10. マルチメディア・プレゼンテーション

マルチメディアというと大げさですが，テープレコーダーやOHP，パソコンといったAV機器を使用した発表の意味で（私は）使っています。とかく，このようなAVメディアは（とくに年輩の方々から）批判の対象になりやすいのですが，はっきり言えることは，AV機器を適切に活用すれば，ハンドアウトだけの発表にくらべて格段に分かりやすい発表になるということです。ハンドアウトでいくら詳しく説明してもピンとこないことが，実際の談話を数十秒再生するだけで簡単に伝わるということはよくあります。もっとも，準備に相当時間がかかることは覚悟しないといけませんが…。

ここでは，テープレコーダー，OHP，パソコンを用いた発表のそれぞれに関して，メリットやデメリット，注意すべき点などをお話しします。

10.1. テープレコーダーを使った発表

社会言語学や談話分析といった分野に携わっている人は，発表の際に実際の談話を提示する必要も出てくるでしょう。その際，文字で書き起こし(transcribe)したものをハンドアウトに掲載することに加え，時間が許せば，談話を録音したテープを流すと効果的です。ただ字面を追うだけでは気づかないようなことも音声で聞けば明確になります。とくに，あいづちやターンテイキング，沈黙といった，文字によるtranscriptionではつかみにくい事象を扱った発表の場合，テープを聞かせることによって説得力も出てきます。以下に，テープレコーダーを使う際に注意すべき点をいくつかお話しします。

• 発表で使う部分のみを，事前に別のテープにダビングしておく→発表中に再生する部分は，録音した会話全体のごく一部分でしょうから，事前にその部分だけを別のテープにダビングしておきましょう。その際は，通常の長さのテープよりは，カラオケ用などとして売られている，片面5分ぐらいのテープのほうが使いやすいですよ。面倒くさいかもしれませんが，これだけで，いざテープを再生するときになって，必要な部分がなかなか出てこなかったりといった典型的なミスが回避できます。しかし，これを実践している人は非常に少ないのが現状です。

• テープの両面に同じ内容を録音しておく→そうしておくと，まちがえて反対の面を再生してもちゃんと音が出ます。反対方向へテープを巻き戻したり，オートリバースのテープレコーダーを使っているときなどでも，あわてなくてすみますね。

• 必ず頭出しをしておく→頭出しといっても，今お話ししたように，事前に別のテープに編集をしておけば，そのテープの頭から再生すればいいので，別に難しいことはありません。ただ，ランスルーなどした際にテープを再生し，巻き戻すのを忘れていることがよくあるので，発表前に必ずテープが巻き戻してあるか，確認しましょう。発表中に巻き戻すのは時間の無駄ですし，あわてていると，巻き戻していないということさえ気づかず，何で音が出ないの!?　とパニックになります。

• 再生する場面ごとに別のテープを使う→1つの発表の中で，何回かテープを流すことはよくあると思います。たとえば，ある会話例を聞かせ，口頭での解説をはさんで別の例を聞かせるという場合です。その際は，それぞれの箇所を別のテープに録音しておくと便利です。そうすると，QAなどでもう一度テープを再生する必要が生じた際，頭出しが楽ですし，1回目が終わった際にテープを止め忘れたため，つぎに流す箇所まで再生されてしまうというミスも防げます。もっとも，準備は面倒ですし，テープを何本か持参しないといけないので荷物になるのですが，無用なトラブルを防ぐという点で，とくに不慣れな方にはおすすめします。なお，複数のテープを用意する場合，どこがどのテープに入っているか分からなくなるので，最初に流す部分は青いカセットテープ，次は赤いテープ，などとケースやラベルの色などで分けておくと便利です。1本のテープですませる場合は，区切りのところにテープがきたら，テープを止めて，その都度テープカウンターをゼロにすると，頭出しが楽です。テープレコーダーの中には，音の切れ目を関知して自動的に頭出しをする装置の備わっているものもありますが，これは，談話データのように沈黙などがある場合は誤作動するので，役にたちません。

• MDを使おう！→以上に書いたことは，本番でのテープに関するミスを防ぐうえでは非常に大切なことばかりですが，何本もテープを用意したり，両面にダビングしたりという作業は非常に面倒くさいことも事実です。しかし，MDを使えば，このような編集作業はボタンひとつで実に簡単にできます。複数の場面をひとつのMDに入れておいても，ボタンひとつで簡単かつ瞬時に頭出ししたり，戻したりできますので，発表の際に使うメディアとしては非常に便利です。最近は，MDも普及し，携帯型のMDウォークマンなども安価で手に入るようになってきたので，会話分析関連に携わっている人は，ぜひ奮発して購入してみてはいかがですか？　携帯用で，録音も再生もできる機種がおすすめです。これなら，発表時だけでなく，談話を録音する際にも役にたちますし，カセットテープにくらべて音質が非常によく，経年劣化もないので便利です。

• 音質にも気を配ろう→意外と知られていないことですが，とくに小型のテープレコーダーやスピーカーのついたウォークマンを使う人は，本体の音質切り替えなどを適切に調節しておくと，非常にクリアに聞こえます。具体的には，音質(Tone)のスイッチ（やダイヤル）は「高」のほうへ，DOLBY NRのスイッチは，録音したときと同じ位置（小型のテープレコーダーは，録音時にはDOLBYが働かないので，普通はOFFで大丈夫）に，ウォークマンなどについている低音域強調（Bass Boostなど）のスイッチはOFFに，テープ切り替えはノーマルのほうにすると，音がこもったりしないで，きれいに聞こえます。マニアックなことですが…。

10.2. OHPを使った発表

10.2.1. シートの作り方

• 必ず耐熱処理されたシートを使う→プレゼンテーションソフト（後述）を用いてスライドを作ったりする際は，レーザプリンターやコピー機を使ってシートに印刷することがあると思いますが，その際は，必ず耐熱処理されたシートを使うようにしましょう。「PPC対応，レーザープリンター対応」などと書かれているシートなら大丈夫です。耐熱処理されていないものは，プリンターやコピー機の中で定着ドラムにくっついて，詰まってしまい，あとが大変です。私も，友人の発表のスライドをコピーする際，耐熱処理されていないシートだったために，せっかくコピーした文字がかすれて消えてしまったり，コピー機のドラムに巻きついてしまったりで大変だったことがあります。また，コピー機等を使う際は，機械からシートが出てきたら，すぐ（シートが熱いうち）に平らな場所に寝かせておきましょう。シートが折れたり，反ったりした場合，冷めてしまうと元に戻らず，そのシートは使いものにならなくなります。

• サイズはA4横長が基本→OHPは，A4のシートを横長に置くと，ちょうどぴったりになるようにできています。

• 文字のサイズ→OHPの場合，最低でも24ポイント，できれば28〜32ポイントはないと見にくいです。私の場合，各スライドのタイトルは36ポイント，本文の箇条書きの各先頭行は32ポイント，箇条書きの2行目以降は24〜28ポイントに基本的に統一しています。このへんは，プレゼンテーションソフトを使えば自動的に見やすい大きさに設定してくれます。

• 書体→基本的にゴシック体を用い，明朝体は特別な理由がない限り使わないように（線が細いので見にくい）しましょう。とくに，Microsoft WordについてくるMS明朝（MS P明朝）は，線が細すぎるのでOHPシートには不向き。Wordについてくるゴシック体（MSゴシック，MS Pゴシック）はゴシック体にしては線が細いので，明朝体を使うようなところにかわりに使っても，くどくありません。

• 1枚のシートあたりの文字数→最大でも横12〜15文字，縦6〜8行以内。少なければ少ないほどいいです。また，箇条書きにするなら，箇条書きの数は1枚あたり4つ以内が目安。これ以上文字が多くなると，聴衆は読めません。

• カラー印刷をする際の注意→グラフなどをカラーでシートに印刷する場合は，赤，青，黄，緑などの原色にしましょう。たとえば，Excelでグラフをかくと，デフォルト設定では，パステルタッチの中間色になります。このまま印刷すると，シートの見た目はきれいでも，プロジェクターで映し出すと色が消えてしまいます。だから，手動で色を変えたほうがいいです。（プロジェクターを使わないで）目で見て，「ちょっとどぎついんじゃない？」と思うぐらいの濃さでちょうどいいぐらいです。あるいは，すべて白で印刷して，あとで油性マジックを使って色を塗るという手もあります。

• ハンドアウトの内容をそのまま書かない→OHPを使う意味がありません。ひどい人だと，シートの文字をそのまま発表で読み上げる人もいます。幼稚園じゃあるまいし。OHP併用なら，ハンドアウトをかなり詳しくして，OHP上でそれをごく簡単にかいつまんで提示するぐらいがいいでしょう。極力，文章は書かず，箇条書きにするようにします。

• 重ね合わせの手法→たとえば，仮説と検証結果を示すときは，シートの左半分に仮説（のみ）を書いたシート（右半分は空白）と，逆に左半分空白で，右半分に結果を書いたシートの2種類を用意しておきます。そして，仮説のところでは左半分のみのシートを提示し，結果に話が進んだところでそのシートのうえに結果を右半分に書いたシートを重ねます。コロンブスの卵的なことですが，意外と知られていません。大半の人は，1枚のシートに仮説も結果も書いて，紙や手で右半分を隠しています。これは見苦しいし，第一面倒くさいです。

• 表は極力避ける→たとえ元の論文では表にしてあっても，OHPで表を提示すると聴衆は消化不良をおこします。グラフにしましょうね。

• 文字主体のシートと図主体のシートを併用する→すべて文字主体のシートではインパクトに欠けます。理想は文字ばかりのシートと図式化したシートが半々ぐらいがいいけど，せめて文字のみ：図＝7:3ぐらい？　まあ，好みの問題かな。

10.2.2. OHP使用上のノウハウ

• 操作法を事前に知っておく→たかがOHPと思うかもしれませんが，OHPはメーカーによって操作性がかなり違います。たとえば，電源スイッチひとつをとっても，機種によって位置や形態（押しボタンなのか，スイッチなのか）が違いますし，最近の機種は，電源スイッチに加え，ズームレバーや照明の明暗切り替えなど，いろいろなスイッチがあるので，慣れていないと戸惑います。少しでも分からない箇所があったら，発表前に司会者やお手伝いのアルバイト学生などに確認しておきましょう。

• シートを載せる向き→聴衆のほうに向かって（スクリーンと反対方向を向いて）前後左右を正しく載せると，実際のスクリーンにも正しい向きで映ります。

• レーザーポインターは有効？→近年では指示棒のかわりにレーザーポインターが使われることも多いです。ただ，意外な盲点になるのが，ポインターの明るさです。最近のOHPは，部屋を暗くしなくても十分見やすい高照度タイプのが増えていますが，そのおかげで，OHPで提示したスクリーン上をポインターで示すと，後ろのほうの聴衆にはOHPの照明にかき消され，ほとんどビームが見えないのです。数万円する高出力タイプのポインターなら大丈夫ですが，1万円前後で手に入る機種を使っている人は，ちょっと大きな部屋なら指示棒を使ったほうが見やすいです。

• シートは発表言語と同じ言語で書く→あなたが提示するシートは，聴衆はあなたの発表を聞きながら見ます。だから，発表言語と同じ言語で書かないと聴衆の負担は大きくなります。たとえ元の論文が英語であっても，発表言語が日本語ならスライドも日本語で書いたほうがいいです。

• シートにタックラベルを貼る→シートを印刷したら，シートの下サイドに，市販のタックラベル（見出し用）を1枚ずつ位置をずらして全シートに貼ります。そして，タックに提示順の番号と簡単な見出しを書いておくと便利です。発表中にシートを床に落として散らばったりといった緊急事態（私も一度経験あり）になると，順序が崩れてしまいますが，ラベルがついていればあわてなくてすみます（OHPのシートは透明なので，意外と見にくいです）。また，上下，表裏をまちがえて投影するミスも防げます。

• 準備する際，シートと同内容のものをふつうの白紙に印刷し，その内容のシートと次のシートの間にはさんでおく→1枚目のシート→1枚目のシートと同内容の紙→2枚目のシート→2枚目のシートと同内容の紙…という順序にします。これにより，静電気を防ぐ，つまり，シートとシートがくっついてしまい，本番で2枚重なって提示したりというミスが防げます。また，あ，このシートだけ家においてきちゃった！！という忘れ物も防げます。そして，普通の紙に印刷したものを持っていると，緊急事態（なくなったとか）のときでも，白紙のOHPシートを調達できればそれにコピーできます。

• シートに盛り込んだ内容は，必ず口頭でもふれる→そうしないと聴衆は不満に感じます。新聞や電車の車内吊りの雑誌広告に大きく載っていた内容が，実際にその雑誌を買ってみたらほとんど書いてなかった，となったら，どう感じますか？

• シートの内容をポイント（指し示す）するときは，スクリーン上の映像をポイントする→これは発表技術のイロハの「い」だと思うんだけど，多くの学会発表では守られていません。つまり，プロジェクターに載せたシートそのものをポイントする人が多いのです。これをやると，スクリーンには指し示した指や棒が拡大されて映し出されるので，お化けのような指が写り，非常に見苦しいです。指示棒なり，レーザポインターなりで，スクリーンをポイントすればこんなことはありません。

• シートの提示時間→私の経験からいくと，（発表全体にわたってOHPを使う場合）だいたい1枚のシートあたりの提示時間が，2分30秒〜3分ぐらいがちょうどいいみたいです。QAをのぞいて20分の発表なら7，8枚，25分なら8枚〜10枚というのが目安。ただ，実際にはシートを変えるタイムロス（1回につき約10秒）があるので，実際の提示時間はこれより短くなります。

10.3. パソコンを使った発表

近年注目を浴びているのが，OHPのかわりにパソコンを使ってプレゼンテーションをすることです。PowerPointなどのプレゼンテーションソフトを使うのが一般的ですが，文科系の学会で使っている人はほとんど見かけません。OHPでさえ，使う人はごく一部なのですから…。しかし，理科系の学会や，一般企業（企画部など）でのプレゼンテーションでは，パソコン併用があたりまえです。

メリット

• 臨機応変な対応ができる→OHPシートの場合，発表直前にミスに気づいても修正が大変ですが，パソコンなら，ノートパソコンを持っていけば発表直前まで加除修正ができます。

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• FONT COLOR = #0000FF>経済的→もともとパソコンを持っている人なら，OHPシートを作るのにくらべてコストがかかりません。部分的に修正して別の学会で発表したりすることも簡単です。

• インパクトがある→箇条書きを1つずつ順番に表示させたり，映画のように画面を徐々に暗くして次のスライドを映したりといった特殊効果が，マウスクリック1つでできますので，見ている人の脳裏に与える印象は絶大です。「研究発表は内容が命，見栄えなど関係ない」という人も多いですが，まったく同じレベルの内容の発表を比較すれば，インパクトの強い発表のほうが評価は高くなるのは，まぎれもない事実です。

デメリット

• 設備が整っていない→国際学会では，オンラインプレゼンテーションは決して珍しいことではないので，自分のパソコンをプロジェクターに接続して，画面を大スクリーンに投影することは簡単にできます。少なくとも，申し込み時にそのむね申告しておけば，準備をしておいてくれます。しかし，日本の（文科系の）学会では，LLAやJACETなど，教育工学関連の研究者が多い一部の学会を除いては，まず無理でしょう。OHPさえ用意できない学会が少なくないのですから…。私も，今までに「パソコンを接続してプレゼンテーションをしたいのですが…」と言ったら，怪訝そうな顔をされたことが何回かあります。

• 時間がかかる→たしかにプレゼンテーションソフトは，非常に短時間で簡単に高水準のスライドが作れますが，それでもハンドアウトにくわえてスライドも作らないといけないので，時間はかかります。

• 無用なトラブルが起こりやすい→パソコンは非常にデリケートな機械ですから，予期しないトラブルが起こる可能性があります。保存したファイルが呼び出せなかったり，バッテリーが切れたりといったことが本番で起こると致命的です。OHPやハンドアウトのみを使った「原始的な」発表なら，家に置き忘れでもしない限り「トラブル」など起こりえません。

10.3.1. プレゼンテーションソフトを使った発表

プレゼンテーションソフトは，プレゼンテーションを支援することを目的とした一種のお絵かきソフトです。日本ではまだまだなじみが薄いですが，プレゼンテーション先進国のアメリカでは5年以上の歴史を持ち，完全に定着しています。代表的なソフトとして，Windows系ではMicrosoft PowerPointやLotus Freelance，MacintoshならAldus Persuasionなどがあげられますが，機能的に大きな違いはありません。PowerPointやFreelanceは同じメーカーのオフィスパッケージ（Microsoft OfficeやLotus SmartSuiteなど）にも付属しているので，皆さんもすでに持っているかもしれません。

プレゼンテーションソフトは，言うまでもなくプレゼンテーションに使うことに特化して開発されているので，普通のお絵かきソフトでスライドを作ることにくらべて，非常に簡単です。箇条書きのスライドのような単純なものなら，まったくの初心者でも，画面の指示に従うだけで，簡単に作れますし，凝った図でもマウスで丸や四角などのひな形図形をドラッグするだけですから，私のように絵心のない人でもそれなりのものは作れます。

ただ，現状では，プレゼンテーションソフトは，ワープロや表計算ソフトにくらべて特殊なものという位置づけがあるので，たとえ会場にパソコンがあっても，プレゼンテーションソフトがインストールされていることは期待できません。そのため，結局，自分の使っているノートパソコンを持参せざるをえないので，非常に面倒です。むしろ，プレゼンテーションソフトで作ったスライドをOHPシートにコピーして，それをOHPで提示するという使い方のほうが現実的かもしれません。ほとんどのプレゼンテーションソフトは，文字の大きさや行間などを自動で見やすく設定してくれますので，シートに印刷するだけで，先ほどのOHPの項でお話しした，見やすいシートを作るための数々の注意点は自動的にクリアされます。

10.3.2. インターネット(WWW)を使った発表

自分のウェブページを持っている人なら，事前に提示する内容をウェブページに載せておき，当日会場のパソコン（インターネットにつながるもの）でアクセスして表示させることもできます。最近のプレゼンテーションソフトは，作ったスライドをホームページの形式（HTMLフォーマット）に変換してくれる機能があるので，それを使えば，プレゼンテーションソフトでプレゼンをするのと同じことがNetscape等で行えます。

この方法は，インターネットにつながる環境なら世界中どこででも使えますので，パソコンの機種等を問いません。あなたのパソコンがWindowsで，会場のものがマックであっても，インターネットに接続されていれば大丈夫です。また，プレゼンテーションソフトを使ったことがない人でも，NetscapeなどのWWWブラウザーは使ったことがあるでしょうから，操作を覚える手間も省けます。そして，最大のメリットは，スライドの保存先URLをハンドアウトにでも書いておけば，発表が終わった後，いつでも聴衆がスライドに自由にアクセスすることができるということでしょう。たとえ発表に参加しなかった人でも，参加した人と同様の条件であなたの発表内容を知ることができるわけです。何といっても，WWW上に載せた段階でその情報は全世界へ公開されるわけですから，たとえ小さな学会の発表でも，思わぬ反響で嬉しい悲鳴をあげることになります。

問題は，国内の学会では，自分の発表会場にインターネットのつながるパソコンが設置されていることは，まず期待できないということです。そのため，日本で発表を行う際は現実的な方法ではありませんし，たとえインターネットにつながっても，回線の状況が悪いとアウトなので困ります。ローカルに保存したもの（ホームページ内容をフロッピーディスクにコピーしたもの）も用意して，いざとなればそれを使うという手もありますが，手間がかかるということは事実です。

10.3.3. デジタルカメラを使った発表

今お話ししたように，国内の学会では，設備の関係もあり，パソコンを用いたプレゼンテーションはまだまだ敷居が高いのが現状です。そこでおすすめなのは，デジタルカメラ（デジカメ）を使う方法です。あらかじめ，プレゼンテーションソフトで作ったスライドの画像を，デジカメに転送しておきます（JPEG形式に変換して保存します）。そして，会場に備え付けの，ビデオ再生用モニターテレビ（VCRぐらいなら，ほとんどの学会会場に備わっているはずです）の映像入力端子とデジカメを，ケーブル（デジカメに付属しているもの）で接続します。モニターのチャンネルを外部入力にすれば，デジカメに記録された画像を会場のモニター画面に映し出すことができます。これなら，パソコンを直接接続する発表と同様のことが手軽にできますし，OHPと異なり，部屋を暗くする必要もないので，ぜひおすすめします。

デジカメ本体はもちろんですが，接続ケーブルとACアダプター（デジカメは電池を食うので，30分近くの発表の間電源を入れっぱなしにしておくと，途中でダウンする可能性があります）は忘れずに持参しましょう。また，モニターテレビの映像入力端子の位置などは，事前に自分で確認しておきましょう（たいていは正面の下のほうにあるはず）。いくら会場担当のバイト学生でも，こんなことまでは知らないでしょうから…。

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