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PW-9500(シャープ)の詳細レビュー
(2002年7月29日修正)

関山 健治(沖縄大学)
sekiyama.kenji@nifty.ne.jp

(C) Kenji SEKIYAMA, All Rights Reserved.

※このレビューは,シャープが2002年7月に発売したPW-9500に関して,実際の使用感をもとに構成したものです。製品の購入を考えている人はもちろん,各電子辞書メーカーさんの製品開発の際にも何らかのご参考になれば幸いです。

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★サイズ・デザイン

従来機よりかなり大きくなりました。横幅や厚みはあまり変わりませんが,奥行がかなりあります。キーボード部分のみで,セイコーさんのフルキーボードモデルの奥行ぐらいの長さがあります(下の写真 ※左側:PW-9500, 右側, SR-9600)。それに加え,ヒンジ部分が数センチさらに出っ張っています。スーツの内ポケットでも入れにくい大きさです。重さは,スペック上は235グラムと,現行機種よりもかなり重めですが,体感的にはそれほど変わりません。

筐体の色は,内側(蓋を開けた中側)はシルバーですが,外側は濃いメタリックブルーです。外観はSR-9600のブルーモデルのような感じです。個人的には,シャープの今までの機種の中ではもっとも洗練されたデザインになっていると思います。


★液晶解像度

前評判通りで,とにかく一覧性が高いです。9ドットフォント(最小サイズ)にしても十分判読でき,視力が悪い人でなければ常用に耐えます。9ドットフォントだと,英和のofなど長いエントリーでも画面スクロール3回ぐらいで全部読めます。早見機能は従来機種のようについていますが,解像度が高いのであまり使う機会はないかも。

9ドットフォントは解像度が高く見えますが,これは横方向(桁数)の話です。縦(行数)は,フォントが小さくなったぶん,見やすくするためか行間をあけていますので,思ったほどの差は出ません。PW-9500の9ドットフォントだと縦18行(ステータス行除く)ですが,セイコーやカシオの機種は,12ドットフォントでも17行(同)表示できます。

言いかえれば,9ドットフォントで一覧性が高くなるのは,英和,和英,家庭の医学のように各語義の記述が長いコンテンツの場合の話であり,広辞苑の多くの語やカタカナ語辞典のように各語義が短いコンテンツでは,他社製品とさほどの差はありません。PWシリーズはもともと早見機能がついているので,従来機のような解像度でも致命的に見にくかったわけではないのですから,9500の9ドットフォント+高解像度液晶は,英和や英英の基本語・多義語のエントリーや,家庭の医学のように長文系のコンテンツをあまり利用しない人にとってはオーバースペックなのかもしれません。

Sekkyの視点(^^) PW-9500で採用されている9ドットフォント(LCフォント)はシャープ独自の製品なので,他社が簡単に追従することは難しいでしょう。これだけの解像度が実現できれば,IC電子辞書としては申し分ありませんので,今後はただ解像度を高くするだけでなく,高解像度を生かした使いやすい機能もあわせて搭載してほしいと思っています。SR-8100のような二画面分割もいいでしょうし,そこまで大げさなものでなくても,ステータス行に直近のしおりを5語程度表示させる(カシオの旧XDシリーズのように)だけでも,頻繁に辞書を引くユーザは,思考の流れをトレースできるわけですから有益だと思います。あるいは,もし時計付き機種ならステータス部分に現在時刻を表示するのもいいのではないでしょうか。


★コンテンツ

PW-9100のジーニアスと家庭の医学を新版にして,ためしてガッテンを追加しています。家庭の医学は大改訂のようで,前の版とは大幅に変わっています。図なども新しく追加されたものが多いです。ためしてガッテンは,(言い方が悪いですが)「9100と同じコンテンツの版替えだけでは芸がないので,何でもいいから付け加えた」という感じです。収録項目はわずか33項目で,それぞれの項目が1回の放送の中身を要約したものでしょうから,そんなに情報量が多いわけでもありません。1巻から5巻まで全部入れて一括検索できるようにすればまだ使い道はあると思うのですが。

Sekkyの視点(^^) シャープの電子辞書に搭載されている辞書数のカウント方法は,前回(PW-9100)も苦言を呈したのですが,PW-9500ではさらにひどくなっています。「ためしてガッテン」はシャープさんのカタログ等でも明記されているように「雑学読本」であり「辞書」ではありません。それなのに,なぜこれを含めて「辞書まるごと11冊」などと表記するのでしょうか。広辞苑によれば,「辞書」は「ことばや漢字を集め,一定の順序に並べ,その読み方,意味,語源,用例などを解説した書」のことです。ですから,大小の違いはあっても,ジーニアスとことわざ辞典は両方とも「辞書」です。家庭の医学は病気に関する百科的な解説書であり,ことばの意味を解説しているわけではないので,「辞典」というよりは「事典」ですが,広義では「辞書」にカウントしてもいいでしょう。しかし,「ためしてガッテン」は「辞典」でも「事典」でもありません。単なる雑学書です。もし「雑学事典」と呼ばせたいのであれば,もっと網羅的に扱ったものにすべきであり,わずか33項目,それもそれぞれ関連性のない雑多なものを寄せ集めたものでは不適切でしょう。どうみてもこれは「本格的な16冊の辞書」(外箱に記載)にカウントできるとは思えません。

シャープの電子辞書は,過去の私のレビューやユーザさんのコメントからも明らかなように,操作性や付加機能では業界トップクラスです。優秀な開発チームの人が,自社の旧機種はもちろん,他社の競合製品もじっくり研究し,独自のスタンスで本当にユーザが満足する製品を開発されていることがうかがえます。筐体寸法やデザインばかりを追いかけることなく,今回の9500にしてもサイズを大きくしてまで使い勝手を優先するというスタンスは,これだけ他社との競合が激しい今ではなかなか真似できることではなく,大きく評価できます。

その一方で,言い方は悪いのですが,営業サイド(というのか知りませんが,カタログの宣伝文句を考えたりするスタッフ)では過度に他社との競合を意識し,その結果として明らかに「??」な宣伝文句を載せていることが多いのが気になります。メーカーさん自ら「雑学読本」と称しているコンテンツを「辞書」の冊数にカウントするというのはどう考えてもひどすぎます。ジーニアスはじめ,本当の「辞書」コンテンツを提供している出版社さんにとっても,これらと同じ尺度で「雑学読本」を冊数にカウントするのは失礼な行為でしょう。ついでですが,(これは他社製品にも言えますが)漢字辞書のように冊子体コンテンツのない辞書まで「辞書まるごと××冊」の中にカウントするのもおかしなことです。9500の場合は「まるごと」をつけずに,「辞書15冊相当+暮らしに役立つ雑学読本を収録」のようにすべきでしょう。


★キーボード

奥行が長くなったためか,キーの配置にもかなり余裕があります(下の写真)。従来機で好評の(?) 独立した数字キーも健在です。検索キーと戻るキーの配置や,カーソル移動キーと検索キーが隣接していることなど,使い勝手を追及したキーアサインになっていることは大きく評価できます。唯一の問題点は,早見キーがキーボード上部の中央寄りに移動したので押しにくくなったということです。液晶解像度が高くなったので,従来機ほど早見モードは使わないとはいえ,せめてカーソルキーの中央(PW-C5000の訳キーの位置)にでも持ってくれば使いやすいと思います。

Sekkyの視点(^^) 従来機では画面横にあったキーがすべてメインキーボードに置かれたので,キーの個数がかなり増えたような印象があります。特に特殊キー(スーパージャンプ,しおり,単語帳,ズーム,など)は場所を指が覚えるまでが一苦労です。これらのキーはよく使うので,文字だけの表示だと分かりにくいです。従来機のようにズームは虫眼鏡,単語帳は本,オートスクロールは矢印,のようにアイコンをキートップに描いて,文字はキーの上にでも書けば分かりやすくなると思います。フォントサイズの大小も,従来機は「大」キーは大きいキートップ,「小」キーは小さいキートップだったのでとても直感的だったのですが…。


★細かな改善点

PW-9500の大きな特徴は液晶解像度が上がったことですが,それ以外にも細かな点が9100にくらべて改善されています。たとえば…

・ワイルドカード検索で候補が多い場合(英和で「〜tion」を検索したときなど)も却下されず,一定数(500ぐらい)までは検索し,後をカットするようになった。

・広辞苑の成句(慣用句)もインクリメンタルサーチやワイルドカード検索でサーチできるようになった→逆引き広辞苑で「〜ぼうにあたる」を検索して「犬も歩けば棒に当たる」が検索できるようになった

・単語帳機能が独立したものではなく,各辞書のサブ機能のような位置づけになった→単語帳キーを押すと,現在使用中の辞書の単語帳のみ表示されます。※ただし,これは後述の弊害もあります。

などなど。偶然にも,最初の2点は拙サイトのPW-9100のレビューの中で指摘した問題点です。私の指摘で仕様が変わったわけでもないでしょうが,単にコンテンツや解像度を変更するだけでなく,細かなチューニングがされているのは評価できると思います。もっとも,前から指摘している1文字ワイルドカードの語頭対応(「?og」で検索できるとか)はまだです。こちらはインデックスの加減もあり難しいのかもしれません。


★全辞書検索

9500での新機能です。IDFシリーズの複数検索やDD-IC5000/7000の辞書×冊検索,DDWinのようなCD-ROM辞書検索ソフトでの串刺し検索と同じような機能で,入力した単語(日本語,英語)を辞書種を指定しないですべての辞書からいっぺんに検索する機能です。調べたい単語がどの辞書に載っているのかはっきりしないときに便利です。

もっとも,初めての機能ということもあり,細かな詰めの甘さが目立ちます。以下はその一例です。

・全辞書検索ではインクリメンタルサーチがきかない。

・完全一致で該当する語は,その語のみが検索される(「公定歩合」を引くとき,「こうてい」では引けない(「校庭」「高低」…などしか候補に出てこない) ※もし入力した単語に該当する語がない(完全一致で該当候補がない)場合はその語から始まる語が表示(前方一致で表示)される。ただし,その場合は全辞書一括表示ではなく,表示辞書を選択肢,その辞書のみを表示。たとえば,「こうていぶ」で引くと,「こうていぶ」という語はないが,「公定歩合」「肯定文」という語があるので,これらが載っている広辞苑と和英のどちらかを選ぶよう指示される。選んだ後は,その辞書で普通に検索したのと同じようになる。※もし前方一致でもその語がない場合(「こうてて」で検索した場合など)は却下される。

・全辞書検索では成句検索などの特殊検索はできない。たとえば,英和か英英かどちらに載っているか分からないイディオムを引きたいときは全辞書検索ではできないので,英和,英英それぞれのモードの中の成句検索機能で別々に検索する必要がある。

・ワイルドカード検索がきかない→そのかわり,「あいまいな語の検索」モードがあり,複数文字ワイルド(「〜」)はメニュー形式で検索できる。ただし,1文字ワイルド(「?」)は使えない。また,「〜」を語末にはおけない上にインクリメンタルサーチもないので「後方一致での全辞書検索」はできても「前方一致での全辞書検索」ができない。

・全辞書検索の候補語リスト画面は,辞書ごとに分類された五十音(ABC)順で並ぶ(辞書の種類に関係なく候補語すべての五十音(ABC)順になるわけではない) ※下の左側はPW-9500の全辞書検索で「とうこう」を検索した画面です。広辞苑と和英のエントリーが別個に表示されているのが分かります。右側の写真は,IDF-4500の複数辞典検索で同じ検索をしたものです。見にくいですが,五十音順の並びが優先されているため,辞書種に関係なく同じ見出し語が固まって表示されています。

Sekkyの視点(^^) 本来,全辞書検索というのは,「どの辞書に載っているか分からない」ような場面で使うものです。言いかえれば,通常の検索よりもよりファジーな検索という位置づけがあります。しかし,9500の全辞書検索の仕様は,通常検索よりもより厳密な入力が要求されます。インクリメンタルサーチは,入力中の語の前後のエントリーが眺められるわけですから,スペルが曖昧でも検索しやすい機能です。しかし,9500では,通常検索ではインクリメンタルサーチが働くのに,(よりファジーな検索が期待される)全辞書検索では働きません。同じことは,前方一致でなく,完全一致が優先されるとか,1文字ワイルドが使えないとか,前方一致,完全一致のいずれも該当語がないと却下される(通常検索で該当語なしの時のように,入力スペルに最も近い語の周囲がリストされればいいのに!)という仕様にも言えます。

全辞書検索での候補語が,辞書ごとで分類されて並ぶのもそうです。ユーザは「どの辞書で引いたらいいか(どの辞書に載っているか)分からない」からわざわざ全辞書検索モードで引くのです。分かっていれば最初からその辞書のモードで引くでしょう。それなのに,全辞書検索の結果リストが辞書ごとに分かれて並んでいれば,ユーザは結局「どの辞書に載っているか」を探す必要があります。辞書種に関係なく,候補リスト全体の五十音順なりアルファベット順なりで並んでいればそんな必要はありません(上の写真からも分かるように,IDF-4500がこの方式です)。最新のIDF-4500に限らず,キヤノンのIDFシリーズはワイルドカード検索を含め,すべて上記の問題点をすべてクリアしています。それも,2000年初めに出たIDF-3000ですでにこの仕様になっています。ソニーのDD-IC5000/7000は,ワイルドカード以外は上記の問題点をクリアしています。

正直なところ,上記の仕様上の問題点のため,9500の全辞書検索は使えないな,というのが本音です(^^;; 全辞書検索がどういうときに使われるかということを想定した上で,先行他社の全辞書検索をじっくり研究していればこんな仕様にはならないはずなのですが…。


★その他の細かな問題点

・単語帳機能の仕様:前述のように,単語帳機能は現在使用中の辞書のサブ機能という位置づけになりました。旧機種では,単語帳キーを押すと,今使っている辞書種に関係なくすべての辞書種の単語帳登録語数が辞書ごとに表示され,使いたい辞書種を選択する仕様でした。9500では,単語帳キーを押すと,使用中の辞書の単語帳に登録されている語が一覧されます。たとえば,広辞苑を使っていて単語帳を押すと,広辞苑の単語帳に登録された語のみが出ます。これ自体はむしろ旧機種よりも分かりやすくなったので結構なことですが,ジャンプ中に単語帳を使う場合,副作用があります。たとえば,英和でseeを引き,「見える」という日本語で広辞苑にジャンプします。広辞苑の「見える」が表示されている状態で機能+登録(単語登録の操作)をすると,あたりまえですが,広辞苑の「見える」が(広辞苑の単語帳に)登録されます。この時点では,画面には広辞苑の「見える」というエントリーがフル画面で表示されているわけですから,英和からジャンプした結果とはいえ,ユーザにとっては広辞苑モードにいるという認識があるでしょう。しかし,ここで「単語帳」キーを押すと,ジャンプ先(広辞苑)ではなく,ジャンプ元(英和)の単語帳が呼び出されてしまいます。そのため,もし英和の単語帳に何も入っていない場合,「登録されていません」と出てしまい,あれ,さっき登録したのに,となってしまいます。これは単語帳キーに限らず,しおりキーも同じです。広辞苑にジャンプしてしおりキーを押してもジャンプ元辞書(上記の場合は英和)のしおりが出ます。しかし,リストキーだけは別で,ジャンプ先で押した場合,ジャンプ先の辞書のリストが出ます。このような細かな点での仕様のユレは(前にもあげた,全辞書検索だけは戻るキーで入力ラインがクリアされないのもそうでしょう)とくにパワーユーザにとっては戸惑います。PW-9500の場合,全辞書検索にせよ,単語帳にせよ,新設されたり仕様変更がされた機能にこのような不統一がみられるのは残念です。

・全辞書検索など,検索語入力時に「戻る」キーで入力ラインがクリアされない機能がある:これは旧機種にも言えるのですが,検索語を入力時に「戻る」キーを押すと入力ラインの文字列が消える(クリアキーと同等の働き)機能と(各辞書毎の通常検索など)と消えない機能(スペルチェック,全辞書検索,成句検索など,特殊検索の場合)があります。インクリメンタルサーチが働く場合は,戻るキー=クリアキーになるようです。このように,機能毎に細かなところでキーの働きが異なるというのは改善が望まれます。

・切替キーは必要か?→見出し語,成句,複合語という画面を切り替えるキーですが,9500では矢印キーなど,語義表示画面で多用するキーとは正反対の場所にあるので戸惑います。別に切り替えキーがなくても,検索後は左右の矢印キーが遊んでいるのですから,これを使えばいいと思います。左右矢印で語義画面上部のタブを動かすわけですから直感的でしょう。

・画面右側のスクロール用矢印が邪魔:旧機種では矢印(画面外にも記述があるのでスクロールせよということを表すもの)は液晶画面の外側に独自のシンボルを設けていましたが,9500ではシンボルがなくなり,そのかわりに辞書の記述画面上にオーバーラップして表示するようになりました。そのため,矢印の下にある文字が矢印に隠れてしまい,見えません。9ドットフォントのように小さいフォントだと数文字隠れてしまうので,読む際にも支障が出ます。その都度,上下に数行スクロールし,隠れている部分を出してやらないといけません。画面スクロールでいっぺんにざっとスクロールしながら読む場合,スクロールのつど数行ずつ動かして隠れている部分を読むのですから,とてもストレスがたまります。辞書の記述と矢印をオーバーラップさせるのなら,矢印を点滅させてほしいです。そうすれば,隠れている部分もスクロールしないで見えます。

・(相変わらず)広辞苑の慣用句検索がなぜ分野別小辞典に入っているのか?→英和や英英の成句検索は,英和(英英)モードの入力画面でサブ機能として選択できます。しかし,広辞苑の慣用句検索は,英語系コンテンツの成句検索と同じような機能であるのに,分野別小辞典という,メニューから選択しないといけない奥深くにあります。たしかに,シャープさんの場合,分野別小辞典のカテゴリー1つ1つを辞書1冊にカウントしています(これの問題点に関してはPW-9100の時にも指摘したのでここで蒸し返しませんが)ので,広辞苑の慣用句検索を分野別辞典の中に含めれば収録辞書数が1冊稼げる(!)ことになりますが,それにより英和や英英の成句検索と仕様が不統一になり,ユーザが不便を被るのなら問題です。しかも,PW-8000/8100まではこんなことはなかったのに,9100で分野別小辞典を入れてからこうなったのです。新機種の仕様のほうが旧機種よりも使いにくくなっているわけです。大変厳しい言い方をすれば,理由がどうであれ,せっかく英和と仕様上統一されていた広辞苑の慣用句検索を,わざわざ分野別小辞典のサブカテゴリーという奥深くに押し込めてしまい,使いにくくしたなどというのは,ユーザ不在の仕様設計です。そして(こんなことはないと思いたいですが)万一,これが収録辞書数の数字を増やすための方策であるとするのなら,冗談ではありません。9500ではインクリメンタルサーチの中に慣用句の候補も出るようになり,少しはましになりましたが,それでも慣用句検索が奥深くにあるという事実は変わっていません。


★総括

9ドットフォントと併用すれば業界最大の解像度を実現したPW-9500は,スペック面ではもちろん,カタログ等に表れない使い勝手においても,現行機種の中では明らかにトップクラスのものとして評価できると思います。ただ,これはPW-9500をPW-9100(という汎用向け機種)の後継機としてとらえた場合の話です。XD-R8100やIDF-4500のように,「広辞苑のついた英語重視モデル」として考えると,類語辞典がないとか,例文検索がないといった点が致命的になってくると思います。言いかえれば,英英辞典を必要としているレベルの英語学習者のニーズがどのようなものであるかというのは,メーカーさんも考える必要があると思います。もちろん,カシオさんなどと違い,PW-6800やM670のような英語専用機のラインナップも充実しているシャープさんの場合は,棲み分けもあるでしょうから,英語専用機のラインとは一線を画するのも戦略上は必要なのでしょうが。

私の認識では,英英辞典を使ってみたい,興味がある,使わないといけない…のように感じる人は,ほとんどが英語自体に興味があるか,英語を使う仕事をしているか,だと思います。私の周囲の学生がそうですが,英語が大嫌いだけど大学では必修科目だから仕方なく履修しているという人は,英英辞典など使いたいとは思わないでしょう。英和辞典さえまともなものを持っているかどうか怪しいのですから。そして,英語が好き,興味がある,仕事で使う,というような人は,程度の差はあれ,発信面も重視して英語を学んでいるはずです。というより,発信面を重視するからこそ英英辞典が必要だ,と感じるのではないでしょうか。

では,発信面を重視する人にとって必要な機能は何でしょうか。あたりまえですが,英語を書いたり,話したりするときに活用すると便利な機能でしょう。類語辞典や例文検索はそういう性質の機能だと思います。留学へ行けば,学位留学はもちろん,短期間の語学留学でも,嫌というほど英語を書かされます。そんなときは,ただ英英と広辞苑,英和が一台にあるというだけのPW-9500よりは,英語専用機で重視される機能もとりこんだXD-R8100やIDF-4500(4500には例文検索はありませんが,類語辞典やイディオムにもジャンプできるなど,英語を使う人にとって使いやすい機種です)のほうがおすすめになるでしょう。

私としては,PW-9500は英語を重視する人というよりは,PW-9100の後継機種として,主に据え置き用途で汎用的に使える辞書がほしいという人におすすめしたいと思います。パソコンの横に置いてネットサーフィンのお供として使ったり,メールやレポートを書く際のレファレンスとして使うのには,こせこせとスクロールをしなくてもいい大画面のPW-9500は最適だと思います。


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