※ソフトウェアタイトルがカラーになっているものは,クリックするとさらに詳しい情報が得られます。
1. はじめに
Windows 95とインターネットの普及により,ついにパソコンの所有率が日本人全体の1割をこえたそうです。それにつれて,英語学習に役立ちそうなマルチメディア教材も様々なものが開発され,専門誌のコラムや学会の展示ブースなどで紹介されてきています。しかし,学習者向けの教材が数多く発売され,PRもかなりされているのに,現場で語学教育に携わる教師や研究者にとって役立つソフトを紹介した文献は,非常に少ないのが現状です。
本稿は,学習者向けマルチメディア教材の華々しい蔭に埋もれかけている,語学教師,研究者向けの優れたソフトウェアを,主に研究仲間の院生や,後輩の学部学生の方々に紹介することを目的としています。とくに,従来,英語教育雑誌等の紹介記事ではほとんど取りあげられなかった辞書ソフトに関しては,かなりの紙数を割き,検索方法の種類といった,かなり「ヲタク」的な側面にまで踏みこんで解説しました。また,フリーウェア,シェアウェアといった,無料,あるいは非常に安価なソフトも積極的にとりあげています。これらのソフトは,市販ソフトのような多くの機能やきめ細かなユーザーサポートは望めませんが,コストが非常に安いので,私を含め,学生にとっては非常に有り難い存在です。「パソコンを買ったけど,市販のソフトは高いので,結局ワープロソフトしか持っていない」という方は,ここであげたフリーソフトを手に入れて使ってみてください。きっと,「こんなにパソコンは便利なのか」と感じることでしょう。
記述に際しては,カタログ等を見れば分かるような表面的,客観的なことは最小限にとどめ,実際に私が使ってみた印象をかなり重視しています。これに関しては賛否両論あるでしょうが,カタログの数字では現れない細かな操作性が,結局はそのソフトの使い勝手を大きく左右するということも事実ですので,あえてこのようにした次第です。本稿で取りあげたソフトは,ごく一部(電子ブックプレーヤー本体のDD-85, DD-300)を除き,すべて私自身が持っていて,毎日のように使っているものの中から厳選しています。そのため,たとえ評価が辛口であっても,それが,ある特定のソフトを誹謗,中傷する意図は全くありません。
本稿で扱ったものに限らず,ソフトウェアの動作は,ハード(パソコン本体)の性能に大きく左右されます。本稿の記述は,すべて私のパソコン(DynaBook Portege 620CT: Pentium 100MHz, 24MB RAM, 1.3GB HD)における動作をもとにしています。そのため,たとえ本稿で「快適に動作する」と書かれていても,上記のスペック以下のパソコンでは「快適」でない可能性があります。ご注意下さい。
インターネットの世界は非常に奥が深く,ここで扱った以外にも,まだまだ優れたフリーウェア・シェアウェアが埋もれている可能性が多々あります。今後の改訂に反映させていただきたく存じますので,内容面でのコメントとあわせて,ご教示下されば幸いです。
2. 電子辞書・辞書ソフト
2.1. 電子辞書をどうとらえるか
近年の電子辞書の発達はめざましく,高校生や大学生でも1クラスの何分の1かは,紙の辞書(冊子体辞書)のかわりに電子辞書を使っているようです。今後はますますその傾向が強まることが予想され,実際,専門家の中には,あと数年もすれば辞書を「押して引く」時代が来る,と言われる方もみえます。しかし,電子辞書を使っている人に聞いてみると,その大半は,単に紙の辞書より軽くて小さいからというような理由で使っているようです,
確かに,電子辞書は紙の辞書に比べて軽く,小さく,薄いため,携帯性は抜群です。でも,たったそれだけのために何万円も投資するのはどうかという気もします。だって,重い辞書を持ち歩くのがいやなら,同じ紙の辞書を2冊買って,1冊は自宅に,もう1冊は大学のロッカーや研究室に置いておくほうがずっと安上がりでしょ? 安くなったとはいえ,まだ同じ冊子体辞書の5倍はするのが電子辞書です。それだけ大枚をはたいてまで電子辞書にするメリットは何か,これから見ていきましょう。
2.2. 電子辞書ではこんなことも調べられる
電子辞書の最大のメリットとして,検索の多彩さ,柔軟さがあげられます。逆に言えば,充実した検索機能が電子辞書の最大のウリであり,大きさや軽さなどは副次的なものであると言っても過言ではありません。通常の英和や英英辞典の場合,冊子体辞書はアルファベット順に単語が並んでいます。自分の引きたい単語の綴りが完全にわかっている場合はこれで何の問題も起こりませんが,うろ覚えだったり,まったくスペルがわからない場合などはお手上げです。たとえば,以下の5つの事例は,いずれも,私が,友人,知人の院生や学部生の方々から尋ねられたものですが,皆さんならどうやって調べますか? このような疑問は,通常の辞書ではまず調べようがありません。そこで,電子辞書の出番となります。それぞれの事例で用いる検索の種類を示しましたので,具体的な検索方法は,1.4.1の該当項目を参照してください。
★事例1:熱帯魚マニアのAさん。「何とかtetraとかいう魚の名前なんだけど,”何とか”がどうしても思い出せない!」→後方一致検索,パターン検索
★事例2:英字新聞のクロスワードに興じるB君。「2文字目がg, 5文字目がs, 8文字目がcの8文字の単語って何だろう?」→パターン検索
★事例3:英国留学の土産話をしているCさん。「イギリスで,夕方前にとる食事…度忘れしちゃった。ほら,何て言ったっけ?」→本文検索
★事例4:ScrabbleフリークのD君。「k, y, l, q, i, u, cの7文字を並べかえて,何か単語はできないかなぁ?」→アナグラム検索
★事例5:英語史を専攻するEさん,「Qで始まる英単語のほとんどは,次にuがくるでしょ? でも,例外だってあるはず。そんな単語を調べて綴り字の史的変化に関するレポートを書きたいんだけど…。」→正規表現検索
2.3. 電子辞書の種類
2.3.1. IC辞書
数年前までは,大半の電子辞書がこのタイプでした。小型軽量で,長時間の電池駆動ができるのが最大の特徴です。電子ブックなどと異なり,可動部分がないので,消費電力が小さく,最低でも数十時間程度の連続使用が可能(毎日頻繁に使っても2〜3ヶ月ぐらいは持ちます)です。また,CDの特性で,電源を入れるたびに数秒待たされる電子ブックと異なり,電源ONですぐ検索に移れるのでストレスなく使えます。最近は,冊子体の辞書の文字情報をすべて(例文や解説を含む)収録したものが主流になっています。
電子ブックやCD-ROM辞書の普及にともない,割高なIC辞書は影が薄くなってきていますが,学生などを中心に根強い人気があるのも事実です。
PW-5000 (シャープ)
ザウルスなどの携帯情報端末で有名なシャープから最近発売された電子辞書で,ジーニアス英和辞典(大修館書店),プログレッシブ和英中辞典(小学館),英語類語使い分け辞典(創拓社),TOEIC基礎2400語(語研)の本文すべて(文字情報のみ)を収録しています。操作は,画面上に現れるキーを付属のペンでタッチすることによって行うので,他の電子辞書のようなキーボードはありません。これは好みの分かれるところですが,経験上,キーボードがない機種のほうが,満員電車の中や授業中に使っていても違和感がないようです。また,キーボードがないぶん,TR-9700などにくらべて表示画面が大きく,小型軽量であることは大きなメリットでしょう。画面も,液晶で定評のあるシャープだけに非常に見やすく,長時間使っていても目が疲れません。国語辞典がなくてもいいから,軽くて小さい電子辞書がほしいという人におすすめしたい機種です。
ジーニアス英和とプログレッシブ和英の組み合わせは,高校生はもちろん,英語を専門にしている人にとっても便利なのですが,英語類語使い分け辞典は,収録語数が少なすぎて使いものになりません。TR-9700のように,使い分けの説明はなくても,もう少し語数の多い類語辞典(Roget's Thesaurusなど)を載せてほしいと思うのは私だけではないでしょうし,ジャンプ機能が変化形に対応していなかったり,スペルチェック機能がTR-9700などにくらべて遅いなど,シャープ初の本格的なIC辞書だけに,カタログなどに現れない,細かなところで仕上がりに欠ける面が見られるのは残念です。
TR-9700 (セイコー電子工業)
研究社の新英和(第6版),新和英(第4版)中辞典,広辞苑(第4版)の本文すべてと,Rogetの類義語辞書を収録しています。コンパクトな折りたたみ式ボディーは女性にも違和感のないデザインで,気楽に使うことができます。CD-ROM辞書のような高度な検索はできませんが,単に紙の辞書を小さく,軽くしたもの,と割り切れる人にとっては,何の不満もないでしょう。
LM-6000 (Franklin)
アメリカ製電子英英辞書の決定版です。12種類の単語ゲームや類語辞書,合成音声による発音機能,パターン検索など,非常に多機能ですが,日本製のIC辞書に比べて操作が直感的で,誰でも簡単に使いこなせるのが特徴です。Franklin社は,IC辞書開発の歴史が長いこともあり,豊富な機能はもとより,使ってみないと分からないような細かな点の操作性の良さは,日本製のIC辞書にも見習ってほしいところでしょう。発売後5年近くたちますが,いまだに古さを感じさせず,私も気に入っています。以前は丸善でも輸入販売されていましたが,英英辞書ということもあり,日本ではあまり売れなかったようで,最近は見かけません。
WP-6500 (セイコー電子工業)
業界随一の,IC辞書版学習英英辞典で,Longman Dictionary of Contemporary English (第2版)の本文すべてを収録しています。英英辞書であるのに,TR-9700のような,日本語を表示する機種とほぼ同じ画面サイズを採用しているので,表示文字数が多く,一覧性が高くなっています。日本のIC辞書では珍しい全文検索(速度が遅すぎてちょっと使いものになりませんが)や単語テスト機能,自分で定義を書き込めるパーソナルディクショナリー機能など,ユニークな機能も満載しています。統制語彙による分かりやすい定義や豊富な例文,きめ細かな文法,語法表記など,使いこなせば英和辞典よりも得るものが多く,LDCEを冊子体のころから常用している私にとっては手放せない電子辞書の一つです。しかし,英和辞典さえまともに使いこなせない学習者の多い日本では,LM-6000同様,あまり受け入れられなかったようで,今では売っていません。
2.3.2. 電子ブック
電子ブックは,8cm CD(CDシングルと同じ大きさ)を用いた一種のCD-ROM辞書です。IC辞書の携帯性と,CD-ROM辞書の経済性,大容量を両立させたもので,今から7年前に第1号機がソニーから発売されました。初期の機種は,画面が非常に見にくく,電子ブックタイトルの数も少ないこともあってあまり普及しませんでしたが,最近の機種はかなり改善されてきています。
CD-ROM辞書に比べて検索に融通がきかない(しょせんは「ブック」なのだから)とか,IC辞書に比べて重く,電池寿命も短い(最長で約14時間)など,中途半端な面も多々ありますが,持ち運べる電子辞書を欲しいという場合は,今なら,IC辞書より,以下にあげるような電子ブックプレーヤーを選ぶのが得策でしょう。IC辞書と異なり,1台プレーヤーを買えば,あとはソフトを交換するだけで様々なタイトルの辞書が使えるので,非常に経済的です。
電子ブックプレーヤーには様々な種類があり,付属ソフトの種類や若干の機能の違いはありますが,統一規格になっているので,本体の性能に大きな差はありません。よほど古い機種でなければ,どのプレーヤーでもすべての電子ブックを再生できますし,使い方も同じなので,選ぶ際は,どの辞書が付属しているかということを基準に選べばいいと思います。
DD-95 (ソニー)
リーダーズ・リーダーズプラスの各英和と新和英中辞典(第4版)の本文全てを収録しています。英和の収録語数45万語は国内最大で,OEDに匹敵します。とくに固有名詞や新語に強いので,実用的に英語を使う者にとってはOEDよりも役立ちます。DD-300より語数が多いぶん,翻訳者,通訳,英語教師といった「英語のプロ」をターゲットにしているようですが,バックライト付きの見やすい液晶画面は,通訳ブースなど,薄暗い場所では重宝するでしょう。
DD-300 (ソニー)
研究社の新英和・和英中辞典(重要英単語の発音も収録)の最新版と,広辞苑(鳥の姿と鳴き声も収録)をフル収録しています。右の写真からは分かりにくいですが,従来機種(DD-95など)にくらべて重さ,大きさとも格段に小さくなりました。英語の専門家には物足りないでしょうが,一般向けとしては,国語辞典が入っているぶんDD-95より有用です。
DD-85 (ソニー)
三省堂の辞書11種類を収録しています。英和,和英,国語に加え,故事,慣用句,類語,漢字,手紙文など,あらゆる分野の辞書を集約しているので一見便利そうですが,種類が多いぶん,辞書1冊あたりの情報量は少なく,専門用途には向きません。中でも,国語辞典の貧弱さが目立ちます。
2.3.3. CD-ROM辞書
ここ数年のパソコンやCD-ROMドライブの普及に伴い,雨後の筍のように登場してきたのがこのCD-ROM辞書です。電子ブックも見方によってはCD-ROM辞書の一種でしょうが,このガイドでは,12cm CDを用い,パソコン上で使うソフトをCD-ROM辞書と表します。
CD-ROM辞書の長所は,とにかく情報量が多いということです。12cm CDは電子ブックで使われている8cm CDの約3倍の記憶容量を持つため,あのOEDでさえ1枚におさまってしまいます。カレッジ版程度の英英辞書なら,全文字情報にくわえて図版や発音といった,図形や音声の情報も盛り込めるため,冊子体の辞書には真似できない検索も行えます。また,検索した結果を印刷したり,ワープロなどの他ソフトにコピーしたりといった,データの加工や再利用も容易で,使いこなすにつれて様々な利用法が考えられます。ソフトの定価も最近は安くなり,OEDのCD-ROM版のように,冊子体の数分の1程度の価格になっているものもあります。
短所としては,パソコン上でしか使えないため,持ち運びに不便(ノートパソコンでも,冊子体辞書の数倍の大きさと重さがある)であることや,パソコンを持っていない人がCD-ROM辞書を使おうと思うと,かなりの出費になるということがあげられますが,持ち歩く際は電子ブック,家ではCD-ROM辞書と使い分けるのが得策でしょう。
American Heritage Dictionary 3rd ed. on CD-ROM (Win / Mac)
冊子体のAmerican Heritage Dictionary (AHD)は,類書に見られないほどの豊富な図版と詳細な語法記述が特徴で,百科事典の特色を備えたカレッジ版辞書として親しまれています。
電子版AHDは,MS-DOS版のころからバージョンアップを重ねているだけあって,ユーザーインタフェースが素晴らしく,細かな使い勝手や画面の見やすさ,信頼性は他を寄せつけません。本文からの検索(Word Hunter)やパターン検索など,特殊な検索機能も一通り備えており,どのソフトがいいか迷ったときにはこれを選べば無難といった感じです。
Cobuild on CD-ROM (Win)
Cobuildの英英(旧版)と語法辞典,文法辞典を1枚のCD-ROMに収録しており,相互に参照することができます。その他,Collins社が蓄積している大規模コーパスのBank of Englishの中から一部分(約500万語)を抜き出したWord Bankというデータベースも入っているので,語法研究に重宝します。辞書の中身自体は素晴らしいのですが,内容の割にファイルサイズが巨大(辞書部分だけで約350MB)なことや,検索プログラムの使い勝手が良くないといった欠点も多々ありますが,以前よりもかなり値下げされ,買い得感は高まりました。
Concise Oxford Dictionary 9th Edition on CD-ROM (Win)
Concise Oxford Dictionary (COD)は,長い歴史をもつ小型英英辞典です。従来のCODは,略号を多用し,限られたスペースに多くの情報を盛り込む,いわゆるtelegrapheseを多用していたため,外国人には使いにくいという印象がありましたが,近年の度重なる改訂で,定義も非常にわかりやすくなりました。もちろん,分かりやすくなったといっても,OALDやLDCEのような学習英英辞典のようにはいきませんが,ふだんアメリカのカレッジ版英英を使っているぐらいのレベルの学習者なら十分使いこなせます。
このCD-ROM版はCODの最新版(第9版)を丸ごと収録しています。機能的にはそれほど多くありませんが,その分,パソコン初心者の人でも気楽に使うことができます。ただ,メニューバーがなかったり,各機能のボタンが分散していたりと,Windows用ソフトに慣れている人にとっては,逆に使いにくく感じるかもしれません。
Longman Interactive English Dictionary (Win)
学習者向け英英辞典で高い評価を得ているLongman Dictionary of English Language and Cultureを基本に,英語学習者向けに様々な工夫を凝らしたCD-ROMです。Interactiveという名前のとおり,単に単語の意味を調べるだけでなく,発音を聞いたり,その単語を用いたダイアローグを視聴(動画と音声)したり,関連する文法事項を調べたりといった様々な使い方ができます。
内容的には面白いソフトですが,検索エンジンに若干バグがあるようで,とくにWindows 95上では環境によって動作が不安定になる場合があります。また,動画や音声データの容量が膨大なので,ハードディスクにインストールして使うことは事実上できません。値段が高い(25,000円)こととあわせ,今後のバージョンアップに期待したいところです。
アメリカ英語版もあります。
Merriam Webster's Collegiate Dictionary 10th ed. on CD-ROM(Win / Mac)
Merriam Webster's Collegiate Dictionary (MWCD)は,1世紀近くの歴史を持ち,数あるカレッジ版英英の中でも老舗的存在です。定義は簡潔で,我々nonnativeにとっては分かりにくいですが,regional variationも考慮に入れた精密な発音表記や,初出年を添えた語源欄,OEDを彷彿させる歴史的配列の語義など,専門家には評価が高い辞書です。
CD-ROM版のMWCDは,検索キーに正規表現が使えたり,語源,初出年といったフィールドごとに検索できるなど,他ソフトにくらべかなりマニアックな(電子辞書らしい)検索ができます。ただ,他ソフトにくらべて,特殊な検索はかなり遅いのが難点です。
Microsoft / Shogakukan Bookshelf (Win95)
小学館のプログレッシブ英和・和英辞典,国語大辞典をはじめとする6冊の辞典を1枚のCD-ROMにおさめたものです。文字情報に加え,動画や図版,音声データも充実しているので,子供から大人まで,誰でも親しめます。しかし,動作はかなり重く(快適に使うには,最低でも6倍速ぐらいのCD-ROMドライブは必須でしょう),実務や研究上の道具として辞書ソフトを使う人にとっては使いにくいかもしれません。ファイルサイズはかなり大きく(文字情報のみで約380MB),ハードディスクへコピーして使うことは事実上不可能です。
検索は,通常検索に加え,本文からの検索など,必要十分な機能は備えていますが,いわゆる「あいまい検索」ができません。そのため,たとえば「犬」と(漢字で)キーワードを入れると,和英辞典(漢字見出しになっている)を引くことはできますが,国語辞典(かな見出し)の「いぬ」を引くことはできません。また,このCD-ROMに収録されている国語辞典(国語大辞典)は,同じ小学館の「大辞泉」にくらべ,現代語や固有名詞が弱いので注意が必要です。
New Shorter Oxford English Dictionary on CD-ROM (Win)
New Shorter Oxford English Dictionary (NSOED)は,OEDの引用例文の多くや細かな語源記述を削った簡約版です。簡約版と言っても,歴史的原則に則った編集や,語義ごとに記した初出年代など,OEDの「おいしいところ」はしっかり盛り込まれているので,OEDの入門用としても最適です。
このCD-ROM版NSOEDは,豊富な検索機能と使い勝手の良さを両立させており,豊富な情報を縦横無尽に操ることができます。特に,廃語義における最終使用年代での絞り込みや,用法表記からの検索などは,CD-ROM版OEDにもない機能です。CD-ROM上で検索することを前提としていますが,ファイルサイズは約170MBと,内容の割には小さいので,パソコンの知識がある人は,自力で設定ファイルを書き換えて,ハードディスクにコピーして使うのもいいでしょう。
正規表現を用いた検索ができないことや,CD-ROM版OEDのような検索式(query language)が使えないなど,欲を言えばきりがありませんが,英語を専門的に研究している人にとって拠り所となる,数少ないCD-ROM辞書として,とくに英米文学や歴史言語学の研究者の方におすすめします。
Oxford Advanced Learner's Dictionary on CD-ROM (Win)
Oxford Advanced Learner's Dictionary (OALD)は,学習英英辞典のパイオニアであるIdiomatic and Syntactic English Dictionary (ISED)の流れをくむ,英語学習者向け英英辞典の老舗です。従来のOALDは,文型表記が非常に煩雑で,定義も,学習辞典としては難解であったためか,ライバルのLongman Dictionary of Contemporary English (LDCE)に押され気味でした。しかし,最近の改訂ではLDCEの良さを積極的にとりいれ,語義記述において約3500語の統制語彙を用いたり,直感的に分かる文型表記を採用したりといった使い勝手の向上が図られ,LDCEが今回の改訂で想定使用者のレベルを若干下げたことと相まって,上級学習者はもちろん,専門家にとっても手放せない,"advanced"の名にふさわしい学習英英辞典としての地位をゆるぎないものにしています。
CD-ROM版のOALDは,図版が大幅に増強され,単語ゲーム機能や発音機能などとあわせ,学習者が楽しんで使える工夫が至る所になされています。検索機能も,文型表記やスピーチレベルで絞りこんだり,ブール演算子を用いた語義内検索など,必要十分なものは備わっています。短所としては,違法コピーを防ぐためか,起動時に必ずCD-ROMを挿入する必要があるので,CD-ROMドライブが内蔵されていないノートパソコンなどでは使いにくいということがあげられます。また,収録語数や機能の割に値段が高い(20,000円弱)のも何とかしてほしいものです。
Random House Webster's Unabridged English Dictionary on CD-ROM (Win)
Random House Webster's Unabridged English Dictionary 2nd edition (RHD2)は,「ランダムハウス英和大辞典」(小学館)のもとになっているもので,アメリカの辞書ではWebster's 3rd International Dictionary (Web3)の次に収録語数の多いものです。Web3よりも刊行年が新しく,新語やスラングなども積極的に採用しています。
CD-ROM版のRHDは,言うまでもなく書籍版の本文(付録を除く)丸ごと収録していますが,情報量のわりにファイルサイズが小さく(全部で約30MB),ハードディスクにもインストール可能です。総収録語数は30万語をこえ,ハードディスクで使える英英辞書の中では最大ですので,とにかく語数の多いCD-ROM辞書が欲しい方へおすすめします。最近のバージョンアップにより検索速度が大幅に向上し,図版や発音機能のサポートとあわせ,より使いやすくなりました。
Webster's New World Dictionary 3rd College Edition on CD-ROM (Win / Mac)
冊子体のWebster's New World Dictionary (WNWD)は,語源記述の精密さと,意味の流れ(semantic flow)を重視した丁寧な語義記述が特徴です。とくに,必要に応じて印欧祖語にまで遡る語源記述は,時としてOEDより詳しいこともあり,大きな評価を得ています。類書に比べると新語の収録にも保守的で,地味な存在ですが,そのぶん大学やジャーナリズム関係などからは高い評価を得ています。
このCD-ROM版は,日本では見かけませんが,アメリカでは大変安く($19)販売されています。検索は,見出し語検索と本文中の語句からの検索のみで,パターン検索やアナグラム検索など高度なことはできません。高度な検索がウリのCD-ROM辞書の中では物足りない存在ですが,そのぶん,ファイルサイズも小さく,操作も簡単で,電子辞書は初めてという人にも安心しておすすめできます。表示フォントのサイズが変更できないのが難点ですが…。
DDWIN (フリーソフト: Win95)
電子ブックをパソコン上で再生するための検索ソフトです。パソコンを持っている人は,DDWINを使えば,電子ブックプレーヤーを買わなくても電子ブックが活用できます。ハードディスクにゆとりがあれば,電子ブックを丸ごとハードディスクにコピーして使うと,いちいちディスクを差し替える手間が省けるので便利です。電子ブックは,最大でも1タイトルの容量が約200MB(12センチCDは最大で700MB近くにもなる)なので,複数のソフトをハードディスクにインストールしてもそれほど容量を食いません。ただ,著作権には十分注意して下さい。とくに,1枚の電子ブックを複数のハードディスクにコピーしたり,教育機関などでLANサーバーにコピーして,複数の端末からアクセスするのはまずいです。
2.4. 辞書ソフトを選ぶポイント
2.3では,多くの電子辞書,辞書ソフトを簡単に紹介しましたが,皆さんの中には,数が多すぎてどれを選んだらいいか分からない,と感じる人も多いでしょう。ここでは,カタログや一般の紹介記事ではあまりとりあげられない,電子媒体の独特の検索法や,電子辞書を引きやすくするための機能を紹介します。この中から,皆さんにとって必要な機能をピックアップし,巻末のスペック表と照らし合わせながら,あなたのニーズにあった辞書を選んでください。
2.4.1. 検索に関する機能
パターン検索:単語の綴りが部分的にしかわからない場合に用います。?(任意の1文字),*(任意のn文字)の2種類の記号と,わかっている文字を組み合わせれば,そのパターンに該当する単語がリストアップされます。B君のクロスワードの場合は,?t?an???と入れれば、Atlantic, stranded, stranger, strangle…と出てきます。あとは,パズルのカギなどから判断してこの中から正解を選べばいいわけです。Aさんの場合も,*tetraと入れれば,neon tetraのことだ,と分かります。電子ブックプレーヤーでは,パターン検索はできませんが,事例1のAさんのような疑問は,後方一致検索を用いれば解決します。 本文からの検索:ふつう,冊子体の辞書は,単語自体は知っているがその単語の意味が分からない場合に引きます。しかし,電子媒体の辞書は,逆に単語の意味は知っているが,単語自体を知らない場合にも引くことができます。先ほどのCさんの事例がこれにあたります。イギリスでの夕方早くの食事を表す語なのだから,British AND early AND evening AND mealとキーワードを入れて(British, early, evening, mealのすべてを本文に含む単語)本文検索を行えば即座にhigh teaと答えが出てきます。 アナグラム検索: Scrabbleなどのword gameをする際に便利な検索方法で,文字列を入れれば,それらを並べかえてできる単語を示してくれます。D君の事例も,アナグラム検索でKYLQIUCをキーワードに入れると,即座に並べかえて"quickly"と結果を出してくれます。 正規表現検索:「正規表現」なんて聞き慣れないでしょうが,簡単に言えば,前述のパターン検索を発展させたものです。正規表現の解説だけで1冊の本になってしまうほどですから,細かな説明は省きますが,高度な検索をする人には便利です。Eさんの場合も,正規表現検索を用いれば,キーワードにq[^u]*と入れるだけで,qanat, Qatar…と該当語が出ます。2.4.2. 使い勝手をよくする機能
スペルチェック機能:比較的古くから電子辞書に備わっている機能で,スペルがあやふやでも検索できるようにするものです。先ほど紹介したLM-6000のように,「スペルチェック」をユーザーが意識しなくても,単語を入力すれば,そのスペルを自動的に判定し,正しければ語義を表示し,間違っていればスペルチェックモードに切り替わり,正しいと思われる単語の候補をリストアップするという形態が理想的です。しかし,日本製のIC辞書のほとんどは,単語を入れる前に「スペルチェックモード」に切り替えないとチェックできない,つまり,ユーザーが,自分の入れる単語が正しいのか誤っているのかを知っていないと辞書が引けないので,あまり役にたちません。最近の電子ブックプレーヤーにもスペルチェック機能のついているものがありますが,これはかなり遅く,使いものになりません。 ヒストリー機能:機種によって,「履歴」「しおり」など呼び方は異なりますが,引いた単語を何語か(機種によるが10〜50語ぐらい)記憶し,次に同じ単語を引くときはリストから簡単に選択できるようにする機能です。いちいちタイプし直す必要がないので,未知の単語は1回辞書を引いたぐらいでは覚えられない,という人には重宝します。 プッシュバック機能:電子ブックでは連続検索機能とよばれているもので,新しい単語を引く際,「クリア」などのボタンで前の入力単語を消去しなくても,そのまま単語を入れるだけで入力画面に切り替わるというものです。未知語の多い英文を読む際などは,この機能の有無で電子辞書全体の使い勝手が決まってしまうほどのものですが,カタログなどを見ただけでは分からないので困ります。巻末のスペック表で確認してください。 RTF出力機能: CD-ROM辞書特有の機能です。辞書の内容を他のソフト(ワープロ等)へ貼り付ける際は,クリップボードという領域を使って行われますが,通常は,クリップボードを通すと,文字の大きさや書体,レイアウトといった装飾情報がすべて解除されてしまいます。そのため,検索結果をワープロ上にコピーしても,非常に見づらくなってしまうのですが,RTF (Rich Text Format)形式でコピーする機能を持った電子辞書なら,装飾情報も含んだ特殊な形式でコピーされるため,RTF形式をサポートするワープロソフト(Microsoft WordやWindows 95に付属のWordpadなど)に貼りつければ,辞書ソフトの画面通りのきれいな出力ができます。他ソフトとの連携をしない人には必要ありませんが,たとえば電子辞書の内容を自分の論文の中で引用したい,という人には重要な機能です。3. 語学研究・教育・学習に生かせるソフトウェア
3.1. 翻訳ソフト
インターネットの世界では,全ホームページの7割強が英語で書かれているということからも分かるように,英語が事実上共通語となっています。これの是非はともかく,ネットサーフィンをする以上は,それなりの英語力が必要になるのは事実です。そこで注目されているのが翻訳ソフトです。数年前までは20万円近くした翻訳ソフトが,今では定価で1万円を切るものまで登場しました。ただ,かんじんの翻訳水準はまだまだ発展途上で,あまり期待しない方がいいでしょう。
とくに,翻訳ソフトを使って,英文講読や英作文の授業の予習の手間を省こうともくろんでいるあなた! 期待はずれにならないように,以下の画面コピーの翻訳例も参考にして,本当に役立つかどうか判断してください。以前,低価格翻訳ソフトの発売が報道された際,「もう訳読一辺倒の授業(と教師!)はいらない」と言われましたが,機械翻訳された文章を見る限り,まだ当分は大丈夫でしょう。
コリャ英和! (市販ソフト: Win95)
廉価な翻訳ソフトの草分け的存在です。紙のマニュアルをなくし,オンラインヘルプを充実させたり,辞書の容量を小さくしたりすることによって,低価格(実売価格は1万円以下)を実現しています。翻訳精度も(値段の割には)まずまずで,こまめに辞書登録をしていけばより使いやすくなるでしょう。今回のバージョンアップでWindows 95専用となり,スピードも大幅にアップしました。右の画面は,Martin Luther Kingの演説,"I have a dream"の冒頭を翻訳してみたものです。
Transland (市販ソフト: Win / Mac)
日本語を英語に翻訳するソフトです。「コリャ英和!」などの英日翻訳ソフトにくらべれば高価ですが,翻訳精度はかなりのものです(右の画面は,上から,『窓ぎわのトットちゃん』の冒頭(2文),『雪国』の冒頭,携帯用カセットプレーヤーの説明文,のそれぞれを英訳した結果です。WindowsとMacに対応していますが,ハイブリッドではありません(それぞれ別パッケージとなっています)。Windows版には,Windows 95専用版と3.1対応版(95でも動作可)の2種類が入っています。95専用版は非常に高速ですが,環境や機種によっては(たとえWindows 95が正常に動いていても)不安定になる場合があります。その際は,3.1対応版をインストールすれば動作する場合もありますが,速度が大幅に犠牲になります。
3.2. 単語ゲーム・パズルソフト
Networdz (シェアウェア: Win)
Crosswordと並んで親しまれているword gameに,Scrabble(R)があります。単語力をのばすには最適なものですが,点数の計算が煩雑なこともあり,日本ではあまり親しまれていないようです。
NetwordzはScrabbleのパソコン版で,コンピュータが相手をしてくれるので1人でも遊べます。点数計算は勿論,単語が有効であるかのチェックやコマの配布など,全てコンピュータがやってくれますし,ヒントを出してもらうこともできます。私は試していませんが,モデムを接続すればネットワーク上での対戦ができたり,盤面やメッセージなど細かなカスタマイズができるのも大きな特徴です。コマを盤に置く際,マウスでドラッグする必要があるので,ノートパソコンなどを使っている人は使いにくいでしょうが,それ以外にはこれといった問題もなく,市販ソフトのように楽しめます。シェアウェアですが,登録を促すメッセージが表示される以外,特別な制限はありません。
WordWiz (シェアウェア: Win)
欧米ではクロスワード(cross word)をはじめとするword gameが盛んであるためか,パズルの作成を支援するソフトが多く出回っていますが,出題単語リストをユーザーが自由に作成,編集できる点や,少ない出題語数でもパズルが短時間で作成できるinstantモード,市販ソフトに引けをとらないユーザーインターフェイスなどは,WordWiz独自の特徴でしょう。WordWizは,cross wordはもちろん,word search, word fill inといった様々な種類のパズルに対応し,出題単語の選択(管理)から,ます目(grid)の作成,カギ(clues)の入力(管理),完成したパズルの印刷,保存に至るまでの全作業が行えます。動作も安定しているので,市販ソフトの感覚で,安心して使うことができます。
評価版(作成できるサイズが9×9以内)は,作者のホームページからダウンロードできます。シェアウェア登録すると,金額によりこの制限がゆるやかになり,最高($70)で25×25マスのパズル作成ができるようになります。
ソフトの性質上,言語学の研究自体にはあまり活用できそうもありませんが,外国語教育の現場においては非常に有用です。とくに,語彙指導の教材としてパズルを用いることは,動機付けの手段としても有効でしょうが,手作業では作成に非常に手間がかかるため,従来は敬遠されがちでした。しかし,WordWizのような専用ソフトの力を借りれば,本格的なパズルが実に簡単に作成できるため,中学,高校の現場などで,毎時間パズルを用いて単語の小テストを行うというような活用法も十分考えられるでしょう(アメリカ生まれのソフトなので,clueを日本語で書くと文字化けするのが難点ですが)。
3.3. 研究者向きソフト
Collins COBUILD English Collocations on CD-ROM (市販ソフト: Win)
前述のCOBUILD on CD-ROMの姉妹品で,基本となる1万語の英単語に関して,どのような語と結びつきやすいかを,Bank of English(大規模コーパス)から抜粋したデータで示してくれます。COBUILD on CD-ROMの中にあるWord Bankに比べて検索の自由度が劣るので,本当に自分の必要としている用例がなかなか得られないのが難点です。大規模コーパスから語彙連結に焦点を絞って,生きた用例を提供するという,このソフトのコンセプト自体は大変面白いのですが,初めての試みであるためか,未完成であるという印象は拭えません。COBUILD on CD-ROM同様,発売当時にくらべてかなり値下げされ,手に入りやすくなったのは評価できますが…。
WordSmith Tools (市販ソフト: Win)
語法研究の分野で注目を浴びているコーパスの検索ソフトを中心に,文字テクストの処理をするためのユーティリティーソフトを集めたパッケージです。最近は,ICAMEやBritish National Corpusといった大規模コーパスが容易に入手できるようになりましたが,膨大なデータを検索するソフトが大変高価なため,導入に二の足を踏んでいた人も多かったと思います。WordSmith Toolsは,デモンストレーション版が無料でインターネットからダウンロードできるので,コーパスがどういうものかを体験してみたい人には最適です。ただし,デモ版では検索結果が最大25件しか表示されないので,本格的に使うには製品版を購入する必要があるでしょう。
Personal Dictionary (PDIC) (シェアウェア: DOS / Win95)
自分用のオンライン英和辞典を作成するソフトです。単語や発音記号,訳,用例などを登録し,参照,検索ができます。市販の辞書ソフトでカバーできないような専門用語を集めた辞書を独自に作ったり,暗記用の単語帳代わりにするなど,様々な用途が考えられます。
DOS版のころからこまめにバージョンアップを繰り返しているので,フリーソフトとはいえ,安心して使うことができますし,Nifty Serveの英会話フォーラムなどでは,ユーザー同士が使い方のノウハウを情報交換したり,作成した辞書を公開しています。公開されている辞書をすべてダウンロードすれば,総語数50万語ほどの辞書が手に入ります。
The Electronic Alveary (TEA) (シェアウェア: DOS / Win)
TEAは指定した条件に該当する単語を抽出するソフトで,多くの電子辞書にみられるパターン検索やアナグラム検索,正規表現検索を発展させたものです。TEAを用いれば,前述の様々な特殊検索に加え,以下のような検索もできます。
「15文字以上の語で,同じ文字を2回以上使ってない語は?」
「q, x, zの3文字を含む語は?」等々…
TEAにはマッチング用リストとして,約19万語を収録した単語リストが同梱されていますが,付属のユーティリティーにより,任意のリストを作成することも可能です。辞書ソフトではないので,リストアップした単語の語義などは表示されませんが,American Heritage Dictionaryなどの電子辞書と連動させ,ワンタッチで検索させることは可能です。また,検索結果はクリップボードへ転送したり印刷することもできるので,加工も容易です。クロスワードパズルやScrabbleの愛好者以外にはあまり知られていないソフトですが,研究者にとっては無限の可能性を秘めています。複雑なパターンの記述には若干の慣れが必要ですが,使いこなせば,特に形態論,音韻論の研究において手放せないものとなるでしょう。
Time Multimedia CD-ROM (市販ソフト: Win)
英語圏のニュース週刊誌の代名詞とも言えるTIMEをCD-ROM化したものです。創刊以来の重要な出来事(政治・経済関連が多い)をTIME本文からの抜粋や写真,ビデオなどで振り返ることができますし,1989年以降はTIME各誌の本文すべてが収録されているので,英語授業の教材にも最適です。言語学者にとっては,このCD-ROMの強力なサーチ機能は,時事英語の研究や,語法研究などにおける例文を探すうえでも有用ですし,世界各国の統計データを収録したAlmanacやクイズ形式のNewsquestなど,幅広く楽しめます。一般に日本で売られているTIMEは国際版ですが,このソフトに収録されているものは「本家本元の」アメリカ版なので,ふだんからTIMEに親しんでいる人も,読んだことのない記事が多いのではないでしょうか。TIMEは難しいからちょっと…という人も,写真や動画を駆使したこのCD-ROMなら時間を忘れるほど楽しめるでしょう。
WordNet (フリーウェア: DOS / Win / Mac)
類義語(synonym),上位語(hypernym),下位語(hyponym),同族語(coordinate)といった,単語の意味のつながりを階層的に示すソフトです。たとえば,snakeのhyponymを調べれば,様々な蛇の名前が現れますし,oxygenのcoordinateを検索すると,元素の一覧が現れます。その他,ある物体における部分の名(carにおけるwheelなど)や,逆に,ある部分から全体の名を引くなど,多彩な検索ができます。このソフトは,プリンストン大学の認知科学研究所のプロジェクトとして,認知言語学や意味論などにたずさわる研究者向けに開発されたものなので,あまり知られていないのですが,一般の英語学習者にとっても有用なソフトです。