだまだ改良の余地があるということを知っていただければ,と思います>メーカーさん
PW-8000/8100 (シャープ)http://www.sharp.co.jp/sc/eihon/pw8000/
写真提供:シャープ株式会社
ジーニアス英和・和英辞典,広辞苑(第5版),漢字辞典に加え,カタカナ語辞典,故事ことわざ辞典など,合計8種類の辞書を収録しています。漢字辞書は,単なる「字引」ではなく,音訓や画数,部首といった漢和辞典でよくみられる引き方はもちろん,読めない漢字でも,漢字を構成する要素の読み方が分かればひける部品検索などを備えているので,日本人だけでなく,日本語を学んでいる外国人にも重宝します。また,キーを押す都度候補が絞り込まれるので,フルスペルを入力しなくても検索でき,使い勝手が大幅に向上しました。
そのほか,辞書キーを押せばワンタッチで電源が入り,その辞書の検索画面が表示される,派生語にも対応した語末引き機能が搭載されている,行スクロールキーと画面スクロールキーが隣接していたり,検索キーと戻るキーが隣り合っていたりという,使いやすいレイアウトになっているなど,カタログ等に現れない,地味な点で改良がされていることは大変評価できます。英英辞典はいらないが,英語,国語問わず気楽に使える電子辞書がほしいという人には自信を持っておすすめできる機種です。IDF-4000と並び,あまり欠点の見つからない機種なのですが,あえて問題点を言えば,語頭に不明文字「?」を置くとワイルドカード検索ができない,自分で電源を切ったときはレジュームがきかない,ということぐらいでしょうか。
SR-8000 (セイコーインスツルメンツ) http://www.sii.co.jp/cp/Fsr8000.html
写真提供:セイコーインスツルメンツ株式会社
【詳細なレビューはここをクリック】研究社の新英和・新和英中辞典に加え,ロングマン現代英英辞典(LDCE3)とロングマンの類語辞典(thesaurus)も搭載した,英語を専門とする人向けの機種です。従来機にくらべ,画面が大きくなり,見やすくなりました。また,2画面に分割して表示する(英和と英英の内容を並べてみることができる)機能や,例文の中で使われている単語を検索するキーワード検索など,従来の機種にない機能を豊富に盛りこんでいます。発売から1年以上たつのに,まだSR-8000に匹敵する機能を備えた機種が発売されていないことからしても,SR-8000がいかに先進的なスペックを持っているかが分かります。中でも,英英辞典の記述の中で分からない単語を英和辞典で引きなおしてくれる参照機能は,とくに英英辞典に慣れていない人には便利です。ただ,英語をしょっちゅう使い,私のように,電子辞書を身体の一部のようにしている人には,様々な新機能は魅力的で重宝しますが,普通のユーザーの人は,はたしてこれほど豊富な機能を使いこなせるのだろうかという気もします。値段も高いので,英英辞典がどうしても必要な人以外は,IDF-4000(キャノン)のほうが,広辞苑がついていることや,サイズが小さいこともあり,買い得感があるかもしれません。
SR-9100 (セイコーインスツルメンツ) http://www.sii.co.jp/cp/Fsr9100.html
写真提供:セイコーインスツルメンツ株式会社
IC辞書では初めて,英和辞典を2冊搭載した機種です。後述のSR-900の内容に加え,リーダーズ英和辞典(初版)をフルテキストで収録しています。SR-8000と同じ大きさのボディー,液晶画面なので,画面はSR-900より見やすいのですが,SR-8000で採用された2画面表示,スーパープレビューといった大画面を生かした機能は割愛されています。26万語収録のリーダーズ英和と,例文,文法解説の充実している新英和中辞典を使い分けられるというコンセプトは,IC辞書の老舗であるSIIならではのもので,おもしろいのですが,かんじんのリーダーズが現行の版ではなく,なぜ15年以上も前に出た初版をわざわざ収録しているのか,理解に苦しみます。カタログにも,最新版を収録している広辞苑は「第5版」と大きく書いてあるのに,リーダーズが初版のデータであることに関しては,説明をじっくり読まないと分かりません。SR-9100のユーザ層は,英語の専門家がほとんどでしょうから,これでは購入して失望する人も多いのではないでしょうか。科学技術用語やコンピュータ用語が時代遅れなのは言うまでもありませんが,IC辞書の最新機種に,香港の独立やソ連崩壊(でさえも)が反映されていないというのは噴飯ものです。
SR-900 (セイコーインスツルメンツ) http://www.sii.co.jp/cp/Fsr900.html
写真提供:セイコーインスツルメンツ株式会社
研究社の新英和(第6版),新和英(第4版)中辞典,広辞苑(第5版)の本文すべてと,Rogetの類義語辞書を収録しています。前述のSR-8000ほど高度な機能はありませんが,従来機にくらべて軽く,小さくなり,気楽に持ち運ぶことができます。画面サイズはここで紹介した電子辞書の中でも最も小さいので一覧性に乏しいのですが,どこへでも広辞苑を持ち歩きたいという人にはPW-8000よりも小さいSR-900をおすすめします。なお,広辞苑の代わりにコンサイスの国語辞典を収録したSR-750もあります。こちらは定価が20000円なので,実際は10000円少しで買えます。10年近く前にSIIからフルコンテンツ辞書の第一号機(TR-700)が発売されたときは,英和・和英・類語のみ(国語辞典なし)で40000円ちょっとしたことを思うと,時代の流れを感じます。
XD-S3000/5000/5500 (カシオ計算機)
http://www.casio.co.jp/d-stationery/exword/xds3000.htm
写真提供:カシオ計算機株式会社
「ジーニアス英和・和英」と「広辞苑(第5版)」のフルテキスト(XD-S5000/5500のみ),漢字源(XD-S5000/5500のみ),カタカナ語辞典(XD-S5000/5500のみ),ロングマンのアメリカ英語英英辞典(XD-S3000のみ),独自編集の英語類語辞典を収録したIC辞書です。電子辞書の欠点として,画面が小さく,多くの情報が一覧できないという点がありますが,XDシリーズはとにかく画面解像度が大きいことが特徴です。カシオの電子辞書は,キーボードを傾斜させ,入力しやすくするためにスライド式キーボードを採用しているようですが,耐久性に不安があり,私個人としてはどうも好きになれません。単に傾斜させるだけならば,IDF-4000のようにスタンドを備えるだけでも十分な気がします。このような見た目のユニークさは,確かに製品を売る上では重要なのかもしれませんが,それ以前に,最近の電子辞書ではほとんど備わっている絞り込み機能(キーを押すごとに候補語が絞り込まれて表示される)がいまだについていないとか,キーボードがふにゃふにゃしていて文字が飛んでしまうことが多い,行スクロールキーとページスクロールキーがとんでもなく離れている,英和ではできるのに,広辞苑では逆引きができないなど,ライバル機種(PW-8000/8100, IDF-4000など)にくらべて,基本的な使い勝手ではかなり見劣りがします。
ジーニアスとアメリカ英語版の英英辞典の組み合わせであるXD-S3000は,例文検索やジャンプ先の辞書を指定できる機能など,先行のSR-8000を意識しているようですが,例文検索は英英辞典の例文のみで,ジーニアスの例文は検索できないとか,せっかくSR-8000なみの高解像度液晶を搭載しているのに,二画面分割のような大画面を生かした機能が備わっていないなど,SR-8000の高機能を期待する人にとっては物足りないと思います。
XD-S3000は,ジーニアスを採用していることや,アメリカ英語版の英英であることなど,機能面に目をつぶればSR-8000と差別化ができる要素があるのですが,XD-S5000/5500は,機能にせよ,価格にせよ,PW-8000/8100やIDF-4000と比較すると勝っている点はないと言っても過言ではありません。デザインはPWシリーズよりもいいのかもしれませんが,IDF-4000と比較すれば大して変わりません。単なる旧機種の焼き直しではなく,使い勝手や機能に関しての抜本的な改革が望まれます。
5.2. 電子ブックプレーヤー
DD-RE10 (ソニー) http://www.sony.co.jp/sd/
リーダーズ・リーダーズプラスの各英和と新和英中辞典(第4版)の本文全てを収録しています。英和の収録語数45万語は国内最大で,OEDに匹敵します。とくに固有名詞や新語に強いので,実用的に英語を使う者にとってはOEDよりも役立ちます。なお,電子ブックプレーヤーは,この機種以外にもいくつか出ていますが,大きさや重さ,付属ソフトの種類などが違うだけで,どの機種でも市販の電子ブックソフトはすべて使うことができます。
6. 代表的な電子辞書(海外メーカー)
ER-2000(セイコーインスツルメンツ(UK))
本格的なthesaurusを収録しているのに,小さくて安い(日本では4000円ぐらい)という,まさに電子辞書の掘り出し物とでもいうべき機種です。日本の電子辞書の最大手であるセイコーインスツルメンツの製品ですが,イギリス支社? の扱いなので,日本で手に入れるのは難しいです(秋葉原のLaox本店で扱っています)。ER-2000は,写真からも分かるように,画面もキーボードも小さいので,中身も大したことがない,と錯覚してしまいがちですが,外見に似あわず,冊子体のOxford Concise Thesaurusをフル収録しています(Thesaurusのみで,辞書は入っていません)。Conciseといっても,洋書店で売っているペーパーバックサイズのthesaurusよりははるかに語数が多いので,英語のプロの人の要求にもこたえられると思います。日本で売られているSIIの電子辞書についてくるRogetのthesaurusが使いものにならない,と感じていた人はthesaurus専用のセカンドマシンとして重宝すると思います。冊子体のthesaurusのように,見出し語をタイプして,その語の類語を調べることはもちろん,見出し語にない語でも,その語が別の見出し語の類語部分に入っていれば,探し出してくれます。そのため,実質的な収録語数は冊子体のthesaurusよりもかなり多くなっています。日本では私のようなレファレンスオタク? でも知っている人はそうそういないと思いますが,英語を書く機会が多い人で,冊子体のthesaurusを手放せない方には,自信を持っておすすめします。
広辞苑を収録したり,2冊の英和辞典を収録したりと,日本製のIC辞書の中身はここ数年で大きく向上しましたが,thesaurusは「おまけ」の印象が強く,SIIのフルコンテンツ1号機(TR-700)に収録したものと全く同じもの(Roget II The New Thesaurus)や,独自編集の貧弱なものを載せているのが現状です(ロングマンのthesaurusを収録したSR-8000は別格ですが)。私としては,ER-2000ぐらいの内容のthesaurusをぜひ日本製のフルコンテンツIC辞書にバンドルしてほしいと思っています。
Quicktionary D-Fine (Wizcom) http://www.wizcomtech.com
従来の電子辞書と異なり,キーボードはなく,ペン型のスキャナ型になっています。原理としては,コンビニや図書館などにあるバーコードリーダーと同じで,文字認識で意味を表示するものです。キーボードがないので本体は小さく,ペンケースと同じぐらいのサイズです。ただ,若干太いので,日本人の手には持ちにくいです。
英字新聞や雑誌などを読んでいて分からない単語があった場合,従来の電子辞書ではキーボードでスペルを入れる必要がありました。しかし,Quicktionaryでは,分からない単語をなぞるだけで意味を表示してくれます(翻訳機ではなおので,英文をなぞって意味が出るというわけではありません)。左手に本を持ち,右手にQuicktionaryを持っていれば,非常にスムーズに辞書が引けます。とくに電車の中などで英字紙を読む人は重宝するでしょう。認識精度もかなりのもので,少し練習してなぞるコツさえ飲みこめば,ほぼ100%認識できます(なぞり方を説明したビデオまでついてきます)。どうしても認識できない単語は,Opticardという付属のバーコードシートを使って,一文字ずつ入力することもできますが,キーボードを使うわけではないので,面倒です。
Quicktionaryは,「英文を読んでいる途中に出てきた単語を引く」という目的に特化しています。言いかえれば,頭に浮かんだ単語など,文字になっていない単語を引くのは,前述のOpticardを使う必要があり,かなり面倒です。ですから,日常的に高度な英文をしょっちゅう読む人にとっては,キーボード型の電子辞書より重宝しますが,そうでない人にはあまり利用価値はありません。
Quicktionaryは様々な言語のバージョンがありますが,英英版は,American Heritage College Dictionary (AHD) 3rd ed.,または,New Oxford Dictionary of English Language (NODE)をフル収録したものの2種類があります。NODEのほうが若干語数が多く,刊行年も新しい(1998)のでおすすめです。いずれも,英和辞典で言うと,小学館のプログレッシブと研究社のリーダーズの中間あたりの語数です。ネイティブ用の辞書なので,例文や文型といった学習辞典的要素は割愛されています。英和版のquicktionaryは日本でも売っていますが,収録語数が30000語弱で,しかも独自編集の内容です。例文や文法記述がなく,単語集に毛の生えた程度なのに2万数千円もするので,非常にお粗末です。英英版は178ドル(送料サービス)で個人輸入できます。
SCD-770 (Franklin Electronic Publishers, inc) http://www.franklin.com
Franklin社は,アメリカの電子辞書業界では老舗で,たぶん最大手のメーカーだと思います。SCD-770はFranklinのモデルの中では唯一フルコンテンツのモデルで,Merriam Webster's Collegiate Dictionary (MWCD 10th edition)の文字情報すべて(発音表記を除く)を収録しています。MWCDは,アメリカの大学生や一般社会人が常用しているカレッジ版辞書の中でもトップシェアを誇るものです。我々NNSには語義がかなり難しいのですが,TOEFLでover 550あたりの人で,日常的に英字新聞や雑誌を読む人にとっては,いわゆる学習英英辞典(OALD, LDCE, COBUILDなど)では語数が少なすぎますので,MWCDをはじめとしたカレッジ版英英辞典はmustといってもいいと思います。
といっても,冊子体のカレッジ版英英辞典は,机の上で使うことが前提になっているので,ハードカバーで分厚く,日常持ち歩くことは不可能です。SCD-770は200グラムぐらいで,背広の内ポケットにゆうゆうで入ります。250000語程度収録していますので,かなり特殊な固有名詞や専門用語もカバーされています。
SCD-770は,Bookmanという,いわゆる電子ブックのように,カートリッジを追加することで別の書籍も検索できる規格になっています。たとえば,別売りのColumbia Concise Encyclopediaのカートリッジを購入してSCD-770にとりつければ,MWCDという「ことば典」と,百科事典という「こと典」を1つの電子辞書で検索できます。これは実に便利です。
ジーニアスや新英和中辞典などをフル収録した日本製の電子辞書は,語数が少ないかわりに例文や文法記述が充実していますので,production用(ライティングなど)に使い,SCD-770はリーディング用に使うと重宝します。
ED-7780 Adaptive Learning Vocabulary Builder(セイコーインスツルメンツ(US))
American Heritageの簡略版の英英辞書(それほど語数はありません)とRoget, Word Finderという2種類のThesaurus 2種類に加え,ボキャビル機能がついています。TOEFLやSATなどでおなじみの,ある単語の類義語を4択で選ぶテストができます。
ボキャビル機能では,ユーザの正答率をコンピュータが自動的にモニターし,テストで出題される単語の難易度がダイナミックに変動します。間違いが多いようなら,自動的に出題される単語のレベルが1ランク下がり,正答が多ければ,1ランク上がります。ほとんど満点ばかりであれば,飛び級式に途中をいくつか飛び越えてランクアップすることもあります。また,以前に出題された問題が選択肢を変えて再出題されることもあり,その際に間違えたりすると,自動的に(新しい問題ではなく)以前の問題が出される比率が高くなります。このように,ユーザのレベルや定着度に応じてコンピュータが自動的にレベルを調整したり,復習を多くしたりするので,定期的にボキャビル機能を使うことで,無理なく語彙力がアップするようになっています。
ED-7780は,英語母語話者の小学生から大学生まで幅広いレベルに対応しています。日本人の場合,かなり英語に自信がある人でも,大学生レベルでは難しいと思います。どこのランクから開始するかは自分で決めることもできますし,小テストを行い,その結果からコンピュータがユーザのレベルを判断するようにもできます。ボキャビル機能で間違えた単語はユーザ登録して後日重点的に復習をすることもできますし,thesaurusや辞書機能に切り替えて調べることもできます。
★このガイドで紹介した電子辞書の機能・仕様一覧(詳細は各メーカーのカタログを参照)
DD-IC2050 |
IDF-3000 |
PW-8000 |
SR-8000 |
SR-9100 |
SR-900 |
XD-S3000 |
DD-RE10 |
||
メーカー |
ソニー |
キャノン |
シャープ |
SII |
SII |
SII |
カシオ |
ソニー |
|
標準価格(円) |
オープン |
32,000 |
40,000 |
38,000 |
38,000 |
32,000 |
38,000 |
41,800 |
|
実売価格(およそ) |
29,800 |
19,800 |
32,800 |
29,800 |
32,800 |
25,800 |
29,800 |
31,800 |
|
重さ(グラム) |
126 |
230 |
184 |
240 |
240 |
145 |
240 |
410 |
|
電池寿命(時間) |
120 |
180 |
100 |
80 |
80 |
40 |
130 |
14 |
|
最大表示文字数* |
180 |
120 |
286 |
442 |
442 |
114 |
442 |
||
英和(語数) |
90,000 |
65,000 |
92,000 |
90,000 |
260,000 90,000 |
90,000 |
92,000 |
450,000 |
|
和英(語数) |
70,000 |
25,000 |
80,000 |
70,000 |
70,000 |
70,000 |
80,000 |
70,000 |
|
類語 |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
||||
英英(語数) |
80,000 |
84,000 |
(別売) |
||||||
国語(語数) |
230,000 |
65,000 |
230,000 |
230,000 |
230,000 |
(別売) |
|||
漢字 |
○ |
○ |
○ |
○ |
(別売) |
||||
絞り込み検索 |
○ |
○ |
○ |
○ |
|||||
ワイルドカード検索 |
1文字 |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
||
複数文字 |
○ |
○ |
○ |
○ |
|||||
スペルチェック |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
||
成句検索 |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
|
履歴(語数) |
50 |
30 |
30 |
50 |
13 |
26 |
20 |
10 |
|
ジャンプ(回数) |
20 |
10 |
10 |
10 |
10 |
10 |
5 |
||
電卓 |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
*全角文字での表示文字数(最も小さいフォントを選択した場合)