Make your own free website on Tripod.com

電子辞書掲示板過去ログセレクション
(Sekkyのつぶやき3・辞書コンテンツ関係)

辞書関係コンテンツトップページに戻る

※レス以外で掲示板に書いた駄文の中で,コンテンツ(辞書本体)に関するものを抜粋しました。電子辞書搭載のコンテンツだけでなく,冊子体辞書の新刊情報などもあります。以下のような内容が掲載されています。

(ご注意)本ログ内容の著作権は,関山健治が保持しています。他掲示板や他メディアへの無断転載,剽窃等は著作権の侵害となりますので,理由の如何を問わず固くお断りします。ご不明な点はこちらをごらんいただくか,管理者へのメールでおたずねください。


分類語彙表 投稿者:Sekky@管理者  投稿日: 2月29日(日)20時14分47秒

日本語教育関係の方はご存じかと思いますが,日本語類語辞典(語義はないので辞典ではないですが)のパイオニア的存在の分類語彙表が40年ぶりぐらいに改訂されました。簡単に言うと,大修館の日本語大シソーラスのようなもので,意味分類別に単語が羅列してあるシソーラスです。講談社や角川の類語と違い,意味や用例は出ていません。意味分類別の本文とは別に,五十音索引もあるので,日本語版のRoget's Thesaurusのような使い方ができます。「大シソーラス」ほど大規模ではありませんが,それでも異なり語数で80000語ありますので,ちょっとした国語辞典ぐらいの規模はあります。ことば好きの方は1日見ていても飽きないのではないでしょうか。

CD-ROMも付属していますが,いわゆるCD-ROM辞書ではなく,本文全体をPDFファイルにしたものなので,電子辞書としては使えません。PDFファイルの文字データをコピペしてテキストファイルに落とせればまだいいのですが,パスワード保護されていて,それもできません。書籍版と同じようにブラウズすることしかできないCD-ROMというのもおかしなものです(^^;; データベース化したものが有料で別売されるようですが。

もっとも,ハードカバーでケース付きなのに4700円と,この手の本にしては1桁間違っているのではないかと思うほど安いです。「大シソーラス」は高くて手が出ない人や,日本語関係の研究者,日本語教師の方のリソースとしてぜひおすすめします。

#電子辞書の(国語辞典へのジャンプを前提とした)日本語類語としても最適なコンテンツかもしれません。

コーパスと英語学習(>ちるちるさん) 投稿者:Sekky@管理者  投稿日: 2月27日(金)17時30分50秒

>実際にこの機種を使ってらっしゃる方に伺いたいのですが、この点をどのようにクリアし
>ながらコーパスを活用されているのでしょうか?

これは難しい問題です。というのは,コーパスというもの自体,もともとは英語学(とくに統語論=いわゆる文法)の研究で「生の英語の姿を調べる」ための素材として構築されたものですから,これを「外国人が英語を書くためのお手本」として使うという発想は,今までのコーパス言語学の世界ではあまりなかったと思います。たとえば,She is taller than Iか,…than meのどちらがいいかという疑問は,現場の英語教師なら考えたことがあると思います。伝統的な学校英文法ではthan Iを(thanを接続詞と解釈)教えていたでしょうが,実際にはthan meを使う人も多いです。こういうとき,Wordbankはだめですが,"than I", "than me"のかたまりで検索してくれるコーパス検索ソフトを使うと,実際の英語ではどちらが多いかというのが一目瞭然で分かります。コーパスの役目はここまでです。あとは,利用する側がその結果を見て自分で判断する必要があります。

SR-T6700でも検証可能な例としては,am notの縮約形であるain'tがあります。これは,ain't I?のような付加疑問ならまだしも,I ain't a student.のように使うのは標準的でないとされています。いわゆる受験英語ではまず×になるケースでしょう。しかし,T6700のWordbankではI ain't ...の例も出ています。コーパスという性質上,標準用法であろうがなかろうが,サンプルとしてとられた英文で使われていれば,それが反映されるからです。

このように,Wordbank単独で英作文のお手本に使うのはちょっとリスクが大きいので,英活やジーニアス英和のような,外国人が英語を学ぶときに使うことを前提に規範的な意味合いを持たせた辞書の例文検索の結果と見比べる必要があります。

セイコーさんとしては,業界初搭載で,しかも500万語という膨大な用例データを搭載しているWordbankは虎の子的な存在ですから大々的にPRしたいところだとは思いますが,Wordbankの用例は英和,英英系辞書の用例とは,「規範的観点での配慮がされていない=生英語の姿がそのまま反映されている」という点で決定的に違うということは,もっと一般にも周知させるべきではないかという気がします。殺菌処理されてパックに入れられ,スーパーで売られている牛乳がいいのか,牧場の牛からとったそのままの牛乳がいいのか,どちらがいいとは一概に言えないかもしれません。スーパーで売られている牛乳なら,誰でも安心して飲めますが,牧場の牛からとったばかりの牛乳を生で飲めば,人によってお腹を壊す危険もあり,お腹を壊したときに適切な処置ができる人でないと,リスクがあるかもしれません。

国語辞典の比較 投稿者:Sekky@管理者  投稿日: 2月21日(土)21時18分27秒

国語辞典の比較に関心のある方は,金武伸弥(2000) 「『広辞苑』は信頼できるか」(講談社)をおすすめします。タイトルは非常にセンセーショナルですが,内容は非常に良心的で,いわゆる暴露本とは全く違います。

講談社自ら国語辞典を出していますし,この本の中でも取りあげられていますが,比較した20冊の国語辞典のうち,講談社の日本語大辞典は第5位,講談社国語辞典は15位になっています。日本語大辞典は5位ですが,三省堂国語辞典,大辞林,大辞泉,広辞苑の次にランクされていて,日本語大辞典と競合する主要な大規模辞典の中では最下位になっています。辞書比較の本は,良心的な内容のものであっても,立場上辞書出版と関係ない出版社から出されることが多いですが,この本は異色です。自社の出版物の評価に関係なく,内容的に優れた本であれば出すという講談社さんのスタンスには感心しました。

この本のランキングでは20冊の辞書中で,広辞苑は4位ですので,決して問題の多い辞書というわけではありません。語源が充実していることや,ちょっとした古語辞典なみに古語や古文からの用例が載っていることも正当に評価されているからなのでしょう。もっとも,ランキングを出す際には筆者がサンプルの語を選定していますので,その選定方法によっては結果が大きく変わることもありますが…。

詳説レクシスプラネットボード 投稿者:Sekky@管理者  投稿日: 2月12日(木)13時15分2秒

↑レクシス英和辞典(旺文社)にはPlanet Boardという,文法,語法上の問題点を100人のネイティブインフォーマントに取材し,その結果を数値で示したコラムがありますが,そのコラムだけをまとめた本が出ました。レクシスに記載のものは,さらに詳しく(具体的なインフォーマントのコメントやウィズダムなど,レクシスと同時期に出た英和の説明を載せるなど)記載し,レクシスに載っていない項目も若干追加されています。これをみると,受験英語で常識といってもよい「just nowは現在完了形とは共起しない」というようなことが,実際の言語実態では必ずしもそうとは言えないことなどが分かり,いわゆる規範的な文法記述に加え,コーパスやインフォーマントチェックといった記述的な視点も重要であることが体感できます。とくに現場で英語を教えていらっしゃる先生方はぜひ一読をおすすめします。

ユニークな本ですが,本家レクシスほどにはPRされていないようです。私も,日本語教育に携わっている知人でレクシスをご存じの人から,こういうのがあると教えてもらって初めて知りました(^^;;

5million Words 投稿者:Sekky@管理者  投稿日: 2月 6日(金)17時05分55秒

Wordbankの500万語というのはどれぐらいの量なのかと知人にきかれました。500万円なら高級車の新車が1台買える額だ,というようにイメージしやすいのですが,単語数だとはピンとこない人が多いようです。

一般的に,英語母語話者向けのニュース(CNNなど)のように,ネイティブスピーカーがナチュラルスピードで原稿を読む場合,1分間に150語(150wpm)前後のスピードだといわれています。仮に,このスピードで500万語の英文を読もうとすると,1日8時間連続で毎日読んだとして2ヶ月半弱(約69日)かかります。24時間休みなく毎日読んだとしても約23日かかる計算になります。

ちなみに,英活は公称で38万例文(38万語ではなく)収録ですが,1つの例文あたり5語だとすると,これだけでも約190万語あります。XD-H9100をはじめ,英活搭載機でも,Wordbankほどではないにせよ,天文学的な用例を自由に検索できるという点では同じです。ただ,「おもしろい例文」の数は,やはり生例文ばかりのWordbankに軍配があがりますが。

>yhameeさん 投稿者:Sekky@管理者  投稿日: 2月 1日(日)13時01分25秒

>今月号の『英語教育』で、「as regards to」という用例に関して説明があるのはG大
>だけなのでG大はやはり偉いという意見が載っていました。

休日なので「英語教育」の当該記事にアクセスできないため何とも言えませんが,特定の表現が載っているからその辞書が「偉い」(原点ではどう書かれていたのか分かりませんが)という意見はちょっと引っかかります(もっとも,特定の表現が載っていないからその辞書はダメだと言うよりはいいですが(^^;;)。

「as regards 目的語」という成句は別に珍しくなく,フォーマルな英語ならよく使われますから,toと共起するということが記載されているから「偉い」ということなのでしょう。

>手元の主な辞書をみると用例、あるいは説明のあるものはないようでした。

たしかに,G大,G3以外の同規模の辞書にはas regards Oはあっても,as regards to Oという記述はありませんね。

>同僚の米・カナダ人5人ほどに聞いたところ、法律用語のように非常にフォーマルな表現
>であるが、エッセイでこの表現を使う学生がいたら減点どころかプラス評価になりうる、
>ということでした。

これは,as regards to Oというより,as regards Oに関してのものと思われます。toを持ってきてOKかどうかはネイティブによって違うかもしれません。

>しかしながら、この一例をとってG大が偉いかどうかということを判断することについて
>皆さんの意見をお聞きしたいと思った次第です。

SR-T6700のWordbankを含めた例文検索で調べてみたら,as regards Oはかなり出現例がありますが,as regards to Oはゼロでした。500万語のコーパスを含んだ例文検索で出てこないことを考えると,決して頻出ではないですから,as regards Oがきちんと記載されていれば,「to Oの形でも使われる」という情報はなくて困るものではないと思います。こういう頻度の少ない用法について言及しているG3,G大の詳しさ自体は大きく評価できると思いますが,詳しい辞書がよい辞書と言えるかどうかは各ユーザの価値観によって変わってきます。as regards to Oという形を載せているということは,これを書いた執筆者の手持ちのデータなり,出版社さんが蓄積しているコーパスなりに出現例があったからなのでしょうが,こういう一般的でないケースも収録するという詳しさも「偉い」ですし,逆にその辞書のスコープを考えて,一般的でないケースは載せないという執筆者や編者の判断もまた「偉い」のではないでしょうか。

たとえば,国語辞典で「あさって」を引いたときに,「三重県の中部あたりでは「ささって」と言う」という地域方言的な情報を載せてあれば(こういう辞書は見たことありませんが),三重県の外国人日本語学習者は,実際に遭遇した語形が出ているのですから,すごい,と感じるかもしれませんし,日本の方言を研究している外国人研究者には有益でしょうが,ほとんどの外国人には必要ない情報でしょう。それよりも,「あさっての翌日はしあさってと言う」というような関連語情報を載せたほうが初級から中級クラスの学習者には有益でしょうし,上級レベルなら,「あさっての方を向く」というような慣用的な表現を載せたほうが,利用価値は高いと思われます。日本の上級学習英和は,ともすれば「ささって」のようなレアケースの語法,文型にとらわれすぎ,逆に一般レベルの学習者は戸惑ってしまうことも多々あります。

日本では,語数の多い辞書や詳しい記述の辞書が高く評価されています。ユーザが辞書を引き,載っていれば当然で,載っていないとなると何だこの辞書は,となります(その意味では,希な表現でも載っていたことでその辞書を高く評価し,しかもそれを投書された英語教育の投書主氏のような方は貴重かと思いますが)。以前にウィズダム,レクシス,アドバンスドフェイバリットが出たときがそうでしたが,ほぼ同クラスのこれらの辞書を,ある表現が載っているか載っていないかだけで優劣をつけるということが,他掲示板でよくありました。私としては,どの辞書でも完璧ではないと思っていますので,1つの辞書に載っていなければ別の複数の同規模の辞書にあたり,それでも載っていなければ,そのクラスの辞書のスコープをこえる希な例だと開き直る? こともよくあります。誤植がどうだとかいう指摘も他掲示板では多いですが,「辞書」というものが完全無欠であると思っていらっしゃる方が意外と多いのには驚きました。
もちろん,語数の多い辞書や詳しい辞書がいけないという意味ではなく,こういう辞書が手放せないような高度なレベルで英語に関わっている日本人も非常に多いのは事実だと思います。その一方で,実際には高校英和クラスの辞書にも載っているのに,探し方が悪いために見つからず,「この辞書はこんな単語も出ていない」と辞書のせいにしたり,実際の言語実態を認識しないで風評に惑わされ,上級向けの(語数の多い)辞書でないと使い物にならないような錯覚をしている人もかなりいらっしゃるのではないでしょうか。だからこそ,各出版社は競って語数の多さ,説明の詳しさを誇るようになり,時としてユーザを煽っているようにも思えたりすることもあります。これは電子辞書も同じで,操作系は昔のままなのにコンテンツ数をどんどん多くして使いにくくなったりしてしまうのでしょう。

新学期シーズンには毎年ここでも書いている気がしますが,学校の勉強からTime, Newsweek程度の一般読者向けの英字誌の読解に至るまで,G3クラスの上級学習英和1冊があれば何の不自由もありません。実際,1年半ぐらいのTimeのカバーストーリーに出てくる単語をデータベース化し,様々な語彙表(JACETの8000語リスト,アルクSVLの12000語リスト,COBUILDの頻度表記など)との一致度を計測しましたが,(リストによりますが)10000語弱の語彙をマスターすれば,固有名詞含め,Time全体の8割ぐらいの語はカバーできるという結果が出ています。10語のうち2語ちょっとしか未知語がないのであれば,語彙の面では十分なのではと思います。むしろ,文法や構文解析力と言った,辞書を引くだけでは解決できない面を身につけることが重要かと思います。

COBUILDのCD-ROM版 投稿者:Sekky@管理者  投稿日:11月24日(月)10時52分21秒

ちなみに,4版のCD-ROM版,CD-ROMバンドル版も同時発売されています。バンドル版はCDなしのものより数百円高いだけですが,COBUID4版の全文とWord Bank(500万語のコーパス)が検索できます。CD-ROM単体のもの(Resource Pack)は,これだけで5700円しますが,バンドル版の内容に加え,Thesaurus, Usage, Grammarも入っています(COBUILD3版のCD-ROM版と同仕様)。検索エンジンは3版と同じものなので,非常に軽いですし,マックにも対応している数少ない学習英英辞典のCD-ROMです。ネイティブ向けのCollins English Dictionary, ThesaurusのCD-ROM(別売)も同じ検索エンジンなので,両方インストールすればCOBUILDとCEDの両方をいっぺんに検索できます。

COBUILD4版 投稿者:Sekky@管理者  投稿日:11月24日(月)10時48分08秒

↑ようやく発売されました。内容的には小改訂といった感じで,基本的な構成や内容は3版と同じです。目立った改訂点としては

1)2色刷になった(見出し語や語義番号,Extra Column部分すべて)
2)頻度バンドが5段階から3段階になった(おおよそ,3版のダイヤモンド1つ,2つの語は無印になった)
3)巻末のカラー集合図版を新設
4)エッセイライティングや英語プレゼンでの表現を巻末にまとめて収録

ぐらいでしょうか。1)の二色刷ですが,これのおかげで3版のように文字がぎっしりという圧迫感がなくなったのは大きな進歩だと思います。青系統の色ですが,CALDの青緑のような色ではなく,コバルトブルーのような色なので,個人的には見やすいと思います。ただ,Extra Columnの文型表記や類義語等がすべて色刷りになっているのでちょっとくどい感じがします。Extra Columnはあくまでもメイン語義の補助なのですから,品詞ラベルなど,一部に限って色をつけたほうがよかったです。

2) これは,他の学習英英の頻度バンドに数を合わせたのでしょうが,私としては,前の5段階のままのほうがよかったです。もっとも,学習者サイドとしては,バンドのついた語(ダイヤモンド1つ〜5つ)が3版では1万数千あるので,重要語にしては数が多すぎるという不満があるのでしょうが,一方で,日本の学習英和で数千語レベルの重要度表示にはアクセスできる我々にとっては,学習英和で無印の単語の頻度を知りたい場合,COBUILD3版のバンドは貴重だったので残念です。

3)この集合図版は,いかにも「とりあえず付けました」という感じのものです。図版に示されている語彙も,COBUILDのユーザなら多くは知っているレベルの語です。LDOCEのようなCOBUILDよりも下のレベルの学習者をターゲットにした辞書でさえ,もう少し詳しい図版が載っています。

4)は意外と便利です。タームペーパーを書くときに役立つ表現や,英語でプレゼンをするときに話の流れを変える言い方など,ちょっとしたこの手の単行本に匹敵する内容です。上級学習者の発信面のニーズに応えた内容で,COBUILDらしい付録といえます。これと,集合図版のレベルのギャップは非常に大きいです(^^;;

上記の点はCOBUILDのサイトでも紹介されているような改訂点ですが,意外と気づかれにくい点で,(上級学習者向けの英英という点では)旧版(3版)のほうが良かったという点もあります。とくに,見出し語が増えた(といっても約600ですが)のに,用例は公称値でover 75000(3版はover 105000)なので,3万例文ぐらいがカットされたというのは,私にとっては大きな改悪だと思います。重要でない語義の用例を削ったのかもしれませんが,それならば,削るのでなく,重要な用例に差し替えてもよかった気がします。実際,旧版と照らし合わせてみても,1つの語義の中に複数の用例がある場合に削られているケースがけっこうあります。また,用例としては残っても,旧版で多かった1文まるごとコーパスからとってきたような長い用例は,前後が削られ,その語が使われている部分のみを抽出したものに変えられたりしているものも多いです。たとえば,bidderの用例として,3版では

Vodafone is among successful bidders for two licences to develop cellular telephone systems in Greece.

というのがありましたが,4版では

bidders for two licences to develop cellular telephone systems in Greece.

のようになっています。3版では,主語に固有名詞が使われている場合も,そのまま抽出してある用例が多く,上級者にとっては読んでいても面白い(難解ですが)用例が多かったのですが,新版では,とくに長い用例の主語などが削られているケースがかなりあります。用例の数が30000減少したことに加え,用例の長さも短くなっているので,もし4版搭載の電子辞書が出たら,例文検索でのヒット数に大きな影響が及ぶはずです。

そのほか,スペースの節約からか,語義ごとの改行がなくなり,ずらずらと続いて載っているので,語義全体をざっと斜め読みするということが(視線を動かさないといけないので)しにくくなりました。これは,COBUILDのように,純粋な頻度順で並んでいる(品詞などで大まかに分類していない)辞書は致命的です。

↓(補足) 投稿者:Sekky@管理者  投稿日:11月10日(月)20時08分59秒

和英小辞典について酷評しましたが,冒頭に「…ここで分かった単語や表現は本文で引き直して,意味や用法を確かめるようにしましょう」とちゃんと注意書きがついていますね(^^;;

スーパーアンカー英和の新版 投稿者:Sekky@管理者  投稿日:11月10日(月)19時57分02秒

↑第3版が出ました。スーパーアンカー英和は,先に出たニューアンカー和英の成果を生かし,文化的背景に丁寧に目配りした英和辞典として定評がありますが,今回の改訂でさらにその性質が濃くなっています。「英語文化のキーワード」や「日英比較」のコラムが大幅に増えたのもその例でしょう。しかも,先行の他辞書を無責任に引き写したりという,今までの辞書編纂でありがちだったことがなく,編集主幹の山岸先生ご自身の考察によって書かれています。

たとえば,politenessの項の日英比較では,語用論や社会言語学でよく言われている,日本語は上下敬語,英語は左右敬語主体という点の指摘だけでなく,その背景として,日本語の敬語は神に何かを依頼したりする目的で考え出されたのに対し,英語圏では神の前ではあらゆる人が平等であるので,人間観での横のつながりを円滑にするために敬語が使われる,というようなことが述べられています。私も,ポライトネスがらみの研究には携わっていますが,恥ずかしながら,こういう背景があったとは知りませんでした(^^;; 教員や研究者が関心を持つような細かな語法上な指摘にとらわれるのではなく,Hobbyには読書や音楽鑑賞といった受動的なものは含まない,といった,ある程度英語のできる人にとっては無意識のうちに身につけているが,大多数の日本人はよく間違えるようなことに対して非常に親切な指摘が多くあります。

その他目新しい点では,語義の冒頭に,語義ごとの意味の差を,用例とともに表示している意味メニューでしょうか。今まででも,多義語の各語義の代表的な訳語を冒頭にまとめた辞書は多かったですが,スーパーアンカーの場合,訳語だけでなく用例まで出しているのがウリです。今までの辞書だと,多義語でも第一語義をそのまま使う学生が多く,それぞれの語義のどれにあたるか,例文を読んで考えなさい,と言っても,例文は語義の後にあるので,面倒がって読まない学生も多かったかったのですが,意味メニューの場合,語義ごとの代表的な用例が最初に一括して出ているわけですから,今まで例文を見なかったユーザにとっても,語義記述の前に例文があれば嫌でも目に入ってきて,適切な語義を選ぶ大きな助けになると思います。コロンブスの卵的な新機軸ですが,意外と便利です。現段階では,意味メニューは167項目しかないので,試験的な位置づけが強いですが,今後の改訂に期待したいです。
巻末付録も充実していて,山岸先生自ら執筆された「英単語と英文の文化を読む」というエッセイや,ネイティブの人が日本語で書き下ろしたaとtheの使い分けの説明など,「読む」辞書としても楽しめます。英語に興味のある学生なら,つまらない授業中に読んでいても面白いのではないでしょうか。もっとも,(最近はどの学習英和辞書にもありますが)巻末の和英小辞典は,私個人としては(厳しい言い方ですが)百害あって一理なし(和英辞書に頼りすぎると言うことがよく問題になりますが,和英小辞典の場合,その和英辞典さえも引かずに,小辞典に記載の単語をそのまま使う学生が多いですから)で,スーパーアンカー和英があるのになぜこれを英和に載せているのか,疑問です。山岸先生の和英辞書関係の著書の中で,こういう1語1語義の和英辞書に対する批判もされているのですから,もしかしたら,山岸先生の意向というよりは,他書との競合対策といった,営業サイドからの要望なのかもしれませんが(^^;;

高校向けの学習英和は競争が激しく,各社がしのぎを削っていますが,スーパーアンカーの場合,図版もそれほど多いというわけではないし,デザインも地味なので,最近のいわゆるビジュアル世代の生徒にどれぐらい受け入れられるかは疑問です。意欲作のコラムにしても,「読む」ことが前提なので,文字離れの進んでいる今の学生の大多数は音をあげるかもしれません。一方で,英語に興味があり,もっと勉強したいという意欲のある生徒にとっては,その欲求に応えてくれる,数少ない学習英和だと思います。レベルの設定が絶妙なのでしょう。大多数の英語嫌いの高校生に迎合して,デザインやとっつきやすさなど,うわべだけのお化粧をするのではなく,本当に英語を勉強したいという意欲のある生徒を失望させない(時には,英語に自信のある生徒の鼻を明かすような?)歯ごたえのある内容で,しかも極端に専門的すぎてつまらなく感じさせることもないところに設定されています。

電子辞書の普及で,英和辞典といえばジーニアスという印象が強くなり,場合によっては高校生がG大搭載機を使っているケースもあるでしょう。そもそも,教員が仕事で使う辞書と同じものを高校1年生が使うこと自体,おかしな話ですが,現行のジーニアス搭載機で消化不良を起こしている多くの英語好きの高校生にとっては,今回改訂のスーパーアンカーは,冊子体辞書の魅力を再認識させる好著といえるのかもしれません。

高校の現場の先生と話していて必ず話題になるのは,G3は普通の高校生には難しすぎる,ということです。私が高校生だった頃はこういうことはあまりきかなかったので,高校生の英語力自体に変化が生じているのかもしれません。スーパーアンカーに限りませんが,高校生にはこれぐらいのレベルのコンテンツを搭載した電子辞書がぴったりだと思います。大学に入ったら冊子体の辞書を買い換えるのと同じで,電子辞書も大学に入ったら買い換えればいいのですから。

ジーニアス和英第2版(GJE2) 投稿者:Sekky@管理者  投稿日:11月 4日(火)12時54分52秒

↑英語教員向け情報誌「GCD英語通信」の最新号はG和英第2版の特集になっていますが,初版とはかなり変わっていて,全面改訂に近いような改訂のようです。初版は,訳語(英語)部分にG2の同じ語の記述をそのまま載せる,いわゆるハイブリッド形式でしたが,これは新版でも踏襲されています。ただ,初版と違い,ある語とある語がどのような違いがあるかということに関して,和英辞典の立場から詳しく説明がされています(初版は,こういった説明がほとんどなく,英和の記述をユーザ自身で比較する必要がありました)。たとえば,「こころ」の項では,mindとheartの違いを,知性や理性の働きか,喜怒哀楽の感情や愛情かという点で説明し,これを裏付ける例文を多数あげています。また,用例の非文情報も細かくなり,OKのもの(無印),less typicalなもの(△印),non-typicalなもの(×印)の3段階(執筆段階では5段階あったそうです)で示されています。従来はOKか非文かの2段階でしたから,語法の裁判所のような白黒をつける(規範的な)スタンスというより,実際の使用実態やネイティブの判断をもとに,「灰色」も認める記述的なスタンスが強まっていることがうかがえます。#もっとも,受験生にしてみれば,「△」という判断は不安を煽るかもしれませんが(^^;;

新語も大幅に増強されていて,「構造改革」「拉致被害者」というような旬の語まで載っているのはびっくりです。そのほか,「朝練」「(部活の)顧問」のような,高校生にとって身近な単語で,単にG3をひっくり返しただけでは拾えないような語や「香典返し」のような日本文化独特の語も収録されているようです。このような,メインユーザである高校生にとって身近な単語や日本文化に根ざした語を積極的に収録するというスタンスは,ニューアンカー和英など,最近の和英辞典の影響も大きいかもしれません。

ジーニアス系のコンテンツは,冊子体刊行から電子化までのサイクルが短いので,GJE2も早ければ来年の新学期モデルで載せてくる機種が出るかもしれません。セイコー,キヤノンなど,年末に新機種を予定しているメーカーさんが,和英は研究社の中辞典にしたのも,もしかしたらそういう読みがあるのかも…?

新和英中辞典 投稿者:Sekky@管理者  投稿日:10月31日(金)21時21分31秒

↑SR-M6000等に搭載の新和英中辞典ですが,G和英に慣れている人は,複合語がインデックスに入っていないので注意が必要です。長い複合語だけならともかく,「牛丼」のような,複合語と認識しにくいものも複合語扱いされているため,「ぎゅうどん」では出てきません(「ぎゅう(牛)」を引き,その中を見る)。もっとも,「カツ丼」は一発で出る(複合語扱いではない)とか,整合性がとれていない面もあります。

新和英の新版は,G和英以上に語数も多く,G和英の欠点をカバーしている面も多いのですが,一方で改訂を重ねているせいか,初歩的なレベルでの誤記がそのまま残っていたりします。たとえば,「ゴーサイン(を出す)」はどう考えても和製英語で,英語では(give) the green lightのように言うと思いますが,新和英の5版ではgive the go signという訳語になっていて,びっくりです。広辞苑にも,カタカナ語辞典にも,「ゴーサインは和製英語」とちゃんと書いてあります。このように,辞書の誤記は評価の高い辞書であっても避けられませんので,複数辞書を併用するのが無難だと思います。併用が無理でも,おかしいと思ったら例文検索で確認してみるとけっこう分かります(M6000をお持ちの方は,go&signとgreen&lightで例文検索をしてみてください)

COBUILD4版 投稿者:Sekky@管理者  投稿日:10月28日(火)13時09分49秒

紀伊國屋書店からの会員向け情報では11月初旬に発売されるようです。CD-ROM付きとなしのものがありますが,300円ぐらいしか変わりません。冊子付属のCD-ROM版はCOBUILDの本文とWord Bank(500万語のミニコーパス),発音が入っています。これとは別に,CD-ROM版単体もあり,こちらにはCOBUILD Usage, COBUILD Grammar,Thesaurusも入っています(第3版のCD-ROM版相当だと思います)。

旧版にくらべて600語句の新収録や,本文横の文法ラベルなどが青字になった2色刷の本文,巻末のフルカラー図版,コロケーション情報の充実化などが改善点です。もっとも,3版が出てからそれほどたっていませんので,LDOCEやCALDなど,類書の改訂にあわせた小改訂と言えそうです。カラーページどころか,初版以来挿絵1枚なかった「硬派」の学習英英であるCOBUILDにカラー図版が入るというのは異例ですが,類書との競合対策上,ターゲットの幅を広くするようになったのでしょう。

Oxford Collocation Dictionary(>みみさん) 投稿者:Sekky@管理者  投稿日:10月25日(土)09時34分37秒

>ところで上記の二つで迷っているのですがT7000に搭載の連語辞典は
>英語の送受信において結構役立つものでしょうか?

OCDは主に英語を発信する際のものだと思います。コロケーションに関することは,上級学習者でも今まではあまり意識していなかったでしょうが,OCDがあれば,今まではネイティブに確認しないといけなかったような語句の結びつきが簡単に分かります。たとえば,「雪をかく」と言いたい場合,ジーニアス和英で「かく」を引いても出ていません。こういうときは,英和でsnowを引いてもたいていだめです(新和英中辞典にはshovel, remove the snowと出ています)。OCDならsnowを引けば,VERB+SNOWのところに,clear, sweep, shovelなどが出ています。そのほか「大雪」はheavy snowだけでなくthick snowとも言えるなどということも分かり,中級以上の学習者の語彙増強にも最適です。

>ただ、連語辞典を除けばM6000でも十分かなぁという気がします。

みみさんのニーズにもよりますが,英語を書く機会が多く,上級レベルをめざしたいということでしたらOCDはあると何かと便利です。最初は使い方が分からないと思いますが,使い方さえマスターすれば,英語を書く際に和英辞典に頼らなくてもよくなりますから,自然な英語で表現する上でも有益だと思います。

>長く使いたいのでT7000の大きな画面にしないとストレスがたまるかなぁという気も
>しますが。

解像度は同じですが,M6000は小型機なので文字が小さいです。私はとくに気になりませんが,画面の見え方は個人差がありますので,実機を確認してみてください。T7000はまだ出ていませんが,文字の大きさなどに関しては現行のSR-Tシリーズと大差ないと思います。

ジーニアス和英(>ありさん) 投稿者:Sekky@管理者  投稿日:10月22日(水)20時21分06秒

#ジーニアス和英の評判ですが,たしかに辞書学に携わる研究者や辞書編纂に携わっている先生と話しているとよく話題にのぼりますが,一般の英語学習者にとって致命的というほどのものでもないと思います。G和英の場合,一から独自編纂の他の和英と違い,ジーニアス英和という親玉が先にあり,それをコンピュータの力を借りてひっくり返したものをベースにしているので,英和との整合性がとれています(言いかえれば,英和の記述の不適切なところがそのまま和英にも飛び火しているわけですが)。最近の学習和英のように,和英だけで完結したものを期待するとマイナスの評価になるのでしょうが,あくまでも英和への道しるべと考え,G和英の訳語を英和や英英にジャンプして調べ直すようにすれば,それほど使いにくいものでもないと思います。

G和英の批判は,専門家の間では刊行時からよくされていましたが,一般の学習者の方が言うようになったのはここ数年だと思います。不思議なことです。私がこう言うのも何ですが,最近では,とくに個別の辞書の善し悪しに関する評価は,いわゆる先行発言の受け売りというか,「耳学問」によるものが増えているような気がします。自分で使っていてこういうところが使いにくい,と感じた評価ならいいのですが,明らかに他の人の受け売りであるものが非常に多く見られます(見る人が見れば分かると思いますが)。

以前,G和英の問題点として「道場」=「ashram」を例にあげてここで指摘しましたが,他所で全く別の人が(私の発言の引用という形態をとらずに)同じ例をあげて指摘していたりしました。似たような例は他にもかなりあり,その中から1つashramをピックアップしただけなのに,全く別の人が同じ例をピンポイントするというのは,G和英の問題点が多々あることを考えると明らかに偶然ではなく,受け売りなのでしょう。既成事実を指摘しただけなので著作権云々を主張するつもりはありませんが,こういう類の風評に惑わされないようにするのも,これからのユーザには求められるかもしれません。

私個人の意見ですが,G和英をお使いの一般の英語学習者の方で,他の和英とくらべてこういうところがよくない,と(自分で見つけた)具体例をあげながら,ご自身の見解を述べることのできる方は,卓越した英語力をお持ちであることに加え,辞書自身にも相当通じていらっしゃると思います。これぐらいのレベルの方でしたら,和英に頼らなくても問題なく英語を発信できるでしょうし,そこまでのことは,通常の使用では致命的にはならないと思います。

大規模英和は本当に必要…? 投稿者:Sekky@管理者  投稿日:10月14日(火)11時13分22秒

量販店さんのセールストークでは,英語を専門にする人=リーダーズ等の大規模英和搭載機が必須という誘導をするケースが多いようで,英語に興味を持つ大学受験生などにも積極的にすすめているようです。もちろん,G3やG大も搭載した機種ならいいのですが,(実務で使うのでなく)予算が限られている大学初学年次の学生や高校生なら,G3でも全く問題ないと強調しておきます。

電子辞書がそれほど一般的でなかった私の学生時代は,リーダーズは3年次以降のゼミ等で膨大な英文を読むようになって,ようやく熱心なごく一部の学生が学習英和の買い増しとして購入するというケースが多かったです。そういう学生も,英作文やクリエイティブライティングの授業では昔から使っている学習英和を使っていました。言いかえれば,その場その場に応じて辞書を使い分けられるような(ごく一部の)学生のみが大規模英和を使っていたのかもしれません。リーダーズプラスや大辞典レベルの辞書に至っては,院生でさえ辞書学専攻の人(の中の一部)ぐらいしか個人で持っていなかったのではないでしょうか。

シンポでも触れたのですが,電子辞書のめざましい進化の一方で,ユーザの辞書引きスキルや,それを向上させるための英語教員の辞書指導のスキルは,10年前と大して変わっていません(コミュニケーション重視の英語教育の流れで,講読の授業が減り,むしろ辞書を引く機会は昔より少なくなっているかも)。今までは雲の上の存在だった大規模英和が手のひらに載ることで,辞書への敷居を下げた(冊子体の大英和は,その姿形だけで近寄りがたかったものが,電子辞書に載ることで威圧感がなくなりますから(^^))という普及効果は大きいと思いますが,(某匿名掲示板流に言うのなら)「背伸び厨」(笑)の人が増えてきているのは憂慮すべきだと思います。

最近は,新製品の投入サイクルが短くなった影響で,旧機種が破格値で売られています。そのため,今までは高価だからということである程度購入ユーザの層が絞り込めていた機種が,普及機のような感じで買えるようになってきています。SR-T5000とT6500は,登場時の実売価格はT6500のほうがはるかに上でしたが,今では新機種の影響で通販などでは実売価格が逆転しています。M5000はT5000と全く同等機種ですが,M6000は(多くの人にとっては)T6500の上位機のようにも感じられるため,T6500は値引率が大きいのでしょう。他社製品も,最近は大規模英和搭載機と汎用他コンテンツ機の二極分化が進んできていて,XD-V8100やSR-M4000など,その中間にあたる機種(コンテンツ数を抑え,学習英和と学習英英,例文検索を搭載した機種)が少なくなっています。大規模英和搭載機が一般化してきているのが原因なのでしょうが,普通の英語学習者にとっての使いやすさを考えるなら,大規模英和搭載機はSR-T7000のようにユーザを絞った高級機として(値段は多少高くても,専門家のニーズを満たす内容で)の位置をキープし,学習英和,英英,例文検索といった通常の英語学習者に有用なコンテンツ,機能に絞って搭載した廉価な英語学習機をもっと拡充すべきなのではないでしょうか。多コンテンツ機は通常の大学生に必要ないコンテンツが多い割に例文検索や英英辞書など,英語を専門にする学生にとって重要な要素が欠けているし,大規模英和搭載機は普通の学習者にはレベルが高すぎるという点は,改善が望まれると思います。

PocketLingo 投稿者:Sekky@管理者  投稿日:10月 7日(火)18時22分09秒

PalmやPocket PC向けのフルコンテンツ辞書でPocket Lingoというものがありますが,これと最近のキーボードつきPalmの組み合わせは,IC電子辞書を補完するものとしてけっこういけるかもしれません。Pocket Lingoの中にはAmerican Heritage College Dictionaryのフルコンテンツや,学習者向けのAmerican Heritage Learner's Dictionaryもありますので,ネイティブ向け英英と外国人向け英英を1台で検索することもできます。研究社の新英和,和英(現行の1つ前の版)もありますし,ステッドマンの医学辞典,金融辞典など,特殊辞典も充実しています。1000語まで登録可能で,各単語の登録日が記録される単語帳(出題機能付き)もついています。オンラインダウンロードができるので,コンテンツの値段が非常に安い(冊子体なみ)のも魅力です。

IC辞書の使い勝手には及びませんし,例文検索やワイルドカードなど,特殊な機能もありません。ジャンプは英単語のみですから,お世辞にも高機能とは言えませんが,Clieにインストールすれば,ジョグダイヤルで快適に検索できますので,DD-IC300など,ジョグつきIC辞書の操作性を評価される方にはおすすめです。

Palmというと,液晶解像度は低いし,キーボードがないし,外部ストレージに対応していないので辞書端末にはとても使えないという印象がありましたが,最近のClieには小さいながらもキーボードがついていますし,ハイレゾ液晶搭載機なら320*320なので,意外にも現行の大画面液晶搭載のIC辞書よりも解像度は高いです。最近はメモリースティックも1GBの物が出ましたので,バッキンガムのEB Playerを使えば,EPWINGのタイトルがPalmで検索できます。(http://www18.tok2.com/home/BuckinghamSoftware/index.shtml)

最近のPalmは,カメラや無線LANを内蔵したり,動画やMP3の再生など,マルチメディアへの対応が進み,昔のような軽快なPDAから脱却しつつありますが,ビジネス用途のモデル(ClieならTG50など)は余計な機能がないぶん携帯にも便利で,辞書端末としては最適です。

※ただ,EB Playerは最新のPalm OS5搭載機では表示がうまくできないので,事実上使えません。EPWINGビューアとして使う方は,OS4搭載機をおすすめします(PocketLingoはOS5でも大丈夫です)。

日本語大シソーラス 投稿者:Sekky@管理者  投稿日: 9月29日(月)15時41分09秒

↑冊子体ですが,大修館から出ました。「類語辞典」と言わず,「シソーラス」としているのがミソで,角川や小学館類語のような「辞典」ではありません。角川や小学館類語は,英語で言うならActivatorのようなもので,意味の似たような単語をグループ化し,使い分けや用例を解説したものですが,「大シソーラス」はXD-V9000やSR-8100に搭載のLongman-Roget'sのthesaurusの日本語版のようなものです。一見「ロジェのシソーラス」の翻訳版なのかと間違うぐらい,「大シソーラス」はRoget's Thesaurusに似ています。角川類語などと違い,類語を羅列しただけで,意味の解説は一切ありません。そのかわり,語数は多く,異なり語数で20数万の単語が入っています(ただ,インデックスに載っている語はその中の一部です)。意味分類の仕方にせよ,全体の体裁(インデックスが本文とほぼ同じ厚さだったり)にせよ,ロジェの影響をかなり受けています。名詞が多いのもロジェ譲りで,「洋菓子」の項目を見るとアイスケーキ,アップルパイ…と何十という菓子の名前が出ますし,「文字」を見れば文字の種類や部首の色々などの一覧が見られます。このように,普通の類語辞典よりはかなり類語の幅が広く「類語辞典+仲間語辞典」とでも呼べるものです。英語のもので言うと,ロジェのシソーラスとWord Menuという主題別辞典を組み合わせた感じです。「365日」を見れば元旦から大晦日まで,毎日がどんな日かのリストが出ます。ロジェのシソーラスと同じように,著者一人がすべてを書いたようで,今どき珍しい職人芸的なレファレンスとも言えます。ことばが好きな人は1日中見ていても飽きないでしょう。

序文によると,著者は歳時記の発展型をイメージしたようで,季語になる語は季節付きで出ていますし,作家が使うことも意図しているのか,かなり古めかしい言い回しも載っています。一方,カタカナ語も非常に多く,ちょっとしたカタカナ語辞典ぐらいの語数はあるのではないでしょうか。

こういうタイプのシソーラスは今まで例がなく,とてもよくできていると思いますが,とくに「○○の種類」に関する項目でムラがかなりあるのは残念です。たとえば,1028.15の動物名で,犬の名前は秋田犬からヨークシャーテリアまで,何十と出ていますが,猫に関しては具体的な名前は少なく,「恋猫」「こたつ猫」のように季語になるような句が多く出ています(逆に,犬に関しては季語としてのものはほとんどありません)。他にも,魚の名前に関するものは10ページ以上もページを割いているのに,カエルや蛇の名前は少ないとか,植物の名前は多いのにキノコの名前は少ないとか,日本文化の中(それも,詩歌や俳諧といった文学的なコンテクスト)での重要性や位置づけが,内容の分量にも少なからず影響を及ぼしているような気がします。

大シソーラスに関しては,先日の辞書学研究会でも話題に出たのですが,こういうものこそ電子辞書向きのコンテンツだと思います。大修館さんも,冊子版は個人というよりは電子メディアが使いにくい場所(図書館など)向けを想定し,しばらくたったら電子辞書版として展開していくことを念頭に入れているのではないでしょうか(辞書でもない,ただ日本語を羅列しただけの本に,普通の人は15000円も出さないでしょう)。「大シソーラス」の巻末にも,「理想的辞書システムとIT」という著者の小論が載っていて,「語釈辞典」と「シソーラス」「活用辞典」の三角形の間を自由に行き来できることが理想だ,というようなことが述べられています。語釈辞典というのは,いわゆるネイティブ向け1カ国語辞書で,活用辞典というのは,引用句辞典や歳時記,文例辞典などを指すようです(英語での「活用辞典」のところになぜかCOBUILDが出ていて「??」ですが,もしかしたら辞書のCOBUILDでなく,Bank of English(いわゆるコウビルドコーパス)のことでしょうか?)。

広辞苑のような語数の多い国語辞典とカップリングさせれば,プロ仕様のハイエンド電子辞書の日本語コンテンツとしては最適かと思います。これぐらい重厚な類語辞典と,英語系の上級コンテンツを搭載すれば,翻訳者などにも重宝するのではないでしょうか。ネックになるのは,大修館が広辞苑に相当する規模の国語辞典を出していないことです。SR-8100のRoget's Thesaurusが使いにくいのは,大規模英和(英英)が搭載されていないので,ロジェにある分からない単語を英和や英英にジャンプしても空振りすることが多いからなのですから,仮に明鏡あたりの国語辞典とカップリングしても,ちょっと使いにくくなるのかもしれません。ICというより,CD-ROM辞書向きコンテンツかも。

小学館類語/角川類語 投稿者:Sekky@管理者  投稿日: 9月25日(木)13時23分03秒

日本語の類語辞典も徐々に電子辞書に搭載されるようになってきました。今のところ,小学館の「使い方の分かる類語例解辞典」(SR-T7000)と角川の「類語新辞典」(PW-A8000)の2種類がありますが,これらは性格が多少違います。

小学館類語は収録語数が25000語,角川類語は60000語なので,語数は角川のほうが上です。60000語というと小型版の国語辞典(新明解など)よりちょっと少ない感じなので,体感的には,類語を知りたい単語はたいてい出ています。古めかしい単語や堅いことばも多いので,文学作品の翻訳者などの使用にも耐えうると思います。また,単語の位相(常用語,口語,文章語など)も書いてあるので,外国人が国語辞典で引いた単語を類語で調べ,スピーチレベルを確かめる(必要に応じて別の言い回しを探す)のにも有効です。ただ,この位相ラベルは個人差があり,しかも刊行から20年以上たっているので,今の日本語とは多少ずれていることもあります。角川類語は,基本的には意味の似た単語毎にグループ化し,簡潔な用例と語義をつけたという感じで,同じグループの単語間の使い分けやコロケーションの説明は少ないです。そのため,外国人が使う場合はかなり日本語のできる学生でないと厳しいかもしれません。

一方,小学館類語は語数は25000語と,中学生向けの国語辞典にも及ばないぐらいです。しかし,見出し語の選定はしっかりしていて,使い分けを知りたい基本的な単語ならたいていヒットします。そのかわり,ちょっと堅い単語や専門用語はまずだめです。たとえば,角川類語だと,けもの,けだもの,獣類,百獣,野獣,猛獣,珍獣,四つ足,畜生,畜類,家畜,役畜,虎狼…など,20ちょっとヒットしますが,小学館だと,けだもの,けもの,獣類,野獣,ぐらいです。そのかわり,それぞれの使い分けが詳しく説明されています。この4つに共通する意味,使い方の例,各語の使い分け(「けだもの」は今では人をののしるときによく使うとか)など,情報量は多いです。基本語の場合,コロケーションの情報も豊富です。「暑い」「蒸し暑い」「暑苦しい」の場合,「暑い日差し」とは言えても,「蒸し暑い日差し」「暑苦しい日差し」とは言いにくいことなどが表で示されています。そして,「蒸し暑い」には気温だけでなく湿度の高さを伴う(「日差し」は気温に影響を及ぼしても,湿度には関係ないので,「蒸し暑い日差し」とは言えない)という点や,「暑苦しい」は服装や頭髪に関して使える(暑苦しいスーツ姿,とは言えるが,(蒸し)暑いスーツ姿とは言えない)ということまで書かれています。このあたりは,角川類語にはない特徴です。

このように,小学館類語は書き言葉など,堅い言い方が少ないのでプロの翻訳者が仕事に使うにはちょっときついかもしれません。しかし,言いかえれば小学館類語に載っている語はどれでも日常の会話で普通によく使われるものなので,外国人の日本語学習者など,スピーチレベルの知識が少ない人でも安心して使えるとも言えます。中級以上を受け持つ日本語教師のリソースとしても使えるでしょうし,説明は(ルビなしですが)外国人でも理解できるほどわかりやすいので,漢字圏の学習者なら,母語と日本語の意味の違いを知る上でも有効かと思います。

#これ以外の日本語類語辞典としては,講談社の類語大辞典やこの前大修館が出した日本語大シソーラスが有名ですが,講談社は基本的に角川類語と同じような感じ(小分類が品詞別になっていたり,カタカナ語も積極的に見出し語に入っていたりという細かな違いはありますが)です。大修館はちょっと毛色が違い,Longman-Roget'sのthesaurusのように,類語を羅列しただけで,それぞれの語義の解説は全くありません。簡単に言うと,

説明の詳しさ:詳しい← 小学館>角川,講談社>>大修館
収録語数の多さ:多い← 大修館>>講談社,角川>>小学館

という感じでしょうか。ちなみに,小学館類語はシステムソフト電子辞典シリーズや,昔のMS-Bookshelfで電子化されています。

辞書の語源記述 投稿者:Sekky@管理者  投稿日: 8月18日(月)11時13分42秒

ある程度上級レベルの辞書でないと語源記述は載っていませんが,普通の高校生が英語学習をする上でも語源の知識は有効です。

たとえば,ある程度英語のできる受験生なら,-nessという接尾辞が,kindnessのように,形容詞を名詞化する働きがあるということぐらいは知っていると思います。しかし,mobileという形容詞を名詞にしたい場合は*mobilenessではなく,-ityという接尾辞を使い,mobilityになります。これを不思議に思う受験生はかなり優秀だと思いますが,多くの英語教員は「mobileの名詞形はmobilityであり,mobilenessではないのです。そう覚えるしかありません」という程度の答えしかしてくれません。「でも,coolなら*coolityではなく,coolnessになりますよね。なぜですか?」とでも生徒が反論すれば(実に的を射た反論だと思いますが)「mobileの場合は-ity,coolは-nessになっているのです。理屈だけでは英語は勉強できません」などとお説教されるかもしれません(^^;; 世間では,学校での英語の授業に対して,実際のコミュニケーションに役立つ英語学習をしてほしいという要求が強いようですが(もちろんそれが重要であることは言うまでもありませんが),英会話学校でなく,中学や高校,大学の教科としての英語学習では,教養教育の位置づけもあるわけですから,上記のような素朴な生徒の疑問に答えてあげられるような内容であってもいいように思います。

kind→kindness, mobile→mobilityというのは,決して恣意的になっているのではなく,語源学の知識を借りれば実に簡単なことです。英語には,いわゆる英語生え抜きのゲルマン語源の語と,後にラテン語系の言語から流入してきたロマンス語系の語が入り交じっていて,kind, coolは前者,mobileは後者の語です(日本語でも,いわゆる大和ことば=和語と漢語があります)。接尾辞も同じで,-nessが前者,-ityは後者です。ゲルマン語源の語にラテン語系の接尾辞を添える(あるいはその逆)ことはできないから,*coolityも*mobilenessもありえない,というだけの話です。語源記述のある辞書を見れば,英語生え抜きの語にはOEやME(古英語,中英語),ロマンス語系から流入してきた語にはF(フランス語)L(ラテン語)などとかいてあるので,簡単に区別できます(この程度の判別なら,全く語源学を知らない高校生でも語源記述が使えます)。

英語の単語といっても様々な人生遍歴があることがこの例からも分かりますし,ロマンス語系から流入してきた語は,同じ意味を持つゲルマン語系の語よりもフォーマルなニュアンスがある(begin-commenceなど)ということなどは英語に興味のある生徒には面白い話だと思います。話を日本語に広げて,日本語の和語と漢語だって「開く」と「開催する」をくらべれば英語と同じですね,と指摘することもできます。こういうことは英会話学校や市販の英語教材といった「実学」重視のものでは真似できない内容であり,高等教育を受ける者なら知っていて損はない知識だと思います。ほかにも,apronとnapkinの関係とか,語源記述の載っている辞書を使っていると面白いことが色々分かりますが,G3(という上級学習英和)でさえ語源記述はほとんど載っていないのは残念です。

カタカナ発音辞典 投稿者:Sekky@管理者  投稿日: 6月 5日(木)13時13分41秒

↑英語に関しては,ソニーさんの機種などでカタカナ発音から検索することができますが,英語以外の外国語を含め,29言語の基本語がカタカナで引ける辞書があります。三省堂の「カナで引く外国語辞典」というものです。ISBN: 4-385-10581-2

収録語数は英語で12000語,独仏伊西語が各1500-2900語,それ以外の言語は各200-650ぐらいなので,基本中の基本の語しか載っていませんが,耳にした単語を,それが何語かが分からなくてもカタカナで引ける(各言語別ではなく,50音順に29言語すべてが混ざって配列されていますので,言語が分からなくてもOK)のは非常に便利です。お店の名前などをちょっと引いてみたりと使い道は多いです。ただ,初版が1988年で,改訂されていないので,まだ入手できるかどうかは分かりません。語数は少ないですが,それでも旅行用会話集に比べれば多いので,電子辞書のコンテンツとして最適かもしれません。カタカナのインデックスと,(冊子体にないですが)原語でのスペリングのインデックスを備えれば,英語以外の外国語にふれる機会は多いが,二外辞書搭載機を買うほどではないという人には便利だと思います。以下の29言語が収録されています(帯に載っている順番,言語名は帯に記載のまま)。エスペラントやアイヌ語まで入っているのには驚きます。

英語,ドイツ語,オランダ語,スウェーデン語,デンマーク語,ノルウェー語,アイスランド語,フランス語,イタリア語,スペイン語,ポルトガル語,ロシア語,チェコ語,ポーランド語,ヒンディー語,ハンガリー語,アラビア語,スワヒリ語,トルコ語,モンゴル語,満州語,タイ語,ビルマ語,中国語,マレー語,タガログ語,朝鮮語,アイヌ語,エスペラント

学習辞書のニーズ(>Stoneさん,るっこらさん,サイヤさん) 投稿者:Sekky@管理者  投稿日: 6月 4日(水)20時51分47秒

>辞書は充実が第一。

このご意見は,日本の英語辞書史の観点からも非常に興味深いものだと思います。今でこそ,いわゆる学習英和と呼ばれる辞書が市場の中心になっていますが,これはごく最近のことです。上級学習英和の草分けである研究社の新英和中辞典の初版がでたのが昭和40年代前半ですが,それ以前は,学習辞典は初級者向け(今では高校生向けなので初級者向けとは言えないですが,当時は中学生向けの辞書などほとんどありませんでしたので,クラウンも初級向けになってしまいます)の三省堂クラウンぐらいで,その上となると,一般の人が普通に買えるレベルだと三省堂のコンサイス,専門家向けなら研究社英大ぐらいしかありませんでした。ですから,クラウンを卒業した人は皆コンサイスへ行ってしまい,コンサイスで物足りなければ大辞典になってしまうのでしょう。当時は,英語学習の目的は,西洋からの情報を吸収することや,英語で書かれた文学作品を味読するという受信用途が主体で,英語を発信する機会など,多くの人はほとんどなかったと思います。だからこそ,学習英和=初級向け,大規模英和=上級向けという区分で何の困難もなかったと思います。

しかし,昭和39年の東京オリンピックや,海外渡航自由化により,急速にコミュニケーションとしての英語力が要求されるようになってきます。世界一周航空路線の開設,ジャンボ機の就航,ジャルパックのようなパックツアーなどで,海外旅行が一般的になったのも昭和40年代だと思いますが,それ以降,学習辞書も,初級者が使うという用途とは別に,上級者が発信用として使うというニーズが出てきました。その流れで登場したのが研究社の新英和中辞典です。当時は,OEDからの例文無断使用など,物議をかもしたとはいえ,今のジーニアスのような感じで,上級学習英和のdefacto standardになっていたと思います。昭和50年代後半になると,共通一次の導入による大学入試の変革や,ベビーブーム世代が受験人口に入ることによる大学入試の難化により,新英和中辞典より1ランク下の学習辞書のニーズが出てきます。ライトハウス,初代グローバルなどはその時代を風靡した高校学習辞書ですが,一方,新英和中辞典と研究社英大の間を埋める辞書として,プログレッシブやリーダーズも出ています。

>つまりShekkyさんの持論である学習者用と専門家用の区別は
>紙の時代ならともかく今や不要である、と思っていますが、いかがか。

こういう日本の流れとは別に,OALD, LDOCEを中心とするイギリスの学習英英系の流れもありますが,このように日本では急速に発信用途の必要性が出てきたことにより,学習英和が初級者の受信(+発信)用としてだけでなく,上級者の発信用にも不可欠になっているというのは事実です。

るっこらさんやサイヤさんは,外資系企業やピアニストとして,英語を道具としてお使いだと思いますが,外資系企業では,おそらく英語ができる人ほど発信面の仕事がまわってくるはずで,そうなると大規模英和と学習英和の併用はどうしても必要になりますね。笠島準一さんの「英語の辞書を使いこなす」(講談社学術文庫)にもエピソードが出ていますが,Ph.D論文を書く際にもっとも頻繁に使った辞書がニューアンカー(という高校英和)だったというのは興味深いです。

システムソフト電子辞典シリーズをEPWINGに 投稿者:Sekky@管理者  投稿日: 5月20日(火)14時49分01秒

↑システムソフト電子辞典シリーズは独自規格のフォーマットですが,以下のソフトにより,EPWINGフォーマットに変換可能です。今まではUnix環境でしか使えませんでしたが,Windows対応のバイナリができたため,Windows環境(のDOS窓)から実行できるようになりました。もっとも,DOSソフトなので,誰でも使えるものでもなく,パソコンにある程度詳しくないと骨が折れると思います(DOS時代からパソコンを使っている人なら大丈夫だと思います)。DDWin等のビューアで検索する場合,辞書本体に加え,カタログファイルというものを作る必要があり,別のユーティリティー(EPWUTIL)を使うなど,その手順がけっこう面倒です。それでも,DOSパソコンやPDAなどで,システムソフト電子辞典シリーズのユニークなコンテンツが検索できるのは朗報でしょう。私も,ロイヤル英文法をEPWINGに変換し,DOSのパソコンにインストールして,教材研究などの際に重宝しています。ほかにも,American Heritage Dictionaryを変換すればネイティブ向け英英が使えますし,英語以外の外国語辞書も多いので,PDAを持っている人はIC辞書を補完する第二の電子辞書として使い道が広がると思います。

※ちなみに,システムソフト電子辞典シリーズにはフォーマットが2種類あり,旧フォーマットのものは上記のツールでEPWING化できません。ほとんどが新フォーマットだと思いますが,小学館の類語例解辞典は残念ながら数少ない旧フォーマットのタイトルなので,EPWING化できません。

http://homepage2.nifty.com/EBTools/download/dessed_w32.lzh


LDOCE4版 投稿者:Sekky@管理者  投稿日: 4月 7日(月)12時08分19秒

↑まだあまり市場には出ていないようですが,仕事の関係でかなり前に試用できました(^^)
冊子体版に関しては,フルカラーになっていたのが度肝を抜かれました。見出し語だけ色刷りとかいうレベルではありません。挿絵も,従来の英英のようにカラーページのものだけが色刷りなのではなく,辞書の見出し語に組み込まれているものもカラーです。

フルカラーといっても,紙質やインクがよいためか,目がちかちかすることもありません。OALD6版など,従来の英英のカラーページは,アート紙?のような光沢のある紙なので,目が疲れるのですが,LDOCE4版は全ページ普通の辞書の紙質です。

コーパスによるSpoken, Written別の頻度表示はLDOCE3版からの特徴でしたが,フルカラーになったことと合わせ,重要語彙(Spoken, Writtenのいずれかが上位3000語以内)は赤(というより赤紫)字(通常語は青字)で表示されるのは,日本の英和辞典ではよくありますが,学習英英ではマクミラン英英辞典に次ぐものです。

ただ,この頻度ランクが,元のコーパスのランクを「教育的配慮」などによる加工をしないで,そのまま出しているので,f--kやs--tなどのタブー語も上位3000語以内に入ってしまいます。そのため,これらの語は頻度上位として赤字で表示されているのはちょっとびっくりです。LDOCE3版でも頻度ランクは同じですが,色刷りになっていないぶんインパクトはそんなにありませんでしたが(^^;; 同じロングマンでもLAADはこういうタブー語は頻度ランクから意図的に外しているようですが。

CD-ROMに関しては,前評判通り,非常に高機能で操作性も快適です。ロングマンにしては珍しく,完全フルインストールできます(一旦インストールすればCD-ROM不要)。最近のCD-Rの普及などを考えると大胆といえば大胆ですが,LDOCE4版の場合,CD-ROM付きの版がデフォルトのようで,値段も高くないですから,正規に買っても負担が少ない,ということがあるのでしょう。

昔,一太郎がver.3を出すときに,低価格化するとともにコピープロテクトを外したのは有名ですが,このときは,(違法コピーも増えたでしょうが(^^;;)売り上げも伸びたそうです。LDOCEの今回の戦略も同じで,妙なプロテクトをかけて敬遠されるよりは,CD-ROMを辞書本体に組み込んで安くすることで,結果的に買ってもらう人を増やそうということが,もしかしたらあるのかもしれません。

>HIROSHIさん

LDOCE4版はWindowsのみです。また,かなり重いので,動作環境もPentium 350以上となっています。ノートパソコンで,省電力モードだとけっこうもたつきます。COBUILDのCD-ROM版のようなレスポンスは期待できません。

>iusさん, hiyuさん

私の手元にあるもの(ペーパー版)も同じです。また,Flexicover版,ハード版もそのISBNです。

国語系コンテンツ(>寿限無さん) 投稿者:Sekky@管理者  投稿日: 3月12日(水)11時22分07秒

>事実上国語辞典は広辞苑(岩波書店)のみ、例外的に新明解(三省堂)が幾つかに搭載され
>ているだけです。

高校生向けモデルはともかく,一般成人もターゲットにした機種は,広辞苑のネームバリューがあまりに大きいので,外すというわけにはいかないのかもしれません。語義が歴史順になっていたり,古後も現代語も区別なく載っていたりと,一般人のレファレンス辞書としては非常に使いにくいものである(英和辞典では,歴史順配列の辞書などは数十年前に姿を消しています)のですが,なぜかブランドイメージが先行してしまうようです。大辞林にせよ,日本語大辞典にせよ,他社の大規模国語辞典は,皆広辞苑のデメリットを認識し,それを解消する内容になっていますが,一般にはそれがあまり知られていないのが残念です。過去にもふれましたが,差別語がそのままになっていたりという内容からも,そろそろ考え直す時期にきているとは思いますけど。

>PC用の辞書には大辞林(三省堂)など大型国語辞典が幾つか発売されています。
>これをIC電子辞書に移植するよう出版社、メーカーに望みたいのです。

英語コンテンツの話ですが,ちょっと前まではカレッジライトハウスやアンカーといったユニークなコンテンツを載せた機種があったのですが,最近は皆ジーニアスになってしまいました。今のようにここまで電子辞書の競争が激しくなると,どこも安全策をとるのか知りませんが,コンテンツも横並びになってしまいますね。CD-ROM辞書は,冊子体辞書と同じ出版社が出すケースが多い(大辞林のCD-ROMも三省堂が出しています)のでいいのかもしれません。

>また古語辞典・漢和辞典は殆ど販売されていません。JIS第1、第2水準の関係から使える
>漢字に制限があるためと思われますが、この分野の技術レベルの向上は恐ろしいくらいな
>ので、ぜひ電子辞書化してほしいと思います。

SR-T4020のデジタル漢語林は7000字収録なので,漢字源のようにJIS漢字だけでなく許容漢字も入っているようです。JISの第三,第四水準も制定されたので,今後は冊子体の親字まるごと収録も可能になるかもしれませんが,フォントが用意されていない? ことがネックになるのかもしれません。

#私個人としては,国語系コンテンツの現状打開には以下のような点を期待したいと思います。

・日本語類語辞典の搭載:日本のメーカーさんが,日本人ユーザ向けに出している電子辞書が,複数の英語類語辞書(それも本格的なもの)を載せているのに日本語の類語辞典を載せていないというのはおかしな現象です。講談社類語の評判がよいみたいなので,ぜひこれの電子化を望みたいです。冊子体の講談社類語はインデックスから再度引き直さないといけないので,分厚いこともあって使いにくいのですが,電子化すれば使いやすくなるはずです(Longman-Roget'sのthesaurusと同じ原理でひくものですから)。日本語類語は,何も特殊なコンテンツではないので,英語類語と同じで,どこかが載せれば一気に業界標準コンテンツになるはずです。今年の冬モデルぐらいに期待?

・広辞苑以外のコンテンツの搭載:これは日本語類語に便乗して,講談社の日本語大辞典という手が考えられます。常用サイズの国語辞典なら,大修館つながりで明鏡国語が最有力でしょう。明鏡国語はまだ出たばかりなので知名度は低いですが,早晩,内容からして新明解に匹敵するぐらいの評価は確実に得られると思います。上級機には日本語大辞典+日本語類語,汎用機には明鏡国語というコンテンツを望みたいです。

英語コンテンツが一段落したので,今度は国語系コンテンツのてこ入れになるというのはそれほど実現不可能な望みではないと思いますが(^^;;

Activator (LLAとLEA) 投稿者:Sekky@管理者  投稿日: 2月27日(木)10時59分40秒

前も少し書いたのですが,XD-R9000/R820に搭載のLLAとSR-T4020のLEAは,規模だけでなく,内容もかなり違います。単にLEAはLLAを縮約したわけではありません。

たとえば,WEATHERを引くと,LLAでは天候や気象そのものを表す類語しか出ていませんが,LEAなら,天気がよい(悪い),晴れ,雨,曇り,雪,嵐,暑い,寒い…といった,幅広い類語群が出ています。これは,中級以下の学習者が日常的に表現するようなトピックでは顕著です。

また,時にはLLAにないような記述があって,上級者でもハッとするような内容があります。たとえば,GIRLFRIEND/BOYFRIENDのキーワードの中にあるpartnerという語は,LLAでは,内縁の夫婦というような意味しか出ていません。#もっとも,正式に結婚している夫婦でもpartnerは使われますので,これはちょっとおかしな記述です(新版LLAでは直っています)。

しかし,LEAでは,partnerは,夫婦という意味で使われるだけでなく,「関係を持っている人の性別が不明な場合(=boyfriend, girlfriendのどちらで言えばいいか判断できない場合)にも使われる」という補足情報があります。要するに,相手が同性愛者であることにも配慮しているということです。これは昨今の現状やpolitical correctnessの観点を踏まえると,非常に適切な但し書きですが,新版LLAでさえこういう記述はありません。

見出し語の種類(>サイヤさん) 投稿者:Sekky@管理者  投稿日: 2月24日(月)12時03分50秒

>SR-T5000で今日初めて気がついたのですが、
>多品詞語で記述が長い単語などの場合、
>語源の記述の直後にある、品詞を示すマークにカーソルを当ててジャンプすると
>その品詞に直接ジャンプできるのですね。

そうですね。品詞のジャンプインデックスが本文に埋もれてしまっていて,目立たないので意外と知られていない機能かもしれません。

>また、例えば『(他の単語の)語法欄を参照』という場合なども、
>そこにカーソルを置いてジャンプすると直接その語法解説に飛べることを知って感激しま
>した。確かSR-9700ではできなかったと思いましたので。

これもSR-T5000独自の機能だと思います。上記の品詞ジャンプと同じく,通常の本文のように見えるので気づきにくいのですが,たとえばXXX[名]3.という参照があれば,XXXという語にジャンプするだけでなく,名詞語義の3番にちゃんと飛んでくれます。できれば,こういう参照ジャンプが可能な箇所は,アイコンを反転表示するなどして,通常の本文と容易に識別できるようにすると分かりやすいのですが…。

>XD-R9000でthe Treaty of Paris などがダイレクトに引けないというのは、
>これらはインクリメンタルサーチで出てくる他の複合語とは
>何か違いがあるのでしょうか?
>SR-T5000ではこれらは成句扱いになっていますよね?
>成句と複合語の違いなど、教えていただければうれしいです。

これは各辞書のエントリー種別の違いに関わる,非常に高級なご指摘で,辞書にかなり関心を持っている人でも見過ごされがちな点だと思います。これを考えるには,辞書の見出し語の種類をまず認識する必要があります。意外と知られていませんが,辞書の見出し語には以下のような種類があります(以下は辞書学的な話なので,かなりマニアックになります)。

(1)主見出し:辞書の各エントリーの冒頭(発音記号の前)にゴシックやボールドで出ている語。

(2)変化形:通常,発音記号の直後に出ているその単語が屈折変化した形。主見出しと同様にボールド,ゴシックになっている場合が多い。goの中に出ているwent, goneなどの不規則変化や,学習英和ならdogの中にあるdogsなど,規則変化も含む。

(3)成句:いわゆるイディオム。kick the bucketなど,それぞれの語を足しただけでは意味が類推できないもの(「バケツを蹴る」=「くたばる」ではない)。通常は語義の最後にイタリックで載っている。

(4)句動詞:go onやget offのように,動詞+前置詞(副詞)の組み合わせ。辞書によるが,成句と同等にみなす辞書もあれば,主見出しとして出ているものもある。

(5)追い込み見出し(run-on):エントリーの最後に(通常は語義なしで)載っている派生語のようなもの。

(6)複合語:二語以上からなる見出し語。capital gain, capital letterなど。成句と違い,それぞれの語が独立した意味を持っているので,各単語を合わせた意味が複合語の意味になる場合が多い。capital gainなら,「資本」+「利得」。

辞書の帯などに載っている「収録語数」は,たいてい以下の(1)〜(6)を合計した数です。一般のユーザの多くは,「語数」=「主見出しの数」と思っていますが…。

ですから(余談ですが)リーダーズの27万とG3の9万強とでは見出し語数は桁外れに違うようですが,その違いの多くは複合語の数と,専門的な主見出しの数によるものですから,通常レベルの英語を読む際ならG3でもそれほど大きな問題にはなりません。

電子辞書の話に戻ります。今ふれた辞書の見出し語の構成要素のそれぞれが,電子辞書ではどのように検索できるかを示します。以下は,いずれも英和辞典の場合です。

(1):普通に検索可能。インデックスにも入っている(=スペルチェック,ワイルドカード検索の候補になる)
(2):理屈では,インデックスにないので検索できないが,ほとんどの辞書には不規則変化形は主見出しにも出ているので,そちらが検索される。
(3):成句検索モードで検索可能。通常のインデックスには入っていないので,通常検索では検索できないし,スペルチェック等の候補にもならない。
(4):(3)に準じる。
(5):カシオ以外は(1)同様に通常検索可能。
(6):メーカーとコンテンツに依存。ジーニアス等搭載機はカシオ以外は(1)同様に通常検索可能。リーダーズ搭載機は全機種通常検索可能。

Treaty of ParisがR9000でダイレクトに引けないのは,(見かけは複合語のようであっても)リーダーズではこれが複合語としてみなされていない(=見出し語Parisの中に追い込まれている)からなのでしょう。つまり,見かけは(6)だが実質は(5)ということです。そのため,R9000は,上に書いたようにリーダーズの複合語はインデックスに入っていますので,sea anemoneなどはインクリメンタルサーチで引けますが,Treaty of Parisは見かけは複合語でも,実質はrun-onっぽい扱いなので,インデックスに入っていない(=インクリメンタルサーチでは引っかからない)のです。

しかし,同じリーダーズ搭載機でも,SR-T6500では,run-onがインデックスに入っているので,beautification(というrun-on)がインクリメンタルサーチで検索できるのと同じく,Treaty of Parisも検索できるわけです。

ついでに言うと,冊子体G大では,the Treaty of Parisのように前置詞を含む複合語は成句扱いにする,という規則になっています(使い方説明にそう書いてあります)。ですから,電子辞書版でも,当然成句扱いをされていますので,通常検索では検索できません(成句検索でならOK)。

細かな点といえば細かな点で,冊子体を使っている限りは全く気にならないことですが,電子辞書だとエントリーの種別が違っただけで,ワンタッチで検索できる,できないの違いになりますので,特にメーカーさんはこのあたりをしっかり考えて開発していただきたいと思います。

ユーザフレンドリーの立場から言うと,こういうエントリーの種別をユーザが意識しないといけない検索仕様は好ましくありません。ですから,成句検索でないと成句がワンタッチで検索できないとか,カシオさんのジーニアスのように,複合語がインクリメンタルサーチのインデックスに出ないというのはちょっとまずいわけです。成句検索は,セイコーさんのフルコンテンツ第一号機のSR-700以来,右へならえになっていますが,はっきり言えば,こういう機能がなくても,すべての見出し語がインクリメンタルサーチのインデックスに出てくるようにするだけで,用は足ります。コロンブスの卵のようですが。

sea(主見出し)を引いても,sea anemone(複合語)を引いても,beautification (run-on)を引いても,最近のカシオさん以外の機種では,ちゃんとインクリメンタルサーチのインデックスには出てきます。ここから一歩進めて,kick the bucket(成句)やget off(句動詞)もインクリメンタルサーチのインデックスに出すだけで,ユーザはエントリーの種別を意識しなくても辞書が引けます。フルコンテンツ機が出て10数年になろうとしているのに,いまだに成句が主見出し同様に検索できないというのは,実に摩訶不思議なことです。


大規模英和の必要性(>宮川さん,woodlandykさん) 投稿者:Sekky@管理者  投稿日: 2月17日(月)09時09分04秒

G大(25万5000語)か,リーダーズ+リープラ(46万語)か,どちらがいいかという問題ですが,宮川さんとwoodlandykさんのご指摘はどちらもその通りであると思います。

宮川さんのおっしゃるように,受信用途ではとにかく語数の多い辞書があるにこしたことはないと思います。もっとも,G大の25万5000でも,通常レベルの読解には十分すぎると思います。それどころか,ジーニアスやプログレッシブクラスの上級学習英和でも,通常の英字紙やTime, Newsweek等を含めた英語雑誌の語彙は(固有名詞や専門語を除けば)かなりカバーされています。

ここで問題になるのは「固有名詞や専門語を除けば」という点だと思います。宮川さんがリープラクラスの辞書が手放せないというのは,大学のコースワークなどで未知の学問を学ぶために英語を読む機会が多いからだと思います。よく「専門用語は一般辞書に期待しないで専門のグロッサリーを使いなさい」と言われますが,これは理想論で,自分の明るくない分野でいきなり専門用語辞典の深い説明を読んでも分かりにくいと思います。こういう場合は,リーダーズやリープラでまず調べ,それでもピンとこない場合は専門用語辞典にあたるようにすると効率的だと思います。

このように,未知の学問を高度なレベルで学ぶには,語数の多い英和辞典があると役立ちます。また,翻訳者,通訳のように,固有名詞や専門語を読み飛ばすわけにはいかない仕事の人にも必須でしょう。また,(私もそうですが)現場の英語教員は,講読の授業で自分があまり明るくない分野の英文を扱うことがよくあると思います。こういう教材を予習する場合,出てくる固有名詞や専門語をリープラで引くと,教科書の注以上に詳しく説明されていたりしますので,英語そのものから離れて教材内容に関して「蘊蓄」を傾ける授業ができます(^^) 学生にとっても,固有名詞をカタカナ読みして読み飛ばすのでなく,内容を理解できれば興味が持てると思います。

一方で,woodlandykさんのおっしゃる

>冷静になって考えてみると、G大にはなくてリーダースやリーダースプラスに入ってる
>ような単語を年に何回引くでしょう。(多分、年に数回もないと思います。)

というのも一理あります。通常レベルの学習者だと,読解の際,リープラクラスの固有名詞,専門用語以前に,G3等の上級学習英和のスコープである通常の語彙を辞書で引くことが多いと思います。通常の語彙がきちんと定着していなければ,固有名詞や専門語だけ知っていても英語を読むことはできませんし,逆にG3クラスの学習英和のスコープをこえる語であれば,知らなくても全体の内容は何とかつかめるのではないでしょうか。宮川さんはじめ,リーダーズが出る前に留学をされていた人は,苦労しながらもそうやってこられたと思います。

結局のところ,たとえ英文読解という受信用途であっても,リーダーズ+リープラだけで(学習英和を使わず,一般英和のみで)こなせるというのは,基礎的な単語力がある程度あるということが前提になると思います。一般英和は,語数が多いぶん,基本的な単語の記述量が学習英和に比べて弱くなるからです。

例文やCU表記(可算,不可算),文型表記,スピーチレベルの記述などは,発信向けの情報だと思われがちで,実際辞書出版社もそのようにPRしていますが,私としては,通常レベルの学習者にとっては,受信の際にも非常に有用だと思います。たとえば,ある単語がどういうニュアンスで使われているのか(plump=「太った」と覚えているとマイナスなイメージを持つかもしれませんが,実際は好意的に使われることが多い,のような)を知ることで,表面には現れない登場人物の気持ちなどの機微をつかむことができ,より深くその小説(等)を味わうことができます。また,スピーチレベル記述を見ることで,意味を知っている単語でも,その単語がどういう場面で使われるのか(くだけた場面か,フォーマルな場面か,等)が分かり,今後その単語を使って発信する(英語を書く際など)際の助けになります(単語の意味だけを知るという辞書の使い方では,その場限りの英語学習しかできませんが,辞書の情報を骨までしゃぶりつくすむことで,ペーパーバックを読むというリーディングの中でも,ライティングやスピーキングに必要なスキルも知らず知らず
のうちに身につけることができます)。

上級レベルの学習者は,仕事や英語以外の勉強のために英語を読むことも多いでしょうから,そういう場合なら「英語を読むための道具」として辞書を考える必要があります。読むための道具なら,語数が多いにこしたことはありませんので,リーダーズやリープラ,場合によっては英辞郎などがmustになります。

一方,通常の学習者は,「英語を読む」という作業が英語学習の一部分である場合も多いと思います。Timeを読む場合も,Timeでないと得られない情報を得たいから,というよりも,英字週刊誌に親しむ,という目的が先にくる場合がけっこうあるのではないでしょうか。こういう場合は,英語を読むという作業を通して,英語力全体が向上することが望ましいわけで,そのためには先にふれたように,学習英和の発信向け情報を受信の際にも活用するという発想の転換も必要だと思います。コミュニケーション重視の英語教育がもてはやされるためか,リーディング=訳読を連想し,否定的にとらえる学生が増えていますが,学習英和を活用することで,英語を読む作業を通してスピーキングやライティングの力も間接的には身につけることができるということは強調したいと思います。

某英語雑誌の次号で辞書特集があり,そこでもふれたのですが,英文読解のために辞書を買う際は

・上級学習者や道具として英語を使っている人:収録語数の多い辞書
・通常の英語学習者:レベルに応じた学習辞書(場合によっては,ライトハウスやスーパーアンカーのような高校学習英和クラスでも)を買い,必要に応じてリーダーズ等の大規模英和も参照,そして,徐々に大規模英和をメインに移行

というパターンをおすすめします。

大辞典の違い(>昼行灯さん) 投稿者:Sekky@管理者  投稿日: 1月10日(金)18時14分34秒

>ちなみに、jackknifeというのは統計学で用いられる推定手法の一つなのですが、
>ジーニアス英和大辞典にはどのような方法化が具体的に説明してあります(リー
>ダース・リープラには、統計学で比較的良く使われる意味についてまったく言及
>していません)。

これを載せている辞書は,ざっと見た感じでは英和ではG大以外はないようです。ランダムや研究社英大,グランドコンサイスのような20万語以上の辞書にも載っていません。英辞郎にも出ていません。英英もカレッジ版はもちろん,American HeritageやRandom Houseの大辞典も全滅ですが,NODEやNOADなど,Oxfordが現代英語重視のふれこみで最近出したデスクサイズの英英や,SOED(OEDの簡約版で,(おそらく)世界で2番目に大きな英語辞書)にはちゃんと出ています(他書が載せていないような廃語や古めかしい語も多く載せているSOEDに出ているのはびっくりですが)。

G大,NODE, NOAD,SOED…これらの辞書が,いずれも自社構築のコーパスを全面的に反映させたcorpus-basedの辞書であることは,全くの偶然ではないでしょう。専門用語とはいえ,コーパスによく出てくるようなものは,類書に出ていなくても採用した結果かもしれません。コーパスに全面的に依拠した辞書には問題点や批判も多い(よく出す例ですが,コーパスに忠実なCOBUILDでは,homestayやhomeroomといった,英語母語話者の間では頻度の少ない(が,日本人には重要な)語が漏れてしまうなど)ですが,この例ではコーパスの威力が発揮されています。

これだけのデータから一般化はできませんが,研究社英大やランダム,リーダーズといった,競合する大英和クラスの出ていない語がG大に載っている(これはjackknifeに限らず,言語学関連の用語でも多いです)ということからも,G大は,他書の記述の孫写しに安易に走らず,独自の基準で見出し語を選んでいることがうかがえます。あるいは,おっしゃるように,専門語校閲がしっかりしているので,校閲時に統計学者や経済学者がこの用法を付け加えたのかもしれません。

私を含め,辞書ユーザはどうしても収録語数という数字で比較してしまいがちです。G大は公称25万5000,リーダーズ+リープラが46万,英辞郎はオーバー100万,のようにです。しかし,G大より単純計算で4倍以上の語数がある英辞郎でも決して無敵ではなく,こぼれてしまう語はあるのですね。

和英コンテンツ(>morelさん) 投稿者:Sekky@管理者  投稿日: 1月 9日(木)08時44分36秒

>私の田舎のベスト電器には、DD-IC1000もDD-IC550も、まだ店頭に置いてあります。(^^;
>もっと値落ちしないかなぁと待っていたのですが、9千円台から値下がりしないため、ついに先>日、DD-IC1000を(税込み)1万円で購入しました。(DD-IC550も同じ値段)

0544というと富士宮ですね(笑) たしかにベスト電器は全国に店舗があり,とくに首都圏系量販店の勢力が及ばないところでは店舗数も多いようなので,近くの店へ行って全店舗で在庫確認をしてもらうと,意外と手に入るかもしれません。morelさんの購入価格は,私が9月に探し回って買ったのと同じなので,これ以上は下がらないかもしれませんね。

>プログレッシブ英和は、やはり、今のところ私には一番使いやすい辞書です。
>類似した間違えやすい単語の多くに、次のような注記が入っています。

編者の中には小西先生のようにジーニアスにも関わっている先生もいらっしゃるためか,このへんはジーニアスによく似ていますね。ただ,プログレの場合,ジーニアスには出ていない注記もけっこうあります。

>去年の年末に発売された電子辞書は、予想外に充実した辞書を搭載したものが多数出ま
>したが、なぜか和英辞書だけは進化から取り残されているような感じです。(^^;

20年ほど前にライトハウス和英の新刊行で始まった和英辞典のリフォーム(基本的な日本語に関しては,英和を引き直さなくてすむぐらいの詳しい解説を和英の中でする)は,以降ニューアンカー(今はスーパーアンカー)やルミナスなどに影響を及ぼしました。しかし,和英という性質上,上級者は基本的に和英に頼らず,最初から英和や英英を引くでしょうし,上級者が本当に和英で知りたい語(専門用語や日本文化独自の語の英訳など)の多くは,「和英リフォーム」の対象にはなりにくい語なので,新機軸を多くとりいれた学習和英も,上級者にしてみれば「知りたい単語が載っていない」ということになるのでしょう。また,学習和英のメインターゲットである高校生などの初級学習者は,リフォームされた和英の詳しい解説を読むよりは,英和の巻末にある和英索引で済まそうとする者も多い(英和と和英の2冊を持ち歩くのが面倒だからなのでしょう)ので,最近の学習和英は新機軸を入れている割にはあまり活用されていないのかもしれません。

私個人としては,とくに上級者向けの電子辞書に載せる場合は,ジャンプ機能で簡単に和英から英和へ移れますので,(ルミナスやスーパーアンカーのように)和英自体で完結したものを載せる必要は必ずしもないように思います。そのかわり現行の和英よりも語数を大幅に増やし,和英辞典というよりは「英和辞典の索引」とよべるようなものを載せると,ハイレベルのユーザも満足するでしょう。グランドコンサイスの和英などを載せるのも一つの方法だと思いますし,リーダーズ搭載機には,CD-ROM版リーダーズのような訳語からの検索を備えるというのも手です。

LAADとイギリス系英英(>Nさん) 投稿者:Sekky@管理者  投稿日: 1月 8日(水)17時09分49秒

>ところで、ロングマンには通常版とアメリカ英語版がありますよね?SR9700やPW-6800と
>比較したところ機能面、価格などからXD-R8100がいいかな、と思ったのですがロングマン
>がアメリカ英語版なのが気になります。やはりイギリス英語圏で使用するならロングマン
>通常版やオックスフォードの方がいいのでしょうか?アドバイスよろしくお願いします。

たしかにLAADはアメリカ英語オンリーの学習英英ですが,アメリカ英語とイギリス英語の違いは,イディオムや口語が主なもので,ふだんの英語を使う上ではそれほど大きな支障はないと思います。英語と日本語は比較できないでしょうが,たとえば関西の人が東京へ引っ越して,「疲れた」の意味で「しんどい」と言ったとしても,とくに意思を疎通する上で問題は起こらないのと同じです。もちろん,elevator/liftとか,truck/lorryとか,基本単語でまるきり違うものもありますが,LAADでもこれぐらいのレベルの語なら,liftやlorryもBRITISHというラベルを付けて載せています。イギリス英語そのものの研究をするとかでなければ,LAADでもとくに不自由はないと思います。12月4日あたりの過去ログもあわせてごらんください。

#下衆の勘ぐりかもしれませんが,ロングマンがLAADを出したのは,加熱するイギリス系の学習英英辞典の競争で,他社の英英と差別化するという意図も,もしかしたらあるのかもしれません。イギリス系出版社が出している学習英英辞典の最大のお得意さんはアジア市場であり,その中でも日本が占める割合はかなり大きいと思います(ですから,日本の出版社と提携した特別仕様版(いわゆるコンパクト版とよばれる,日本の英和辞典と同じサイズの版)を出したりしてくれるのでしょう)。その日本の英語教育の主流がアメリカ英語なのですから,イギリス英語主体の学習英英の中でアメリカ英語に特化したものを出せば,大きく差別化できます。

リープラとリーダーズ(>kubotaさん) 投稿者:Sekky@管理者  投稿日: 1月 8日(水)16時51分46秒

>リーダーズプラスの中の記述って、かなりリーダーズと重複していませんか?

>これは、リーダーズ側の改訂増補に伴う少数の重複でしょうか?

おっしゃるとおりです。リーダーズは初版が1984年,現行の第2版は99年にでています。一方,リープラは94年に,当時(初版)のリーダーズの補遺として出されたものです。リーダーズの2版は,初版の収録語数プラス10000語の27万語を入れていますが,この「プラス10000語」はリープラに載っている語の中から,比較的一般性の高い語をピックアップしている(百科的な情報はカットするなどしているので,リープラのをそのまま移しているわけではありませんが)ので,2版で追加された語を中心に,重複が生じます。リーダーズの初版とリープラの組み合わせなら重複はありません。

>これでは、「リーダーズプラスで、19万語プラスだ!すげー!」と思ってリープラ搭載機
>を選んだ僕の気持ちが報われません。

リープラがプラス19万であるのは事実ですが,SR-T6500やXD-R9000などは,実質の語数としては27万(リーダーズ2版)+19万(リープラ)ではなく,26万+19万と考えたほうがいいかもしれません。もちろん,中にはリーダーズ初版にも,リープラにも載っていない語でリーダーズ2版に入っている語もあるでしょうから,厳密ではありませんけど。

#ちなみに,電子辞書版のリーダーズは,冊子体のリーダーズ2版,リープラにはない新語(コンピュータ関係の用語など)を若干補っているそうです。

COT2版 投稿者:Sekky@管理者  投稿日:12月30日(月)18時52分00秒

↑SR-T5000で初搭載されたCOTの2版ですが,初版より語数が増えたことに加え,「〜の種類」を表すリストが大幅に増えました。SR-T5000ではこのリストも省略されないで載っています(SR-9700ではカットされています)ので,英語教員のリソースやクロスワードの補助などに役立ちます。たとえば,flowerをCOT2で引くと,花をつける植物の膨大なリストが出ます。100はゆうにこえているはずです。Philosopherを引けば哲学者のリスト,photographerなら写真家のリスト,presidentならアメリカの大統領の就任順リスト,sportspersonならスポーツプレイヤーのリストなど,使い方次第では人名辞典としても使えるかもしれません。もちろん,リスト内の語もG大にジャンプできますので,訳語や発音を簡単に知ることができます。猫好きな人ならcatで猫の種類が出てきたりしますので,拾い読みをするとおもしろいかもしれません。Thesaurusと言うと,類語が羅列しているだけなので英和や英英にくらべてつまらないというイメージがありますが,COTは読んで楽しめるthesaurusとして貴重だと思います。

日頃,お仕事で電子辞書をお使いの方も,お正月休みぐらいは気ままに拾い読み+ジャンプ機能で(キヤノンさん流に言う)ワードサーフィンを楽しんでみてはいかがでしょうか(^^) …ということで,ここへアクセスしてくださる皆様には1年間大変お世話になりました。よいお年をお迎えくださいm(..)m

レクシス英和辞典 投稿者:Sekky@管理者  投稿日:12月19日(木)21時42分06秒

↑やっと沖縄の書店にも入りました。判型はウィズダムやジーニアスと同じですが,本文のレイアウトはジーニアスのような感じで,ウィズダムにくらべてちょっと窮屈です。ウィズダムは行間がちょっと広いのかどうか分かりませんが,情報量が多い割に見やすいですね。

語用論的記述(ハートマークのもの)はウィズダムにくらべれば少ないですが,その語や表現がどういう機能で使われるかが簡潔に記されています。専門的には発話行為(speech act)とよばれる内容が中心ですが,類書にないぐらい明快に書いてあるので,あれっと思って校閲者を見たら,語用論をやっている人なら誰でも知っているビッグネームの先生が執筆されていました(^^)

Planet Board(語法上の問題点に関して,複数のネイティブにきいた結果をまとめたコラム)はわずか70項目ですが,白か黒かではなく,グレーゾーンの意見も尊重しながらまとめています。文法好きの高校生や英語教師にはおもしろい内容でしょうから,索引を頼りに70項目を通読してみるのもいいと思います。一方,clear-cutな答えを好む受験生などには逆に混乱を招くかもしれません。もちろん,実際の言語事実がそんなに機械的に○×で判断できるものではないことは言うまでもありませんけど。

全体的に,ジーニアスをかなり意識した内容になっています。レクシスのまえがきを読めば分かりますが「精緻ではあるがuser-unfriendlyな語法マニュアルに堕することを避けたかった…」「過度の些末性はむしろ日本人の運用能力の向上を阻害しているとさえ思えるからである」「…”使える英語”を標榜するなら,分析者ではなく使用者の視点で貫かれていなければならない」…といったくだりは,「ジーニアス」という固有名詞こそ出していませんが,全くの一般論で書かれているとも思いにくいです。といっても,Communicative Expressionという項目などはジーニアスで言うレキシカルフレーズそのものですし,よい面は積極的に取り入れているようです。

レベル的には,ジーニアスやウィズダムと同等だと思います。旺文社で言うなら,昔のロイヤル英和のような感じです。サンライズクエストの1段上の位置づけですね。よほどの進学校でない限り,高校1年生にはちょっときついレベルです。まえがきには「単なる検索目的のためだけではなく,"拾い読み"したくなるだけの,読み物としての面白さがなければ存在理由がないと思った」とありますが,ふつうの高校生,大学生にとっては,レクシスもジーニアス等の類書と同じで,とりたてて「読み物としての面白さ」は感じられないと思うのですが(^^;; たしかにplanet boardは先生にとっては「読み物としての面白さ」があると思いますが。生徒が読んでおもしろい辞書は,むしろスーパーアンカーやアプローチのような,文化解説にかなりページを割いた辞書かもしれません。

いずれにしても,ジーニアス,ウィズダム,ルミナスに並び,上級学習英和の四強となることは疑いないと思います。来年夏? 刊行の新英和中辞典の新版も期待できそうですから,来年は上級学習英和が久しぶりに元気になるかもしれません。電子辞書のコンテンツがジーニアス一本になってきている現状を考えると,私としてはこの流れは大歓迎です。レクシスは,中身はいいのですが,フォントが詰まりすぎて見にくいことと,インクのにおいがかなりきついのが難点ですから,いずれ電子辞書化されるのならとてもありがたいです。アジア系の新興メーカーのAuroraさんあたりがやってくれないかなぁ…。サンライズが電子化されているのですから。

ウィズダム英和(続) 投稿者:Sekky@管理者  投稿日:12月14日(土)19時48分26秒

「英語の現在(いま)を映し出す最先端の次世代型英和」(ウィズダム英和の帯のキャッチコピー)は決してだてではありません(^^) とくに,欧米の文化圏ではごく当たり前のことが,今までの英和辞典では詳しく書いていないということがよくありましたが,ウィズダムはコーパスのおかげで実際の言語事実がかなり忠実に反映されているようです。

アメリカ在住の方や留学されていた方はよく分かると思いますが,アメリカの子供が何か悪いことをしたり,成績が悪くて親が呼び出されたりしたとき,親が子供に与える罰としてよくあるのが「外出禁止」です。You are grounded.などと言うわけで,小説なんかでもよく出てくる言い方ですが,意外と英和辞典ではしっくりきません。G3でも「<人>に(…のことで)外出を禁じる」としか書いてありませんし,用例もありません。これだけだと,(テロの影響下などで)保安上の理由で外へ出ることが禁止されている,というようにも読みとれます。日本の子供が悪いことをしたときの罰として外出禁止というのはあまりないので,(アメリカでは,友人同士のパーティーなど,社交の場が多いので,外出できないとなるとかなりこたえるという)文化的背景を知らない人はピンとこない気もします。ウィズダムでは「<親などが>…の理由で<子供など>に外出禁止の罰を与える,罰として遊びに行かせない」という語義になっているので,分かりやすいです。もっとも,ほとんどの学習英英辞典では前からこのような定義になっているのですが…。

この手の意味は英語圏ではごくあたりまえのことなので,たとえ留学経験者とはいえ空気のように感じる内容かもしれませんが,実際のコーパスの用例を元にしているウィズダムは,コーパスの用例をもとに,留学経験等のある執筆者が意識化し,現実に即した定義を書いているからこそ成せる業なのでしょう。root beerにしてもそうですが,現地に滞在しないとピンとこない事物の定義が,ウィズダムではきちんと書かれています(G3では「子供の好物」という但し書きがありますが,これはミスリーディングでしょう。コーラと同じで,アメリカでは大人も子供も好きな人が多い(日本人にとってはあの独特の味は好みがはっきり分かれますが(^^))ですから)。

一方で,pizzaのような,アメリカ文化を語るのに切っても切れないものに文化解説が一言もなかったりするのは残念です。ちなみに,私なら,pizzaの補足語義を「<米>では宅配ピザサービスが普及しており,パーティーなどの際に注文することが多い。迅速さを売り物にしている店が多く,一定時間以内に届かなければ代金を徴収しない店もある」のようにでも書き,「We deliver the pizza in 30 minutes, or it's free. 30分以内にピザが配達されない場合は無料とさせていただきます《宅配ピザ店の掲示》」のように例文をつけるのですが(^^;; ※例文はLAADの類似例文を元にした架空のものです。

#ウィズダムは新刊辞書だけあって,新語義もきちんとフォローされています。(私が新刊辞書のリトマス試験紙がわりによく使う語ですが)英字紙ではすっかりおなじみになった,WTC跡地の意味で使われるGround Zeroもウィズダムにはちゃんと出ていたりするので,G3以上に新しい,現時点ではトップレベルの学習英和と言っても過言ではないと思います。電子化されるまでにはまだしばらく時間はかかるでしょうが,三省堂は電子出版には積極的なので,IC辞書より前にCD-ROM版が出るかもしれませんね。

ウィズダム英和辞典 投稿者:Sekky@管理者  投稿日:12月14日(土)18時47分52秒

↑入手しました。全体的な雰囲気はジーニアスに似ています。語法注記を表すウィズダム独特の「!」マークがなければ,一般の人はジーニアスと区別がつかないぐらいかもしれません。全面的にコーパスをベースにした編集になっているので,coolの「かっこいい」の語義が前の方にきていたりとか,従来の辞書とはかなり毛色が違います。

また,コーパスという「証拠」にアクセスすることで,選択制限(主語や目的語に何をとるかというような制約)が今までの辞書(G3などを含め)以上に詳しくなっています。たとえば,「ストーカー」のようにカタカナ語にもなっているstalkは,G3では「歩く,闊歩する」という自動詞用法が先に出ています。他動詞も,「<動物・人が><獲物など>に忍び寄る,…の跡をそっと追う」のようになっていますので,これだけを見ると,狩りをする人間が捕まえるために動物にそっと近寄るとか,希少動物を調査している人が,足跡を頼りにその動物の居場所を追跡するという意味しかないように思えます。しかし,ウィズダムでは「<人が><主に異性など>に(異常に)つきまとう,ストーカー行為をする」という語義をきちんと立て「誰が」「誰に」するということを明確に示しています。これはOALDやLAAD,COBUILDはじめ,海外の英英辞書やリーダーズのような一般辞書ではすでに立項されていますが,学習辞典では初めてなのではないでしょうか。

規模としてはジーニアスと同程度ですが,文法や語法面の些末な点というよりは,コーパスをベースにしてどういう文脈で多く使われるだとか,どういうことを暗示しているといった,語用論的な面の解説がかなり増えています。目に見える,耳できこえることばだけでなく,見えない,きこえない「裏のことば」にも積極的に言及しているというのは今までの辞書にはない特徴です。ジーニアスは,統語論プロパーでない私にとっては,実用面では重宝しているとはいえ,読んでおもしろい辞書とは必ずしも言えないのですが,ウィズダムは,語用論が専門の私にとっては無目的にブラウジングするだけでもとても楽しい辞書です(これは旺文社が出したレクシスにも共通するようです)。もっとも,高校生レベルの生徒にとっては,ジーニアスと同じくかなり細かな記述が多いので,英語が嫌いな生徒にとっては使いにくいと思うかもしれません。

ウィズダムとレクシスは似ているようですが,ウィズダムは英和辞典としては珍しく,コーパスという「動かぬ証拠」をもとに実際の言語事実を記述するような,いわゆる記述主義に則った辞書ですが,レクシスは(まだ現物を見ていないので何とも言えませんが)Planet Boardのように,ネイティブインフォーマントが容認性を判断するという,規範主義的要素もかなり入っているようです。

いずれも,規模としてはジーニアスに匹敵しますので,電子辞書の新規コンテンツとしては最有力候補になると思います。

Oxford Guide to British and American Culture 投稿者:Sekky@管理者  投稿日:12月 2日(月)18時27分22秒

↑意外と知られていないようですが,上級学習者向けに,欧米の文化を知る上で重要な10000語あまり(主に固有名詞)を収録した辞書がOUPから出ています。固有名詞がほとんどはいっていないOALDやLDCE, COBUILDなど,イギリス系の学習英英を補完する辞書として非常によくできています。語数はリープラのような辞書の足元にも及びませんが,各語の百科的な解説が非常に詳しく,短い語でも(冊子体で)3,4行,英語圏の文化を知る上で重要なキーワード(humourなど)は見開き2ページ割いて解説されていたりします。約10000語のうち250語以上が長めの内容になっているそうですので,「読む辞書」としても楽しめます。しかも,長めのエントリーは,エントリー内の関連のある語句が太字になっているのでボキャビルにも役立ちます。冊子体なら3000円ぐらい,OALDと串刺し検索ができるCD-ROM版でも6000円ちょっとと,非常に安価ですので,ぜひおすすめします。CD-ROM版も出ているのですから,IC辞書のOALD搭載機にカップリングするコンテンツとしてとてもおもしろいと思うのですが…。

記述はOALDのような学習者向け辞書と同じく,非常に平易です。ちょっと前に,この辞書の中の長めのエントリーを出典にして入試の長文問題を作ったことがありましたが,大学受験生でも,glossをほとんどつけなくても内容がそこそこ把握できるぐらいのレベルです。

CODとCCTの違い(>Rabbitさん) 投稿者:Sekky@管理者  投稿日:12月 2日(月)17時32分47秒

>また、T5000搭載のシソーラスCOT2という辞書は使い勝手はどうなのでしょうか?

COT2はRabbitさんが今お使いのSR-T6500に搭載のCCTのような感じのthesaurusです。CCTに慣れていればCOTも違和感なく使えます。COTがCCTと違う点としては,以下のような点があります。

1) 各類語グループごとに簡単な例文が出ているので,自分の求める語義の類語グループを判別することが容易。たとえば,play against ...「(相手チーム)と試合する」の意味での類語を知りたい場合,(お手元のT6500で試してください)CCTでplayをひいても,1, 2, 3, ...のどの類語群がplay againstの意味なのか分かりにくい(play against=compete, vie with等と類義だ,と分かっていなければ2の類語群を選ぶことは難しい)ですが,COTなら各類語群に例文がついているので,play against the neighboring teamという例文から,7番目の類語群をピックアップできます。

2) 反意語やスピーチレベルの区分(フォーマル,インフォーマル等のラベル)はCCTのほうが多い

3) 見出し語にもっとも意味的に近いものから遠いものへの順に並んでいる。CCTでは,見出し語に最も近い類語をゴシックで最初に出していますが,それ以外は一律にアルファベット順で類語が並んでいます。COTは(だいたい)意味的にもっとも見出し語に近い類語から遠いものへの順に並べてあるので,我々外国人には使いやすいです。類語リストの最後のほうにある語は,類語とはいっても見出し語とはかなり意味的に離れているということが分かるわけですから。

4) 意味が似ている語(類義語)だけでなく,同じものの仲間を表す語が出ている。とくに名詞に多いのですが,chairに対するstoolやsofaといった語もTableの形で多く出ています。COT2ではさらにこのTableが充実しています。※SR-9700はCOT1搭載ですが,Tableの部分は一切カットされています(DD-IC500SのCOTはTableも載っています)。SR-T5000はTableもカットされずに載るようです。

Longmanの学生向け文法書 投稿者:Sekky@管理者  投稿日:11月28日(木)20時28分01秒

電子辞書の話題ではないのですが,LongmanがLongman Student Grammar of Spoken and Written Englishという文法書を出しました。これは,親版のLongman Grammar of Spoken and Written English(ハードカバーで20000円ちょっとします)の縮約版で,上級レベルの学生や英語教員向けに,コンパクトにしたものです。親版は研究者向けですので,かなり細かいですが,Student Grammarは日常的な英語運用力で要求されるレベルの文法事項に絞ってあります(といっても,日本の受験文法書ぐらいの量はありますが)。

これの最大のウリは,全ての例文が実際の例(コーパス使用)だということです。日本の文法書にあるような,文法を説明するために作った例文は一つもないそうです。また,Spokenということばが入っていることからもわかるように,従来の文法書のように書き言葉に特化したものではなく,スポークンコーパスを利用して,話し言葉に関しても積極的に取り入れています。従来の学校文法とは切り口がちょっと違うところもあり,とまどうかもしれませんが,最新かつもっとも信頼性の高い文法書の一つとして,とくに現場の英語の先生(高校や予備校,英会話学校の文法コースなど)には是非お勧めしたいです。3000円ぐらいで買えます。

英文法,語法書(>H1Bさん,るっこらさん) 投稿者:Sekky@管理者  投稿日:11月27日(水)09時57分04秒

>文法書といえなくもない楽しい本もありますよ。お使いかもしれませんが。
>Fowler's Modern English Usage です。

ファウラーのUsageは名著ですね。かなり歴史がありますが,ちょっと前に全面改訂され,最新の語法も反映しています。たしかに,るっこらさんの用途なら文法書というより語法書のほうがいいかもしれません。

ファウラーはとくに外国人向けに書いていないので,外国人がよく誤るポイントがそれほど解説されていなかったりします。外国人向け語法書の決定版としては,Michael Swan (1995) Practical English Usage (OUP)でしょうか。almostとnearly,allow, permitとletの使い分けなど,単語レベルの事項はもちろん,可算名詞と不可算名詞の性質の違いといった文法的な事項や,強形と弱形の使い分けといった音声面まで,とにかく外国人英語学習者が疑問を持つような事項は,初級レベルからnear-nativeのレベルまで,これ1冊でほとんど解決します。正しい例はもちろん,ラーナーズコーパス(外国人英語学習者の表現した英語を集めたコーパス)を使い,誤った例も積極的にあげているのがウリです。

ロイヤル英文法等の文法書は,網羅的である半面,私たちが英語を書いたり,英語を教えたり,英語を添削したりしていて疑問に思うことが出ていない(出ていたとしても探しにくい)場合が多いのですが,PEUは外国人にとって必要なことだけを,ページを割いて解説しています。とくに,discourse marker(いわゆる「つなぎことば」)は,日本人が苦手とするもので,論理的な英語を書く上で大きな障害になっていると思いますが,従来の文法書ではほとんど扱われていませんでした。PEUの約8ページにわたるdiscourse markerの解説は圧巻です。

PEUは現場の英語教師はもちろん,研究者にも評価が高いのですが,電子版は出ていません。SR-T5000やDD-IC500Sなど,OALD搭載の上級機にカップリングするコンテンツとしては最高の組み合わせなのですが…。

ちなみに,COBUILD on CD-ROMに搭載のCOBUILD Grammar, COBUILD Usageも冊子体の文法,語法書まるごと収録なので,けっこう役に立ちます。

IC辞書に搭載のthesaurus(>H1Bさん,るっこらさん) 投稿者:Sekky@管理者  投稿日:11月26日(火)11時27分40秒

横レスですが(^^;;

>Roget's Pocket Thesaurusという、古い辞書のペーペーバック版には、随分お世話になった
>ものです。2冊くらいつぶしてしまってからあまり使わなくなってしまったのですが、意味
>の近い単語が並んでいるだけのものながら、「ぴったりの一言」探しのときには、重宝しま
>した。電子辞書に入っている中にも、良いものがありそうですね。

ここ1年ぐらいで電子辞書のthesaurusは格段によくなりましたね。セイコー,ソニーの機種に搭載のCOTにしても,SR-T6500に搭載のCCTにしても,フルサイズのthesaurusですから,ペーパーバックで多く出ているthesaurusとは見出し語の量も,その中にある類語の量も桁違いです。

COTは各類語グループごとにどういう語義の類語群なのかがサンプルフレーズで出ているので,ネイティブ向けとはいえ,日本人でも使いやすいです。しかも,類語が見出し語の意味に近いものから順になっているので,なるべく最初の方に載っている語を使うと意味のズレが少なくなります。

CCTは,もっとも見出し語の意味に近い類語をゴシックにして先頭に出していますが,それ以外の類語は一律にアルファベット順になっています。これだとニュアンスの違いのような語感に乏しい外国人には使いにくくなります。サンプルフレーズがないので,自分の求める語義の類語グループがどれなのか,類語自体を見て知るしかなく,これは上級者でも骨が折れます。もっとも,COBUILDとカップリングする以上,COTを載せるわけにはいかないので仕方ないと思いますが。

SR-8000で初めて搭載され,R9000にも入っているLongman-Roget'sはちょっと毛色が違いますが,上級者にはおもしろいコンテンツだと思います。たとえば,meatをひくと,beefやmutton, lambといった基本的な語だけでなく,子牛の肉はveal,鹿の肉はvenison,キジ肉はpheasant,雷鳥の肉はgrouse…など,様々な肉の種類が出ます。それだけでなく,ソーセージ,ホットドッグといった加工食品やsparerib, cutletなど,下位語も豊富に出ます。ネイティブでも知らないだろうというような語まで,何十と出てきます。電子辞書ですから,それぞれの語を英和や英英で簡単にジャンプできますので,肉博士になれます(^^)

このように,名詞が豊富に載っているthesaurusという点で,Longman-Roget'sはCOTやCCTとは違う魅力がありますし,こういう具体例を出せばエンドユーザにもアピールしやすいコンテンツだと思うのですが,なぜカシオさんはトリプル類語という数を前面に出すだけで,こういう個々のコンテンツのよさをもっとPRしないのかなぁ…。細かな理屈よりも「数」をアピールした方が分かりやすい,という営業サイドの判断なのかもしれませんが,R9000を買うレベルの人は,そういううわべだけの宣伝文句につられるような層ではないでしょうから,もっと中身に踏み込んだセールストークを期待したいです。

講談社類語大辞典 投稿者:Sekky@管理者  投稿日:11月25日(月)09時52分29秒

↑何回かお話ししましたが,もう発売されています。これはいいですね(^^) 基本的には角川類語と同じような感じ(横組みですが)なので,角川類語を使っている人は何の違和感もなく使えると思います。角川類語はどちらかというと漢語っぽいものが多いのですが,講談社類語は最近増えているカタカナ語も積極的に立項しています。たとえば,「初々しい」の項目には「うぶな」「無邪気な」という語に加え,「ピュアな」「ナイーブな」「プラトニックな」という語まで入っています。対照言語学的な視点の記述がきちんとされているのにはびっくり。たとえば,「ナイーブな」を引くと,日本語ではよい意味で使うが,英語では悪い意味で使うことが多い,ということがちゃんと書いてあります。国語系の辞書は,ふつうは国文学,国語学が専門の人が書いているので,こういう視点の記述が抜けることが多いのですが,講談社類語は,海外で学位をとった日本語学の研究者も執筆に携わっているようなので,日本語を外国語としてとらえた記述が実現できているのでしょう。

大規模英和の搭載が一段落した電子辞書業界で,次のトレンドになるのが日本語の類語辞典だということは(私の勝手な予想ですが)まず間違いないと思います。COTやカタカナ語辞典と同じで,どこかのメーカーさんが講談社類語を入れてくれば,その後は一気に業界標準として定着しそうな感じがします。考えてみれば,英語の類語辞典が3冊も入っている機種が出ているのに,日本語の類語辞典は3冊どころか1冊でも入っている機種はないのですから。

そして,講談社類語の副作用で,国語辞典も広辞苑から(講談社の)日本語大辞典にシフトしていけばいいのになぁと願っています(^^) 英語重視機だけでなく,日本語学の研究者や日本語教師,上級レベルの留学生(別科を終わり,学部編入したレベルの)のニーズに応えた日本語重視機も,今後新たなラインナップとして望みたいです。講談社類語が,そういうモデルへの斬り込み隊長的な位置づけになればいいのですが(笑)

学習英英をどう使うか(>サイヤさん) 投稿者:Sekky@管理者  投稿日:11月20日(水)10時01分39秒

>例えば英英でgiraffeを調べるとします。
>意味がキリンだと知らないで引いた場合、
>long neckやlong legsなどの語から推理して、
>草食恐竜のブロントサウルスか?とか思ってしまうかもしれません(笑)。

そう思います。「英語の辞書へのアプローチ」でふれたように,英英辞典に慣れていない人が「英和辞典の代用品」「高級な英和辞典」のイメージで学習英英を使う(=意味の分からない単語を引く)とこうなりますね。もっとも,giraffeの定義を読んで,ブロントザウルスを想像できるような人はかなりのレベルだと思います(giraffeというレベルの語彙を知らないということは別問題として)。実際,OALDでbrontosaurusを引くと

a very large DINOSAUR (= a reptile that lived millions of years ago) with a long neck and tail

と出ています。スモールキャピタルになっているDINOSAURは「定義語彙以外の単語ですよ」という意味なので,学習英英では,定義語彙が多めのOALDでさえ,3000語の定義語彙の中ではキリンとブロントザウルスを区別して定義できない(だから定義語彙外のdinosaurを使って区別せざるをえない)わけです。

>首が長いとか足が長い生き物だということはわかっても、
>じゃあ結局何なんだ?というのが英英ではわかりません。

英語学習者の人でよくあるケースとして,英和を引いたほうが分かりやすいし,それで何の障害もない語まで英英で引こうとするので,逆効果になるということがあります。このような場合,たいてい英英を高級な英和辞典としてとらえている場合が多いと思います。英語学習者が英英を引いて効果的な場合というのは,英和のように,英単語をそれに相当する日本語の訳語をあてた辞書では誤解が生じるようなケースだと思います。名詞,それも具体的なものを表す名詞では,ふつうは英単語と日本語が1対1で対応しているはずです。英語国民がgiraffeときいて思い浮かべるものと,日本人がキリンときいて思い浮かべるものは全く同じ(言外の意味やキリンから連想する文化的な内容は言語圏が違えば当然ズレがあるでしょうが,これは辞書の守備範囲から外れるので抜きにして考えます)ですから,こういうケースは英和辞典でも問題ありません。キリンや象のような具体名詞は,意味を知るというよりは,その単語を英語でどうやって「説明」するかを知るという目的で学習英英で引くと効果があると思います。同じことは,1対1対応をしているもっと専門的な名詞(Altzheimer's diseaseのような)にも言えます。学習英英の「年配の人が記憶を失ったり明確に話すことができなくなる脳の病気」云々という「定義」よりは「アルツハイマー病」という英和の「訳語」のほうがすぐに理解できます。

学習英英は,意味を知るという「受信」よりも自分で英語を書いたり,話したりする際の「発信」用途のほうが活用範囲は広いです。たとえば,ESLの授業で老人福祉のプレゼンテーションをする際は,Altzheimer's diseaseを簡単に説明する必要があるかもしれませんが,その際は「訳語」しか載っていない英和や,ネイティブでも知らないような専門用語で定義してあるネイティブ向け英英よりは学習英英のほうが役立ちますね。
>英会話学校の先生に『これからは英和は使わずに英英だけで勉強しろ』と言われたことが
>あるのですが、そうすると上に書いたような問題が起こってきてしまいます。

この先生は,こう言っては何ですが,英英=高級な英和という認識をお持ちの方なのかもしれません。英英を買っては見たものの使いこなせなくて埃をかぶる人の多くは「これからは英和は使わずに英英だけで勉強しろ」というアドバイスを鵜呑みにして,すべてを英英ですませようとした人だと思います。今の日本の英和辞典は,二カ国語辞典の中では世界一の水準だと思います。英語圏へ留学し,英語以外の外国語を履修した人なら分かると思いますが,アメリカで売っている仏英,英仏などの辞書は日本の辞書でいうコンサイスのようなものばかりで,例文はほとんどないし,結局日本の友人に頼んでロワイヤルやクラウン等の仏和,和仏を送ってもらったという人もいるのではないでしょうか。これだけ英和の質がよくなっているのですから,無理に英英だけですまそうとしないで,「英和でしっくりこなければ英英を引く,逆に英英でしっくりこなければ英和を引く」というように双方向の引き比べをしてみるといいと思います。

>(英英のsleepの語義を見て、『瞑想する』という意味だと思ってしまうかもしれません)

このような場合は,「瞑想する」の意味の英語を(分からなければまず和英を引いてmeditateだということを知ってから)英英で引き,sleepの定義と読み比べてみるとおもしろいと思います。

sleep: to rest with your eyes closed and your mind and body not active
meditate: to think deeply, usually in silence, especially for religious reasons or in order to make your mind calm
(OALD)

ここからも,sleepは「目を閉じて休む」ということがコアになります。また,your mind and body not activeということからもわかるように,sleepしている間は心身機能は活動していない(意識のない)状態になります。一方,meditateは「静かにじっくり考える」ということがメインで,必ずしも目をつぶる必要はありません(たしかに,日本庭園などを眺めながら落ち着いて「瞑想」することもあるでしょうから)。ですから,当然sleepとは違い,より積極的な(心身機能が働いたままでの)行為になります。

「眠る」と「瞑想する」の違いは一見簡単そうですが,実際にこれをことばで説明するとなると骨が折れると思います。しかし,英英を使えば,英語でその違いを知ることで,間接的には日本語の語間も養われるわけです。ですから,外国人に(日本語で)違いを説明することもできるようになるでしょう。
>英語を英語のまま理解するということで、こういう問題はあまり気にせず勉強したほうが
>いいのでしょうか?

よく言われるのが「英英を使うと英語を英語で理解できます」ということですが,たしかにこの効用はあると思います。しかし,私たちは日本語を母語とする日本人であり,大半は日本で生まれ,日本で育ち,日本で生を終えるはずです。ですから,私としては,英英を英語力をつけるための手段という狭い見方でとらえるのはもったいないと思います。むしろ,英英で英語を学ぶことを通して母語である日本語をよく知り,より正しく,美しい日本語を話し,それを日本語を勉強している外国人にも伝えていくことのできる日本人になるための有効な手段であると考えたいと思います。英和辞典は「訳語」を載せた辞書ですから,「ある英単語に相当する日本語の単語は何か」しか分かりません。しかし,英英は「定義」してある辞書ですから,「ある英単語を英語でどう説明するか」が分かります。これが分かれば,あとはその説明を日本語で言えば,単語の訳語を知るだけでなく,その単語を日本語で説明することも可能です。

英語を専門にしている学生の中には,たしかに英語運用力は抜群で,語彙量も多い人がたくさんいます。しかし,peaceを説明してください,といっても,「平和」という「訳語」は言えても,平和とはどういうことですか? ときくと答えられない学生がかなり多いのです。日本語でも答えられないのですから,英語で説明できるはずはありません。日本人の学生は国語辞典をほとんど引きません(仮に引いたところでまともな「定義」が載っている国語辞典は少ないですし(^^;;)から,英英辞典を使うことで,間接的には国語辞典を引くことと同じ効用があります。

#私の場合,英語教員とはいえ,いちおう日本語教育もかじっていて,検定も持っていますので,英語の授業の最後のほうで,日本語を外国語としてとらえる話をよくします。「鉛筆を3本ください」と「3本の鉛筆をください」はどちらも同じ意味なのに,日本人の多くは前者のように言うのはなぜか? 「田中先生は休日も朝っぱらからご研究をされています」が(賞賛の意味合いでは)おかしいのはなぜか? というような英語の授業の本質からは外れる話なのですが,英語が得意で熱心に学んでいる学生でも,日本語に関してきかれると困ってしまうということが多いようです。

Thesaurusの種類(>Noriさん) 投稿者:Sekky@管理者  投稿日:11月18日(月)11時59分33秒

>3機種ともに異なったシソーラスなのですが、いずれもの物もABC順シソーラスか意味概念
>別シソーラスのどちらかがわかりません。SR-T6500のコリンズコンパクト類語辞典、
>SR-T5000のコンサイス版オックスフォード類語辞典、XD-R9000のロングマンロジェシソー
>ラス、ロングマン英語アクティベータ、大修館英語類語辞典について、ABC順または意味
>概念別のどちらのものか、

冊子体では,上記の中ではロングマンロジェとアクティベータが意味概念別で,それ以外はアルファベット順です。つまり,ロングマンロジェやアクティベータは,アルファベット順ではなく,意味別(喜び,悲しみ,怒り,のような意味概念毎に,それを意味する語がグループ化されている)ですので,意味が似たようなものどうしが隣接して並んでいます。「ある単語の類語を調べたい」という場合は,アルファベット順thesaurusなら「ある単語」を(英和辞典のように)引けば,そこにその語の類語が出ていますので簡単ですが,意味概念別の場合は,巻末(アクティベータは本文の中に索引もまぎれこませてありますが)の索引(アルファベット順)で調べたい単語を引き,そこに出ているページを見て調べるという二度手間になります。

ただし,電子辞書版のロングマンロジェは(アクティベータも?),引きたい単語を入れればその単語の箇所を自動的に表示するので,アルファベット順シソーラスのような感覚で使えます。というより,電子版のロングマンロジェは(冊子体と違い)意味概念から引くことができません。

>それぞれの利点や欠点をアドバイスしていただければ幸いです。

意味概念別のthesaurusは,具体的な単語が分からなくても,自分の表現したい内容がおぼろげに分かれば引けます。言ってみれば,ふつうの辞書は,単語が分かっていて,意味が分からないので引くものですが,意味概念別のthesaurusはだいたいの意味が分かっていて,その意味を持つ単語を知るために引くものと言えます。一方で,上級レベルの外国人が英語を書くときのように,あることを言いたい場合に月並みな単語は思い浮かぶが,もう少し洒落た言い方はできないか,というようなときにはアルファベット順シソーラスのほうが速く引けます(インデックスを一旦ひき,そこからもう一度ページをめくる必要がありませんので)。もっとも,電子辞書では冊子体辞書の形式に関係なく,引きたい単語を入れればその語の類語が出てきますので,両者の違いはないと思います。

カレッジ版英英(>ぽうさん) 投稿者:Sekky@管理者  投稿日:11月18日(月)08時06分10秒

>知人がウェブスターを使っているといっていたのですが、どういった特徴があるので
>しょうか。英英の分厚いもののような感じですが。

「ウェブスターの辞書」というのは「ロジェのシソーラス」と同じで,商標登録がされていませんので,特定の辞書を指すのではなく,何十冊もの辞書が「ウェブスター」を名乗っています。本家の(狭義の)ウェブスターというのはNoah Websterが編纂した辞書を受け継いでいるMerriam Webster's Collegiate Dictionary(最新10版)や,Webster's International Dictionary 3rd Edition (Web3)を指しますが,おそらくぽうさんのお知り合いが使っているウェブスターというのはMerriam Webster's Collegiate DictionaryやWebster's New World, Random House Webster'sのようないわゆるカレッジ版辞書だと思います。

カレッジ版辞書は,日本語の辞書で言うなら広辞苑や大辞林のようなもので,アメリカ人なら聖書と並んで一家に1冊ぐらいはあるようなものです。少なくとも,アメリカの大学生なら誰でも持っています。広辞苑のような独占状態のブランドはなく,4社の辞書(Merriam Webster, Webster's New World, Random House Webster's, American Heritage)がしのぎを削っていて,数年ごとに小改訂を重ねています。収録語数はだいたい20万語ちょっとなのでリーダーズより心持ち少ないような感じです。各ブランドが独自の特徴を出していますのでどれがいいかというのは難しいです。私自身は定義がネイティブ向け辞書の中では丁寧なWebster's New Worldが気に入っています。ただ,この辞書は語義の順序が歴史的原則(広辞苑と同じで,古い語義が先にきている)になっているので,慣れるまでは使いにくいかもしれません。niceなんかをひいてみるとわかりますが,「素敵な」よりも「気むずかしい」が先に来ていますし。一方で,「気むずかしい」→「好みにうるさい」→「きちょうめんな」→「誠実な」→「素敵な」というniceの語義の歴史的変化が手にとるように分かるというメリットもあります。

>ちなみに過去ログでこうしたものが話合われたことを調べる方法というのはあるのですか。

私個人の書き込みなら「Sekkyのつぶやき」を見ていただければ簡単ですが,他の方へのレスを調べるとなると過去ログをダウンロードして,ワープロソフトやエディタの文字列検索で調べるしかないですね…。あるいは,Googleで検索対象ドメインをsekky.tripod.comに限定してキーワードを入れれば,そのキーワードが含まれている過去ログのみがリストされると思います。

COBUILDの定義 投稿者:Sekky@管理者  投稿日:11月16日(土)15時58分11秒

英英辞典が初めての人にはとっつきにくいCOBUILDですが,慣れてくるとCOBUILDならではのよさも見えてくるかもしれません。

よく出す例ですが,先ほどのasleepはCOBUILDではasleepは

Someone who is asleep is sleeping.

と定義されています。COBUILD式の定義に慣れている人なら,これを見るだけで,「人が主語になる」「人is asleep」のような文型になる」ということがわかります。丁寧な解説で定評のあるG3でもasleepは「眠っている」としかありません。LDCEでもsleepingとしか書いてありません。つまり,G3やLDCEの記述では「人が主語になる」ということが見えないのです。COBUILDなら主語でとりうるものが限定されていますので,「子供の頃に買った雑誌が物置に眠っている」「海底にはたくさんの財宝が眠っている」というような文章でasleepを使ったりはできない(擬人化したりするような特殊効果を狙う場合は別でしょうが)ということがわかります。COBUILDは,「定義」「文法ラベル」「例文」の3本立てでその語義の正しい使い方を示してくれるわけです。

このような例を見ても,COBUILDは「読む辞書」であると言えます。他の学習英英のように学習者が誤りやすいところをコラムで解説したりといった「かゆいところに手が届く」配慮はあまりありません。例文にしても,学習者の理解を超えるような固有名詞でも平気で使っています。これには賛否両論あるかもしれませんが,学習英英と言っても,学習者向けに教育的配慮で易しくしたり,リライトしたりした「作り物の」例文を見せるのでなく,いきなり本物に対面させ,そこでもがき

語数の多い辞書? 投稿者:Sekky@管理者  投稿日:11月11日(月)11時47分48秒

最近の新機種で,リーダーズやリーダーズプラス,ジーニアス英大といった大規模英和の搭載機が相次いで出てきたこともあり,今まででもよくあった「英語学習にはジーニアス(G3のような,いわゆるクラシックジーニアス)程度の辞書では不十分」という迷信がさらに加速していきそうな気配があります。特に英語学習系や大学受験生対象の他掲示板では顕著にみられます。この掲示板でも何回かとりあげていますが,もう一度まとめておきます。

★通常レベルの英語の読書や英語学習で,G3のスコープをこえる語が頻出して手に負えないということは,まずありません!

お手元の英語メディア(英字紙でも,Time等の雑誌でもかまいませんが)で,G3(や他の同規模の学習英和)に載っていない単語がどれぐらいあるか,数えてみてください。専門語や固有名詞以外の単語で,G3に載っていない語というのはそんなにないはずです。また,専門語や固有名詞は非常に多種多様ですし,新しい語もどんどん出ていますので,かりにリーダーズやリープラを引いたとしても,百発百中というわけにはいかないです。

もちろん,英語学習者の中で,複数の英文雑誌や英字誌を毎日読むような方(外資系企業などで,業界動向の調査をするのが仕事の人など)なら,固有名詞や専門語も重要になりますので,G3だけですますことはできないでしょう。こういう人は大規模英和を搭載した上級機を買えばいいと思います。

★大学受験ではG3でも十分すぎるほどです。高校生向けのフェイバリットやスーパーアンカークラスでも,どんな難関校であっても対応できます。

最近の大学入試は,以前と違って受験生の語彙量で合否が決まるような出題はされなくなっています。むしろ,慶應SFCやICUのような難関校では,未知語があることは出題者側も承知の上で,それらを飛ばしてでも全体の大意がいかに的確に,速く把握できるかという出題をしています。ですから,未知語があるかないかということは問題ではなく(もちろん,いわゆる受験英語で普通に出てくる単語は知っていないといけませんが,その程度ならG3で十分すぎるほどです),いかに速く,正確に概要をつかむかが問題になります。

私自身,入試の出題委員をすることもありますが,文法問題を出すときは,受験生の文法力が,長文問題を出すときは,受験生の英語読解力が点数に反映される出し方をします。あたりまえのことですが,文法問題で受験生の単語力が要求される問題は出しません。また,長文問題でも,グロス(語注)をつけるかどうかとか,イディオムの穴埋めで出すイディオムの種類とかは,出題者の個人的な主観は一切廃し,何十冊という辞書等を精査していますので,高校生用の辞書に載っていないようなイディオムは絶対に出題しません,また,長文の中にでてくる難語で,高校生向け辞書のスコープをこえるような単語があり,しかもそれが全体の読解に影響を及ぼすのであればかならず語注をつけます。

★大学で英語を専門にするのであれば,G3クラスの学習辞書では不足することもあるでしょうが,そうしょっちゅうではありません。

教員によって違うかもしれませんが,私なら,G3に出ていないような語なら,学生が「辞書に載っていませんでした」とexcuseするのは当然だと思っています。「学習辞典には載っていなくてもリーダーズをみれば載っている。もっと大きな辞書を使いなさい」とは言いません。大学生なら,たとえ英語が専門の学生でもG3レベルの辞書をしっかり使いこなすことがまず一番の基礎だからです。最近は,英文科を出ても(よほどの一流校でない限り)半分以上の学生は英語と全く関係ない仕事につくでしょうから,一生に何回も使わないリーダーズを買わせるのはできないです(^^) 学生の人も,G3程度の辞書に載っていなければ,教員に質問すればいいと思います。
では,逆にリーダーズやリープラのような大規模英和が必要になるのはどのような場合でしょうか?

・翻訳,通訳などの専門職:翻訳者は,通常の読者と違い「分からない単語は読み飛ばす」わけにいきませんから,語数の多い辞書は必要です。とくに,自分が詳しくない専門用語でもある程度の背景知識があると,百科事典等の他のレファレンスにあたる必要が多少は省けますので,リーダーズに加え,百科情報の詳しいリープラまであると便利でしょう。

・幅広い文献を読む人:外資系企業などでは,自分の会社の業種に加え,関連業種の動きにも目を光らせる必要があると思います。そのため,語数の多い英和はどうしても必要になります。同じことは,最近学際化が進んでいる分野の研究者にも言えます。

・クロスワードパズル愛好者:これは電子辞書に限られますが,英字紙等のクロスワードのカギの多くは固有名詞ですから,リーダーズやリープラのような大規模英和のワイルドカード検索ができると便利です。ネイティブの人でも難しいサンデー版のパズルでも,電子辞書の力を借りればそれほど難しくはありません。

・留学(とくにリベラルアーツ系の大学への正規留学)予定者:アメリカのリベラルアーツカレッジだと,最初の2年ぐらいは,日本の大学の昔の教養課程のように,様々な科目を学び,その中から自分のメジャーを選ぶと思います。こういう「広く浅く」の勉強には大規模英和は便利です。

※注意したいのは,留学では英語を書く機会も多いということです。留学予定者はとにかく語数の多い辞書がないと困るという先入観を持っている人が多いようですが,リーダーズ等のスコープになる専門語や固有名詞は,ネイティブの学生だってその科目を学ぶ間に身につける性質のものですから,イントロのコースなら,知らなくても決して恥というものではないと思います。英語を書く機会が多いということは,学習英和,英英は必須だということです。留学をされた人は口をそろえて言いますが,Ph.Dレベルでも,一番頻用した辞書は高校生レベルの学習英和(英英)のようです。もちろん,リーダーズ等の大規模英和はお守りとしてあってもいいのでしょうが,実際は英語を書く方が大変ですから,学習系辞書のお世話になるのでしょう。とくにいわゆる語学留学なら,語数の多さよりは単語帳や例文検索といった機能のほうが便利です。語学留学なら,G3搭載機で全く問題ありません。

ケンブリッジの学習英英 投稿者:Sekky@管理者  投稿日:11月 9日(土)15時31分57秒

↑IC辞書にはなっていませんが,Cambridge University Pressの学習英英として,CIDE(Cambridge International Dictionary of English)というのがあります。今日届いた2003年版のELTカタログでは,これが改訂され,Cambridge Advanced Learner's Dictionaryという名前に変わって来年2月に出るようです。学習者コーパスのデータを使って,英語学習者が起こしやすい誤りを指摘したり,旧版独特の「例文で語らせる」スタンス(語義は短いが,例文が多い)は健在です。CD-ROM付きです。学習英英4強の中で唯一IC辞書版がまだ出ていないCIDEですが,改訂によりどこかが搭載してくるかも…?

辞書の頻度表記 投稿者:Sekky@管理者  投稿日:11月 9日(土)14時06分03秒

頻度表記で思い出したのですが,英和と英英では性質が全く違うので注意が必要です。

日本の英和辞典(の多く)の頻度表記は,実際の英語での出現頻度というよりは,日本の英語教育での重要度をベースにしているので,受験用にはともかく,一般の人が(ペーパーバック等の読書に有用な)語を知るという点では難があります。それも,各辞書会社が持っている実例の頻度に基づくというよりは,Thorndike等の欧米の学者が戦前に作った基本語彙表をもとにしているので,今の実態とはかなりズレがあります。

講演などでよく使う例ですが,多くの英和辞典ではclassroomが最重要ランクになっていますが,Bank of EnglishというコーパスデータをもとにしているCOBUILDでは星2つ(星5つが最高)です。notebookやpencilなんかも同じです。これなどは,日本の英語教育が,身近なものや場所の名前から単語を教えるカリキュラムになっていることに起因すると思います。#その割には「流し台」や「電子レンジ」といった日常語彙は初級段階ではあまり教えなかったりという矛盾もありますが(笑)

一方,イギリス英語では頻出のsterling(COBUILDでは星4つ)ですが,最近の日本の英和辞典はアメリカ英語に傾斜しているせいか,重要語として扱われていません。

このように,頻度表記といっても辞書によって様々なので注意が必要です。英英の頻度表記は,基本的にコーパスをもとにしたものなので,ある程度実際の言語事実を反映していると思いますが,英和はジーニアス英大や今度出るウィズダムなど,一部を除いては必ずしも言語実態に沿っているとは言えないようです。英英搭載の電子辞書をお持ちの方は,日本人なら誰でも知っているような単語の頻度表記の違いを英和と英英で見比べてみると面白いと思います。

COBUILDの知られざる素顔? 投稿者:Sekky@管理者  投稿日:11月 6日(水)14時01分28秒

COBUILDですが,他の学習英英と違い,すべての語義にいわゆる文定義を採用している(ネイティブが口頭で説明するような感じで語が定義されている)ことは一般にもよく知られていると思います。しかし,それ以外にもCOBUILDが他の学習英英と異なる点で,一般の人があまり知らないようなことがいくつかあります。これは,上級者の人にとってはCOBUILDの良さになるのでしょうが,学習英英が初めてという人には敷居の高さにつながるかも(^^;;

・データ至上主義の編集:辞書学では記述主義と言われると思いますが,とことんまで実証主義に徹しています。普通の辞書(学習英和や他の学習英英)は,品詞毎に記述が分かれています。たとえば,stayは動詞と名詞の用法がありますが,それぞれが厳密に区別されています。ですから,膨大な記述量のある多義語を引くときも,その語がどの品詞で使われているかさえ判別できれば,その品詞のところだけを見れば求める語義が分かります。しかし,COBUILDは品詞に関係なく,出現頻度順に語義を並べています。そうすると,stayなどは動詞語義の中に名詞語義がはさまれていたりするわけです。これだと,品詞が判別できる(これは英文の構文解析ができる=英語がきちんと読める,につながりますが)上級者でも,初級の学習者のように上から全部語義を見ていかないといけません。一方で,自分の引いた語義が実際の英語の中ではどれぐらい頻繁に使われているかが分かるというメリットはありますね(学習の必要性が判断できるので)。

・調味料,保存料無添加の「ナマモノ」例文:従来の学習辞書編纂の原則として,「ある語義の例文は,その語に関係しない部分で難解であってはいけない」というようなのがあったと思います。ですから,peelの例句ならpeel gourdsよりはpeel applesのほうが好まれたりしたと思います。また,辞書の例文や語義に載っているすべての語は,その辞書の見出し語に載っていないといけない,というのも辞書編纂の鉄則だと思います。しかし,COBUILDはその掟を破ったというか,あくまでも実例主義ですから,このような教育的配慮? よりはナマの例文をそのまま載せることを優先しています。たとえば,martyrをひくと,St Pancras was martyred in 304 AD.という文があります。私はクリスチャンではありませんので,St Pancrasという人がどういう人か分かりませんし,リーダーズにも載っていません(リーダーズプラスには載っています)。これぐらい特殊な固有名詞でも,「迫害する」という語義で使われている以上は載せるというスタンスなのでしょう。例文を読むのが好きな人にはこたえられないおもしろさがある辞書だと思います。OALDはたしかにシェアとしては大きいですが,OALDの熱狂的ファンという人はあまりききません。しかし,COBUILDはマイナーな学習英和ですが,COBUILD愛好家がけっこういるというのは,例文の自然さというのも大きいと思います。逆に,高校生レベルの人がLDCE等の代用品としてCOBUILDを使うとけっこうきついかもしれません。T5000でなく,T6500の英英コンテンツになっているのも納得です(^^)
・詳細な文法記述:COBUILDは文定義になっているので,基本的には定義の文章自体がその単語が使われる構文をも示しています。それに加え,COBUILDには細かな文法ラベルがついています。この数は半端ではなく,冊子体COBUILDでは,ラベルの説明だけに13ページ半も使っています。学習辞書のレベルをはるかに超えた詳細な記述です。英文法学者の間でCOBUILDの人気が高いのも納得がいきます。一方で,日本のいわゆる学校文法ではなじみのないラベルも多く,戸惑う人もいるのではないでしょうか。たとえば,COBUILDではsuch asやenoughのような,程度を示す語句と共起する形容詞はADJ-GRADEDというラベルがついています。言いかえれば,比較級,最上級にできる形容詞といえるかもしれません。この逆は単にADJとなっています(英和辞典なら「比較級なし」のように注記がつくような形容詞です)。そのほか,breakのように自動詞と他動詞の両方の用法がある動詞はV-ERG(ergative:能格動詞)というラベルを付けて,両方の用法をまとめています。能格動詞なんて英語学を専門にやっていなければ,英語教員でも知らない人が多いようなタームだと思います。これに限りませんが,COBUILDには(OALDもそうですが)自動詞と他動詞の区別をしていません。両方とも動詞としてひとくくりにしてあるので,自動詞と他動詞の区別が必要な場合は文型表記で判断しないといけません。これも日本の英語教育を考えるととっつきにくいと思うかもしれません。

こういうことを考えると,SR-T6500搭載のCOBUILDは,学習英英とはいえ,正直なところ,初めて英英を使う人にはちょっとおすすめしにくいです(もっとも,T6500のコンテンツを考えても,そういう人を対象にはしていない機種のようですが)。一方で,従来の学習英英では物足りないような人にはぴったりかもしれません。

LDCE on CD-ROM 投稿者:Sekky@管理者  投稿日:11月 5日(火)16時47分19秒

↑時々おたずねがあるLDCEのCD-ROM版ですが,冊子体LDCEに付属のものはとても使いにくいインターフェイスで,しかもHDインストールができないので常時CD-ROMを入れておかないと使えません。どうしてもLDCEをPCでひきたいということでしたら,Longman Interactive English Dictionary (2nd edition)というものをおすすめします。8000円ぐらいで国内でも入手できます。

これは,LDCE3版の内容に加え,Longman Dictionary of English Language and Culture(LDCE2版に百科語彙15000語を増補したもの)に収録の百科語彙部分(15000)語を増補し(つまり,実質はLDCE3版+15000語の百科語),それに加えてLongman English Grammar(学習者向けの英文法書),Longman Dictionary of Common Errors(学習者がよく起こす誤りを解説したもの)などを収録しています。全文検索もできますし,辞書に収録のカラー図版なども載っています。また,イギリスの大学へ入学するための英語資格試験(CPE, FCEなど)用のExerciseも多数収録されています。

このCD-ROMはHDインストールはできませんが,CD革命等の仮想CD-ROM構築ソフトを使えばHD上で使えます。

辞書コンテンツと耳学問 投稿者:Sekky@管理者  投稿日:11月 5日(火)10時14分35秒

最近は電子辞書もコンテンツのバリエーションが増えてきました。それはそれで非常に結構なことなのですが,一方で世間(これはメーカーさんのカタログや量販店さんのセールストークも含まれますが)の風評に惑わされて,実際にそれほど辞書の中身を見てもいないのに「耳学問」でこっちの辞書がいいだとか,この辞書は悪いだとか言う人が(とくに他サイト,他メディア等を中心に)増えてきているような気がします。具体的なブランドを引用して恐縮ですが,研究社の中辞典や広辞苑,ジーニアス和英,グランドコンサイスなどに対して風当たりが強いようです。辞書学に携わる私にとって,辞書の比較ということ自体は大変興味深いのですが,具体的な箇所を指摘しないで「どっちがいい」という主観的な比較が増えているのはちょっと気になります。これらの辞書の比較は,拙掲示板でも実例をあげながら(客観的に)何回かしたことがあるのですが,これがもとに拡大解釈されて「風評」を形成する一部になっているとしたら,いわゆる宝島問題と同レベルのことですので,ちょっと引っかかります。

拙サイトは電子辞書(や冊子体辞書)のパワーユーザさんから,初めて辞書を買うという人まで,広範囲の方がいらっしゃいますが,通常のレベル(実務で英語を使っている人や,英語の専門家ではなく,英語学習を目的にする層)のユーザさんが辞書を選ぶ際は,

「今,書店に出ている辞書には,英語学習に支障をきたすほどの致命的に問題のある辞書は1冊もありません!」

ということを強調したいと思います。言いかえれば「迷ったら(同種別の辞書であれば)どれを買っても大きな問題はないですよ」ということになります。学習英和であれば,少なくとも,単語の意味を調べたり,一般的な文法情報や例文を確認する程度(一般的な英語学習なら,辞書を引く目的のほとんどがこういう情報を得るためでしょう)なら,どれでも大した違いはありません。試しに,ジーニアスと新英和で同じ見出し語の記述を比較してみてください。収録イディオムやレキシカルフレーズの量,スピーチレベル関連のラベルの量は違うにしても,訳語や例文はそれほど変わらないはずです。

たしかに,昨年刊行のG3と8年前に発行の新英和では,新語やスラングなどは大きく違います。しかし,英語学習の本質となる語彙は,新語やスラングではなく,大学受験等で要求されるような数千語の基本語彙だと思います。新語やスラングを頻繁に引く必要がある人や,スピーチレベルの記述を重視する人はかなりの上級者でしょうから,こういう人は必然的にG3を選ぶかもしれませんけど,通常の用途はどちらでも大差はありません。

同じことは他の辞書にも言えます。大辞林が評判がいいからといっても,電子化されていない以上,あの分厚い冊子体大辞林を持ち歩くには骨が折れます。文筆業や実務等で本当に国語辞典を引きまくる人なら,機動性も重視するでしょうから,大辞林が搭載されるまで待つよりは,広辞苑搭載機を買い,使い倒すでしょう(出先等で,どうしても広辞苑で解決できない疑問は帰ってから冊子体大辞林を引けばいいわけですから)。

他のユーザさんもよくおっしゃるように,風評に惑わされて,理想的(と思われている)なコンテンツが搭載されるまで足踏みするよりは,電子辞書が必要なときに,その時出ている機種の中から最良と思うものを選んで使いこむということのほうが効果は大きいと思います。拙サイトにおこし下さる人は,おそらく高価な買い物をする前にじっくり情報を収集したいという堅実な方が多いと思いますので,風評などは極力廃し,客観的な視点からの詳細な情報を載せているつもりですが,もしできれば冊子体の辞書なども自分の目でごらんいただき,判断されることをおすすめします。

★よい辞書を使えば英語力の向上にも(間接的には)プラスの効果があるでしょうが,決してこれは魔法のようなものではありません。宝島問題で揺れた新英和中辞典ですが,ほんの20数年前までは,「シニア」「クラウン」を卒業した人が次に買う辞書は,ほとんどが新英和だったと思いますが,新英和をすりきれるまで引いて英語を学び,卓越した英語力を身につけている人はたくさんいらっしゃいます。今では,学習英和にもコーパスの波が訪れ,例文の自然さなどは当時の新英和とは比較になりません。それでは,今のハイテク学習英和を使っている人が皆自然な英語を書けるかというと,決してそんなことはありません。しょせん辞書はソフトウェアなのですから,それを使うハードウェア(人間)次第だと思います。よいソフトでもハードウェアスペックが低ければ重くてその性能を発揮できませんし,逆に良いハードがあれば,重量級の最新バージョンのソフトだろうが,昔の軽いバージョンのものであろうが,どちらも快適に使えます。

COD(>るっこらさん) 投稿者:Sekky@管理者  投稿日:10月30日(水)10時21分07秒

>SR9200のCODは本当にいいです。どこが難しいのか正直言って私にはよく分かりません。

私が初めてネイティブ向けの辞書を見たとき(当時は電子辞書はありませんでしたが)も感じたのですが,やはり定義で使われている語が難しいということが大きいのでしょう。セイコーさんの公式HPにも出ている例ですが,dogを引くと,domesticated carnivorous mammal probably descended from the wolf, with a barking or howling voice, an acute sense of smell, and non-retractile claws...となっています。初心者向けの英英辞書の使い方の鉄則として「意味の分かっている単語を引いてみる(英英を英和の代用品にしない)」ということがありますが,誰でも意味の分かるdogでさえこんなに難しい単語が使われているわけです。もっとも,私を含め,英語で(or英語に関する)仕事をしている人にとっては,上記の単語もほとんどは通常レベルの語で,non-retractileぐらいがちょっと難語かな,という感じ(retractから類推できますが)だと思いますし,ジーニアスなどでもほとんどは何らかの重要度表示(星印)がついていますが,ふつうの大学生ではかなりきついと思います。

しかし,電子辞書ならジャンプ機能を使えば英和でワンタッチで確認できますので,CODでも上級学習者の人ならそれほど難しくはないような気がします。犬の鳴き声はbarkしか知らない人にとってはhowlという(遠吠えの)語は新鮮でしょうし,acuteには「とがった」という意味だけでなく,keenのような意味もあるんだということも分かります。動物の爪はnailではなくclawなんだとか,いろいろな発見があるはずです。たしかに,LDCEのdogの語義は誰でも分かりますが,誰でも知っている語義を引いて誰でも分かるようなことしか書いていないということに不満を感じている学習者の人がいらっしゃるかもしれません。そういう方はCODを使ってみると今までにないチャレンジがあると思います。

http://www.sii.co.jp/cp/eeng.html


ジーニアス英大 投稿者:Sekky@管理者  投稿日:10月28日(月)19時10分50秒

IC辞書でも大辞典搭載機が出たことで,今までは専門家御用達だった大辞典もかなり敷居が低くなると思われます。ただ,ジーニアス英和大辞典(以下G大)は,従来の大英和とコンセプトが違うため,内容を誤解している人も多いようですのでちょっと補足します(以下は某匿名掲示板に書いた内容を再構成しています)

G大は「基本的に」G3の上位互換辞書です。上位互換ですから,G3(という学習英和)の特徴を兼ね備えた大英和といえます。これこそが,リーダーズや研究社英大,ランダム等の大規模英和と本質的に異なるところです。

ただ,G大は,単にG3の内容に専門語や固有名詞を加えて語数を増やしただけの辞書ではありません。G3にも掲載されている語でも,そのまま載せているのではなく,専門分野の語義が大幅に加わっています。たとえば,figure, ground, landmarkといった語はどの学習辞典にも載っているレベルの語ですが,通常の意味に加え,たとえば認知言語学ではテクニカルタームとして用いられます。G3にはこれらの専門語義は載っていませんが,G大には入っています。そのほか,頻度表記(星印)はG3と違い,最新のコーパスの結果が反映されています(G3はコーパスの頻度そのままでなく,日本の英語教育や受験での重要度を加味して重要度レベルを設定しています)。また,G3にない(G2にあった)SD表記(いわゆる動作動詞と状態動詞の区別)もあります。

G大はG3よりも刊行が約半年ちょっと早いのですが,最近出たCD-ROM版ではWorld Trade Centerの記述など,最新の修正が加えられています(T5000の発売予定時期を考えると,このCD-ROM版とほぼ同時期にデジタルデータを入手しているでしょうから,CD−ROM版の内容とほぼ同じだと思います)。

ちなみに,G大は公称25万5000,リーダーズが27万,研究社の大辞典(最新の6版)が26万,ランダムが(たしか)32万ぐらいです。これらの辞書の収録語の差=専門語,固有名詞の量の差,と言えるでしょうから,G大はリーダーズやランダムをしょっちゅう使う翻訳者等にはちょっときついかもしれません。むしろ,今までプログレッシブを愛用していたような層の人に向いているかも。

そうなると,SR-T6500はSR-9200のリメイク版であり,T5000は高級なSR-9700という位置づけになると思います。XD-R9000はT6500に近い位置づけですが,学習者向け表現辞典(アクティベータ),ネイティブ向け類語辞典(Longman-Roget's)を増強することで,T6500よりも上級者御用達の発信面を強化した上で,これとは全く逆に,T6500に対して敷居が高いと感じる層をとりこむために学習英和をとりこむという,全方位射撃的な位置づけのある機種だと思います。後発ということもあり,SR-T6500(>SR-9200)相当の機種で,セイコーさんの独占状態である上級機市場に斬り込むには無理があったのかもしれません。学習英和があるというだけで,T6500のコンテンツのいかめしさが和らぐのは事実ですから…。

ウィズダム英和辞典 投稿者:Sekky@管理者  投稿日:10月15日(火)09時48分14秒

かなり前(4,5年前?)から,ジーニアスをこえる英和がそのうちに出るという噂はきいていましたが,三省堂からようやく出版されるようです(以下のリンク)。

ウィズダムの編者をなさっている井上先生と赤野先生は個人的にも存じ上げていますが,昔あった辞書学MLのコーディネーターをされていた井上先生にせよ,コーパス言語学の第一人者で独自のコーパスを構築されている赤野先生にせよ,次世代のハイテク英和の編者としては最強のコンビですから,期待できると思います。井上先生は初版のジーニアスの執筆スタッフでもありますので,ジーニアスという先行辞書をじっくり吟味していることは疑いなく,ジーニアスに対抗できる数少ない辞書の一つになると思います。

ジーニアス,ウィズダム,レクシスという,ほぼ同一コンセプトの辞書が出揃ったことで,これからは上級学習英和も三つどもえの戦いが繰り広げられそうです(^^) これは,猫も杓子もジーニアスという電子辞書にも大きな影響を及ぼすのではないでしょうか。

http://www.sanseido-publ.co.jp/publ/wisdom_eiwa.html


ロイヤル英和(>hiyuさん) 投稿者:Sekky@管理者  投稿日:10月15日(火)09時20分26秒

>私は以前,この辞書を公立の図書館で見つけました。1970年代からコンピュータを
>活用して編纂したとあって,用例が一風変わっており,読んで面白いと思いました。
>編纂に20年近くを要して1990年に発刊されましたが,売れなかったらしく,最近
>書店から姿を消しました。私が図書館で見つけたときにはもう絶版になった後で,主な
>書店にはありませんでした。
>ジーニアス,プログレッシブ,リーダーズとロングセラーになる辞書がある一方,受け
>入れられずに消えていく辞書もあるのだなと実感しました。いったい辞書が受け入れら
>れる条件,受け入れられない理由とはどこにあるのでしょうか。

ロイヤル英和は地味な存在ですが,70万語のコーパス(億単位のマンモスコーパスが当たり前になっている今ではたいした語数ではないように思えますが,12年前のコンピュータのレベル(当時は40MBのハードディスクでさえ何万円もした時代です)を考えればとんでもない語数だったと思います)をもとにして編集されているという点で,当時は時代の最先端をいく辞書だったと思います。ネイティブインフォーマントも編集に参加し,編集委員と同列にその名前が記載されているということも,当時の辞書では例がなかったと思います。そもそも「コーパス言語学」という分野さえ日本ではまだ知られていなかった頃なのですから。基本語にページを割いた詳細な記述など,ジーニアスと対等に渡り合える実力のある辞書だと思うのですが,一般にはあまり知られていないようです。ロイヤルが出た1990年は,ジーニアスが出てから2年目です。大修館という,英語辞書としては(当時は)無名同然の出版社がいきなり出してきた新顔辞書の実力が高校現場や大学の研究者にもようやく認知されてきて,いわゆる宝島問題の影響もあり,ジーニアスに強力な追い風が吹き始めた頃なので,ほぼ同一スペックのロイヤルはその中に埋もれてしまったと言えなくもありません。今ならcorpus-basedの辞書ということは強力な宣伝要因になる(今度三省堂から出るウィズダム英和なんかがその例です)のですが…。

出版社の知名度というのも大きかったのかもしれません。たとえば,もしロイヤルを研究社が出していれば,ジーニアスの対抗馬として,形勢は違っていたと思います。旺文社は受験関係の出版社としては有名ですが,ロイヤルの規模からして通常の受験生にはオーバースペック的なところがありますので,当時受験用辞書としては人気のあった同社のサンライズ英和を前にすればアピールしにくいということもあったのでしょう。

また,大修館は,当時辞書としては無名であっても,英語教育や月刊言語のような,英語教員,研究者向けの雑誌がありますので,そこで自社の新刊辞書をPRすることができました。新刊辞書は,高校生本人にPRするよりは,高校生に英語を教える教員にPRするほうが効果は大きいでしょうから。また,「英語教育」に連載のQuestion Boxは現場教師が直面する文法や語法の細かな疑問を専門家がわかりやすく解説するという内容で,息の長い人気連載記事ですが,その回答者の先生がジーニアス英和の編集に携わっていらっしゃるということも,ジーニアス英和の実力を広める上で大きな影響があったと思います。

ロイヤルは,受け入れられなかったのではなく,その先進的な実力が一般にあまり知られなかったために地味な辞書になってしまったのだと思います。しかし,コーパスをもとにした実例主義や,ネイティブインフォーマントが積極的に編集に参加するという当時のロイヤルのスタンスは,今度出るレクシス英和にもそのまま受け継がれています。ロイヤルの教訓を生かしたわけでもないでしょうが,レクシスはかなり前から自社のHPなどで積極的にPRしていますね。

辞書も人間と同じで,その実力が的確に世間で評価されるものもあれば,実力があってもそれがなかなか評価されないものもあります。逆に,実力は今一歩でも評価が高い辞書もあります。順風満帆でロングセラーになる辞書もあれば,逆境を経験し,それをバネに今まで以上に大きく進歩する辞書(宝島問題で揺れたことがプラスの効果になったルミナスとか)もあります。たしかに,運もあるかもしれません。しかし,地味ではあっても実力のある人は,長い目で見ればしかるべき評価を受けることは,ノーベル化学賞の田中さんの例を見ても明らかです。これは人に限らず,冊子体の辞書に関しても,そして,電子辞書についても同じだと確信します。もちろん,そこに至るまでには様々な困難や横やりも入るかもしれませんが(^^;;

英英和 投稿者:Sekky@管理者  投稿日:10月 9日(水)11時47分45秒

英英和辞典で思い出したのですが,私が受験生の頃肌身離さず持ち歩き,すり切れるぐらいまで活用した辞書があります。「エルドス活用英単語2000」(稲村松雄監修,名和雄次郎編著)桐原書店というものです。これは,初版LDCEの定義語彙2000語を英英和形式(2段組で,左側にその語のLDCEの記述(例文つき)を載せ,右側に和訳が載っている)で載せたものです。ワードパワー英英和のように英英をまるごと英英和にしたものにくらべれば小さなものですが,当時は予備校で,南山大の英語系学部対策専門のコースにいたので,南山のように基本語に関して深い理解が要求される入試問題を解くにはバイブルのようなものでした。アルファベット順でなく,トピック別に並んでいて,thesaurusのような趣になっています(もちろん巻末のインデックスを使えば通常の辞書のような使い方もできます)。

この本は初版のLDCEをもとにしているので,現行の版とは違い,文型表記に独特のくせがあります。たとえば,enjoyのように-ing形が後続する他動詞は,LDCE3版では「enjoy doing sth(=something)」というコロケーションとして載っていますので,非常に明快です。しかし,初版LDCEでは [T4] としか書いてありません。ふつうの人はさっぱり分からないでしょう。実は,初版LDCEはアルファベット+数字で文型を表していて,その記号一覧表が巻末にあります。横軸にアルファベット,縦軸に数字が並んでいて,Tと4の交わるところを見ると「他動詞でing形が後続する動詞」だということがわかります。つまり,Tは他動詞(これは現行LDCEも同じ),4がing形という意味になっているのです。ですから,[I4]だったら自動詞+ingという文型になります。

最近の英英では信じられないほど分かりにくく,暗号解読のような感じなのですが,私を含め,わざわざ予備校で英語コースにいるような人は,なんとなく英和辞典を使うのはもう卒業し,英英じゃないと,というような背伸びしたところがあった(今思うと恥ずかしいのですが)ので,面倒だというよりはなんか大人になったような変な優越感があったのかもしれません。当時LDCEは2版が出たばかりで,3800円したはずです。とても受験生が買えるような辞書ではないので,LDCEのかわりとして,この「活用英単語」を酷使していました。そのおかげで,大学に入ってフルバージョンのLDCE,それも暗号解読のような文型表記をなくした2版を手にしたときは,英英という抵抗が全くなく,スムーズに移行できた気がします。もっとも,私の場合,受験勉強でのボキャビルは,いわゆる「でる単」等の受験用単語集で数覚えるのでなく,「活用英単語」で基本語を文型などまで踏み込んで詳しく知る,ということばかりだったので,今になっても語彙力の弱さに苦労していますが(^^;;

「活用英単語」はLDCEが新しくなった今でも,改訂をしないでまだ版を重ねているようです。万人におすすめできるものではありませんが,基本語を深く勉強したいという人はおすすめです。

ロングマン・アクティベータの新版 投稿者:Sekky@管理者  投稿日:10月 7日(月)13時18分05秒

今届いたロングマンのELT教材カタログによると,学習者向けの類語辞典,表現辞典として定評のあるLongman Language Activatorの新版が11月に出るそうです。ペーパー版で4200円+消費税です。基本的には93年の初版と同じですが,最新のコーパスにより例文が新しいものに差し替えられました。とくにアメリカ英語や話し言葉が増強されているようです。また,旧版で使いにくかったインデックスは,(Roget's Internationalのような概念別シソーラスのように)巻末にまとめられました。

学習者向けthesaurus(ただ類語が羅列してあるだけでなく,語義も載っているので類語間の微妙なニュアンスの差がわかる)としては,現段階でもこれの右に出るものはないと思いますので,改訂が楽しみです。SR-8100やXD-R8100のようにロングマン系の学習英英搭載機にカップリングするコンテンツとしてはぴったりでしょう。電子辞書化することで,インデックスから引く操作が大幅に楽になりますし。

ただ,噂でよくきくLDCEの改訂4版はこのカタログには載っていませんでした。教材カタログはかなり先の近刊も載っていることが多いので,LDCEの改訂はもう少し先になるかもしれません。学習英英搭載機の次の次ぐらい?の新機種の台風の目は,もしかしたら新版LDCE+アクティベータの搭載機かもしれません。

新和英中辞典第5版 投稿者:Sekky@管理者  投稿日: 9月23日(月)21時38分50秒

↑冊子体が発売されましたね。旧版よりも語数を大幅に増やし,そのかわりに例文を簡潔にした(文レベルの例文が減った)など,語数の多い学習和英に徹したルミナスとは棲み分けを図っているようです。学級崩壊など,最近のトレンドの用語や,前にどなたかがおっしゃっていたようにハリーポッターの巻名をはじめ,小説や映画のタイトルの英訳も多く載っています(このへんはランダム大英和に通じるところがあります)。

ルミナスのようなかゆいところに手が届く学習性はありませんが,語数は新和英の方が多いですから,実務で使うのには便利だと思います。全体的な位置づけとしてはプログレッシブ和英のような感じです。SR-9200クラスの上級機にカップリングする和英として最適なのではないでしょうか。一方,高校生や大学生を対象とした汎用の英語重視機には,ルミナスやスーパーアンカーなど,発信面にきめ細かな配慮をしている学習和英のほうがいいかな…。

とっさのひとこと vs. Make it! 投稿者:Sekky@管理者  投稿日: 9月14日(土)10時43分31秒

PW-M670に搭載の英会話Make it!とSR-9700, DD-IC500Sに搭載の英会話とっさのひとこと辞典は,両方とも英会話例文集という位置づけですが,中身はかなり違います。会話集を目当てに買う場合は注意が必要です。

一言で言えば,Make it!のほうは初心者から中級上位ぐらいの人まで対応できる汎用的なもので,どちらかというと海外旅行者や留学生など,短期〜中期の滞在者をターゲットにしているようです。英語独特の言い回しや洒落た表現というよりは,非常にベイシックな表現を重視しているので,英会話が全くだめという人はこちらのほうが使いやすいです。

「とっさ」はどちらかというと中級以上(日常的な用なら,たとえカタコトであっても十分こなせる程度の人)を対象にしているようで,また,短期滞在というよりは現地在住者や海外支社に勤務している人など,現地のコミュニティーの一員として生活しているような人向けの内容です。内容としては,留学や旅行といったものよりも,ビジネスがらみのトピックが多いです。ネイティブの人はよく使う表現だけど,外国人には言えないような定型表現,慣用表現が充実しています。逆に,文法や語彙力を駆使して英作文すれば言えるような内容はあまり出ていません。

たとえば,語学留学などである程度の期間滞在する人は,現地に着いたらまず銀行で口座を開くと思います。Make it!なら「郵便局・銀行で」の中に「口座を設けたいのですが」「普通預金口座にしてください」「口座をこの銀行に移したいのですが」「利息は何%ですか」「用紙に記入しました」のように,必要な表現はほとんどがでています。これらの言い方は英語独特というわけでもないので,「口座」「利息」といった単語さえ分かれば,あとは中学生程度の構文で十分言えますが,会話が苦手な人はそれさえも困難でしょう。Make it!はそういう(英語ができる人には)ごく普通の表現でも,日本人が海外で遭遇する可能性のある場面なら載せてあります。帰り際に荷物を郵便局から送るということがあると思いますが,Make it!なら「郵便局・銀行で」というトピックがあり,そこを開ければ20例近い文例が出ています。「速達でお願いします」「これをロンドンに送りたいのですが,クリスマスまでに間に合いますか」「日本へ郵便為替を送りたいのですが」など,基本的な文から応用的なものまで豊富に出ています。

しかし,「とっさ」ではそもそも「郵便局で」という項目がありません。キーワード検索で「そくたつ」「かわせ」などという語でもヒットしません。預金口座に関しても「預金口座に5万円預けなくては」「預金口座から5万円引き出さなくては」という例はありますが,かんじんの口座を作る際の表現はでていません。これは一例ですが,ここからも「とっさ」は,すでに預金口座を現地で開いている人には役立つでしょうが,これから開こうという人には表現が見つからないわけです。

一方で,「とっさ」はビジネス関連の表現はとても充実しています。「タイムカード押した?」「西部は僕が受け持っているんだ」「今夜は残業するの?」など,現地在住の人には便利でしょう。また,「彼はいいやつだ」「彼はなかなかのやり手だ」「彼はつかみどころのない男だ」のように他人を評価する表現も多いので,現地企業で働いている管理職の人も重宝するでしょう。しかし,短期滞在で,観光や留学をする人には全く縁のない表現です。学生ビザで働くことはできませんから(^^) その他,「いないいないばあ」「こちょこちょ」など,英語で何というか分かりにくい表現はとても多く入っています。しかし,国際結婚して現地で子育てをしている人ならともかく,海外旅行や留学などで渡米する日本人には,このようなことを「とっさ」に英語で言わないといけない場面などはないでしょう。
このようなことを考えると,「とっさ」は,受験英語の知識などを応用して,英語で日常的な用は一応足せる人が,より気の利いた英語らしい表現を学ぶための会話集と言えるのかもしれません。もちろん基本的な言い回しも出てはいますが,Make it!ほど網羅的ではありません。こう言っては何ですが,「とっさ」は単発的に集めた英語らしい言い回しをまとめて,あとから分類したような気がしなくもありません。ですから,その場面で初心者にとって必要な表現が出ていないし,逆に普通の日本人ならそれほど利用度が高くないような表現がやたら載っていたりします。

一方,Make it!はまず分類項目をきちんと作り,それに沿って必要な会話を入れていったような感じがあります。「郵便局で」という場面なら,海外生活経験をした人が,実際に自分が郵便局へ行った時を思い出し,そのとき使った表現を書き出していってまとめたような内容です。ですから,英語としてはシンプルな表現でも,実際に日本人が遭遇する内容は網羅されているわけです。
Make it!は英会話は全くだめという人でも,必要な場面を目次で引けば,その場面で考えられる会話例はたいてい出ています。現地在住の人なら空気のように思える表現も多く載っています。しかも,その他大勢の会話集のように初心者止まりではなく,かなり深い内容まで出ているのはメリットでしょう。「アップグレードは簡単ですか」「そのコンピュータは間違ったパスワードを3回入れるとシステムを終了します」など。Make it!のほうが後発なので,すでにベストセラーになっていた「とっさ」を意識して,初心者にも使いやすいものにしたのかもしれません。

以上はコンテンツの比較ですが,検索仕様もMake it!搭載のPW-M670と「とっさ」搭載のSR-9700, DD-IC500Sでは違います。

M670は冊子体のMake it!と同等の検索しかできません。目次から引くのと,索引から引くものです。もっとも,目次が場面別にきちんと分かれているので,これで十分使えます。

9700/500Sは冊子体の「とっさ」のように目次から引くことに加え,いわゆる例文検索もできます。ただ,冊子体の「とっさ」自体,以前にも書いたように会話例の分類がアバウトなので,目次から引くのは使いにくいです。

LEXIS英和辞典 投稿者:Sekky@管理者  投稿日: 8月11日(日)10時47分10秒

旺文社が全く新しいコンセプトの英和辞典を出しますね。語用論的な記述が多いとか,Planet Boardという,ネイティブインフォーマント100名の意見をもとにまとめている語法セクション(American Heritage DictionaryのUsage Panelのようなもの)など,従来の日本の英和辞典とはひと味違った内容だと思います。ジーニアスをはじめ,今までの英和辞典は規範的な(こういう言い方はしない,のような)編集になっているものが(大辞典などは別として)多いのですが,Lexisではネイティブインフォーマントのコメントをもとに,実際の言語使用を反映したかなりあいまいな(こういう語法はいいという人もいればよくないという人もいる,のような)記述も多いようです。詳細は以下のHPをごらんください。旺文社系のコンテンツが電子辞書にも参入してくると面白いのですが,Lexisに対応したレベルで新しい和英辞典が旺文社にはないのが残念です。

http://www.obunsha.co.jp/body_new/lexis/main.html


LAADの例文 投稿者:Sekky@管理者  投稿日: 7月17日(水)11時07分43秒

PW-9500にかまけてばかりいるのも何ですから,XD-R8100の良さにもふれてみます(^^)

XD-R8100はLAADという英英辞書を業界で唯一載せています。カシオさんのカタログなどでは,今主流のアメリカ英語を優先した辞書だとか,TOEIC/TOEFLに役立つだとか,時代のニーズに応える(World Englishesが叫ばれる今,アメリカ英語に特化した辞書がなぜ「時代のニーズに応える」のかという突っこみはなしにして(^^))といった宣伝文句になっていますが,もっと大きな特徴としては,以前にmorelさんがご指摘くださったように,例文が生のアメリカ英語からそのままとってきたものが多く,そのため,例文全体が1990年台後半のアメリカの息づかいを反映しているといっても過言ではないからです。例文検索でこれらの例文が自在に検索できるというのは,PW-9500は逆立ちしてもかないません。XD-R8100の例文検索は英英のみで,ジーニアス英和,和英の例文は検索できませんが,私にとっては,逆ならともかく,LAADの例文が検索できるだけでも十分すぎる価値はあると思います。へたに英和,和英も検索できるようにして,ヒット数が多くなって途中でカットされてしまうぐらいなら,英英だけでもいいと思っています。

前にもふれたように,LAADの例文は,時事的な出版物(新聞やニュース週刊誌など)からピックアップしたものをあまりリライトしないで辞書に載せているようです。morelさんもご指摘くださったgun control (21/1)もそうですし,domestic violence (6/3), global warming (9/2),sexual harassment (20/1),alcoholism (7/2)など,現代のアメリカや世界全体で問題になっているキーワードを入れると,何十という例文がヒットします。※LAADのヒット数/OALDのヒット数

人名や商品名などもLAADは代名詞に変えたりしないで,オリジナルのものをそのまま使っている場合が多いです。

-Jordan has repeatedly led his team to the Promised Land of the NBA Finals.
-In the 1992 presidential race, George Bush cleaned Buchanan's clock in every southern state.
-A Big Mac retails for $1.90 nationally.
-Clinton was asked flat out if he had ever had an affair.
-Johnson earned the nickname "Magic" while playing high school basketball.
-"Titanic" was still pulling in crowds after 18 weeks.
-Collins says she was drugged and then raped on their first date.

こういう生の例文が満載されているのがLAADの一大特徴であると言ってもいいでしょう。クリントンの疑惑まで例文になっているとは…。別に大学の出版局が出しているからというわけではないのでしょうが,OALDの例文は無味乾燥なものが多いのは事実です。私が留学していたときはビッグマックは3ドルだったから,かなり安くなったんだとか,意外な発見があったりします。タイタニックはたしか97年冬のロードショーだったはずですが,2000年秋に刊行されたLAADの例文にすでに反映されているのは驚きです。刊行直前まで新しい例文に差し替えたりしているのでしょう。もっとも,レイプやアルコール依存症,薬物乱用などを生々しく描写した目をそむけたくなるようなものもかなりあります。辞書に道徳の教科書的な位置づけを持たせるなら,たしかにそのような例文は物議をかもすかもしれません。Marijuanaという見出し語には例文が1つもないのに,辞書全体では何十というmarijuanaが使われている文章がありますが,これなどは,杓子定規に言えばmarijuanaを使わなくても他の単語で言いかえればすむことです。

一方で,英英辞典を使って英語を学んでいるときに,アメリカの影の部分を他国にいながら垣間見ることができるというのは,とても有効であると思います。月並みな言い方ですが,外国語を学ぶということは,そのことばが使われている国の文化を学ぶことと切り離すことはできません。ことばを学びながら,その国の文化を少しでも知ることができるのなら一石二鳥であると思います。
正直なところ,日本の英和辞典の例文は,例文のための例文といった感じで,つまらないものや時代錯誤のものが多いのは事実です。某英和辞典のI went with George and Clinton, oh, and Jim.のようなものはその典型です。明らかにこれは執筆者が作文したものでしょうが,過去の大統領を勢揃いさせて洒落たつもりなのでしょうが,現実には考えにくい文脈です。大統領の同窓会でもあったのでしょうか(笑) そもそも,「行った」ってどこへ行ったのでしょうか。また,Iが誰なのか分かりませんが,総理大臣ならともかく,普通の日本人ではありえないでしょう。学習英和辞典を使う人の多くは高校生や大学生,一般社会人であり,総理大臣や政治家ではありません。生の例を使わないで作例を使えば,例文がより身近に感じられるはずですが,上記のように一般庶民にとって身近に感じられない例文をわざわざ作文するぐらいなら,生の例文を使ったほうがまともになります。

定評のあるジーニアスでさえ,drugで例文検索すると風邪薬だとか新薬だとかいった,医学がらみの文脈で使われているものがかなり多くヒットします。drugの注記に「最近では麻薬の意味で用いられることが多い」と書いてあっても,ジーニアスの例文全体ではそれがあまり反映されていないのです。麻薬がらみの例文でも,ほとんどは「麻薬中毒者」「薬物乱用」のような句レベルのもので,今のアメリカが抱えるドラッグの問題が垣間見られる例文はありません。レイプなどはアメリカの犯罪件数のワーストを占める重要な問題ですが,ジーニアスでは1例のみ(それも法律用語の例として)です。臭いものには蓋というつもりなのか,日本の高校生への教育的配慮なのかは分かりませんが…。

和英辞典は有害?(>Yoshiさん) 投稿者:Sekky@管理者  投稿日: 6月14日(金)19時56分26秒

>ルが高く、和英辞典は、英語力が無い人が外国人に会ったり海外に行った時に
>シドロモドロで辞書を引きながら使うものというようなイメージがあるのではないか
>という気がします。

同感です。とくに英語ができる人ほど,「和英辞典は英作文等をする上でマイナスになる」という印象を持っているようです。この考えにはたしかに一理あります。「このジュースには砂糖が含まれていない」と言いたいとき,和英で「ふくむ」をひいて,includeが出ているからといってそれを上記の文脈で使ってしまうとおかしな文になる(液体の中に砂糖が含有されているような場合はcontainを用いる)というような例を考えれば,たしかにその通りでしょう。

>例えば、available のスペルを忘れたので和英で引こうと思っても、「有効」
>とかの類義語では出てこず、available の直訳であっておよそ日本語の単語では

和英の場合,発信用の辞書ですから,最も一般性のある訳語を優先して載せていると思います。「有効な」の場合,「このクーポンは1ヶ月有効です」「この薬は胸焼けに有効です」のような意味で使われることが多いと思います。ですから,validやeffectiveなどが訳語になっているのでしょう。「有効」=availableというのは,どちらかというと専門的な文脈で見られる気がします(リーダーズには法律用語のラベルが付いています)

>また、発音の表記や動詞の活用、名詞の複数形が載っておらず、英和を併用することが前提
>になっているという点も不満です。

ライトハウス(現行のルミナスの前身)和英やニューアンカー和英など,一部の学習和英では発音記号や変化形も載せるようになりましたが,このような辞書はまだまだ少数派ですね。

>複数の訳語がある場合の微妙なニュアンスの解説が不足しており、この点でも英和
>を併用しないと怖くて使えないのが現状の和英辞典ではないでしょうか。

これはルミナスが得意としていますが,それでも,英語の単語同士のニュアンスの違いを日本語で説明するというのは限界があり,また,そのような微妙なニュアンスの違いが気になる人はそれなりのレベルの英語力はあるでしょうから,結局は英英に流れてしまうのでしょうね。

私個人としては,英和辞典と同様に,和英辞典も英語を学んだり使ったりする上では欠かせないものだと思います。「和英を使っていては英語力がつかない。和英に頼らないで,自分の知っている単語を使いこなして英語を書きなさい」とよく言われていますが,「自分の知っている単語を使いこなす」ことができれば苦労はしないわけです。そういう人はかなり単語力もあるでしょうから,和英を使わずに英和や英英だけで済ませればいいと思います。大多数の平均的な英語学習者は「自分の知っている単語」の数以上のレベルの内容を表現したい(しないといけない)から和英にすがりつくのでしょう。料理のレシピを説明するとき,「小麦粉」を英語では何というか知らなければお手上げです。でも,和英があればflourだと分かります。とりあえず小麦粉=flourと分かれば,flourが不可算名詞だと知らずにfloursのようにやっても,料理はちゃんと作れます。

言いかえれば,和英を「ある日本語を英語で何というかを知るための道しるべ」と割り切って考える(=和英で引いた単語を,必ず英和や英英で引き直す)のなら,今まで言われてきたような和英の弊害はそんなにないと思います。しょせんは英和や英英と併用することを前提にした「道しるべ」ですから,細かな学習辞書的記述に走るよりはある程度の語数(10万語超ぐらい,専門用語も豊富に)を備えた和英も必要でしょう。電子辞書ならジャンプ機能で和英→英和,英英へ簡単に移れますので,和英は訳語を並べただけの物(そのかわり語数を多く)でもいいと思います。極端な話,(一般にはアピールしにくいでしょうが)電子辞書には和英コンテンツはカットして,そのかわりに搭載されている英和の訳語部分をすべてインデックス化して,訳語から見出し語を逆検索できるようにしても「道しるべ」としての和英なら有効だと思います。リーダーズのCD-ROM版にある訳語検索のような感じです。

>かるそうですから、この巨大な辞書の編集には長い月日がかかると思い
>ます。でもきっと将来出てくるはずだと信じています。もうどこかでプロジェ
>クトは始まっているのではないでしょうか。Sekkyさんご存知ありませんか?

現物をまだ見ていませんが,グランドコンサイス和英がこれに近いコンセプトの和英だと思います。

ちなみに,「ニューアンカー和英」(現行のスーパーアンカーの前身)の「はしがき」と「本辞典編集のねらい」は現行の和英辞典の問題点を知る上で必見です。

ジーニアスvs新英和中辞典(>ちびさん) 投稿者:Sekky@管理者  投稿日: 6月11日(火)12時57分21秒

>私がまだまだ気が付いていないジーニアス
>の優れた点があるのでしょうか。

・選択制限(主語や目的語にどのような名詞がくるか)が細かく明記されている:たとえば,「伸ばす」の意味のstretchをひくと,新英和では「<手足などを>伸ばす」としか書いてありません。ジーニアスでは「<人・動植物が><身体・手足・翼など>をいっぱいに伸ばす」とあります。このことから,stretchは人間だけでなく,鳥などが翼を広げるというときにも使えるということが分かります。人間以外が主語になる場合はそんなに多くはないでしょうから,新英和,ジーニアスとも,用例には出ていません。しかし,ジーニアスの場合,用例になくても上記のような記述を見れば,人間以外でも使えるんだ,ということが分かるわけです。ついでに言うと,「いっぱいに伸ばす」というのもポイントです。食事をしていて目の前にある塩を手を伸ばしてとるときにはstretchは不自然でしょう。LDCEにはto straighten your arms, legs, or body to full length(太字は私です)とありますが,ジーニアスの訳語は英英の語義を極力損なわないで載せていることがうかがえます。

・例文がイキイキしている:英英にはかないませんが,句レベルの例文(例句と言うべきか?)が多い新英和にくらべて文単位の例文が多くなっています。そのかわり,その語義以外の面も入ってくるので新英和の例文より分かりにくい,という印象があるかもしれませんが。あと,前にも何回かとりあげましたが,新英和は刊行が古いこともあり,少なからず差別的なニュアンスのある例文が多くあります。過去ログの「Sekkyのつぶやき」に具体例がありますのでごらんください。
・スピーチレベル表記が多い:「正式」「略式」のようなスピーチレベル表記が新英和とはくらべものになりません。新英和では何もついていない語でも,ジーニアスでは何らかの表記がある場合が多いです。これは,とくに英語を書く際には重要な情報です。

・レキシカルフレーズ(日常的な決まり文句)が多い:これはG3で初めて実現されたものですが,従来の「イディオム」という概念には含まれなかったような日常会話での決まり文句が豊富に入っています。たとえば,「To drink here or to go?」などという言い方(実際はHere or to go?と言う場合も多いですが)はアメリカのマクドナルドへ行けば必ず耳にしますが,日本人にはなじみがない表現です。このような表現を積極的に収録しています。辞書と英会話表現集を融合した感じです。

・新しい:G3は昨年11月に出たばかりのピカピカの辞書です。M670でWorld Trade Centerをひいてみてください(^^) 初版から数えてもわずか15年弱です。一方,新英和は改訂以来8年が経過しています。初版から数えると35年ぐらいたっています。しかも,新英和の初版は,OEDというオックスフォードの英語大辞典から,例文を無断借用して掲載したということがあり,わずか1年で当該例文を差し替えて改訂版を出しています。このようなこともあり,たとえ改訂を重ねているとはいえ,不自然な例文が少なからず残っています。これは,例の宝島事件で副島氏が明らかにしたこととも通じます。新しいからいいというわけでもないでしょうが,部分改訂を重ねた辞書は,どこかに抜けがあることは決して珍しくはありません。「英語の辞書へのアプローチ」等,拙サイト内の文章でも,何年も改訂を重ねていると誤りがそのままになってしまっていたりすることはしょっちゅうですから。※念のためですが,OEDからの例文借用問題は,誹謗中傷を目的として言及したわけではありません。この件は当時の新聞公告でも出ていますし,辞書に関わる人なら知っている基本的なことですから。

その他に関しては冊子体ジーニアスの「まえがき」をごらんください(^^) 最大の理由は,ジーニアスが文法や語法に力を入れた辞書であるということです。日本人英語教師の文法,語法好きは有名ですから,教師の嗜好にぴったり合った辞書なのでしょう。もちろん,教師の嗜好と生徒の嗜好は全く違います。ですから,ジーニアスは教師(とくに高校の英語教師)や研究者の間では評価が高いのは事実ですが,生徒にとっては必ずしもそうだとは言えません。生徒の中でも「ジーニアスはいい」という人も多いですが,その中のどれぐらいの生徒が,他の辞書と自分の目で比較して「いい」と言っているか,怪しいものです。多くは「私の英語の先生がいいと言ったから」というような理由なのではないでしょうか。

英英辞書のラベル(3) 投稿者:Sekky@管理者  投稿日: 5月29日(水)10時18分10秒

(続きです)

spoken:話しことばでしか用いられない語。(例)blah(名詞)
written:書き言葉でしか用いられない語。時としてformalliteraryと同義で使われるようです。(例)anew
nonstandard:文法的に疑問のある言い方だが,しばしば用いられるもの。外国人は真似しないほうがいいです。(例)ain't
technical:いわゆる専門用語。専門家が,専門分野を語るときに使います。(例)viscous ※物理学で使われる用語。通常はstickyなどを用いるはずです。日本語で言うと「粘性の」と「ねばねばした」の違いだと思います。

辞書の収録語数 投稿者:Sekky@管理者  投稿日: 5月26日(日)10時33分01秒

先ほどの小次郎さんへのレスでもお話ししましたが,辞書の収録語数に関してです。「英語の辞書へのアプローチ」でも書いたのですが,日本人は収録語数の大小にかなりこだわる人が多いようです。それの是非は別問題なのでここでは述べませんが,問題は「収録語数」の数え方が出版社によってまちまちだということです。

先にもお話ししたように,大半の人は,収録語数=主見出しの数と考えています。しかし,実際は,○○語収録,という数字は,主見出しだけでなく,派生語,変化形,イディオム,スペリングバリエーションなどもすべて含んでいるのが普通です。

日曜日ですので,暇な人は主見出しを数えてみてください(^^) …もちろん,最初からしらみつぶしに数えるわけではありません。何でもいいですから,冊子体辞書(収録語数が示されているもの)を用意してください。100ページおきぐらいに,そのページに載っている主見出し語(発音記号の前にある太字の語で)の数を数えて,その平均を出してください。1500ページの辞書なら,15ページぶん数えて平均を出すことになるわけです。次に,その平均値×総ページ数(あたりまえですが,冒頭の説明書きや巻末の付録等を抜いた,辞書本体のみの総ページ数です)を出してみてください。ランダムサンプリングとはいえ,公称の収録語数とかなり違う(少ない)ことが分かるはずです。リーダーズにしても,公称語数は27万ですが,この中にはイディオムや派生語等もすべて含まれています。とくにリーダーズのようなイディオム等の多い辞書の場合,公称語数に占める主見出しの割合はかなり下がるはずで,10万強ぐらい?

一番の問題は,公称の収録語数のカウント方法の基準が出版社や辞書によってバラバラだということです。さらに問題なのは,最近の電子辞書は各社の辞書を寄せ集めているので,基準がバラバラな公称語数をカタログに寄せ集めて載せているということです。もっとも,収録語数の数字を出すのは出版社さんであり,電子辞書メーカーさんではないので,メーカーさんは悪くないのですが(^^;;

たとえば,セイコーさんのカタログでは,研究社の新和英中辞典の収録語数が70000語,ジーニアス和英の語数が80000語になっています。普通の人は,これだけ見ればジーニアス和英のほうが語数が多い,と思うでしょう。しかし,実際は両者の辞書では収録語数のカウントの基準が違っていると思われます。もっとはっきり言えば,新和英中辞典のほうが収録語数が明らかに多いのです。冊子体の両者の辞書のページ数や記述密度をくらべれば明らかです。

#このあたりのことにご関心のある方は,大昔の辞書学MLのログですが,ごらんください(以下のリンク)98年3月4日のところで,実際に学習英和の編纂にも携わっていらっしゃる先生がコメントしてくださっています。

http://lexis.ias.tokushima-u.ac.jp/ml_log2/1998/free/numbers.htm


辞書のラベル(2) 投稿者:Sekky@管理者  投稿日: 5月24日(金)12時54分07秒

(1)の続きです。

slang(OALD, LDCE, LAAD):いわゆる「スラング」です。特定の集団(若者同士や,同じ職業,同じ趣味を持つ人同士などの限られた集団)の中のみで使われる語です。いわゆる「若者ことば」もスラングの一種です。informalの語と違い,場所をわきまえれば誰にでも使えるというわけではありません。「限られた集団」以外の人が(に)使えば不快感を与える恐れもあります。外国人は乱用しないほうがいい語です。とくにOALDでは,△の中に!が入っている記号(タブー語を表す)といっしょにslangラベルが付いている語があります(arseなど)。このような場合,通常のスラング以上に強烈な語ですので,教養ある人や外国人は絶対に口に出したり書いたりすべきではありません。 (例)ganja(いわゆるマリファナですが,marijuanaという(無味無臭の)語ではなく,隠語のような意味合いがあります。日本語で言う「ヤク」のような感じ?(この手の業界(笑)はよく分かりませんので外しているかもしれませんが) 日本にいる外国人が「マリファナ」と言っても普通に響くでしょうが,「ヤク」と言えば日本人はびっくりするでしょう。同じことが,私たちがslangラベルの付いた語を使うときにも言えます。

△の中に!がついている記号(OALD),taboo(LDCE, LAAD):いわゆる「卑語」です。主に排泄やセックスがらみの語であり(OALDは人種差別や障害者差別の語もこのラベルになっていますが),four-letter wordのようなものがこれにあたります。いずれにしても,外国人はもちろん,ネイティブの人であっても教養ある大人が使うと人格を疑われかねない語です。タブー語の代表であるS--t! (間投詞)は学習英和などでもあげられていて「くそったれ」「こんちくしょう」という訳語があててありますが,実際のニュアンスはもっと強烈だと思います。「こんちくしょう」ぐらいなら日本人(の男性)なら「エライ人」が使ってもそんなに違和感がないと思いますが,英語のs--tはフルスペルで書いてはいけないほどのインパクトがあります。#ちょっと前に台湾で滑走路上の機械か何かにぶつかって墜落したシンガポール航空機のボイスレコーダーに,この語が録音されていたそうですが,Time等のメディアで報道されるときは,そこだけ「驚きを表す語」のように言いかえてありました。

offensive (OALD, LAAD), racist (LAAD):人種や障害を持つ人などを意図的に侮辱するためのことば。例はあげませんが,ネイティブ,ノンネイティブを問わず,絶対に使うべきではないことばです。LDCEはラベルなしで語義の中でconsidered offensiveと書いてあります(OALDやLAADもそうなっている語があります)。

vulgar(LAAD):tabooほどではないにせよ,下品な語なので外国人は使うべきではないもの。

impolite(LAAD):初対面など,相手をよく知らないときは使わないほうがいい語。

literary(OALD, LDCE, LAAD):英米文学作品の中で使われる。普通の話し言葉や書き言葉では使われない。しばしば,古めかしいイメージを伴う。(例)adieu(日本語では「さようなら」に対応する「さらば」のような感じでしょうか)

biblical(LAAD, LDCE) 聖書や教会での説教で使われる語。普通の話し言葉や書き言葉では使わない。古風なイメージを伴う。※OALDではliteraryを使うようです。

辞書のラベル(1) 投稿者:Sekky@管理者  投稿日: 5月24日(金)11時55分21秒

よくお問い合わせがありますので,英英辞典で使われている文法,用法のラベルに関して連載? でお話しします。最近の英英搭載機は,コンテンツ自体の使用説明が詳しくないものが多いので,何かの参考になれば幸いです。とりあえず最初は用法ラベルから…。(注)この解説は,冊子体英英の説明書き(OALDならStudy Pageのコラムなど)に書いてあることをもとに,私が書き下ろしたものです。詳細は冊子体辞書の説明をごらん下さい。

※各ラベルの説明では,OALDをもとにしたそのラベルが使われている語の例をあげておきます。

※この連載内容の著作権は私にあります。他のコンテンツ同様に,個人利用のためのプリントアウトやダウンロード,再配布(印刷したものを友人にあげるなど)はご自由に行っていただいてかまいませんが,他掲示板や他メディアへの転載,その他著作権の侵害になる行為は固くお断りします。

時代的な差異を表すラベル

old-fashioned(OALD, LDCE, LAAD):20世紀の初めぐらいに使われていたが,今では古めかしい響きのある語。(例)aerodrome→日本語では「空港」に対する「飛行場」のような感じ。

old use(OALD, LDCE, LAAD):20世紀以前に使われたが今では使われていない語。(例)alas(間投詞としての用法)

特定のコンテクストで使われる語(いわゆるスピーチレベルを示すもの)

formal(OALD, LDCE, LAAD):正式な場面での話し言葉や書き言葉で使われる堅苦しい語。公式なビジネスレターや契約書,学術論文,堅苦しいスピーチなど。日常会話で使うと皮肉やおどけた感じを伴う場合がある ※誤解している人が多いようですが,formalの語は書き言葉だけでなく話し言葉でも(堅苦しい場面なら)使われます。(例)abate(日本語では(「減らす」でなく)「減ずる」に近いニュアンスです)

informal(OALD, LDCE, LAAD):日常会話や親しい者同士の手紙,メモ等で使うくだけた語。くだけた場面なら,教養ある者もしょっちゅう使う語だが,論文や公文書,公式のスピーチで使うと場違いになる。(例)boggle(日本語では「ぎょっとする」(「驚く」でなく)といったニュアンス) ※informalのラベルが付いていても,話し言葉だけでなく,くだけた場面(親しい友人への私信など)なら書き言葉でも使えます。

ちょっと中途半端ですが,字数制限があるのでここまでにします。(to be continued)

ジーニアス和英をthesaurusとして使う 投稿者:Sekky@管理者  投稿日: 5月21日(火)11時03分38秒

ジーニアス和英は,ハイブリッド編集と言われているように,ただある日本語に相当する英語を載せるのでなく,訳語部分にジーニアス英和のその語の記述をピックアップして載せています。

そのため,裏技ですが,中級以下の学習者向けthesaurusとしてけっこう使えます。英語で引くふつうのthesaurusと違い,日本語にして引けばいいわけです。たとえば,「飛ぶ」はflyしか知らない人でも,ジーニアス和英で「とぶ」を引けば,fly, flit, sail, soar, skim...と類語が出ています。ただ類語を羅列してあるネイティブ向けシソーラスと違い,類語間の意味の違いも(ジーニアス英和の記述を抽出して)載せてあります。シャープのPW-M670やPW-6800, PW-9100などでthesaurusが必要な人はお試しください。多くの訳語が載っていませんので,留学中のタームペーパーを書く際などには使いにくいですが。

英英辞典をもっと気楽に使う(>dictianさん) 投稿者:Sekky@管理者  投稿日: 5月 8日(水)11時28分24秒

>現時点では、正しい例文が必要な場合は英英に頼っておく方が無難ですよね。

同感です。英英の長所に関しては,英語で考える習慣が身につくだとかいった大々的な口上で語られることが多いのですが,そんな大げさなものではなく,もっと単純に考えて,例文の信頼性が英和よりも高いからというような理由で英英を使ってもいいと思うのです。とくに英語学習系の掲示板で時々見るのですが,「英英はTOEICで700ぐらいはないと使ったらいけない」だとか,「英英は大学受験には時間の浪費でしかないから使うな」といった,ただでさえ高い英英の敷居をさらに高くしかねないコメントが見られます。英英を使おうとして挫折した人がいうならまだ分かりますが,実際に英英を使っている人が,使ってみようという人へのアドバイスとしてこう言ってしまうのはどうかなぁという気はします。私の経験では,学習英英辞典なら,使い方さえ間違えなければ,高校1年生で英語に興味がある(得意かどうかというよりも,英語が好きかどうかに左右されると思います)人なら十分使えると思います。英英を英和の高級品ととらえるから挫折するのであって,よく知っている単語を引いてみて,こういう言い方をするんだ,と悦に入る? だけでもいいのでは,と思います。電子辞書なら英和とワンタッチで見比べることも簡単ですから,私の学生時代よりははるかに敷居が低くなっていると思います。

英英辞典(とくに学習英英)は,日本の英和のように大学教員が兼業して書いているのではなく,訓練を受けたレキシコグラファー専業の人が書いているので,内容の信頼性には定評があります。例文にしても,大規模コーパスを用いて引き出した実際の出現例を元にしているので「作文」による変な例文が混ざる余地はありませんし。

宝島論争 投稿者:Sekky@管理者  投稿日: 5月 7日(火)09時46分03秒

↑すでにサーチエンジンで検索された方はご存じかと思いますが,簡単に言うと,大手予備校の講師が研究社のライトハウス英和(初版)と新英和中辞典(5版)を批判した

>(*)別冊宝島102 「欠陥英和辞典の研究」 副島隆彦&Dictionary-Busters著
>  1989年11月24日発行、JICC出版局

という本(dictianさんのテキストから引用させていただきましたm(..)m)が発端になっています。当時は大学受験者が多く,受験戦争が加熱していた時代(私も89年当時予備校生でした)ということもあり,この本は大きな反響(良きにつけ,悪しきにつけ)を呼びました。英語学専攻の大学院生の修論でこの本の内容を扱ったものもあったそうです。別冊宝島というのは,警察やホテル業界の裏事情といった暴露ものが多いのですが,英語学者や英語教師の注目も集めました。私が大学院を受けたときにも,英語辞書学で卒論を書いたこともあり,この宝島事件に関しては面接でいろいろと感想や意見を聞かれました(^^;;

たしかに,「欠陥」の内容にはうなずける面も多いです。英語学者,辞書編集者サイドからは酷評されたとはいえ,この本が今の英和辞典の改善に少なからず影響を与えたのは事実でしょう。ただ,一方で,英語学のイロハを知っていれば書かないような,初歩的な誤解や誤りが目立つのも事実です。辞書批判の本質には直接関与しない誤謬とはいえ,このような誤りが多いことが学者や出版社サイドの心証を悪くしたのかもしれません。また,真摯な辞書批判とは思いにくい誹謗中傷的な書き方が散見されるのも問題です。批判の矛先を辞書の内容だけに向けていればいいものを,研究社や当該辞書の編集者にも向けてしまったため「名誉毀損」と判断されてしまったのでしょう。
実は「欠陥」には「英語辞書大論争」という続編(1991)があります。「欠陥」の内容に関して寄せられた様々なコメント(批判にせよ,擁護にせよ)を掲載し,それを吟味する内容で,こちらのほうがおもしろいです。

今では,どちらの本も絶版になっているので手に入りにくいですが,かなり売れているので古書店などを探せばまだ手に入ると思います。辞書に興味のある方は必見です。ただし,鵜呑みにしないで,批判的に読んでください。前述のように,内容的に「??」な箇所はかなりありますので。できれば,大学関係の方は図書館で「英語青年」「現代英語教育」「時事英語研究」のような研究社の英語雑誌のバックナンバー(89年末〜90年前半)に載っている「欠陥」の批判記事を探して,それとあわせて読むといいと思います。

宝島以外にも辞書に関する問題点を扱った本はいくつかあります。宝島に匹敵するほど厳しいコメントも多いですが,誹謗中傷に走らない建設的な内容です。

・「私の愛する英語辞典達−ちょっと辛口の辞書批評」飛田茂雄(南雲堂フェニックス)→ランダム英和の執筆者が各英和辞典の記述を検証。

・「英語教育と辞書」山岸勝榮(三省堂)→スーパーアンカーの編集主幹の著者が,現行英和,和英辞典の問題点を検証。これを読むと,スーパーアンカーを買いたくなります(^^)

研中の例文 投稿者:Sekky@管理者  投稿日: 5月 6日(月)13時00分35秒

研究社中辞典の例文に関してはいろいろと言われていますが,私の専門である社会言語学の立場でいくつか見てみます。宝島で話題になった「戦後の日本は女性と靴下が強くなった」というようなものは論外ですが,ほかにもかなりあります。SR-8100の例文コレクションでこの手の例文をデータとして集めていますが,いくつか以下に紹介します(^^)

She's an air hostess with JAL.→G3の注記にもあるように,今ではflight attendant(ANAはcabin attendantと言っていますが)が普通でしょう。

(以下訳文のみ)

「西日本の人には納豆のうまさが分からない」
「ずんどうの人は着物が似合う」

→作文者のステレオタイプとしか思えないこの手の例文が研中にはよくあります。価値観は人それぞれ違うので,上記のように考えること自体は個人の自由でしょうが,辞書という中立的な書物の例文に載せる必要はないでしょう。そもそも,「ずんどう」ということば自体差別語です。

「病人は機嫌を損ねないように扱わねばならない」→これも同じです。このような平叙文で一般論っぽい響きを持たせると物議を醸しそうです。「病人」という主語もセンシティブなので,無難な例文にするなら「孫の機嫌を損ねないようにおもちゃを買ってやった」のようにするとか。

「男よりも女のほうが早く年をとる」「女は移り気なもの」「悪妻は百年の不作」「男は度胸女は愛嬌」「女3人寄ればかしましい」→この手の男女に関することわざもどきの例は枚挙にいとまがありません。ことわざ辞典ならともかく,英和辞典になぜこういう例文が必要なのでしょうか? 辞書ユーザの半分(語学関係の仕事は女性の比率が圧倒的に多いので,半数以上?)を占める女性の心証を考えていない例文です。

「彼が仙台支店長に左遷されたときは,みんなびっくりした」→「左遷」というマイナスイメージの例文で,具体的な地名を出す必要はないでしょう。仙台の人にしてみれば気持ちいい例文ではないはずです。そもそも,東京から新幹線で2時間もかからない仙台が「左遷」の対象になるような辺鄙な場所とはとても思えませんが(^^;; 新幹線のなかった旧版時代の遺物例文かな。遺物で思い出しましたが,94年改訂の6版でさえ,青函連絡船が登場する例文がかなりあります。青函トンネルが開通し,連絡船がなくなったのは1988年だったはずですが。

「あなたの目は青く,私のは黒い」→昔の中学校の教科書に出てきそうな例文ですが,「だから何?」と突っ込みたくなる,コンテクストの分かりにくい文です。

「彼はケーキを食べ過ぎて病気になった」→甘党の私にはひやっとする文ですが(^^) でも,ケーキを食べ過ぎるとどういう病気になるのかがよく分かりません。虫歯なのか,高血圧なのか??
ケーキバイキングが大好きという人でも,それがもとになって病気になったという話はきかないですし,ケーキを食べ過ぎるよりは酒やタバコを飲みすぎるほうが病気になるリスクは大きいと思いますが。

「ワイフ(妻)はストライフ(争い)と押韻する」→押韻の説明のためなら,わざわざ「妻」と「争い」を結びつけなくても他にいくらでも例があるでしょう。

Trains are operating a shuttle service between Tokyo and Hakata→これは文法的なものにもつながりますが,shuttle serviceというのは,短距離の間を頻繁に往復する(そのためほとんど待たずに利用できる)バスなり,飛行機なり,電車なりに使います。駅からイベント会場までピストン輸送するバスのようなものです。もっとも,短距離というのは相対的な距離なので,(長距離の移動手段である)飛行機の場合は,ワシントンとニューヨークの間とか,ロスとシスコの間ぐらいでもshuttle serviceと言えるでしょう。しかし,この例のように東海道・山陽新幹線の全線を往復するのは日本では長距離路線ですから,shuttle serviceとはちょっと言いにくいです。

などなど。このようなPC(political correctness)の点で疑問のある例文が研中には多く載っています。辞書は,同じ書籍とはいっても,小説などとは違い,個人の嗜好に応じて作者や作品を選ぶという性質のものではありません。ですから,記述内容は,極力無色無臭の中立であるべきだと思います。「イキイキした例文」「楽しい例文」は必要でしょうが,ある特定の人種なり,地域なり,性別なりを話題にして,差別につながりかねないような例文を作って「イキイキ」させていては困ります。例文検索で調べてみましたが,ジーニアスにはこの手の例文はほとんど見られません。

なぜジーニアスか?(>新人さん) 投稿者:Sekky@管理者  投稿日: 5月 5日(日)10時09分05秒

>辞書に余り詳しくないのですが、購入を検討しています。色々店頭を見て回っ
>て不思議に思っているのことがあります。電子辞書の大半がジーニアス(改訂版
>または3版)を採用していますが、ジーニアスは良い(人気のある)辞書なので
>すか。素人なのでよく判らないのですが、書店に行くと他にも多くの辞書があり
>ます。電子辞書業界がジーニアスを選んでいる理由は何でしょうか。ちなみに、
>私が受験生当時に使っていたのは研究社の新英和中辞典でした。不躾な質問です
>が、どなたかご教授願います。

dictianさんのおっしゃる理由(例文の質)もそうですが,それ以上にもっと単純な理由として,「ジーニアスがよく売れている辞書だから」ということがあります。研中のように40年弱の歴史のある老舗の辞書が,ジーニアスという,まだ15年もたっていない新興の辞書,それも辞書編纂には歴史の浅い出版社の辞書に押されてしまったのは,dictianさんのおっしゃる,いわゆる宝島事件がちょうどジーニアスが発売されたばかりのことにあったことも大きく影響していると思います。

ジーニアスがよく売れているのはなぜか,それは,高校現場という(一括購入などで)辞書の売れ行きに大きな影響を及ぼす場所で絶大な支持を受けているからです。新人さんがおっしゃるように,ジーニアスが出る前は新英和中辞典が高校ではメジャーだったのに,わずか10数年でジーニアスに置き換わってしまったのは,宝島事件を無批判にとらえて踊らされた現場の先生がいかに多かったかを物語っています。「欠陥英和辞典の研究」の著者は,当時は大手予備校の英語講師だったためか,「予備校の先生が研中は欠陥だらけだ,ジーニアスのほうがいいと言っているのだから…」と中身を吟味もしないで(もちろん,丹念に読んだ人も多いでしょうけど)研中=×,ジーニアス=◎と安易に考えてしまったのでしょう。ジーニアスが出たばかりで,研中にくらべて新しい,というのも大きかったと思います。

受験指導のプロとしての予備校講師の発言,というのは,現場の(高校等の)教師にはかなりの影響力があるようです。もし,同じことを大学の英語学者や民間人(翻訳者,一般の英語ユーザなど)が書いていたら,ここまで影響力はなかったはずです。最近,広辞苑の批判本がけっこう出ているのに,一般にはあまり話題に上らないのと同じです。#「欠陥」の内容はたしかに頷くところも多いのですが,明らかな事実誤認や,とくに学術的な事柄に関して,初歩的な誤りがかなりあり,とくに専門家の間では内容の信頼性が疑わしい,と思われたのも事実です。よく例に出されるように,中期英語の年代の誤りとか,ホーンビーの動詞型の総数の誤り,C.T.Onionsという人名の表記の誤りなどです。これらのことは,英語学専攻の学部上級生なら知っていることですし,中期英語の範囲などは大学1年生でも分かるようなことです。

電子辞書業界も,IC辞書の黎明期は研中ばかりでした。しかし,今では老舗のセイコーさんでさえジーニアス搭載モデルをメインのラインナップにしています。付加機能が豊富だという理由でPW-9100はよく話題になりますが,SR-8100があまり話題にならないのも,搭載コンテンツによるところが大きいと思います。

もっとも,英和はともかく,なぜ和英までジーニアスを奉る人がけっこういるのか,私は理解できません。ジーニアスだから,という理由で,無批判に受け入れている人が多いようです。しかし,前の「道場」の例をはじめ,英作文の際に和英を首っ引きで使わないといけないレベルの学習者にとっては,ジーニアス和英よりはルミナスやスーパーアンカーのほうが例文も多く,掲載例文をうまく真似できれば和英を使ってもかなり自然な英文は書けると思います。ルミナスは,「訳語間の使い分けやニュアンスを記す」という新機軸を取り入れたことで,和英辞典の一大革命を巻き起こしたライトハウス和英の流れを汲んでいますし,スーパーアンカーは先行他書の孫引きをしないで,一から書き起こしているという点で,とても自然な例文が多い辞書です。

MEDの例文(追加) 投稿者:Sekky@管理者  投稿日: 5月 3日(金)12時52分58秒

よく出す例ですが,アメリカ英語版MEDでpizzaが使われている例文をCD-ROM版で検索すると,10数例しか出てきません。LAADの半分以下です。総例文数はLAADとそれほど変わらないのにです。Pizzaという語はアメリカ人なら幼稚園の子供でも知っている語ですし,アメリカの食文化の中にも浸透しているのですが,MEDでは(2500の定義語にもpizzaはないですし)重要語とみなしていないので,例文にも現れない(もとのコーパスではあっても,例文にする時点で「教育的配慮」でより基本的な語に差し替えた?)のかもしれません。

#賛否両論あるでしょうが,私個人としては,辞書,それも英英のような上級学習者向け辞書の例文は,英語文化圏の「におい」を日本にいながらにして,ほんのわずかでも嗅ぎとることのできるようなものにすべきだと思います。もちろん,その単語の使い方を示すという「教育的」な目的もあるのでしょうが,幸い,日本の場合は優れた英和辞典がたくさんありますので,そういう用途はある程度英和で肩代わりできると思います。

英語をある程度学び,英英辞典というお花畑に踏み込んだ学習者にとって,英英辞典のイキイキとした例文は宝物のようなものだと思います。英英を使っている人だけの特権とも言えるのかもしれません。たとえば,LAADのor(「そうでなければ」の意味で)の例文として,They have to deliver the pizza in 30 minutes, or it's free.というものがあがっています。「教育的配慮」をするなら,orの例文にdeliverやpizzaという(初級学習者には難しめの)語を使って混乱させてはいけないので言いかえよう,となるのでしょうが,LAADでは(おそらくはピザを注文する場面での会話コーパスか何かからとったもの?)自然なままにしてあります。これにより,アメリカでは宅配ピザ屋が普及していて,競争も激しいので迅速な配達にしのぎを削っているんだな,というような文化のにおいが何となくわかります。じゃあ日本の寿司の出前はどうなんだ,遅いから催促の電話をしても,無料どころか「今出るところです」としか言わないではないか,と突っ込んだりもできます(^^) 月並みですが,あることばを学ぶということは,その言葉が話されている地域の文化を学ぶことにもつながります。もちろん,現地でしか学べないことも多いのでしょうが,自然な例文を載せた辞書を使えば,多少の文化の香りぐらいにはふれることができます。

MED 投稿者:Sekky@管理者  投稿日: 5月 3日(金)12時16分35秒

前にも少しお話ししましたが,Macmillan English Dictionary (MED)という学習英英辞典が発売されました。ペーパーバック版に加え,紀伊国屋書店からコンパクト版(学習英和辞典ぐらいのサイズで表紙が紙ではない)も出ました。概要を以下に記します。

・統制語彙は2500語:数値だけで言えば,LDCE/LAAD(2000語)とOALD(3000語)の中間。ただ,LDCE/LAADの2000語は,たとえ基本的な単語であっても辞書の定義にはあまり必要ない語はカットしてあります。たとえば,baseball, CD, January, homeworkというような語は中学生でも知っている基本語ですが,LDCEの統制語彙2000語には入っていません(辞書の定義にはあまり必要ない語だからでしょう)。一方,MEDではこれらの語も統制語彙として入っています。ですから,実際にはLDCE/LAADとほぼ同レベルの記述です。

・収録語が10万(公称):LDCEやOALDより2万語ぐらい多く,COBUILDなみの語数です。もっとも,英和辞典とは語数のカウントのしかたが違うようなので10万といっても英和に換算すると6,7万といった感じでしょうか。学習英英の中では語数が多い方ですが,一方で,とくにLDCEやLAADで充実している話し言葉の決まり文句(G3で言うレキシカルフレーズっぽいもの)がかなり少ないです。

・イギリス英語が主体の版とアメリカ英語主体の版がある:これは類書にないユニークな特徴でしょうが,あまり知られていないようです。イギリス英語主体の版は当然イギリス英語のスペリングや発音がメインに出ていますし,イディオムなどもイギリス英語のものが主体です。難点としては,どちらの版も見かけはほとんど同じなので混同しやすいことです。アメリカ英語版は,表紙のサブタイトルにFor advanced learners of American Englishと書いてある(イギリス英語版には太字部分がない)ことで区別できます。紀伊国屋が出しているコンパクト版はアメリカ英語版がベースですが,ペーパーバック版は多くがイギリス英語版のようです。

・コーパスをもとにした頻度表記(星印):OALDにはない特徴ですが,実際にその単語が用いられる頻度を3段階で表しています。日本の英和辞典の星印と違い,実際の使用頻度に基づいているのがミソです。

・コロケーション(語と語の結びつき)の囲み記事:類書よりも多いです。

★全体的にはLDCEに近い感じです。ただ,良きにつけ,悪しきにつけ,保守的というか,内容的に手堅い編集になっています。私にとって,辞書を読む大きな楽しみである用例にもそれが感じられます。LDCEやLAADは,学習英和とは言っても,コーパスからとってきたナマの英文をあまり触らずにそのまま載せていることが多く(初級者にはちょっと難しい例文も多いのですが),学習英和の無味乾燥な教科書的例文にうんざりしている人にはとても面白いものでした。IC辞書で例文検索を使うととくにそう感じます。作例でないものが多いので,「この例文はどういう場面なんだろう」とコンテクストを想像するのも勉強になるのですが,MEDの用例はかなり教育的配慮? をしているようで,コーパスをもとにしているとはいえ,当たり障りのない例文が多くなっています。LDCEはもちろん,OALDでさえ,taboo wordsを用いた例文は何十例とありますが,MEDでは(CD-ROM版で検索したところ),物議を醸す語やコンテクストはほとんど排除されています。

GC vs リーダーズ revisited 投稿者:Sekky@管理者  投稿日: 4月30日(火)11時10分23秒

今までにもこの比較は何回かとりあげていますが,訳語自体を考えるとやはりリーダーズのほうに軍配が上がってしまいます。

先日気づいたのはspotterという語です。欧米では機関車や飛行機の番号をチェックするという趣味があります。飛行機や機関車には固有の番号がついているので,自分が空港なり駅なりで見た番号を控えておいて,それを集めるのが目的なのでしょう。そんなことしてどうするのかと思うかもしれませんが,何かをコレクションする趣味というものは,集めること自体が目的なのですから,どうするかという問いはナンセンスでしょう(^^) 日本ではそれほど一般的ではない趣味でしょうが(最近は羽田や成田でもそれらしき人をよく見かけますが),ヒースロー空港などへ行けば,展望ロビーに双眼鏡を持ったスポッター達が何十人といるそうなので,切手収集等と同様の市民権を得てきていると思います。

ともあれ,このような意味でのspotterという語は,リーダーズには「機関車(バスなど)のナンバーや形式を覚え込んで識別するのが好きな人。スポッター」とちゃんと出ています。また,映画の題名にもなったtrain spotting (train spotter)には「機関車のナンバーを覚え込む人。おたく,マニアックな奴」と出ています。

GCはどうでしょうか。spotterには上記のような訳語はなく,最も近い訳語は「…観察者」です。これではあいまいです。スポッター,スポッティングという語は,主に,数が有限で1つ1つが番号等で区別できるものを観察,識別する趣味に用いるような気がするので,「昆虫観察者」「爬虫類観察者」をinsect spotter, reptile spotterとは言わないような気がします。

train spotterは,GCでは「(ナンバープレート集めが趣味の)機関車マニア,ださくてくそまじめな人,まじめすぎてさえない奴」となっていますが,これではまるで機関車のナンバープレートを盗んでコレクションする人を連想し,おかしな訳語です。プレートを集めるのではなく,プレートに書かれたナンバーを記録する趣味の人がtrain spotterなのですから。ちなみに,CODでは以下のようになっています。

1. a person who collects locomotive numbers as a hobby
2. a person who obsessively studies the minutiae of any minority interest or specialized hobby

CODの2はGCの「ださくてくそまじめな人,まじめすぎてさえない奴」に相当するのでしょうが,CODは「普通の人があまり興味を持たないような細かなことにのめり込んでいる人」というような意味合いなので,「まじめ」とか「さえない,ださい」というGCの語義からは「ガリ勉」を連想し,ちょっとずれてしまいます。むしろリーダーズの「おたく」という語義がぴったりかもしれません。

これは一例ですが,GCの場合,語数が多いので引いた単語が載っている確率はリーダーズより多いですが,訳語自体はおかしなものが少なからずあります。語数の多い辞書を求める人は,自分のよく知っている専門語などをひいてみて,確かめたほうがいいかもしれません。

ジーニアス和英vs新和英中辞典 投稿者:Sekky@管理者  投稿日: 4月29日(月)11時23分00秒

ジーニアス英和にカップリングしていつの間にか電子辞書の業界標準コンテンツのようになってしまったジーニアス和英ですが,以前にもお話ししたように,英和をひっくり返して作っているので,とくに日本独特の語などで「??」という記述があります。

さっき気づいたのですが,「道場」をジーニアス和英で引くとashramという訳語が出ています。恥ずかしながら,私も初めて見た単語です。「禅などの修行所,道場」というジーニアス英和の訳語がそのまま和英にも出ています。「道場」にあたる訳語はこれしか載っていません。おいおい,ちょっと待てよ,という感じです。

普通の日本人なら,「道場」という日本語からは「空手道場」のような武道を練習する場所を思い浮かべるのではないでしょうか。剣道でも,柔道でも,少林寺でも,何でもいいですが,このような格技を練習する場が「道場」です。さらに言えば,「厳しさ」「張りつめた空気」「元気なかけ声」といったようなイメージが伴う語です。

禅を修行する場所も道場というのかもしれませんが,日本人,それも,学習和英のユーザの大半を占める学生の観点からすれば,「道場」を和英で引いて禅の道場のみが出てくるというのは不親切です。不親切ですめばいいのですが,柔道部の中学生や高校生が,部活のことをペンフレンドに紹介するときに,「禅などの」というジーニアス和英の選択制限記述を見逃して,I usually practice judo at the ashram in my high school.なんて書いてしまうとおかしなことになります。日本の高校は公立高校でも禅を教えるのか,と思われたり。

こういう記述になってしまっている原因は簡単です。ジーニアス「英和」には,(空手等の)「道場」という,英語でそのものズバリの単語のない語は載っていないからです(英和は,英単語の訳を提供するものなので,それでいいわけです)。しかし,禅の道場はashramという1語で言えますので,英和にも載っています。そうなると,英和の訳語部分から和英を作る際に「道場」という訳語はashramしかないので,和英の「どうじょう」もashramしか出てこないのです。このようなことは,ジーニアス和英のように英和のデジタルデータをもとに作ったハイテク辞書独特の罠であり,一から和英を書き起こしていれば絶対に起こらないことです。ジーニアス和英の編者もこのあたりのことはご存じのようで,日本独特の語に関しては一から書き下ろしたりしていますが,このように見過ごされてしまうケースもあります。

新和英中辞典でも,ルミナスでも,スーパーアンカーでも,ashramは出てきません(日本人にはなじみが少ないからでしょう)。そのかわりに,exercise hall(これだけでは無味乾燥な語なので「道場」にある張りつめた空気などが伝わってきませんが,ashramよりはましです)やjudo schoolなどをあてています。スーパーアンカーは,近似値の英語で置きかえると,上記のような「道場」の細かなニュアンスが表せないというスタンスからか,dojoとそのまま日本語にしています。

「和英を使うとろくな英語は書けない。英英を和英のかわりに使えばいい」と言うのは簡単ですが,私の大学の学生でも,英語が専門で,しかもかなり英語ができる学生でも英作文の際に和英を全く使わないと言う人はまずいません。ジーニアス英和はともかく,和英はこのようにいろいろと問題があります。和英のコンテンツだけで言うなら,新和英でもいいですし,IDF-3000のニューアンカー,TR-6700のカレッジライトハウス(ルミナスの前身)のほうが,ジーニアス和英よりは使いやすいです。むしろ,ジーニアス和英は類語辞典のかわりに使うほうがいいのかもしれません。

#電子辞書メーカーさんが,英和はジーニアス,という固定観念をうち破れば,和英でもジーニアスを載せる必要がなくなるので,まともになるのでしょうが(^^)

LDCEとLAADの違い(>cougarさん) 投稿者:Sekky@管理者  投稿日: 4月24日(水)09時01分17秒

>このたび英英辞書を購入しようと思っているのですが、ジーニアスのついたものとなると、カシオの
>XD-R8100しかありません。
>ただ、一般的には「ロングマン現代アメリカ英語辞典」よりもセイコーのSR8100にみられるような
>「ロングマン現代英英辞典」のほうが人気が高いようですので、どちらの英英辞書をとったらよいの
>か迷っています。
>こちらの過去ログを拝見しますと、それほど両者に目だった違いはないように受けとめているのです
>が、使っていく上でさしたる不都合はないのでしょうか。両者の違いは大きなものではないのでしょ
>うか。

LDCEとLAADは同じロングマンですから大きな違いはありません。LDCEを使いこなしている人なら同じ感覚でLAADも使えるでしょう。両者の違いは,以下のような点です。

・LAADのほうが新しい:LDCEは95年,LAADは2000年発行です。単に新語が増補されているだけでなく,語義の順番なども最新の英語の動
向が反映されています。たとえば,mouseを引くと,LDCEはネズミ(動物)が第一語義ですが,LAADではコンピュータのマウスが一番最初
にきています。たしかに,最近は衛生状態もよくなったので都市部ではネズミなどそんなにいないですしね(^^)

・固有名詞が若干入っている:イギリスの出版社の辞書は「ことば典的」な内容が伝統的です。つまり,辞書と百科事典を明確に区別し,固有名詞は載っていない場合がほとんどです。CODもそうですし,LDCEもです。でも,LAADはロングマンの辞書といってもアメリカ英語に特化した辞書なので(そのためかどうかは分かりませんが)アメリカ式の辞書編纂,つまり,百科語彙も積極的に載せるスタンスです(これは日本の英和辞典も同じ立場です)。そんなに語数は多くありませんが,LAADには固有名詞も載っています。

・アメリカ英語に特化した編集:LDCEは英米両方に目を向けた内容ですが,LAADはアメリカ英語に特化しています。ですから,LDCEに載っているイギリス英語独自のイディオムなどはカットされています。また,コーパスに基づいた頻度表示(S2W1のような)もベースになっているコーパスがアメリカ英語オンリーのものなので,LDCEとはかなり違います。例文も,LDCEはイギリス英語のコーパスを中心に,アメリカ英語も補ったような感じですが,LAADの用例はアメリカ英語のみです。そのため,よくあげる例ですが,LDCEとLAADは規模はほぼ同じといっても,例文検索機能でpizzaとteaを検索すると,ヒット数が大きく違います。アメリカ文化に根付いているpizzaはLAADのほうが多くヒットし,逆にteaはLDCEが多いのです。

漢字源も! 投稿者:Sekky@管理者  投稿日: 4月23日(火)08時59分14秒

G3が電子辞書業界では話題になっていますが,G3とほぼ時期を同じくして,冊子体漢字源も改訂されているんですよね。新JIS漢字(第3,第4水準)が追加されたりとか。改訂規模からいけば漢字源のほうが明らかに大きいのですが,こっちは電子化されないせいか,話題にものぼりません(ほかにも,IDF-3000に搭載の学研新国語辞典も改訂されています)。日本(という非英語圏)で,英語の辞書の増補がこれだけ話題になっているのに,漢和辞典や国語辞典の改訂は注目されていないというのも不思議な話です。

前もお話ししたように,電子辞書搭載の漢字源は冊子体漢字源まるごと収録ではありません。というより,冊子体漢字源は10000数千字の親字が入っているはずですが,電子辞書版はそのうちのJIS漢字(6355字)のみです。単純計算で冊子体の約半分強でしょうか。フォントの関係(第3水準以上のJIS漢字や非JIS漢字のフォントがない)でしょうが,非JIS漢字,第3,第4水準漢字も含め,冊子体漢字源のまるごと収録版を出せれば,国文学,国語学,中国文学等の研究者や漢文,漢詩愛好者を中心にけっこう需要はありそうです。「国語重視機」という電子辞書のカテゴリーがいずれ出てくるのなら,真っ先に考慮すべきコンテンツだと思います。

GC和英! 投稿者:Sekky@管理者  投稿日: 4月15日(月)14時11分21秒

↑6月に出ますね。和英で見出し語25万というのは史上初です。EPWINGリーダーズでできる和英引き機能のような感じでしょう。おそらく,GC英和と同じで,学習辞書的要素は一切カットして,とにかくある日本語に対する英語訳語を羅列することに徹しているのかな?

考えてみれば,最近の和英は発音記号が載っていたり,語義の使い分けが詳しくなったりと学習辞書としての機能が進化していますが,一方で和英は悪者にされがちで,ある程度英語のできる人は和英を使わないで英和と英英で英語を書いていますから,GCのような語数本位の和英でも問題ないのだと思います。GCを買う人は専門家でしょうから,ある日本語を英語で何というかさえ分かれば,細かな学習情報なしでも英語を書くことは問題なくできるはずですから。

リーダーズ英和を,訳語部分から和英のように引く(EPWINGリーダーズのような)機能はぜひIC辞書にも搭載してほしいと,メーカーさんはじめ,いろいろなところで言っているのですが,なかなか実現されません。そんな中でGC和英が出てくるのですから,楽しみです。シャープさんがPW-6800の後継で出してくると,SR-9200と対抗できるおもしろいモデルになると思います(^^) 時期的に言って,電子化(されるのなら)は2003年の春商戦向けでしょうか…と言っていると,G3搭載の機種のように,予想よりはるかに早く出してきたりするのかもしれませんが(^^;;

http://www.sanseido-publ.co.jp/publ/grand_con_waei.html


逆引き広辞苑の効用(>こまさん) 投稿者:Sekky@管理者  投稿日: 4月 1日(月)10時07分42秒

>質問したいのは、逆引き広辞苑のことです。普段どのように使っているのか、
>何かに使えるのか、入っている方がいいのか教えてください。広辞苑と両方
>入っているものが多いような気がします

冊子体の逆引き広辞苑は10年近く前から出ていますが,電子辞書になってから一般に知られるようになったと思います。ただ,これの活用法は意外と知られていないようです。この掲示板開設以来,1500件近い書き込みがありましたが,逆引き広辞苑に関するご質問はおそらく初めてであることからしても,あまり注目されていないことがうかがえます。

簡単に言うと,逆引き広辞苑の使い方は

・類語辞典(thesaurus)として使う:とくに,「ある単語と同じ種類のものを表す単語を知りたいとき」に使うと便利です。たとえば,「うなぎ」で逆引きすると,「うみうなぎ」「えらぶうなぎ」「おおうなぎ」「しびれうなぎ」…のように,ウナギの種類が一覧されます。専門的な話になりますが,日本語の単語は,語末が意味的に重要な要素になることが多いのです。言いかえれば,複合語などは,語末に上位語(意味の根幹となる語。上の例では「ウナギ」)がきて,語頭には上位語の概念をより特定する下位語(上の例ではうみ,えらぶ,やつめ,など)がきます。こういう日本語の語形成上の特徴により,語末から引ける逆引き広辞苑では,意味上の根幹になる語をキーにして入れれば,その後の下位語が一覧できるわけですから,表現をする際に似たような語を探すことが簡単にできます。

・語呂合わせやしゃれ,川柳などを作る際:上の「うなぎ」を逆引きすると,ウナギの種類だけでなく,「ゆうなぎ(夕凪)」のような,全くウナギとは関係ないが,偶然「…うなぎ」で終わる語も出てきます。そのため,夕凪とウナギをかけて何かしゃれなどを作ることができます。

・日本語の語彙を増やすために:逆引き検索では,ある単語に近縁の語が一覧されるので,語彙力をつけるときにも役立ちます。外国語として日本語を学んでいる人はもちろん,日本人にとっても有用です。

・クロスワードパズルやなぞなぞを解く際に:日本語のクロスワードは,上位語がカギに出ていて,それをヒントに下位語を升目に書かせるものが多いのです。たとえば「福井にある○○温泉」のようにカギがあって「あわら(芦原)」を入れさせるようなのです。逆引き広辞苑がなければ,日本地図なり旅行案内書なりをみないといけません。

…今思いつくのはこれぐらいでしょうか。上にあげたのは一般向けの例ですが,日本語の研究用としてはほかにもいろいろな使い道があります。

たとえば,日本語には連濁という現象があります。簡単に言うと,「あお」+「そら」が「あおそら」ではなく「あおぞら」のように(後部要素が有声音で)読まれることです。ただ,どんな場合にも連濁するわけではなく,漢語(=音読み)の場合には連濁しない(「低空」は「ていぐう」にはならない)という制約があります。しかし,これには例外があり,漢語でも連濁する場合があります。「あお」+「しゃしん」が「あおじゃしん」になる(「しゃしん」は漢語なのに連濁する)ようなものです。こういう例外の語を知りたいとき,ふつうの国語辞典ではお手上げですが,逆引き検索で「*じゃしん」と入れてやるだけで「いろじゃしん」「かおじゃしん」「ぬのじゃしん」…と出てきます。もちろん,「*しゃしん」で検索すれば規則通り連濁しない語がリストされます。

OALDとLDCE/LAAD 投稿者:Sekky@管理者  投稿日: 3月13日(水)09時59分47秒

英英搭載機はメーカーによってOALDかLDCE/LAADかが分かれていますが,同じ学習英英と言っても,OALDとLDCE/LAADはかなり毛色が違います。以下にまとめます。

・難易度:OALDのほうがちょっと難しめです。統制語彙数が3000語(LDCEは2000語)というのも大きいです。一方で,LDCEよりも深みのある定義になっています。colour(LAADはcolor)なんかを引いてみてください。LDCE/LAADはただ色の例をあげているだけで,辞書の定義ではありません。redやblueがcolorだというぐらいは「advanced」の学習者なら百も承知なのですから,中,上級レベルの学習英和でこの定義はひどすぎます(^^;;

・イディオムの扱い:前述です。OALDはかなり多くの定型表現をIDMというラベルの下に入れている(のでOALDの成句検索機能で検索できる)のですが,LDCE/LAADは本文の中に太字で書いてあるだけです。

・例文:例文の数自体はOALDもLDCE/LAADもそれほど変わらないはずですが,例文検索機能を使ってみると,同じ単語でも,LAADやLDCEの(XD-S8000, SR-8100など)ほうが,OALD(PW-6800など)よりもヒットする例文数が多いような気がします(気のせいでしょうか?)。おそらく,OALDよりもLDCE/LAADの例文のほうが,1文あたりの長さが長い例文が多いからなのでしょう。トータルの例文数は変わらなくても,1文あたりが長い例文が多ければ,単語の数も多いわけですから,例文検索でヒットする数も多くなります。もし例文検索を重視するのなら,ロングマン系の英英を搭載した機種のほうがいいかもしれません。ついでに言うと,OALDもLDCEもBritish National Corpus (BNC)というイギリス英語のコーパスをもとに例文を載せていますが,同じコーパスを使っているのに,例文はかなり違います。OALDの例文は,コーパスデータそのものというよりは,固有名詞を代名詞に置きかえたり,長いぶんを短くしたりといった修正がかなりされているようです。学習者への配慮(いくら生の例とはいえ,固有名詞が難しかったり,文構造が複雑な例文は,理解しにくいですから)なのでしょう。いっぽう,LDCEやLAAD(とくにLAAD)の用例は,多少の修正はあるのでしょうが,コーパスの生データにかなり近くなっています。社名や人名の固有名詞もそのままのものが多いです。また,挿入句が入っていたりする例も多いので,文も長めです。個人的には,LDCEやLAADの用例のほうが読んでいてもおもしろいものが多いと思います。

GCとリーダーズ 投稿者:Sekky@管理者  投稿日: 3月13日(水)09時43分14秒

GCのほうが旗色が悪そうなので,ちょっとヨイショします(^^)

リーダーズがGCにかなわない点として,用例があります。GCは学習辞典ではないのに基本語には用例がかなり載っています。もちろん,ジーニアス等の学習英和には及ばないですが…。PW-6800は例文検索でGCの例文も検索できます。

また,GCはまだ出て1年たつかたたないかぐらいの辞書なので,評判が確立されていません。とくに,GCの場合,翻訳者等のプロの人がメインユーザでしょうし,学習辞典よりもユーザははるかに少ないですから,一定の評価を得るにはかなりの時間がかかります。リーダーズにしても,出たばかりの頃は無名同然だったと思います(当時は,ランダムと研究社の大英和が主流でしたから)。リーダーズはいかにも手作りで作られたという感じがありますが,GCはコンピュータを駆使して編集されていることがうかがえます。このことは,改訂サイクルが短くできるというメリットにもつながります。リーダーズは初版から2版までに15年かかっていますが,GCはそんなことはないと期待したいです。

LAAD, LDCEの問題点(>ヒロさん) 投稿者:Sekky@管理者  投稿日: 3月13日(水)08時53分32秒

>使い勝手の面では、語義中の太文字(例えばdogなら3番目の意味の 「dog eat dog」)
>も成句検索できて欲しかったです。英英の成句検索で検索できるイディオムは少ないです。

これは一般にはあまり知られていないようですが,ロングマン系の英英を搭載している電子辞書(カシオ,セイコー)共通の問題点だと思います。もとのデータベースのインデックスの仕様の差だと思いますが,ロングマンの英英では,いわゆるイディオムに加え,イディオムというほどのものではないが,日常会話で決まり文句のように使われる表現(G3のタームで言うならレキシカルフレーズのようなもの)が本文中に太字ででています。ただ,ヒロさんがおっしゃるように,この太字の表現はXD-S8000/R8100やSR-8100の成句検索では検索できないのです。ロングマン系英英を搭載した機種の,英英モードでの「成句検索」は,成句検索ではありません。むしろ句動詞検索(give upやset offのような語)と言ったほうがいいです。SR-8000/8100では「成句・句動詞検索」という機能名を使っているのでまだいいのですが,XDシリーズは,「成句検索」としか書いていないので,これは誤りです。ちなみに,ジーニアスの成句検索では,成句,句動詞のいずれも検索できます。OALDでは,イディオムも,レキシカルフレーズっぽいものも,すべて「IDM」というラベルの下にあるので,OALD搭載機は英英の成句検索モードでちゃんと検索できます。

>例文検索は便利ですが、ただズラ〜ッと並ぶだけでなく、
>その例文の出典の単語も表示されるといいのになぁと思ったりもします

これは元データのインデックスの問題のようです。ジーニアス英和辞典の例文検索(SR-9500, PW-M670など)なら,出典の語も表示されますがOALDやLDCE, LAADなどでは表示されません。同じジーニアスでも,ジーニアス和英はだめです(このへんの不統一は何とかしてほしいものです)。

差別語の扱い(>河崎さん) 投稿者:Sekky@管理者  投稿日: 3月 7日(木)21時10分17秒

>"deaf"と「つんぼ」, "blind"と「めくら」という言葉自体にはそれほどのニュアンス
>の差があるとは思えません. "deaf"や"blind"だって, 比喩的に, 多くの場合には否定
>的な意味合いで使われるケースは多々あるはずですが, 別に差別語とはされていないは
>ずです.

(以下,前回同様,説明の都合上差別語をそのまま使っている箇所があります)
これはまさにおっしゃるとおりだと思います。残念ながら私にはネイティブの語感がありませんので何とも言えません(皆さんの中で,帰国生や現地在住の方がいらっしゃいましたらご教示下さい)が,deafやblindはかなり直接的な表現です。今のところ,New Oxford American Dictionaryのような最新のネイティブ向け英英でも用法ラベルが付いてはいませんが。むしろ,deafよりはhearing-impairedを使うほうがいいのかもしれません。話がそれますが,日本の英和辞典は,deafやblindに「つんぼ」「めくら」という訳語を避けることで,目や耳の不自由な方々の心情へ配慮しているのでしょうが,一方で,deafの「耳の不自由な」という訳語のニュアンスを鵜呑みにして,deafはpolitically correctな語だと思わせてしまう危険が出てきます。

>現に, 本来は言い換え語であったはずの「身障」ということばは, いまや差別語と化
>しつつあります.

ある語が差別語とするか否かは変化がめまぐるしいと思います。politically correctな語でも,その語が世間で使い古されてくると逆に差別的な色彩が濃くなってきたりします。Negroは直接的だから,間接的にcoloredと言えばいいだろう,と言っているうちにcoloredも差別語になり,逆に直接的なblackが好まれたりというのもその例です。余談ですが,私の地元の名古屋にある「身障スポーツセンター」という施設も,おっしゃるように「身障」という語のニュアンスの変化により「障害者スポーツセンター」と名称変更しています。

>います. ただ, 国語辞典の場合は正しい日本語を伝えることも大きな目的の一つで
>あり, 辞書の編者が差別語ではないと考えるのであれば, そのまま掲載するのも見
>識ではないでしょうか. ただし, 最低でもスピーチレベルのようなものは示すべき
>ではないかと思いますし, 「くろんぼう」なんていうのは単純な差別語ではないか
>とも思います.

そう思います。これは辞書編纂の方法論の問題なので微妙なところですが,私個人としては,小学生向けの国語辞典ならともかく,広辞苑という大規模辞典は,規範主義(差別語をはじめ,通常の文脈で教養ある人が用いるには不適切とされる語は排除する)にとらわれるの*ではなく*,たとえ差別語であっても,その語が現代日本語に存在しているのであれば辞書にも盛り込むという記述主義をとることが望ましいと言えます。ですから,私も広辞苑に差別語が記載されていること自体には異論はありません。実際,LDCEやOALDのような学習者向け英英辞典でさえ,最近はいわゆる4文字語(f--kやs--tのような)も立項していますし,それどころかコーパスからとってきた生々しい文脈の例文までご丁寧に載せてくれています(例文検索機能で4文字語を検索してみればびっくりするぐらい出てきます)。ただ,載せる以上は,河崎さんのおっしゃるようにスピーチレベルの注意書きなり,ラベルなりは必要です。広辞苑は差別語をラベルなしで載せていて,しかも語義からも差別語であることをくみ取りにくいので問題になるのだと思います。

ある語を差別語と認定するか否かは,その辞書の編者の思想にもよるでしょうから口を挟むことはできませんが,一方で,辞書は小説や芸術作品とは違い,同じ書籍でも電話帳のような公共性の高い位置づけの出版物であることは忘れてはならないと思います。「めくら」「つんぼ」etc.を差別語ではないと広辞苑の編者がとらえるのなら,それはそれで個人の自由ですが,公共性の高いメディアである以上,これらの語が一般社会で最大公約数的にはどのようなイメージを持たれているかを尊重し,その結果をラベル等で示す必要はあると考えます。

#余談ですが,英語の場合,同じ意味を表す語でも,テクニカルタームを用いるとタブー度が下がるようですね。p--sよりもurinate,s--tよりもdefecateのように。英和辞典の訳語でも,これらのペアは英語の側のタブー度やスピーチレベルの違いによってそれに相当する日本語をあてる必要があるとは思いますが,タブーな語でもニュートラルな訳語をあてている辞書がまだまだ多いのが現状です(ラベルが付いているからいいだろう,と言うことかもしれませんが)。お食事をしながらごらんになっている方もいらっしゃるでしょうから,具体的な訳語はあげませんが(^^)

IC辞書搭載の学習英英辞典 投稿者:Sekky@管理者  投稿日: 2月18日(月)19時40分49秒

↑よくお問い合わせがありますので,まとめてみました。
Oxford Advanced Learner's Dictionary (OALD):2000年秋改訂の第6版。IDF-2000E,PW-6800, PW-M670, DD-IC5000に搭載。学習英英辞典の老舗的存在。その歴史は戦前にまでさかのぼり,来日して英語を教えたAS Hornbyというイギリス人が作ったIdiomatic Syntactic English Dictionary (ISED)という辞書が前身。ISEDの頃は,学習英英辞典とはいえまだまだ難しかったが,改訂を重ねる都度易しくなっている。とくに5版からはLDCEのように統制語彙を導入し,6版では統制語彙を5版より減らし(3500→3000語),より分かりやすくなった。とはいえ,LDCEより統制語彙が1000語多いこともあり,難しいのは事実だが,逆にLDCEよりも深みのある定義になっている。
※ OALDは記述の仕方がLDCEやLAADとはかなり違います。たとえば,LDCEは品詞毎に別見出しになっていますが,OALDはなっていない(英和辞典と同じ形式)とか,動詞に自動詞他動詞の区別をしないでごちゃまぜにして並んでいるというのは戸惑います。特に,ある程度英語ができる人は,求める動詞の語義を絞り込むのに,自動詞か他動詞かで見ていることも多いので,そういう人には使いにくいです。もっとも,英語圏の人は自動詞他動詞の区別ができない人も多いので仕方ないのでしょうが。
※OALDの例文は,LDCEと同じコーパスに基づいているそうですが,私の印象ではLDCEより人工的なものが多いです。特に,(固有名詞が例文理解の障害にならないようにと言う教育的配慮かもしれませんが)人名や地名を代名詞に置きかえていたり,文構造を単純にしたりしているみたいなので,LDCEやLAADにくらべておもしろい例文というのは少ないです。
Longman Dictionary of Contemporary English (LDCE):SR-8100に搭載。1995年秋改訂の第3版。1978年に,OALDの独占だった学習英英市場に彗星のごとく現れた。今でこそあたりまえの統制語彙(基本的な語のみを用いて定義する)を初めて搭載し,英英辞典に対する敷居を大幅に低くした。文法情報を大幅に盛り込んでいるのが特徴。3版になってからは,記述が大幅に易しくなったが,一方で2版よりもレベルが落ちたのも事実で,専門家の間ではいまだに2版の評価も高い。OALDや日本の英和辞典と違い,品詞毎で別見出しになっている。そのため,単語を調べるとき,求める語の品詞が分かっていれば能率よく引ける。
Longman Advanced American Dictionary (LAAD):XD-R8100に搭載。2000年秋初版発行。基本的には,アメリカ英語に特化したLDCEだが,細部が以下のように異なる。LDCEよりも5年新しいのも大きなメリット。
→固有名詞の収録:数はそれほど多くないが,イギリス系の学習英英には珍しく,固有名詞も入っている。
→アメリカ英語独特の語句の増補:単にLDCEからイギリス英語の記述をカットするのではなく,アメリカ英語独特の語やイディオムを大幅に追加している。
→例文と頻度表示の刷新:例文はすべてアメリカ英語コーパスからのもとに差し替えられた。そのため,LDCEにない例文もかなりある。また,単語毎についている頻度表示もアメリカ英語コーパスをベースにしたものに変わっている。
→イキイキした例文:LDCEよりもさらに生の例文が増えた(みたい)。会社名,人名,地名等もそのままになっているものが多く,アメリカの文化を知る手段としても有益。

高校生と英英辞典(>fukuさん) 投稿者:Sekky@管理者  投稿日: 2月18日(月)08時16分54秒

>Cママさんとの会話の中にあるように、僕も高2なのでPW-9100のほうがいいのか
>XD-R6100とXD-R8100を比べた場合、受験対策と将来のことを総合的に考えると、英英を重視す>るべきかそれ以外の辞書を重視するべきか、どちらのほうがいいでしょうか

>ちなみに、現在の志望方向は、国公立の経済系学部です。

あくまでも私の考えですが,英語を専門にするつもりがなければ,高校生で無理に英英を使う必要はない気はします(もちろん,英語に興味があって英英辞典を使ってみたいという動機があれば別ですが)。というのは,高校生,それも大学受験をする人の場合,私大型の人でも3教科,センター型なら標準で5教科7科目の基礎学力が要求されます。国公立を受けるなら,それに加え,二次対策で2〜3科目の高度な知識が要求されるでしょう。これだけ多くの科目を学ぶのなら,英語だけに時間をかけておれない,というのも本音だと思います。英語系の大学,それも最難関校で,英語の配点が高いところを受けるなら,英英辞典に親しんでおくのも有効だと思いますが,それでも大多数の受験生は英英など使ったこともないのにそういう大学に合格できます。私は高校生の頃から英語にとても興味があったので,「英語の辞書へのアプローチ」にも書いたように学習英英を使って楽しく英語を学べましたが,そのぶん他の科目が手薄になり,大学受験では非常に苦労しました。

販売店さんは商売ですから,英英辞典を使えば英語力がつくとか,この機種はTOEICやTOEFLにぴったりだとか言ってすすめるかもしれませんが,(こういう言い方は失礼かもしれませんが)そういう店員さんのほとんどは,実際に自分が英英を学生時代に使っていたわけでもないのに,マニュアル通りにセールストークをしているだけに過ぎません。

自ら学習英英を使い,英文科の授業では学生にも使わせて辞書指導をしてきた私の経験からすると,学習英英とはいえ,やはり初めて使うときは敷居が高いです。英和のほうがはるかに気楽です。今の日本の英和辞典は,二言語辞書としては英語圏の出版社のものをはるかにしのぐ水準がありますので,大学受験なら英和だけでも十分対応できると思います。

#誤解を招かないように補足しますが,これはあくまでも大学受験で英英辞典を使って勉強する必要があるのか,という話です。受験突破という目先の目標でなく,英語そのものに興味があり,英英辞典も使ってみたいな,という人の足を引っ張っているのではありません。というより,そういう人は,ぜひちょっと背伸びをして英英の世界を体験していただきたいと思います。学校の授業で学ぶ英語とは別の世界が開けてくることは保証します(^^)

英英辞典の効用(>ればさん) 投稿者:Sekky@管理者  投稿日: 2月16日(土)15時04分27秒

>英語の学習のためにPW-M670を購入しようと思っていますが、
>英英辞書というのはどのように役立つか今ひとつ分かりません。
>英語を学習するときの使用例を教えていただけますか?

英英辞典の使い方はいろいろあると思いますが,一番の効用は,ある物なり事なりを英語で説明する力がつく,ということです。これは,長い目で見れば英語運用力(いわゆる英語を話す力)をつけることにもつながります。英会話といっても,いわゆる挨拶や旅行会話程度のレベルを過ぎて,内容のある会話を英語でできるということは,突きつめていけば自分の言いたい内容を分かりやすく相手に「説明」する力があることに他ならないと思います。英和辞典でdogをひいても「犬」と書いてあるだけですが,英英なら4本足のほ乳類の動物で,ペットとして飼われる…のように「説明」してありますので,英英になじんでいれば知らず知らずのうちに(というのは大げさですが)英語を英語で説明する力がつきます。とくに,英語に興味がある人で,英会話学校へ行き始めたような人(英語で意思を伝えるのが大変でも,英語を話すことが楽しいと思える人)にとっては,英英辞典をうまく使えば会話学校以外でも,「なるほど,英語ではこう言うのか」というように自習することができます。

あるいは,もっと単純に,例文を見るためだけに英英を使うということもできます。英和辞典の例文は基本的に日本人が作った文なので,無味乾燥なものが多いです。一方,英英の例文は,コーパスといって,実際に英語圏で使われている文章からとったものがほとんどなので,イキイキした文章が多いです。

その他,色々な使い方がありますが,以下のページでもいくつか紹介していますのでごらんください。

http://sekky.tripod.com/jishointro.html


ジーニアス和英とG3 投稿者:Sekky@管理者  投稿日: 2月 6日(水)19時23分04秒

ふと思ったのですが,ジーニアス和英は,ジーニアス英和の2版をもとに作っています。そのため,G3搭載機種でも,ジーニアス和英の中にある英和部分はG2です。ですから,「すばらしい」をジーニアス和英で引き,その中に出てくるfabulousにはちゃんと「女性語」のレーベルがあります。同様に,「あるく」を引いてでてくるwalkにも[D](動作動詞)の表示があります。
英和の改訂にあわせ,和英もG3をベースにしたものに近々改訂されることはまず間違いないので,旧版ジーニアスのマニアックな記述に未練がある人は,この春モデルのG3搭載機を購入するといいかと思います。
あと,前お話しした記憶がありますが,PW-6800には学習英和辞典がありませんが,どうしても必要なときは,引きたい単語を日本語に直してジーニアス和英で引いてやれば,ジーニアス英和の記述が出てきます(もちろん,もとの英和より簡略化されてはいますが)。

ジーニアス3版 投稿者:Sekky@管理者  投稿日: 2月 6日(水)18時51分58秒

↑2版とどこが違うのか,というお問い合わせがありましたので簡単にお話しします。
収録語数は2版にくらべて3000語増だそうです。とくにコンピュータ関係の語が大幅に増えています。その他,地球温暖化をはじめ,環境問題やbarrier-freeのような福祉関係の語も。2001年11月に出た辞書なのに,World Trade Centerをひくと,「…2001年9月のテロで主要なビルは崩壊」と書いてあります。このことからも,G3は昔のような活字を使わないで,すべてDTPで編集されているような気がします。だとすれば,G3のIC辞書版があまりにも早く出たのも納得がいきます。
レキシカルフレーズ(口語的な決まり文句)が多数例文として取り入れられました。いわゆるイディオムとも違い,英語国民の日常会話でごく当たり前のように使われる表現です。これはイギリス系の学習英英の影響を受けています。
頻度表示の星印が大きく変わりました。従来の5段階から4段階になっています。また,最近の指導要領や英英辞典の定義語彙などを参考に,各語のランクがかなり書き換えられています。ただ,ジーニアス大辞典の頻度表示とは違い,実際の出現頻度に必ずしも即しているわけではない(実際には頻度が少なくても,日本での英語教育的に重要な語はランクが高くなるようです)のは注意が必要です。
一方で,ダウングレードした面もあります。たとえば,旧版では動作動詞と状態動詞が[D][S]というラベルで区別されていました。これは英和辞典の中でも珍しい試みで,とくに上級レベルの人は重宝したと思いますが,3版では一切カットされました。また,[ほめて][けなして][男性語][女性語]といったスピーチレベルを表すラベルも省かれています。これは,LDCE2版が3版に変わったときと同じような現象であり,より簡略化することで「ユーザーフレンドリー」に徹していることがうかがえます。たしかに高校生レベルでここまで細かな表記はいらないかもしれませんが,上級学習者にとっては[ほめて][けなして]の区別は重要です。また,lovelyのように女性が好んで使う語には[女性語]という指示がないと困ることも出てきます。こんな違いはノンネイティブには分からないので,日本人の男性がlovelyを多用して変な誤解を受けたとか,よくききます。
このあたりの簡略化は,ジーニアス大辞典が出たことも大きいと思います。専門的な記述は大辞典に譲り(大辞典は[S][D]もあります),G3は旧版以上に学生層をターゲットにしてきたのかもしれません。そのため,上級学習者にとってはG3では物足りなく感じるかもしれません。これはジーニアスに限ったことではなく,カレッジライトハウスが出た後は本家のライトハウスが易しくなったとか,他社にもあります。
いずれにしても,G2からG3への変化はそんなに大きなものではありません。レキシカルフレーズが増えたのは大きな変化ですが,英国系の学習英英はOALDもLDCEもすでに採用されています。
#話がそれますが,グランドコンサイスも語数が増えたぶん,1語あたりの情報量は減っています。とくに翻訳者等で,リーダーズをリプレイスするものかという期待はしないほうがいいかもしれません。
たとえば,最近アメリカで話題になったSuper Bowlも,GCでは「スーパーボウル」としか書いてありません。これだけでは,何も知らない人はボーリング場の名前かと思うかもしれません(^^)(いちおう【フットボール】という分野表記が入っているのでそれはないでしょうが)。一方,リーダーズでは6行にわたって百科的な情報が解説されています。前もお話ししたように,GCは高級なリーダーズではなく,名前の通り,高級なコンサイス英和だと思っていいと思います。

広辞苑がベストなのか!? 投稿者:Sekky@管理者  投稿日: 2月 4日(月)10時59分55秒

他掲示板でも話題になっていますが,電子辞書の国語系コンテンツに延々と搭載されている広辞苑ですが,私個人としては(色々なところで言っていますが)何とかならないのか,という気がします。これは,よく言われているような,単に古いとか内容が偏向しているという次元の問題だけではないのです。
意外に知られていないのですが,広辞苑には,障害者や人種への差別用語が何の注記もなく記載されています(以下,説明上の都合で差別的な語をそのまま載せますが,ご容赦ください)。「つんぼ」「めくら」「かたわ」「おし」「びっこ」「くろんぼう」のような語を広辞苑(と,もしあれば他の国語辞典)でひいてみてください。何の注意書きもなく語義が書いてあります。「めくら」などは,複合語の数が他の国語辞典の比ではありません。残念ながら,これは広辞苑だけでなく,大辞林(三省堂)も同じですが,それでも,大辞林は複合語はほとんど載っていません。日本語大辞典(講談社)はこのへんがきちんと配慮されていて,「卑語」のようなレーベルがついています。大辞泉(小学館)は手元にないのでちょっとわかりませんが…。デイリーコンサイス国語辞典のような小型辞書でも,差別語には差別語ということを明記してあります。
いずれにしても,これだけで,広辞苑は現代日本語の辞書としては失格と言っても過言ではありません。「私が21世紀の日本語です」というキャッチコピーとともに広辞苑の5版(現行)が出たわけですが,福祉の時代といわれる21世紀に,上記のような差別用語が「21世紀の日本語」に入っているのなら,冗談ではないという感じです。
ちなみに,英和辞典では,もう20年近くも前から,どの辞書の訳語からも差別用語は姿を消し,deaf, blind等は「耳が聞こえない(耳が不自由な)」「目の見えない(目の不自由な)」と定義されています。和英辞典でも,このような語は「×」をつけて(差別語という意味)いるか,全く載せていないものばかりです。英英辞典にしても,学習英英はもちろん,ネイティブ向け英英でも差別語にはoffensiveというようなラベルを付けています。
差別語を載せるなというわけではありません。国語辞典の用途は受信(日本語を読むためのもの)もあるわけですから,古い文章などで差別語が使われている文章を読むとき,その意味を知るためには必要でしょう。しかし,載せるからにはその語が差別語であり,教養ある人なら決して口にすべきではないものだということを,ラベル1つでかまわないので明記すべきだと思います。ネイティブ向け英英辞典でさえ,f--kのような語にラベルのないものはまずないのですから。
広辞苑の編集自体に私が文句を付けたところで何も変わらないでしょうが,重要なことは,こういう差別用語を平気で載せている辞書を電子辞書のコンテンツとして搭載することは,もうそろそろ考え直したほうがいいのではないか,ということです。電子辞書の裾野が広がり,機械ものが苦手なお年寄りでもたくさんの人が電子辞書を使っています。これは,50音配列のモデルがけっこう売れていたり,セイコーさんのUDシリーズがシニアユーザに人気があるのをみても明らかです。とくに身体的特徴に関する語は,我々若年層以上に年輩の方は敏感なはずです。いくら辞書の内容自体はメーカーさんがノータッチだとはいっても,差別用語を平気で載せるコンテンツを搭載しているということで,メーカーさんにもとばっちりがくる可能性はあります。
広辞苑というブランドをひっさげていればたしかに売れるのでしょうが,長い目で見ればコンテンツの内容の善し悪し(差別語を載せるということ自体は善し悪し以前の問題なのですが)が大きく影響を及ぼすと思います。とくに,セイコーさんのUDシリーズは,業界で唯一「年齢や性別,ハンディキャップの有無などを超えて『誰にでも使いやすいこと』を目的とした,世界共通のデザインコンセプト」(カタログより)であるユニバーサルデザインを採用した電子辞書です。目の不自由な人にも見やすいようにキーボードの文字を大きくしたり,機能毎にキーを色分けしたりという工夫は,ハンディキャップを持った人にも使いやすいようになっているのは事実です。しかし,いくらハードウェアがユニバーサルデザインに準拠していても,かんじんの辞書の中身が差別用語に対して無自覚であっては,ユーザの心証は悪くなります。デイリーコンサイスの国語辞典ならまだいいのですが,広辞苑を搭載したUD-600は一考の必要があると思います。
ちなみに,以上に記した差別語は,例示する必要上最小限のものをあげたわけで,これがすべてではありません。他にも,精神的な障害や性差別なども含めればかなりの数にのぼります。広辞苑と他の(大小さまざまな)国語辞典を引きくらべてみていただければ明らかだと思います。

グランドコンサイス 投稿者:Sekky@管理者  投稿日: 2月 4日(月)09時56分57秒

リーダーズとグランドコンサイスのどちらがいいのでしょうか,というお問い合わせがありますので,簡単にお話しします。
収録語数はリーダーズが公称27万でGCは36万。9万語増というときこえはいいのですが,その中身は相当数が固有名詞や専門用語,複合語です。GCにはアメリカの大学(コミュニティーカレッジも!)の多くが入っているようで,これだけでも何千(何万?)はあるはずです。かなり小さな大学まで入っていてびっくり。そのほか,Tom Hanksのような現存の人名や映画の名前,都市名などもかなり入っていますし,複合語も圧倒的にリーダーズより多いです。
一方で,各語の記述量はリーダーズが多いです。とくに,(( ))でくくられた選択制限や,共起する前置詞などはリーダーズのほうが充実しています。そのため,翻訳者などで,微妙なニュアンスの違いを訳し分けたり,文章の中で使われている単語の意味を(主語やあとに続く前置詞を頼りに)弁別したりする際にはリーダーズのほうが役に立ちます。一方,用例はGCのほうが多いようです。とくに基本語の用例が充実しています。
このようなことを考えると,リーダーズとグランドコンサイスは同じ一般英和といっても,性質はかなり違います。GCの語数は多いのですが,とにかく数を集めた,という気がしなくもありません。学生数何百人の小さなコミカレまで載せれば見出し語の数は増えるでしょうが,その情報が必要な人はどれぐらいいるのか,という問題があります。しかも,このような大学名は,カタカナ読みで訳語を載せ,「○○州の私立大学」としか書いていないので,その大学の位置づけや正確な場所などの情報はわかりません。IPAが載っているので発音がわかるというメリットはありますが。
翻訳者をはじめとしたプロの人は,やはりリーダーズが第一の拠り所になるのではないでしょうか。そして,リーダーズで立項されていない語はGCにあたる,という感じなのかもしれません。グランドコンサイスは,その名の通り「大きなコンサイス英和」であり,ある単語の訳語を知ることに(リーダーズ以上に)特化しています。

DATE: 1月25日(金)10時38分57秒
TITLE: 電子版の百科事典

電子辞書版の百科事典はないのか,とよくきかれますのでご紹介します。

IC辞書では,今のところソニーの機種についているマイペディアのみです。といっても,マイペディアは冊子体では1巻本の百科なので,何十巻もある百科事典にくらべると内容的にはかなり劣ります。広辞苑の百科語の定義よりは丁寧かな,という程度だと思っていいかもしれません。

CD-ROM辞書では,小学館のスーパーニッポニカ(20数巻の百科事典をフル収録)や平凡社の世界百科事典が定番です。いずれも,冊子体の大規模百科事典をフル収録しています。スーパーニッポニカは入手しやすく,大きな書店のCD-ROMコーナーに行けば簡単に手に入ります(パソコンショップにはまずおいてありません)。ライト版は10000円ぐらいなのでおすすめです。画像や音声はほとんどカットされていますが,文字情報はすべて入っています。これらは独自フォーマットなので,PDA等で使うことはできません。

電子ブック版では,マイペディアとニッポニカがあります。マイペディアはディスクのみの単体で買えますが,ニッポニカはハード(電子ブックプレーヤー)の付属品なので,単体では売っていません。現行の本体(カラー液晶付き)は60000円ちょっとするので高いですが,旧機種はYahoo Auction等で時々安く出されています。私は,旧機種を20000円ちょっとで落札しました。本体というより,付属ディスクが目当てでしたが,26巻本の百科事典にしては安い買い物でした。付属ディスクをPsionのCFにコピーし,検索ソフトを使えば世界一小さな百科事典になります。画像や音声の部分をカットし,圧縮をかければ150MBぐらいです。


(C) Kenji Sekiyama. All Rights Reserved