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PW-9100全体写真

PW-9100 (シャープ)の詳細レビュー
(2001年12月26日改訂)

関山 健治(沖縄大学)
sekiyama.kenji@nifty.ne.jp

(C) Kenji SEKIYAMA, All Rights Reserved.

※このレビューは,シャープが2001年11月に発売したPW-9100に関して,実際の使用感をもとに構成したものです。製品の購入を考えている人はもちろん,各電子辞書メーカーさんの製品開発の際にも何らかのご参考になれば幸いです。

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目次


本文の記述について

・本レビューでは,簡潔に記述するため,PW-9100を単に「9100」と表している場合があります。

・特に断りのない限り,本文中の「従来機」はPW-8000/8100を表します。

このレビューは,PW-9100のものですが,PW-9000も五十音キーボードであることや外観の多少の差を除けば基本的に9100と同じです。※ただし,キーアサインの関係上,9000では,リスト画面で数字キーによるショートカットが使えません(カーソルを移動させる必要があります)


外観・寸法PW-8000/9100の外観比較

右の写真は,9100(上)と8000(下)を並べたものです。カタログスペックでは,従来機にくらべ,幅が0.5ミリ,厚さ(写真では分かりませんが)が2ミリ短くなり,重さは2グラム軽くなっていますが,体感的にはほとんど変わりません。他社製品と異なり,横長のデザインになっているため,ポーチやハンドバッグ等に入れて持ち運ぶときは,9100のほうがかさばりません。

従来機は,フタの部分が多少湾曲していた(キーボードの突起をカバーするため)ので9100より厚かったのですが,今回の新機種ではフラットなフタになりました。そのかわり,フタを完全に閉じても密閉しないで,1ミリぐらい(キーボードの突起分だけ)隙間が空きます。

外観は,パステル調の明るい感じになりました。女性にも違和感のない色合いですが,従来機のようなエンブレム(?)がなくなり,安っぽくなった気はします。


画面まわり

液晶画面のサイズが縦,横とも数ミリ大きくなったので,従来機にくらべて文字が若干大きくなりました。解像度は同じなので,表示情報量は変わりません(12ドット画面なら,全角26文字×11行)。

下の写真は,ジーニアス搭載の他社製品と表示情報量を比較したものです。左上:PW-9100(詳細表示),右上:IDF-2000E(キヤノン),左下:SR-9500 (SII),右下:PW-9100(早見表示)です。※スペースの関係上,カシオのXDシリーズの画面写真は割愛してありますが,SR-9500とほぼ同じ解像度です。この写真からも,横方向の解像度はSIIやカシオの大画面液晶(この解像度が業界最大です)と全く同じであることが分かります。縦方向は,行数にして6行ほど9100のほうが少なくなっていますが,9100には早見機能があり,1語義1行の簡略表示ができますので(右下の写真),早見機能を使用した場合の情報量はSIIやカシオとほぼ同じ(内容によって多少変わり,派生語の多い和英辞典のエントリーはかなり表示量が減りますが)であることは大きなポイントです。

PW-9100の画面(詳細表示)IDF-2000Eの画面

SR-9500の画面PW-9100の画面(早見表示)

Sekkyの視点(^^) 液晶解像度は大きいにこしたことはありませんが,筐体サイズとの関係もあり,サイズをこのままにして画面解像度を大きくすることはほぼ不可能であるところまできていると思います。シャープの電子辞書は,縦方向の解像度を抑える(=奥行を短くできます)かわりに,早見機能を搭載して情報量の少なさを補っていますが,このような細かな配慮は他社製品も見習ってほしいものです。個人的には,9100のような横長の液晶のほうが(たとえ表示情報量が多少少なくても)目が疲れないような気がします。人間の目は左右方向への移動のほうが上下方向よりも疲れが少ない(らしいです)からかもしれません。
Sekkyの視点(^^) 従来機と異なり,広辞苑でも12ドット表示ができるようになりました。SIIやカシオの機種は,広辞苑だけは16ドットより小さくできないので,広辞苑を使う際は早見機能を使わなくても従来機なみの情報量が表示できます。カタログには書かれていませんが,これも使い勝手を大きく左右する要素の一つです。

収録辞書

広辞苑,ジーニアス英和・和英,学研のカタカナ語辞典,漢字辞書(漢和辞典ではないので,意味は調べられません),故事ことわざ辞典,四字熟語辞典,家庭の医学を搭載しています。このほか,広辞苑の人名や地名,作品名,季語,慣用句をメニュー形式で抽出できる分野別小辞典機能もあります。従来機にくらべ,家庭の医学と分野別小辞典機能が追加されています。家庭の医学は,病気等の名前を五十音順インデックスから検索することはもちろん,症状や病気の種類,部位別にメニュー形式で引くこともできます。

Sekkyの視点(^^) 家庭の医学の電子化は業界初です。ニュースリリースでこれを知ったときは,英英辞典や漢和辞典を搭載しないでなぜ家庭の医学!? と思ったのですが,もしかしたら,今までは電子辞書とはあまり縁のなかった主婦層に訴えかけるようなコンテンツを搭載することで,新たなユーザ層を開拓する目的があるのかもしれません。たしかに,最近は英英辞典の搭載がトレンドになっていますが,考えてみれば,ふつうの日本人で英英辞典がないと困る人はそんなにいるとは思えません。仮に学生に限定したとしても,英英辞典を使ってみようと思い,また使いこなせるだけの英語力がある学生はかなり限られるはずです。漢和辞典にしても,フルコンテンツの漢和がなくても,部品や部首などで漢字を検索する「字引」の機能さえあれば,あとは広辞苑にジャンプすればたいていの用は足ります。一方,家庭の医学は,「健康」という,人間なら誰でも無視できないことを扱ったコンテンツなので,積極的に使うかどうかは別としても,あって損はしないでしょう。私も購入前はそんなに引くことはないだろうと思っていましたが,実際にはけっこう使っています。冊子体の家庭の医学を調べるのは面倒(と思えるぐらい大したことない症状のとき)でも,電子辞書なら簡単に引けるからかもしれません。


キーボードまわり

キーボードは,ほぼ従来機と同じような感じですが,レイアウトを多少変更しPW-9100のキーボードたため,頻繁に使う検索キーや戻るキーが大きくなりました。また,辞書選択キーが従来機のようにフラットではなくなったので,押しやすくなりました。9100は,他社製品よりも筐体の横幅が長いため,キートップも多少大きくなっています。SIIがフルキーボードモデルを出したこともあり,フルキーボードどころか,いまだにゴムのキーを採用している9100は見劣りがしますが,タッチは意外と良好です。カシオのXDシリーズのようにふにゃふにゃしていないので,キー入力の取りこぼしもほとんどありません。

キーの配置は,検索キーと戻るキーが隣りあっていたり,行スクロールと画面スクロールキーが隣接しているので1本の指で押し分けられるなど,従来機の良さをそのまま受け継いでいます。このキーボード配列は他社製品にも大きな影響を与え,最近発売された他社製品の多くも同様のキーレイアウトを採用するようになりました。

キーボード上部にある専用の数字キーも,シャープの電子辞書ならではの使い勝手のよさを実現しています。この数字キーは電卓として使う場合はもちろんですが,候補語の一覧画面や早見機能などで必要な単語なり,語義なりをワンキーで選択するためのショートカットキーとしても機能します。SIIのフルキーボードモデルの最大の欠点が(レビューにも書いたように)ショートカットキーに対応していないということからしても,9100の操作性はSIIのそれをも上回り,現段階では業界トップの使いやすさと言っても過言ではありません。

Sekkyの視点(^^) あえて言う必要もないことですが,SIIがフルキーボードを搭載し,キーボードの打ちやすさを改善したこともあり,次期機種こそはシャープの機種もキーボードを大幅に改善する必要があるでしょう。いくらキートップが大きく,キー入力の取りこぼしがないとは言っても,しょせんゴムはゴムです。高温多湿の日本ですから,ゴムのキーボードを半年も使えば,手の脂や埃がキーにしみこみ,ぬるぬるしてきます。これはいい加減に勘弁してほしいものです。
Sekkyの視点(^^) 非常に些末なことで恐縮ですが,9100をはじめ,現行電子辞書のキータッチ音の音質,音量は,いい加減何とかならないものでしょうか? まさに「ピッピッ」という表記そのものの音で,とても耳障りです。お年寄りにとっては音が大きいことは結構かもしれませんが,図書館や学校の教室はもちろん,電車の中のような騒がしい環境でもキータッチ音をオンにすることは相当勇気がいります。私自身(音に関して周囲に気を配る必要があまりない)自分の研究室内でさえ,電子辞書のキータッチ音はオフにしています。携帯の着信音をはじめ,最近ではこの手の電子音に関する風当たりが強くなってきていますし,電子音一つで暴力沙汰にも巻き込まれるような物騒な時代ですから,早急な改善が望まれます。SIIの製品は,昔から他社製品よりもちょっとピッチが低めの音で,しかも音量も抑えてありますが,これぐらいなら,(場所さえわきまえれば)キー入力を確認する手段として有効に使えると思います。

電源まわり

従来機同様に,辞書選択キーを押すだけで電源が入り,その辞書の検索モードに切り替わるのは使いやすいです。従来機では,電源キーを押して電源を切った場合(オートパワーオフが働いたときではなく)は,次に電源を入れたときにレジューム(前使っていた画面を表示する)が働きませんでしたが,9100では改善されました(これは他社製品のスペックに追いついた形になりますが)。

電池は単4型2本で150時間持ちます(カタログスペックの数値です)。従来機が100時間でしたので大幅に省電力化されています(本体裏側に記載の消費電力は,8000では0.23Wですが, 9100は0.11Wです)。150時間という数値はフルコンテンツ辞書としてはトップであり,紙の辞書のように,電池という消耗品の存在を意識しないで使えるようになったという点は素晴らしいです。ザウルスやポケコンをはじめ,携帯情報機器の老舗であるシャープだからこそなせる技なのでしょう。私の経験では,電池寿命が100時間程度の機種でも,相当頻繁に(1日何十回と)使っても数ヶ月は持ちますから,150時間あればよほどのヘビーユーザでも半年や1年は使えると思います。SIIの電子辞書のようにACアダプターに対応するだけでなく,9100のように大幅に省電力化することも,ヘビーユーザ向け対策としては有効であると思います。

Sekkyの視点(^^) これだけ寿命が長いと,自然放電による急な電圧降下(電源を入れたときに瞬間的に電圧が下がり,電池切れ警告なしでリセットがかかったりするとか)も心配になってきます。私も,電池寿命が100時間以上の機種でたまに経験しますが,気温が低いところなどで電源を入れると,今まで警告表示もでていないのにいきなり初期化されたりします。電子辞書は,ザウルスのようなPDAとは違い,リセットをしてもせいぜい検索履歴や電卓のメモリーが消えるぐらいなので実害はゼロに等しいのですが,9100では後述のような大容量のしおり機能や単語帳機能があるので,電池切れで記憶された中身が消えてしまうと,ダメージも少なからずあります。もっとも,9100のマニュアルには,記憶情報保護の必要性(電池交換では記憶内容が消えることがあるので事前に紙に控えをとっておけとか,何秒以内に電池を交換しないと記憶内容が消えるから気をつけろとか)がほとんど書かれていないので,もしかしたら(私の推測です)単語帳やしおりの登録データは,スタティックなRAMやフラッシュメモリーなどに記憶され,電池切れの際も保持するようになっているのかもしれません。余談ですが,これはSR-8100に関しても同じみたいです(電池を抜いて1日ぐらい放っておいても記憶された例文やブックマークは保持されていますので)。SR-8100もPW-9100もそうですが,このようなカタログに出ない細かな面でのユーザへの心配りがみられる電子辞書は,その機種への(さらにはメーカーさんへの)ユーザの信頼感が生まれ,買い換え,買い増しの際にもリピーターを獲得できるのだと思います。

基本的な検索機能

通常の検索機能に関しては旧機種と変更ありません。今ではほぼ業界標準となったインクリメントサーチも備わっているので,快適に検索ができます。さすがに,SIIの新機種のようなプレビュー機能まではついていませんが,9100のような横長液晶でプレビューをつけても窮屈なだけでしょうから,このままで全く問題ありません。細かな点ですが,前にふれたように9100は数字キーが独立しているため,インクリメントサーチの途中でもショートカットキーとして表示されている数字のキーを押すと,ダイレクトにその語の語義が表示されます(9000は不可)。これは大きなポイントです。キヤノンの機種は,ショートカットキー(数字キー)とアルファベットキーが共用なので,インクリメントサーチ中に語義を表示するには「シフト+ショートカットキー」の2ストロークが必要ですし,SIIの機種はショートカットキー自体がありません。

例文や解説は,従来機同様に2画面(例文ウィンドウが開く)で表示されます。例文が画面全体を占拠するのでなく,このようにサブウィンドウにして並べて表示するのはSIIのプレビュー機能のような感じであり,非常に見やすいです。9100では,画面中央で半々にウィンドウが分割されるのでなく,2:8ぐらい(8が例文ウィンドウ)になっています。そのため,縦方向の解像度が小さいシャープ製品でも例文の表示領域はかなり広く,見やすいです。

例文や解説を表示する仕様は,従来機にくらべて若干変更されました。従来機では,「例・解説」キーを押すと,表示画面上のもっとも上にある例文マークが勝手に反転し,その語義の例文が表示されました。従って,画面の下の方にある例文を見たいときは,例文ウィンドウを開いたまま左右の矢印キーで表示用例を選ぶ必要があり,非常に使いにくかったのですが,9100ではSIIの旧機種(プレビューなしのモデル)やカシオの製品と同様の操作系になりました。つまり,「例・解説」キーを押すとまず反転カーソルが表示される(例文ウィンドウは開きません)ので,見たい語義を矢印キーで選択し,「検索/決定」キーを押すとその語義の例文が表示されます。一旦表示されれば,従来機のように左右矢印キーで表示語義を変更することもできる(これは他機種にない仕様で,便利です)し,他社製品のように語義画面に戻って選び直すこともできます。

スペルチェック機能は,メニューの中から選択するようになっているので面倒ですが,英和の検索画面でインクリメントサーチの候補語がゼロになったとき(スペルミスの可能性が高い),「該当語なし→スペルチェックへ」を選ぶと,自動的にスペルチェックモードに切り替わり,「検索」キーを押せばスペルチェックが始まります。これは従来機と同じ仕様ですが,とても便利です。欲を言えば,モードが切り替わるだけでなく,そのまま(「検索」キーを押さなくても)スペルチェックまでしてくれるともっと便利なのですが…。

9100を含め,シャープの機種独特の問題点として,広辞苑の慣用句エントリーが広辞苑の検索画面から引けないということがあります。これは従来機もそうですが,慣用句は慣用句検索画面で引く必要があり,ふつうのユーザは戸惑うと思います。しかも,9100では慣用句検索が分野別小辞典の中に入ってしまったため,従来機のように広辞苑画面からワンタッチ(「切替」キー)で呼び出せず,さらに分かりにくくなりました(いちおう,マニュアルの巻末に「よくあるご質問」として説明がありますが)。この仕様は9100に始まったことではなく,PW-7000(シャープの広辞苑1号機)から延々と引き継いでいます。「よくあるご質問」としてマニュアルに書いてあるということは,メーカーさんもこの仕様のわかりにくさを認識されていると解釈できますが,それならなぜ改善しないのだろうか,と感じます。

Sekkyの視点(^^) 9100の例文を表示する操作系は,従来機の使いにくいものから一転し,他社製品とくらべてもトップレベルのものになりました。使い勝手の良さでは定評のあるSIIのSR-9500でも,用例の表示に関しては課題が多いです(用例ウィンドウがスクロールできないので,ウィンドウからあふれた例文はフル画面でしか見られない(しかも,フル画面では語義毎に例文を分けないでその単語内の用例すべてがずらっと出てくるので必要な用例を探すのが一苦労!)とか)。
Sekkyの視点(^^) あら探しのようで恐縮ですが,「例/解説」キーを押した後,例文マークの反転カーソルを矢印キーで移動する際の挙動に首を傾げることがあります。たとえば,英和でasを引くと,第1語義と第2語義の用例マーク,解説マークが上下に並列しています。第2語義のほうの解説マークに反転カーソルがある場合,上の矢印キーを押すと,常識的にもすぐ上にある第1語義の解説マークに反転カーソルが移ることを期待しますが,実際は左斜め上の第1語義の例文マークに移動します。このように多くのマークが並列している場面はそうしょっちゅうあるものではないので,致命的な問題点ではありませんが,いちおうあげておきます。

ワイルドカード検索

従来機と同じく,「?」(1文字ワイルド)と「〜」(複数文字ワイルド)を備えています。「?」が語頭に使えない(「〜」はOK)ことや,広辞苑や英和はもちろん,収録辞書のほとんどすべて(家庭の医学や漢字辞書,分野別小辞典などを除く)に対応していること,「?」と「〜」の混在ができない,ワイルドカード検索ではインクリメントサーチがきかないことなど,良きにつけ,悪しきにつけ,従来機と同じ仕様です。インクリメントサーチや「?」と「〜」の混在に関しては致命的な問題ではありませんが,いろいろなところでしょっちゅう指摘しているように,語頭に1文字ワイルドが使えなければクロスワードパズルの解答用として使えないなど,ワイルドカード検索の活用の場がかなり狭まってしまいます。語頭のワイルドカードはほんの1,2年前までは対応している機種のほうが珍しかったのですが,最近では急速に普及し,標準機能となりつつあります。シャープさんがワイルドカード検索機能を単なる飾りとして考えているのでなければ,早急な対応が望まれます。

Sekkyの視点(^^) 「電子辞書へのアプローチ」のワイルドカード検索の項でも指摘しましたが,使い勝手のよさでは定評のあるシャープの機種も,なぜかワイルドカード検索に関しては旧態依然の仕様です。上で指摘した以外にも,広辞苑の慣用句エントリーだけは逆引きができない(「〜もうかる」で「風が吹けば桶屋が儲かる」が出てこない)とか,英和で「〜e」のように候補語が膨大なパターンを入れると「候補語が多すぎます」と表示されてリジェクトされる(SIIやキヤノンの機種ならとりあえず限界まで検索し,それ以降はスクロールする都度残りを検索してくれます)とか,細かな点をあげればきりがありません。

スーパージャンプ

いわゆる「日本語の単語にもジャンプできるジャンプ機能」です。キヤノンのIDF-3000が初めて搭載し,しばらくはキヤノン独自の機能として,とくに留学生(外国人)に定評がありましたが,最近になってSII (SR-950)や今回のシャープの新製品にも搭載されるようになり,今後は業界標準の機能として定着しそうな勢いです。同じ日本語ジャンプでも,SR-950はジャンプ先に若干制約がありますが,9100は(キヤノンの機種もそうですが)収録辞書間を縦横無尽に双方向ジャンプができます(ただし,家庭の医学だけは一方通行のジャンプしかできない(家庭の医学へのジャンプができない)などの例外はあります)。

9100に搭載のスーパージャンプは,コンセプト自体はキヤノンの二番煎じですが,ジャンプ先の画面を別ウィンドウで開き,ジャンプ前の画面と並べて表示できるという点が目新しいです。SIIのSR-8000/8100に備わっている参照機能のような感じですが,ジャンプ先画面(別ウィンドウで開いた画面)をフルスクリーンで表示したり,さらには,ジャンプ先からまた別のところへジャンプしたりすることができる点が大きな改善点です。

たとえば,広辞苑で「鷲」を引き,その語義にある「タカ」にジャンプするときは,スーパージャンプキーを押し,「タ」にカーソルを合わせて検索キー押します。次に,カーソルを「カ」にあわせて決定キーを押すと,下の写真左側のような画面(ジャンプ先選択)が出ます。この中から「鷹」を選ぶと,写真右側の画面(ジャンプ先プレビュー)になります。このように,ジャンプ元とジャンプ先の画面を並べて表示することができるのが,9100のジャンプ機能の大きな特徴です。ジャンプ先プレビューの画面(下の右側の写真)でもう一度検索キーを押すと,(他機種でジャンプしたときのように)ジャンプ先画面がフルスクリーンで表示されますし,スーパージャンプキーを押せば,ジャンプ先からさらにジャンプすることもできます。ここではカタカナの単語を例にしましたが,もちろん,漢字表記の語にもジャンプできます。

ジャンプ先辞書選択画面ジャンプ先プレビュー画面

Sekkyの視点(^^) 二画面表示を採用したスーパージャンプ機能は,他社製品を含めてもユニークな機能であり,電子辞書の新機軸の中でも久々の快挙であると言っても過言ではありません。キヤノンの製品に搭載されている日本語ジャンプとSIIのSR-8000で好評の参照機能という,全く異質な機能どうしを組み合わせて,ジャンプ機能の仕様として統合したという発想には頭が下がります。しかも,他社製品のおいしいところだけをとってくるのではなく,SIIの参照機能でネックとなっていた孫ジャンプができないという仕様を改善するなど,他社製品をじっくり研究し,それに独自のアイデアを盛り込むという点は,ザウルスのような競争の激しいPDA業界で日々研鑽(苦戦?)を重ねているシャープならではの開発力であると言えます。…あまりほめてばかりではレビューになりませんので,気になった点をいくつか…。

・ジャンプ先の選択肢は,基本的にハイライトさせたキーワードの完全一致であてはまる語が表示され,それが場合は前方一致(ハイライトさせたキーワードで始まる語)が表示されます。そのため,「反射鏡」という語にジャンプしたいとき,「反射」だけをハイライトさせると(「反射」という完全一致のワードが存在するので)「反射鏡」は候補に出ません。完全一致でなく,前方一致にしたほうが(「反射」をハイライトさせると,「反射」「反射鏡」「反射神経」…のようにすべて出る)のほうが使いやすいと思います(好みの問題も大きいですが)。また,SIIのSR-950で実現されているような,ジャンプ先をハイライトしなくても,最初の文字にカーソルをおくだけで最長一致でジャンプ先候補が表示される仕様もとても使いやすいですので,検討する価値は大きいと思います。


・ジャンプ先プレビューの画面では,たとえ画面上に例文マークがあっても,例文キーを押して例文を出すことができず,一旦フル画面表示にする必要があります。使い勝手のいい操作系という点では,プレビュー画面表示中に例文キーが押されたら,「フル画面にチェンジし,例文マークを反転させる」という挙動を自動的に行うような仕様にするといいのではないでしょうか。

Sekkyの視点(^^) 地味な点ですが,孫ジャンプ,曾孫ジャンプ…(ジャンプ先からさらにジャンプし,またそこからジャンプ…)の階層制限がなくなりました。従来機では10階層以上ジャンプしようとすると「ジャンプはこれ以上できません」と出てストップがかかりましたが,9100では無制限にジャンプできます。そのかわり,戻る場合,10階層をこえて戻ろうとすると,中間を飛ばして最初の入力語にワープします。これも他機種にはない点で,メーカーさんがジャンプ機能を相当研究していることがうかがえます。

単語帳

キヤノンやソニーのIC辞書で搭載されていた機能ですが,9100にも新たに備わりました。広辞苑,英和,和英,カタカナ語,漢字,故事ことわざ+四字熟語の各辞典で100語ずつ記憶できます。しおり機能と違い,自動的に記憶されるのではなく,記憶したい単語が表示されている画面で「機能」+「検索」キーを押すと登録されます。フル画面だけでなく,スーパージャンプ機能によるジャンプ先プレビューの画面でも登録できます。削除する際は,削除したい語を表示させて同じ操作をすれば削除できます。

登録した語を呼び出す際は,単語帳キー(液晶画面の右端)を押し,辞書を選択すると登録語一覧が表示されますので,そこから選ぶとその単語の語義画面(例文や解説を登録した場合は,登録した例文(解説)ウィンドウも開きます)が出ます。そこから別の語にジャンプすることもできます。受験生の学習用はもちろんですが,ちょっとした覚えの際などに重宝します。

Sekkyの視点(^^) 驚いたのは,見出し語だけでなく,その中の用例画面や解説画面単位でも登録できることです。そのため,SIIのSR-8000/8100に備わっている例文コレクション機能のような使い方もできます。単語帳機能で表示させた画面でアルファベットキーを押しても入力画面に復帰してくれないことや,単語帳の並び順がアルファベット順に固定される(登録した順ではない)のはちょっと残念です。
Sekkyの視点(^^) 単語帳機能は,電子辞書の利用形態を「単語を引くために使う」という消極的なものから,単語の学習ツールとしての積極的なものへと変化をさせる可能性を秘めています。今後は,ただ単語のストレージスペースとしてではなく,記憶した単語を使ってテストする機能(シャープのPW-6500や海外メーカーの電子辞書に備わっているような)も備えると魅力的な製品になると思います。本体に時計機能を備え,単語を登録した日時,テストした日時を記憶させ,一定期間毎に自動的にテストし,正解であればインターバル(次に同じ単語をテストするまでの期間)を長くし,誤答であれば短くするなど,心理学の知見をふまえた学習ツールに発展していけば面白いのではないでしょうか。

しおり

従来機にくらべてキャパシティーが大幅に増え,各モード(広辞苑,英和,和英,英和成句検索,漢字辞書,カタカナ語辞典,分野別小辞典,故事ことわざ+四字熟語,手紙文作成)それぞれ独立して過去にひいた各100語ずつを記憶(従来機は各30語ずつ)されるようになりました。これだけの容量があれば十分でしょう。細かな点ですが,シャープの機種は伝統的にジャンプ機能でジャンプして調べた単語(ジャンプ先の語)もしおりに記録されます。ジャンプを多用する人は,ジャンプ先もしおりに残るというのはとても便利なのですが,ネックになっていたのは,しおりの記憶容量でした。仕様上,しおりに記録される語が他機種より多いのに,従来機は他機種なみのキャパシティーしかなかったので使いにくかったのですが,今回の容量アップで解消されました。前述したスーパージャンプ機能によるジャンプ機能の進歩にあわせて,しおり機能も改良されたことで,使い勝手は大幅に向上しています。

細かな点ですが,シャープの機種はしおりに残っている語を単語単位で消去(しおり全体ではなく)する機能があります。なぜこんなものがついているのかよく分かりませんが,友人の電子辞書を借りて"変な"単語ばかりひいたときの証拠隠滅用として重宝? もっとも,マニュアルを見ない限り単語単位でしおりが削除できるということは分からないでしょうが(^^)

Sekkyの視点(^^) シャープの機種は数字キーがショートカットになっているので,しおり画面を表示中もアルファベットキーは(ショートカット用としてでなく)新たな検索語入力用として待機しています。そのため,しおり一覧やしおり機能で呼び出した過去の検索語の語義を表示中でも,単語を入れれば即座に前に使っていた辞書の入力画面に戻ります。…とことばで説明すると「ふーん」で済まされそうですが,こんな細かな点の使い勝手のよさは他社製品にはあまりない特徴です。SIIの新機種レビューにも書いたのですが,SIIのモデルは,履歴(9100で言う「しおり」)一覧画面や履歴機能で表示させた語義画面ではアルファベットキーは死んでいますので,新しく単語を入れるときはモードキーをいちいち押す必要があります。
Sekkyの視点(^^) 各辞書モードで過去に引いた100語も記憶されるので,ちょっと前に引いた単語だとスクロールして探すのが大変で,もう一度手入力したほうが速いほどです(笑) これは贅沢な悩みであり,しおりのキャパシティーが多すぎるという意味ではありませんが,SIIのSR-8000/8100のように,しおりの並び順をアルファベット順に変更できてもよかったと思います。もっとも,前述の単語帳機能は,しおりとは逆にアルファベット順でしか並ばないので,双方の使い分け(単語帳はしょっちゅう引く単語を意図的に記憶させておくもので,しおり機能はごく最近引いた単語を引き直すことに主眼をおいている?)の問題なのかもしれません。

その他の機能

PW-X700/710で搭載された分野別小辞典(広辞苑から,人名,作品名,地名,季語などをメニュー形式で抽出した一種のインデックス)や消費税計算や通貨,単位換算のできる電卓,従来機に備わっていた手紙文作成(対話形式で手紙文を作ってくれる)も健在です。私はいずれもそれほど使いませんが…。

Sekkyの視点(^^) 分野別辞典のコンセプトはいいと思うのですが,用途が,主に固有名詞を探す際に限られるのが難点です。究極的には,キーワード入力により,その語が広辞苑の語義に含まれているものをすべて引っ張ってくるような,いわば語義検索ができるといい(「みどり」「やさい」をキーにして検索すると緑黄色野菜が検索できるとか)のですが,インデックス容量が半端でなくなるので難しいのかも。

総括

初めて9100のニュースリリースを見たときは,単なる従来機の焼き直しだと思いました。しかし,実際に製品を手にしてみると,旧機種はもちろん,他社製品を使っていて使いにくいと思った点や,こんな機能があったらいいのに,と感じた点がかなり反映されていることに驚きました。些末な問題点はこのレビューでもいくつか指摘しましたが,それでも,使い勝手に影響を及ぼすような致命的な欠点は,いくら探そうとしても9100には見つかりません。SIIの電子辞書がフルキーボードを搭載したり,プレビューのような新機軸を盛り込むことで,かなり革新的な内容のモデルチェンジをしたのに対し,9100は,目新しい機能こそそれほどありませんが,他社製品を含めた従来機種を使っていて感じる細かな点をリファインするという,「おとなしい」モデルチェンジとなっています。単語帳や日本語へのジャンプといった他社製品で好評の機能は積極的に取り込み,それを従来から定評のあるシャープ製品独自の操作性で武装した9100は,SIIの製品ほどの表面的な華やかさはありませんが,ファーストマシンとして選ぶ人はもちろん,買い換えや買い増しの人をも満足させるスペックを持っています。

もっとも,ソフトウェア的な使い勝手をよくするだけでは不十分です。9100の,従来機と同じようなゴムのキーボードは,フルキーボードモデルが出た今となっては完全に時代遅れといっても言い過ぎではありません。必ずしもフルキーボードである必要はないかもしれません。しかし,最低でもプラスチックでクリック感のあるキーボードは必要だと思います。メビウスやテリオスといったノートパソコンで培ったシャープだからこそ,キーボードまわりを大幅に改良する価値はあるでしょうし,その時期にきているのではないでしょうか。

何回も述べているように,9100はキーボードに目をつぶれば一押しの電子辞書と言えます。ジーニアス搭載の英英なしモデルを購入しようと思っている人は,店頭で9100とSR-9500の両方をさわってみてください。ゴムのキーボードが押しにくいと感じれば,文句なく9500のほうがおすすめですが,どちらでもいいと言うのなら,9100がいいと思います。


(C) Kenji Sekiyama, 2001. All Rights Reserved.